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魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」
Part111


339 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/14(土) 05:02:42.35 ID:6OFcHF6P
女騎士「ここはわたしが引き受けた」
勇者「何いってんだっ。三人で戦うべきだろうがっ」
魔王「勇者……それは……」
女騎士「これはわたしの客だ。それに、勇者。
 わたしだって気がついてる」
勇者「なにを?」
女騎士「勇者の力は、殆ど回復してない。
 封印されてるも同然だ。そんな状況では、戦場に立って
 広域魔法や広域剣技の余波を受けるだけで、
 回復の手間がかかる。それは魔王も一緒だ」
勇者「〜っ!」
魔王「……うむ」
女騎士「上は説得なのだろう?
 だとすればわたしはあまり役には立たない。
 わたしは馬鹿だからなっ!」 にこっ
勇者「おまっ」
魔王「胸にも頭にも栄養が行ってないとは」
女騎士「胸は関係ないっ!!」
勇者「……っ」
女騎士「そんな顔をするな。勇者。ほら、荷物は置け。
 鎧も脱げ。今更関係ないから。
 これは……。ほら、ビスケットだ。
 二人で食べて良いぞ。
 わたしも追いつくからな、少しは残して置いて」
勇者「ああ」
魔王 こくり

340 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/14(土) 05:05:38.75 ID:6OFcHF6P
女騎士「じゃぁ、行って。
 そんな顔しちゃだめだ。わたしは女騎士だぞ?
 蒼魔王みたいなのが相手じゃ大変だけど
 そこらの人間や魔物に負けるわけがない。
 蒼魔王のいない今、ピンチになるわけ無いじゃないか」
魔王「……女騎士」
女騎士「口げんかは、少しだけ、お休み」
勇者「判った。上で待ってるからなっ!」
女騎士「ああ。勇者!」
勇者「?」
女騎士「――。ん。なんでもないぞ。
 うん、そうじゃなくて。
 がんばれ! それに、我が剣の主。
 剣の主の……剣の主の願いに加護をっ」
勇者「……。判った! 行ってくる!」
魔王「任せる」
女騎士「任される」
 ダッダッダッダッ
……コオォォン
…………コオォォン
女騎士「さて」 くるっ
女騎士(大主教と云えば、教会の最高位。
 建前では大陸一の法術の権威。
 だけど修道会の法術とは比べたこともない。
 どちらが光の法術を使いこなせるのか。
 それに……。魔法使いの云う“歴代魔王の思念”。
 合わせれば、並の魔王よりずっと強い。か……)
ジャキッ
女騎士「面白い。たとえどれほどの力をもってきても
 ここより先へは一歩も行かせない。
 勇者の隣を歩くために。剣の主人を守るために。
 騎士の力の全て、この身を全てを、盾としよう」

385 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/16(月) 07:30:28.04 ID:VaDFVbYP
――開門都市近郊、混戦の中で
ゴッゴォォーン!!
カノーネ兵「弾着確認っ!」
百合騎士団隊長「ふふふっ」
偵察兵「防壁東側に、土煙が上がっています。
 おそらく廃屋か、庁舎に命中したと思われますっ」
カノーネ兵「……」がくがく
百合騎士団隊長「続けなさい? 停止命令は出していないわ」
カノーネ部隊長「お、恐れながらっ。あの地域には我が軍の
 突撃部隊も侵入しているはずですが……」
百合騎士団隊長「やりなさい」 にこっ
教会騎士団「精霊の思し召しだ、やれっ」
光の銃兵「精霊は求めたもう!」
光の槍兵「精霊は求めたもう!」
カノーネ部隊長「は、はいっ。ほ、砲弾を込めよっ!」
カノーネ兵「はひぃ」 がたがた
ゴッゴォォーン!!
    ゴッゴォォーン!!
百合騎士団隊長「ふふふっ。聞こえるわ……。
 その甘さと苦さに酔いしれそう……。
 血の染みた黒々とした大地に抱かれて眠る同胞よ、
 魔族と剣を交えて狂気に陥る信徒の群よ。
 戦場はまさに深紅に染まる大舞踏会のよう……」
教会騎士団「筆頭騎士団長っ!」

