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魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」
Part11


75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/06(日) 15:19:26.51 ID:Lbanm5QNP
王子「まだ結論は出ていない」
執事「判りますなぁ……
 “魔族をやっつけろ、しかし聖鍵遠征軍を出す余力はない”
 となりますとな」
王子「諸王国軍の戦力を使って、
 手早く、しかも中央大陸に華々しい戦果のニュースを
 もたらせるような戦争だろう?
 そんな都合の良い戦争、そこらにほいほい
 転がってるもんかよ」
執事「氷の国、白夜の国、鉄の国の皆様はいかがで?」
王子「まぁ、難しい顔はしてたよ。
 ああ。白夜の国だけはやる気満々だったな」
執事「あそこは、聖王国の貴族の娘だかを新しい
 后に迎えてましたからな。大陸中央とのパイプを
 強化して強国の仲間入りを果たしたいと願って
 いるのでありましょうなぁ」
王子「そういうことなのか」
執事「さようでございます」
王子「会議はまだまだ続くだろうが」
執事「……」

76 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/06(日) 15:24:17.45 ID:Lbanm5QNP
王子「おそらく、戦場は極光島だろうな」
執事「で、ございましょうな」
王子「極光島は南氷海にうかぶ、人間世界唯一の魔族の版図だ。
 ゲートを超えて魔界へ入らず魔族と一戦を交えるとしたら、
 あそこしかないだろう」
執事「ええ」
王子「あの島を魔族にとられたのは確かに痛手だったからな」
執事「まぁ、当時はここまで被害が大きくなるとは
 思えませんでした。お父様を責めなさるな。
 軍事拠点としての価値はさほどではありませんでしたしな」
王子「ああ。そうだなぁ」
執事「……」
王子「だが、あそこを押さえられたせいで海上運輸と
 南氷海の漁業は、大きな打撃を受けたよ」
執事「さようで」
王子「ああ! あのとき親父達に、魔界へ侵攻して
 都市の一個二個とるよりも、あの小さな島を守る
 勇気と智慧がありゃぁなぁ」
執事「詮方なきことかと」

79 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/06(日) 15:30:26.67 ID:Lbanm5QNP
執事「軍の編成はどうなりますかね」
王子「なにぶん、島だからな。戦船が中心にならざるをえん」
執事「ふむふむ」
王子「戦船200艘、兵員7000といったところかな」
執事「いかがでしょうね」
王子「俺なら、やりたくはないな。
 人間の軍の優位点は連係攻撃と機動力、情報伝達、
 そして何より、数だ。
 海戦では肝心の数の優位性が失われる。
 7000人の兵士を殺す必要はない。
 船を200隻しずめればいいんだ。
 正気の沙汰の話じゃない」
執事「若ならば?」
王子「戦をしないよ。
 やるならば、勝ったあとにちょこっと海戦をやって、
 軍事的に圧倒したふりだけをするさ。
 そもそも勝利をするための方策がない状態で
 戦をやるのは馬鹿だけだ。
 その上今回の戦、意義も見いだせない。
 大陸中央で安全を貪っている聖王国に指示を出されたから
 しっぽを振って兵を送り込むだって?
 そんなことで勝てるなら苦労はないさ」

80 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/06(日) 15:34:12.80 ID:Lbanm5QNP
――冬越しの村、村はずれの館、中庭
貴族子弟「どうやら決まりらしいな」
軍人子弟「この冬でござるか?」
貴族子弟「ああ、氷の国の王宮に叔父がいるんだが
 その叔父が知らせてくれた。どうやら大規模な
 海戦を行なうようだ」
軍人子弟「そうでござるか!
 最近は大戦もなかったでござるからね。
 海戦でござるか! となると、
 この近くでやるのではござらんか?」
貴族子弟「ああ、もちろんだとも。
 叔父もはっきりとは言わなかったが、このあたりにも
 動員令がかかるはずだと教えてくれた」
軍人子弟「憎き邪悪な魔族へと聖教会の鉄槌を
 下す時が来たでござるね!」
貴族子弟「君も行くのか?
 僕は叔父の船に乗せてもらうつもりだ」
軍人子弟「もちろんでござる。
 戦こそ武人の誉れでござるよ!」

82 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/06(日) 15:39:09.80 ID:Lbanm5QNP
女騎士「整列っ」
貴族子弟「は、はいっ!」
軍人子弟「!!」
 
