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魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」
Part116


653 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/22(日) 00:27:04.63 ID:KvXPKcsP
魔王「おそらく、バックアップの発生には様々な要因が
 絡んでいると推測できる。
 魔法使いが何らかの仕掛けをしたらしいしな」
勇者「そうなのか?」
魔王「うむ。バックアップの発生は、
 私たちが一方的に不利になるわけではない。
 もし新しく発生した魔王が味方になってくれるのならば
 こちらは魔王2人と勇者1人の戦力だ。
 ……私たち2人だけでは戦力が足りないと考えた
 魔法使いが何らかの作業を行なっていたのは知っている。
 今考えると、バックアップ……冗長性のシステムを
 利用した、“この機構”に対する介入だったんだな」
勇者「メイド姉が勇者を名乗ったのって……」
魔王「ああ、そのこと自体はただ単純に思いつきと
 自分の覚悟の表明だ。びっくりはしたけれどな。
 一歩も引かずにこの世界の行く末に一石を投じ、
 その結果に責任をとるという意思表示だろう。
 ……しかし、この状況下では違った意味を持つ。
 おそらくメイド姉の“名乗り”は“機構”に承認され
 本当に勇者としての能力を持ってしまった。
 全くの偶然なんだろうが……。
 いや、偶然にしては出来すぎか。でも、作為もない。
 あるいはこれが、これこそが。奇跡かも知れないな」
勇者「……まじか」
カツーン、カツーン
魔王「推測だが、聞いた限りほぼ事実だ。
 そもそも、彼女が異常なまでに行動的になって
 大規模に活躍をするようになったのは
 冬越し村を出てからだ。
 考えてみると蒼魔の刻印王と呼応するような時期に当たる。
 勇者としての意志が芽生え、旅の間に徐々に
 それが本格化したのではないだろうか」

654 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/22(日) 00:30:18.78 ID:KvXPKcsP
勇者「メイド姉も俺みたいな戦闘能力を身につけているのか?」
魔王「それは何とも云えない。
 現にわたしは魔王だが、そこまでの戦闘能力は持っていない。
 それは、勇者と魔王の継承システムの違いに
 依るのかも知れないし。
 ただ単純に個人個人の資質に依るのかも知れない。
 バックアップなんて云うのもわたしの推測だけで、
 事実かどうかの確認を取った訳じゃない。
 だから全ては確認されていないんだ」
勇者「そっか。むちゃくちゃ強くなった
 メイド姉ってのも想像しずらいものなー。
 まぁ、こんな戦闘力なくたって問題ないさ」
魔王「ふふふっ。そうだな。わたしは最初から弱いしな」
カツーン、カツーン
勇者「他にも、居るんだろうな」
魔王「青年商人は“人界の魔王”を名乗っていた。
 あの名前も、おそらく“承認”を受けてしまったのだろう。
 事がこうなっては、誰が勇者、もしくは魔王の資格を
 持っているのか判らない」
勇者「良い知らせ、だな」
魔王「そうなのか?」
勇者「その代理の発生が確率的に分布しているのなら、
 味方の方が増えているはずだ。
 もし敵の数の方が速いペースで増えているのならば
 そもそも俺たちがやろうとしていることが、
 みんなの望みとかけ離れているって事じゃないか」
魔王「それはそうかもしれないが……」
勇者「話し合いの過程でもしかしたら剣を交えている
 勇者と魔王がいるかも知れないけど、
 それは、結局はそいつらの問題だ。
 ……ここまで来たら、俺たちには手が出せない。
 本人達に任せるしかないだろう。
 良い知らせだと考えておこうや」

655 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/22(日) 00:35:29.93 ID:KvXPKcsP
魔王「……不思議だ」
勇者「どうしたんだ?」
魔王「いや、魔王と勇者とは、なんだろうって」
勇者「……魔法使いは、同一だって云っていたな。
 光の精霊の願望が生み出した、
 “この世界を持続させるための機構の一部”だと言っていた」
魔王「それはもちろんそうだ。
 でもそれは概念的な、あるいは定義的な意味づけだろう?」
勇者「……?」
魔王「たとえば、太陽だって風だって海だって、
 無ければこの世界には大ダメージで、
 世界は今とは全く違う様相になってしまう。
 王制国家だって農業だって、発明されなければ
 世界は大混乱も良い所だ。
 ――つまり、その意味合いにおいて、それら全ても
 “この世界を持続させるための機構の一部”と云える」
勇者「まぁ、そうだな」
魔王「つまり、“機構の一部”なんていう言い方は
 世界維持という観点に立って物事を観察した時、
 そう言う言い方も出来る……という程度の言葉でしかない。
 世界の立場に立てば、あるいは魔法使いのような
 研究者の立場に立てば、私たちは“機構の一部”なのだろう。
 それは判る。
 でも、それだけなんだろうか……。
 では、この胸にある“丘の向こうを見たい気持ち”は
 どこからやってきたんだろう?
 これも機構の一部なんだろうか……。
 “勇者を好きな気持ち”もそうなんだろうか……」
勇者「……」
カツーン、カツーン
魔王「そんな風には思いたくないんだ」