386 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/16(月) 07:34:01.60 ID:VaDFVbYP
百合騎士団隊長「なぁに?」
教会騎士団「追加のブラックパウダーが届きましたっ」
百合騎士団隊長「かまわないわ。カノーネ部隊に優先配備。
 マスケット部隊には三斉射の分量さえあれば良いでしょう。
 それから“お土産”用に、二、三人に抱えさせなさい。
 南部連合に手こずる王弟閣下にも目を覚まして頂きましょう。
 血の香りを嗅いで奮い立たない殿方なんていないのに。
 ふふふふっ。なにを小手先の戦術で戦を長引かせているのやら」
教会騎士団「はっ!」
ゴォォン! ガァォーン!
光の銃兵「っ!」
光の槍兵「近いです、これは銃声……」
百合騎士団隊長「南部連合の突出部隊か、都市からの迎撃部隊ね。
 丁度良いわ。霧の国の騎士団残存兵と、マスケット中隊2つを
 そちらへ差し向けて。叩きつぶさせなさいっ」
光の銃兵「はひぃ! いってきますっ!」
光の槍兵「精霊は求めたもうっ」
百合騎士団隊長「よい子ね」 にこり
教会騎士団「……散る花ですが」
百合騎士団隊長「灰青王の死んだ今、霧の国の騎士団も兵団も
 戦闘能力を期待は出来ない。こんな使い道がせいぜいなの。
 期待していたのに
 私の側から消えるなんて。
 ……やはりね。
 ずっと側にいてくれるのは、精霊だけ。
 暖めてくれるのは、精霊の慈悲だけ。
 流れ去るものに期待をするなんて意味もない。
 私の汚れを拭ってくれるのは、精霊様だけ。
 この腐った両手を清めてくれるのは、くれるのは……」
教会騎士団「精霊の恩寵は永遠です」
百合騎士団隊長「……ええ。くっ。くくくくっ。
 突撃させなさい。
 それからカノーネの着弾はさらに都市中央部へ。
 陣を少し前進させます。
 ……精霊は求めたもう。
 血の香りを、混沌を、そして死の苦鳴を……。
 ふふふっ。ふふっ。うふふふふっ。
 精霊の恵みを! 精霊の平安を! 精霊の粛正を!
 地に遍く混沌と薔薇の赤を塗り広げるのっ!」

387 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/16(月) 07:35:42.14 ID:VaDFVbYP
――開門都市、中央庁舎、執務室
  ……ゴォォン。 ……ォォン
庁舎職員「せめて二階の執務室に移りませんと」
青年商人「ここで十分」
火竜公女「執務の邪魔をしてはならぬっ」
庁舎職員「し、しかしっ」
青年商人「庁舎まで攻め込まれる事があるのなら、
 一階だろうと二階だろうと敗戦には代わりありません。
 それに執務室では広さも処理能力も足りい」
庁舎職員「しかし、ここでは内密の軍議も」
火竜公女「事ここにいたって、
 “内密”などというものはありませぬ」
……ゴォォン!
魔族娘「す、すいませんっ!」 びくっ
鬼呼の姫巫女「娘はすぐに謝るな」
傷病兵「中央街道、大六区まで閉鎖とのこと。
 集積場所を無名神殿広場前まで移動っ!」
青年商人「もう一段階下がらせますよ」
火竜公女「わかりました。
 ……無名神殿前広場を第一集積地としますっ。
 無名神殿前に集められた捕虜および傷病者を後方輸送っ。
 鴉神神殿、渡り神神殿前広場の2つに分割して移動をっ。
 ――魔族娘、頼みまする」
魔族娘「はいっ! 行ってまいりますっ」
鬼呼の姫巫女「よろしく頼む」
宿屋の市民「わ、私もお供しますっ」

388 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/16(月) 07:39:18.54 ID:VaDFVbYP
庁舎職員「そのほか、十番街で火災。
 規模は中程度、南八番街で倒壊多数。
 市保有倉庫とは連絡取れずっ。
 また、医薬品倉庫壊滅を受けて、包帯の残存量が……」
青年商人「ギルド長っ!」
紋様族職人長「は、はいっ!?」
青年商人「仕立て職人および倉庫から布を供出っ。
 支払いは全て当局回しで、清潔な布を出させてください。
 医薬品については、東十二番街の有角商会地下倉庫に
 予備の蓄えが千と五百人分はあります。
 衛士!」
衛士「はっ!」
火竜公女「徒行で突破、前述の物資を確保してくださるかや?
 これを全て第三次集積地に移動。
 班分けは15人。――義勇軍から募って馬車四台を編成」
衛士「判りましたっ」
鬼呼の姫巫女「なぜそのようなことを知っているのだ」
青年商人「商売相手の在庫把握は商談の基本です」
鬼呼の姫巫女(この二人、修羅場慣れしているのか?
 どこから来るのだ、この胆力はっ)
  ……ゴォォン。 ……ォォン
青年商人「火災は放置っ。あの地域の避難は完了済みですし、
 建物は漆喰と煉瓦が殆どです。昨晩の雨も残っている。
 燃え広がりはしないっ。市保有倉庫へは連絡を……。
 姫巫女、頼めますか?」
鬼呼の姫巫女「良かろう。若草鳩よ、いくが良いっ!」
若草鳩「ピロロロッ。判りました姉御っ!」
バタバタバタッ!
伝令「ま、魔王さまっ!!」
青年商人「落ち着いて報告を」