ザザザッ
女騎士「浮ついた雰囲気だな」
貴族子弟「師範! お話はお聞きですかっ!?」
軍人子弟「拙者、血がたぎるでござるっ」
女騎士「まぁな。聞いてはいる。極光島だそうだ」
貴族子弟「極光島!」
軍人子弟「人間世界にしみ出した
 蛆のごとき魔族の根城でござるな。
 この大地に魔族は必要ないでござる」
女騎士「おい、ゴザル」
軍人子弟「はっ!」 ビシッ
女騎士「嘲りも侮蔑も戦場では不要だ。
 そんな心の動きは、生き残るための敵の一つと
 知った方がよい」

83 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/06(日) 15:44:47.27 ID:Lbanm5QNP
女騎士「諸君らに今一度訊ねる」
貴族子弟「……」
女騎士「それは諸君らの父君が、なぜこんな田舎の
 学院に諸君らを預けたかと言うことだ」
貴族子弟「それは、もちろん高名な学士様、
 女騎士様がいらっしゃるからです」
軍人子弟「戦場で勇名をはせるためでござる」
女騎士「ちがう」
子弟2人「?」
女騎士「諸君らの父君がこの学院に諸君らを預けたのは
 ――大陸中央の進学校でも、修道会でもなく
 まさにこの学院に諸君らを預けたのは、諸君らを
 一回の雑兵や役人にするためではないぞ」

86 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/06(日) 15:52:34.75 ID:Lbanm5QNP
女騎士「諸君らは、ここで――あの腹立たしい胸をした
 ――学士に経済なる面妖怪奇な理論を学んでいるので
 あろう? 修道士からは実戦的な医術と農業の基礎を、
 そして私は剣や槍、馬術に限らず、こと戦の事に関して
 一通り以上を教授したつもりだ」
女騎士「それらは全て、一回の兵卒の身には過ぎたるもの。
 それは王の隣に立って戦を治めるための知恵と技だ。
 ――忘れるな。諸君らが身につけた、
 あるいは身につけようとしている技の価値を」
女騎士「中央の学院や修道会では、より洗練された、
 教会の教えに沿った知識を身につけられるだろう。
 社交術も華やかなパーティーで身につけられるに
 違いない。あるいはそれも有用な技であろうな。
 しかし、諸君らの父君はここを選んだ。
 なぜなら、この学院に諸君らを預ければ、
 少なくとも戦場で血気にはやり愚かしい蛮勇を
 振るうことは無かろうと思ったからでもあるし、
 ……“敵に勝つ”というよりももっと意義のある
 戦を学べると思ったからでもあろう。
 あるいは、諸君らの父君が、自分たちには身に
 つけられなかったと後悔する技が、それなのだ」
貴族子弟「はい」 びしっ
軍人子弟「はっ」 びしっ

89 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/06(日) 15:57:19.26 ID:Lbanm5QNP
女騎士「ではどうだ? その知恵と誇りは、
 この戦争の知らせに子供のように騒げと言っているのか?」
子弟2人「……」
女騎士「目を見開け、耳を澄ませ、この世界の全てを
 勝つための知恵としろ。本当にこれでよいのかと疑え。
 なぜならば諸君らの肩には、もはや諸君らの命以上の
 多数の命と財産がのしかかっているからだ。
 魔族が悪? そのようなものは、戦にはない。
 勝者と敗者あるのみだ」
子弟2人「……」
女騎士「諸君らが戦に行くのならば、私は止めない。
 止める資格もないだろう。
 だが、諸君らが死ぬのを許すつもりはない。
 諸君らは死ぬにはあまりにも未熟だ。
 もし死ぬにしても、その瞬間まで諸君らは
 何を間違えたのかも判らず、
 きょとんとした表情で死ぬだろう。
 そのようなことを許すつもりはない。
 ……さぁ、教練を始めるぞ。今日は普段の
 3倍は厳しいぞ。覚悟するんだなっ!」

91 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/06(日) 16:06:44.25 ID:Lbanm5QNP
――冬越しの村、村はずれの館
女騎士「なんてねー」
メイド姉「はい?」
女騎士「言っちゃってるんだけどねー」ごろごろ
メイド姉「はぁ……」
女騎士「偉そうに云っても、なんですか。
 わたしも代役教師だから、なんもいう権利ないよねー」
メイド姉「そうですか? 勇者様より遙かに立派に
 努めていらっしゃると思いますよ?」
女騎士「あいつはいい加減すぎるのよ」
メイド姉「ですねぇ」くすっ
女騎士「梨のつぶてもいいところでしょう。
 死んだと思ったら一年ぶりに現れてさ。
 引っ越してきたら修行の旅に出て一年も帰ってこないとか」
メイド姉「……」