656 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/22(日) 00:38:45.69 ID:KvXPKcsP
勇者「そうだな」
魔王「あるいは……」
勇者「あるいは?」
魔王「精霊の立場から見たら、私たちはなんなのだろう」
勇者「――救済、じゃないかな」
魔王「救済?」
勇者「わからないけど。そんな風な気がした。
 夢の中の光の精霊は、いつでも、途方に暮れていて。
 とても困っている感じだったから。
 きっと長い長い時間の中で、自分でもどうにもならないほど
 こんがらがっちゃったんじゃねぇかなぁ」
魔王「こんがらがる……か」
勇者「救われなかったんだろう。
 救いを想像できなかったんじゃないかな。
 あるいは、“救われちゃいけない”って思ってたとか」
魔王「何故?」
勇者「さぁ。思い込んじゃってるんだろう」
魔王「……そうかもしれない。観測的には」
勇者「だな」

657 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/22(日) 00:40:31.20 ID:KvXPKcsP
魔王「そんな精霊を説得できるのかな」
勇者「そりゃ出来るだろう」
魔王「私たちが魔王と勇者だからか?」
勇者「ちげーよ。この塔を登る魔王も勇者も
 俺たちが初めてじゃない」
魔王「では、魔王と勇者の2人だからか?」
勇者「それも違うな」
魔王「ではなぜ?」
勇者「上手く言葉にはならないな。
 でも、説得は出来るよ。
 意味はある……。
 俺たちがこの塔を登る意味はあるよ。
 勇者だからじゃなく、魔王だからじゃなく。
 俺と、魔王だから。
 説得は出来る、と思うよ」
魔王「勇者は、何か予想しているんだな」
勇者「うん。まぁ、なんとなく」
魔王「それはなんなんだ?」
勇者「だから、上手くは云えないよ。
 でも、世界ってすげぇじゃん? 旅を思い出してみろよ。
 魔王もあの冬越し村を思い出してみ?」
魔王「うん」
勇者「あれら全部は光の精霊が産んだ奇跡から
 育まれてきた現在の世界なんだぜ?
 そんな優しい精霊を、説得できないなんて思わないよ」

661 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/22(日) 01:15:58.45 ID:KvXPKcsP
――光の塔、精霊の間
タッタッタッ……。タッタッ……。
勇者「ここが……突き当たりだ」
魔王「この扉の奥が……」
勇者「入るぞ?」
魔王「うむっ」
……ゴォォーン
勇者「おーい! いるか、精霊ー。来たぞー!」
魔王「おいおい、そんなに気安くて良いのかっ!?」
勇者「俺はここの常連なんだよ。来るのは初めてだけど
 夢も中なら何回も来たことがあるっての」
魔王「そう言えばそうか」
勇者「おーい。おーい」
光の精霊「勇者……」おずおず
勇者「おっす!」
光の精霊「魔王……」
魔王「あー。お初にお目にかかる」
光の精霊「とうとう、来てしまいましたね。
 勇者と、魔王が……。わたしが、光の精霊です」
勇者「露骨にしょんぼりするなよ。予定が狂う」
光の精霊「すみません……」

664 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/22(日) 01:18:51.24 ID:KvXPKcsP
勇者「その様子じゃ色々話は判ってるみたいだな?」
魔王「ふむ」
光の精霊「ええ……」
勇者「で、うーん。どうしようか」
魔王「任せておけ! みたいな態度だったではないか」ぶつぶつ
光の精霊「ゆ、勇者は。世界を救ってはくださらないのですか?」
勇者「は? ああ。
 その質問は、一応約束みたいなものだな。
 その答えは“No”だ。
 つか、救える部分は救う。
 手助けできるのなら、する。
 でもそれは俺が俺として行なうもんであって、
 勇者として、ではないよ。
 世界を救う特別なモノとしての勇者は、
 もう必要ないんじゃないかと思う」
光の精霊「魔王は……そ、その。
 魔界を、導いてはくれないのですか?」
魔王「答えは“否”だ。……そもそも専制的な
 統治機構は緊急時、もしくは発展時の過渡的な機構だと
 云うのがわたしの信条だ。魔界にはすでに忽鄰塔によって
 議会政治の初期形態が浸透しつつある。
 魔王による中央集権はそこまで必要とは思えない。
 むしろ専制君主政治による弊害の方が目立ってきている」
光の精霊「だめですか……」
勇者「ううぅ。そんな涙ぐまれると、すげー罪悪感がある」
魔王「これはやりずらいぞ、非常に」
光の精霊「勇者は……」