389 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/16(月) 07:40:37.27 ID:VaDFVbYP
伝令「で、伝令です。敵の砲撃、激化!!
 それにマスケットを持った新手の人間数千人が南門から侵入。
 無秩序な動きで、破壊を繰り返しながらあふれ出していますっ」
青年商人(……来た)
火竜公女「到来でございまする。商人殿」
鬼呼の姫巫女「〜っ!! ここまで来て、敵の増援っ。
 いや、最初から判っていた予備兵力か……。
 しかし、恐るべき数。それにマスケット兵とは……」
庁舎職員「このままでは砦将どのも危機に!」
市民職員「いや、族長に限ってそのような手には乗らぬはずですが」
青年商人「待っていた好機です」
鬼呼の姫巫女「は?」
庁舎職員「なっ、なにをっ」
  ……ゴォォン。 ……ォォン
青年商人「遠征軍はその統制を失っている。
 ……説明をしたでしょう。遠征軍の4つの勢力を。
 その勢力の統制が乱れ、混乱している。
 今流れ込んできたのは、遠征軍の中核とは言え、
 その実体は促成で教練を施した民兵に過ぎない。
 しかしその民兵こそが遠征軍の最大戦力です。
 そして彼らは“教会の剣”だった。
 ……教会に何らかの問題が起きたと考えられます」
鬼呼の姫巫女「その剣がこちらを向いているのだっ」

390 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/16(月) 07:42:49.29 ID:VaDFVbYP
青年商人「何を言っているんです?
 戦とは剣と剣による傷つけあい、そのものではないですか。
 相手の剣が向けられただけで降伏では話になりませんよ。
 それに、剣が向けられたからこそ勝機がある」
鬼呼の姫巫女「……っ」
火竜公女「敵の首魁の守りが薄くなっていますゆえ」にこり
青年商人「そう言うことです」
鬼呼の姫巫女「これを待っていたというのか?」
  ……ゴゴゴーン! ズドォーン!
伝令「砦将どの、撤退を開始! 防衛線を押し下げて、
 無名神殿の方向へとさがってゆきます!
 人間の軍は勢いに乗り軍を前に。ただし略奪や混乱に
 手をさかれて、戦場は混沌としていますっ!!」
青年商人「貴族軍はこれで開門都市の南部を使った
 市街戦の迷宮に引き込んだはずです。
 民兵の過半数もそれに続くでしょう。
 大事なのは交戦地域、交戦地点をこちら指定すること。
 そして指定してもそうは思わせぬ事。
 わたし達が望む戦闘を行ない、
 望まないタイミング、望まない地点での戦闘は
 “相手に思いつきさえさせない”。
 ……それが私と砦将の出した結論です。
 それさえ守り、非戦闘地域で補給と兵站を途切れさせなければ
 まだまだ粘ることは出来ます。
 タイミングと、範囲を制御する。
 商戦と何ら代わりがありません」
火竜公女 くすくすくすっ
鬼呼の姫巫女「……っ」
青年商人「そして、守りの薄くなった本陣へ攻撃を仕掛ける。
 ――それは、私の役目でしょうね。
 こればかりは勝てるとお約束は出来ないのですけれど」
火竜公女「私もお供を」
青年商人「それはだめです」