97 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/06(日) 16:11:37.25 ID:Lbanm5QNP
女騎士「信頼されてるって思わなきゃやってられない」
メイド姉「でも、そう思ってらっしゃるんでしょう?」
女騎士「それは、まぁねー」
メイド姉「そこが素敵です」
女騎士「……」
 
コトン
メイド姉「はい。甘いですよ?」
女騎士「これは何?」
メイド姉「加鼓亜のお茶ですよ? 元気が出ます」
女騎士「熱っ。でも、甘いわね」
メイド姉「これも当主様の実験植物です」
女騎士「そうなのか?」
メイド姉「ええ。水晶農園が出来てから、
 いろいろ実験がはかどるのだとおっしゃってます。
 これは植樹で持ってきたものですけれどね」
女騎士「あのキラキラした建物でしょ。面白いよね。
 あんな建物で、建物全て暖房するとはねー」
メイド姉「暖かい地方の植物も作れるそうで」

100 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/06(日) 16:16:59.91 ID:Lbanm5QNP
女騎士「でも、あれを立てるために修道会の
 財布は空っぽよ……。
 ああ、とんでもないことになってるなぁ」
メイド姉「そうですか?」
女騎士「とんでもないよ。大ピンチだよ」
メイド姉「でも、嬉しそうなお顔ですよ?」
女騎士「……そんなことはない」むっ
メイド姉「なら良いですけど」にこっ
女騎士「最近、メイド長に似てきたぞ?」
メイド姉「そうですか?」
女騎士「うん、似てきた」
メイド姉「そんなことないですよ。まだまだです」
女騎士「そうかな、仕草とかそっくりだよ」
メイド姉「何がなにやら、判らないですよ。
 文字も読めるようになったし、数学も覚えました。
 出来ることは沢山増えました。でも、わたし」
女騎士「?」
メイド姉「人間になれたんでしょうか……」

108 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/06(日) 16:26:08.72 ID:Lbanm5QNP
――魔界、開門都市、くすんだ酒場
勇者「へぷしっ!」
酒場の主人「なんだい、兄ちゃん。
 汚ねー汁まきちらさないでくれよ」
勇者「はん。こきやぁがれ。
 掃除もしてねぇような小汚い酒場じゃねぇか」
酒場の主人「ははは! 違いねぇ」
  
聖鍵遠征軍兵士「ぎゃはははは!!」
  聖鍵遠征軍兵士「酒を持ってこい、この魔族!」
  聖鍵遠征軍兵士「早くしろ、殺すぞ、この女っ!」
  聖鍵遠征軍兵士「こんな肉が食えるかっ」
勇者「……」
酒場の主人「ああ、まったく大暴れだな、商売あがったりだ」
勇者「そうか? ……マスターだって人間だろう?」
酒場の主人「まぁ、そりゃそうだがよ」
勇者「ふむ」
酒場の主人「酒が飲みたきゃ、
 酒を買って外で飲めば良いんだ。
 酒場ってのは食い物や雰囲気も含めて売り物だからよ。
 あんな騒ぎは、ありがたかぁねぇな」

111 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/06(日) 16:31:51.18 ID:Lbanm5QNP
  
聖鍵遠征軍兵士「早くしろっての!」
  魔族娘「きゃっ!!」
  聖鍵遠征軍兵士「裸踊りでも見せてくれるのか?」
勇者「……」
酒場の主人「ち、しかたねぇなぁ」
  
酒場の主人「お客さん。そういう事がしたいなら
   一本裏手の宿屋に行ってくれないですかね?」
  
聖鍵遠征軍兵士「何だと、親父」
  聖鍵遠征軍兵士「誰のお陰でここの防衛や暮らしが
   成り立っていると思っているんだ!?」
勇者「おい」
魔族娘「は、はいっ。す、すみません。
 ぶ、ぶたないでくださいっ」
勇者「そんなことはしないよ」
  