667 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/22(日) 01:22:05.57 ID:KvXPKcsP
勇者「ん?」
光の精霊「……思い出しては、いないんですよね?」
勇者「なにを?」
魔王(……思い出す?)
光の精霊「……」じ、じぃっ
勇者「いや、2人で見つめられても。いや。ちがうぞ!?
 いくら俺でも、精霊に手を出したことはないぞっ!?
 それ以前に逢ったのは今が最初だっ!」
魔王「あやしい」
勇者「俺悪者かっ!?」
光の精霊「……いえ、その」
魔王「ん?」
光の精霊「その……昔の……」
勇者「判んないぞ。さっぱり」
光の精霊「そう……です……か」
勇者「?」
光の精霊「ダメ、ですか? このままでは。
 このままの世界を続けるのは、そんなに悪いことですか?
 確かにこの世界には不幸なこともたくさんあります。
 疫病もあれば、飢餓もあり、戦争も時には起きるでしょう。
 しかし、それもけして多くはないのです。
 わたしは覚えています。
 大地が波のようにうねり、山は火を噴き、
 森は灼け、海は凍り付き、あるいは沸騰した災厄の日を。
 あれに比べれば、大地は平和ではありませんか」

669 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/22(日) 01:23:31.66 ID:KvXPKcsP
勇者「あー」
光の精霊「預言者ムツヘタの残したように、
 地に闇が訪れる時、必ずや光の意志を引き継いだ勇者が現れ、
 世界の闇を打ち払う。
 世界はその伝説を胸の希望とし日々を過ごす。
 親は子へ、子はその子へと伝説を語り継ぎ
 永遠を永遠のままに暮らす。
 それがそんなにも悪いことですか?
 ……ダメですか? 破滅を避けるのは……悪ですか?」
勇者「……」
魔王「……」
光の精霊「ダメ、ですか? 間違っていますか……?」
勇者「それはさ」
魔王「勇者。わたしが話そう」
光の精霊「……」じぃっ
魔王「それは全く間違っていない。必要だった」
光の精霊「……はい」
魔王「私たちは、あなたに感謝している。
 魔界では光の精霊に対する信仰は廃れてしまったが
 それでも碧の太陽に対する感謝の気持ちを忘れた
 氏族は一つとしてないだろう。
 精霊五家の興亡の記録はもはや賢者に伝わるのみだが
 心ある者たちは感謝の念を絶やしたことはない」
光の精霊「はい」
魔王「私たちは、あなたのことが大好きだ」
光の精霊「ありがとうございます」ぺこりっ

670 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/22(日) 01:25:28.53 ID:KvXPKcsP
魔王「でも。……それでも、次に行きたいのだ」
光の精霊「え……? 必要だって」
魔王「必要だったのだ。しかし、今や進むべき時が来た。
 時を止めていたこの世界に、進むべき時が来た」
光の精霊「あ、え……。その……」
魔王「今、もう一度この言葉を言おう。
 “それは出会いの一つの形だったのだ”と。
 そして世界には
 “いつか不必要になるために必要なモノ”があるのだ、と。
 それはあるいは子供の外套のように、だ。
 それがなければ私たちは成長することが出来ない。
 冬の雪にやられて死んでしまうひ弱な存在に
 過ぎなかった私たちは、その外套に守られて過ごした。
 でも、やがていつの日か、この今日にでも。
 その外套を脱ぎ捨てなければならない日は来る」
光の精霊「……ダメですか」
魔王「ダメではない。無駄でもない。
 ありがたくないわけがない。あなたは、わたし達の救い主だ。
 でも、時が過ぎた。過ぎなければならないのだ」
光の精霊「あ……う……」
魔王「わたしは魔法使いとは違う。
 あなたが間違っていたとは思わない。
 あなたの罪だと断罪するつもりはない。
 大災厄から私たちの祖先を救ってくれたあなたには
 億千万の感謝の言葉を費やしても足りると云うことがない。
 ……でもね」
ぎゅっ
光の精霊「あっ」
魔王「終わりが来たんだ」