391 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/16(月) 07:44:43.88 ID:VaDFVbYP
火竜公女「なにゆえにっ」
青年商人「この執務室で補給と後方支援部隊の
 指揮を執る人材が我が方には必要です。
 少なくとも、お財布の重さが判る人間がね」
火竜公女「そんな……。ただの言い訳でありましょう?」
青年商人「共同事業者でしょう?」
火竜公女「それは……」
青年商人「相方でしょう?」
火竜公女「……っ」
青年商人「どうしました?」
火竜公女「商人殿が意地悪を言いまする」
青年商人「“良くできたおなご”は、殿方をどうするのです?」
火竜公女「〜っ。……っ」
鬼呼の姫巫女「――やれやれ。公女のこのような表情を見れるとは」
火竜公女「判りました。私は……。
 私はこの執務室でお待ちしておりまする。
 なにとぞ首尾良く吉報を持ち帰ってくださいますように。
 私は信用しておりまする。
 商人殿は、魔王の名を冠するに相応しき方。
 わたしの……。……いえ、それはよそ事でございまする。
 どうかご武運とご商運を。良い取引を祈りまする」
青年商人「お任せあれ。“同盟”十人委員会の筆頭として
 この都市を預けられたものとして、
 恥ずかしくない商談を約束しましょう」

392 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/16(月) 07:47:37.19 ID:VaDFVbYP
――開門都市近郊、南部連合陣地
ゴガァンッ!!! ズダァァァン!!
 光の銃兵「た、助けてくれぇ!!」
 光の槍兵「な、なんでっ! なんで俺たちがっ!」
 光の突撃兵「ど、どけぇえ! どいてくれぇっ!」
 包帯の光の兵「ひぃぃぃぃっ。撃つなっ! 撃つなぁっ!」
ズキュゥン! ドガァン! ギシィ、キンッ!
鉄腕王「前線で何が起きているっ!?」
偵察兵「砲撃ですっ! 遠征軍本陣よりの砲撃っ。
 自軍のマスケット部隊に着弾。被害が広がっていますっ」
鉄腕王「誤射か!?」
軍人子弟「違う……」
ズダァァァン!! ゴガァンッ!!!
偵察兵「違いますっ! 怠戦にたいする警告というか、
 ある種の督戦行動のような……。
 我が軍に向かって駆り立てて民兵を追い立てていますっ」
鉄国少尉「まさかっ!? そこまでっ」
 光の銃兵「うわぁぁ! 返事をしろっ。槍兵! 槍兵っ」
 光の槍兵「ごふっ。ごぶごぶごぶ……。げはっ……」
 光の突撃兵「止めろぉ! 俺たちは敵じゃない! やめてくれぇ!」
鉄腕王「なんてことをっ」
軍人子弟「指揮系統を乱したのが徒になったでござる。
 このままでは遠征軍の損害は……」
鉄国少尉「遠征軍の損害など気に掛けている場合ではっ」

393 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/16(月) 07:48:51.99 ID:VaDFVbYP
軍人子弟「かけている場合でござるよっ!
 ここで必要以上の被害を出せば、
 双方にとって傷跡が深くなりすぎるっ!!
 世界は混沌の淵に沈むでござるよっ。それではなんのためにっ」
鉄国少尉「ではっ」 きっ
鉄腕王「……」
鉄国少尉「受け入れを進言します」
軍人子弟「少尉……?」
鉄国少尉「見捨てることが出来ないなら、助けるしかないでしょう。
 我が南部連合は、民を……。
 開拓民も農奴も等しく助けることによって
 大儀を得た国々の集まりです。
 その大儀が、助けろと命じるならば、
 我ら軍人はその声に耳を傾けるべきです」
ゴォォン! ズゴォォン!
鉄腕王「たしかに、離間工作じみたやりかたもした。
 奴らの兵を寝返らせてこちらに引き込むのは戦略のうちだった。
 しかしこの状況で助けるとなれば、こちらから軍を突出させ
 敵の本陣に切り込むことになるだろうよ。
 あの光る塔が現われてから、奴らの本陣は混乱の一途だ。
 組織的な抵抗はないかも知れないが、
 それでも狂気じみた反撃はあるかも知れんぞ」
冬寂王「……」
鉄国少尉「必要であれば躊躇うべきではありません」
軍人子弟「その通りでござる。許可を願うでござる」
冬寂王「行ってくれ。頼む。……将官っ!」
将官「はっ!」
冬寂王「こちらは塹壕を整備している。カノーネの砲撃は
 平地よりもよほどその威力も精度も押さえることが出来るだろう。
 1部隊……いや、4部隊を率いて、こちらへ向かってくる
 遠征軍民兵の受け入れを始めろ。武装解除の上、後方へ護送。
 姓名を控えて一カ所にまとまってもらえ!」