671 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/22(日) 01:34:31.51 ID:KvXPKcsP
光の精霊「うっ……。うっ……」
勇者「悪いな。そのぅ……なんのことだか判らないけれど
 思い出してやることが出来なくてさ」
魔王(それはおそらく……)
光の精霊「いえ、良いんです……」
魔王(最初の勇者の記憶。
 炎の娘と恋に落ちた……
 大地の精霊と人間の娘の間に生まれた少年。
 黒髪をもち、不死鳥にまたがった
 ――自由の魂を持つ少年の記憶)
光の精霊「やっぱり。ダメでした……。
 竜王の時も死導の時も。憎魔の時さえも。
 結局は思い出してはくれなかった。
 それでも……良いです。
 彼を裏切ったわたしには、
 あなたに何かを要求する権利なんて
 最初から何一つ有りはしないのだから……」
勇者「そうかなー」
魔王「そんなことはない」
光の精霊「え?」
勇者「裏切ってなんかいないだろう」
魔王「まったくだ」
光の精霊「え? え?」
勇者「まぁ。光の精霊は少しとろいからなぁ」
魔王「そんな感じだ。それにしたって、長すぎる誤解だ」

675 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/22(日) 01:40:24.23 ID:KvXPKcsP
光の精霊「だって、そんな……。
 わたしは彼に誘われていたのに結局は彼を選べなかった。
 ……彼をあんなにも迫害をした精霊五家を守るために、
 この身を犠牲にしてまで御子の勤めに準じた……。
 彼の持つ自由の風にあんなにも惹かれていたのに、
 あの不死鳥の背にまたがって世界の果てを目指すことを
 夢見ていたのに、それなのに、やっぱりわたしは
 彼の手を取ることが出来なかったんです。
 彼の手を振り払って、わたしは光の精霊になった。
 彼の誘いを裏切ったから……。
 わたしは世界を選んだから。
 そんなわたしが出来る事なんて、
 世界を守り続けることしかないのに。
 ……それだけがわたしの存在理由なのに」
魔王「それで、そのぅ……“彼”の転生を待ち続けているのか。
 乙女心としては判らないでもない。
 というか、共感も出来るが。
 それは、やはり相当に誤解だと思うぞ?」
勇者「そうだそうだ。精霊がそこまでメロメロってことは
 その彼は相当にカッコイーやつだったんだろうが、
 そう言う点はあんまり重要じゃないんだぞ」
魔王(何を寝ぼけているのだ、勇者。
 “彼”の容姿なんて、勇者にそっくりに
 決まっているではないかっ。気がつけ、阿呆)
光の精霊「……うう」
勇者「ただ単に、手分けしただけだろじゃねーか」
魔王「最初の勇者が、世界を救うのに躊躇ったとでも?」
勇者「それともそいつは世界の危機に力を尽くさないほど
 根性曲がってたのかよ。自分を虐めたやつらだから
 死んじまえってほど了見狭かったのか?」
魔王「他人のために手を差し出すことを躊躇うような男に
 精霊殿が恋をしていたとは考えがたいな。
 もしそのような男だったら、そもそもこんなにも
 苦しまなかったのではないか?」
光の精霊「え……?」
勇者「そいつはきっと思ってるぜ。
 “ああ、俺の好きになった女は格好良いやつだ”って」
魔王「格好良いと云われて純粋に喜ばしいかと云えば
 乙女としてはなんとも微妙だが、
 それでも為すべきを為さないような存在であるよりも
 何倍も何倍も良いだろう」

676 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/22(日) 01:43:01.30 ID:KvXPKcsP
光の精霊「あ。あ……」
勇者「そいつだって、事が終わって二人っきりになったら
 “あのときはすげぇ頑張ってたな。惚れ直した”
 って云おうと思ってたんだよ。
 そのぅ……まだその機会が来てないだけでさ」
魔王「きっと“彼”だとて、その不死鳥の背と
 両手で、少なくはない人々を救っていたはずだ。
 自分の恋した少女が命をかけて世界のために
 戦っている時に、奮い立たないわけがない」
勇者「そーだそーだ! 魔王の云うとおりだぜ!」
魔王「な? 勇者。そうだろう?」
勇者「ったりまえだっての。
 世界を救いたいから勇者なんだぜ?
 勇者だから世界を救うわけでもないし、
 世界を救うから勇者でもない。
 救いたいと強く希ったら勇者なんだ。
 あんたの彼氏は、勇者だったさ」
魔王「……だ、そうだ。
 少なくとも“彼の魂”はそう言っているぞ?」
光の精霊「……あ。うくっ……」
勇者「?」
魔王「それから、“あなたの魂”はこう言うだろう。
 “もう、罪悪感は捨て去る”と。
 勇者と再び出会うために
 この世に闇と戦乱を振りまくのは、止めると。
 裏切ったという自責の念に堪えかねて、
 勇者の魂を求めて赤子のように涙を流すのは止めると。
 ……わたしだから云えるんだ。
 勇者と初めて手を取り合ったわたしだか。
 あなたの苦しみは魔王の魂を歪めてしまったけれど
 その歪みでさえ乗り切ることが出来るって」