394 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/16(月) 07:50:23.60 ID:VaDFVbYP
軍人子弟「準備をするでござるよ」
鉄国少尉「了解っ!」
軍人子弟「今度こそ死線をくぐることになるでござるが」
鉄国少尉「そのようなこと。あははははっ」
軍人子弟「……」
鉄国少尉「我が国の安全、我が国の繁栄、我が国の利益。
 それらのために戦うのは尊く素晴らしいことです。
 それらは軍人としての任務であり、本懐」
軍人子弟「……」
鉄国少尉「しかし“どこかの誰かのため”に戦うのは、
 軍人ではなく、男子の本懐であると、護民卿はおっしゃられた」
軍人子弟「若気の強がりでござるよ」
鉄国少尉「それでも良いではないですか。
 この攻撃を凌ぎきり、
 あの三千余名を収容、敵のカノーネ部隊さえつぶせば
 遠征軍は、少なくとも圧倒的な数的優位を失う。
 待ち望んできた均衡状況が訪れる可能性が高い」
軍人子弟「その通りでござる。
 この一手は人道的な見地からのみならず、
 戦略的見地から見ても、われらが放つ最高の一撃」
鉄国少尉「我らが鉄の国の槍は、岩をも貫く」
軍人子弟「……そろそろもてるとか、
 そういう場面も欲しいでござるが」
鉄国少尉「は?」
軍人子弟「いいや、なんでもないでござるよっ!
 この凛々しくも雄々しく汗臭いのが我が国でござるっ。
 さぁ、馬に乗るでござるっ! 切り込み準備っ!!
 カノーネ部隊を沈黙させるため、いざ! 推して参いるっ!」

395 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/16(月) 07:51:45.00 ID:VaDFVbYP
――開門都市近郊、混乱の戦場
ドゴォォーン! ズギャ!
 うわぁぁぁ!! 押せぇ! 押せぇ!
 撃つな、俺たちを撃たないでくれぇ
遠征軍士官「なんだって!?」
聖王国騎士「真実です、早く取り次ぎをっ」
遠征軍士官「判った、このことは他言無用だ」
聖王国騎士「はっ! はいっ」
  光の銃兵「光は求めたもう! 光は求めたもうっ!」
  光の槍兵「精霊は魔族の血を求めたもうっ!」
遠征軍士官(何を言っているんだ! このような時にっ。
 数万!? 数万を超える魔族の援軍が、
 ゆっくりとだがこの地に終結しつつあるだとっ!?
 馬鹿な! 馬鹿なっ!?
 なぜそのような数の軍勢がっ。
 そのような軍勢は我が遠征軍が世界で初めてのはず。
 愚劣で未開の魔族にそのような軍勢を組織できるはずがないっ。
 何かの間違いだ!
 間違いに決まっているっ!!)
ばさっ!
遠征軍士官「閣下っ!!」
参謀軍師「王弟閣下は前線である。何事かっ」
聖王国騎士「そ、それがっ。ご、ご報告しますっ!
 目下、この場所に向かって北方および東方の森林地帯を抜け、
 最低数万の魔族の軍が迫っているとのことっ」
参謀軍師「なっ!? 数万、ですとっ!?」
遠征軍士官「最低、です。先遣部隊は森の橋からこちらを
 観察しているとの情報がもたらされましたっ」

396 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/16(月) 07:54:24.50 ID:VaDFVbYP
――開門都市近郊、混戦状態の南市街廃墟
清明の時節、辺城を過ぐ
  遠客風に臨んで幾許の情……
……ゴォォン!!
光の少年兵「……」
野鳥は閑関として語を解し難く
  山花は爛漫として名を知らず……
光の少年兵(……なんだろう、この歌。
 死んじゃったのかな、ぼく)
葡萄の酒は熟して愁ひに腸は乱れ
  瑪瑙の杯は寒くして酔眼明らかなり……
光の少年兵(優しい、綺麗な声……。
 梢がさわさわ鳴っているみたいな……)
遥かに想ふ故園 今好く在りや
  梨の花さく深き院に鷓鴣の鳴く声すらん
光の少年兵(綺麗で、泣きたくなるような……歌……)
ゴォォン!!
光の少年兵「砲声っ!!」 がばっ
奏楽子弟「ん。目が覚めたかな」
光の少年兵「え? えっ!?」
奏楽子弟「いいよ。横になってて」