酒場の主人「いえ、めっそうもない。心得ております。
   いつもいつも、緑のお天道様とおなじくらい
   感謝しておりますよ」

114 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/06(日) 16:37:37.87 ID:Lbanm5QNP
勇者「いつもあんな感じか?」
魔族娘「は、はい……」
勇者「この街は、まだ相当な数の魔族が残っているのか?」
魔族娘「……そ、そのぅ」
勇者(そりゃ、警戒もされるか……)
勇者「これを見ろ」 すっ
魔族娘「それは、魔王様の紋章。黒の手甲っ」
勇者「どうなんだ? この街の状況は」
魔族娘「それは、はい……魔、魔王様」
勇者「黒騎士と呼んでくれ」
酒場の主人「あー、やれやれ。商売あがったりだ」
勇者「なんとかなったのか?」
酒場の主人「ああ。済まないね、大騒ぎで。おや」
魔族娘 びくっ

115 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/06(日) 16:44:18.07 ID:Lbanm5QNP
酒場の主人「あんたがこの娘をかばってくれたのかい」
勇者「ちょっと話をしていただけさ」
酒場の主人「ふふん」
魔族娘 びくびくっ
勇者「……」
酒場の主人「まぁ、いいさ。
 その娘もこんなに怯えちゃ仕事にならないだろう。
 おい! 奥で皿洗いでもしているんだな」
勇者「マスターは器量があるな」
酒場の主人「魔族だろうが何だろうが、
 同じメシを食ってりゃ使うべき使用人だ。
 勝手に壊されちゃたまらんね。
 虐めていいことなんか、一つもないよ」
勇者「……」
魔族娘「それじゃ、あの……」
勇者「おい、マスター。この娘、借りても良いか?」
酒場の主人「ほう?」
勇者「酒手ははずむよ。これでどうだ」 とさっ
酒場の主人「ふむ……」

119 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/06(日) 16:49:34.37 ID:Lbanm5QNP
魔族娘 びくっ
酒場の主人「この娘も気に入ってるみたいだね。
 あーかまわないよ。どうせ仕事にもならないし、
 外に出せばさっきの連中に嫌がらせをされるだろうさ。
 無理はさせちゃ困るがね」
勇者「ああ、ちょっと話を聞きたいだけさ」
酒場の主人「ははぁん、話ね。まぁ、いいさ。
 この娘の部屋は、裏手の安宿から月極でかりてるんだ。
 “お話”ならそっちへいってくんな」
勇者「ああ、好都合だ」
酒場の主人「お客さんの今晩の宿はどうする?」
勇者「部屋か? そのままとって置いてくれ」
酒場の主人「ああ。判った。夕食の時間になったら
 適当に切り上げてくれよ。
 持っていくなんてごめんだぜ」
勇者「は? ああ。腹が減ったらちゃんと来るよ」
酒場の主人「あはははは。
 まぁ、若いうちはメシよりあっちだわなっ! あははは」

122 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/06(日) 16:54:18.95 ID:Lbanm5QNP
――魔界、開門都市、下級娼館
ぱたん
勇者「さて、と」
魔族娘 びくぅっ
勇者「あー。なんだ、そうびくびくしないで」
魔族娘「す、すいませんぅ〜。ひ、ひどいことはっ」
勇者「しない、しない」
魔族娘「……え、うぅ」
勇者「部屋の対角線に移動されるとさすがにへこむな」
魔族娘「す、すいませんっ。その」 おどおどっ
勇者「あ、いやいいよ。酒飲む?」
魔族娘「いえ……その、飲めなく……いえ、
 その、飲み……ま……す……」
勇者「死にそうな顔で云わないでよ。飲まなくていいよ」
魔族娘「は、はい……」
勇者「んじゃ、お茶でももらってくれば良かったな」
魔族娘「あ、あります……」

124 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/06(日) 17:09:09.93 ID:Lbanm5QNP
勇者「えーっと、あらかじめ云っておきますが」
魔族娘「はい」
勇者「痛いことはしませんから安心して」
魔族娘「えっ、そのっ。……う、うぅぅ」
勇者「なぜ泣く」
魔族娘「わ、わた、わた」
勇者「落ち着け」
魔族娘「わたし、その……へ、っ下手で……」
勇者「意味判らん」
魔族娘「じょ、上手……で、できなくて
 ご、ご、ご。ごめんなさい、ごめんなさい」
勇者「??」
魔族娘「痛がって……ばかり……で……よくな、
 良くなくて……ご、ごめんなさ……」
勇者「んー? ……あ! ああっ!!」

134 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/06(日) 17:14:20.41 ID:Lbanm5QNP
――魔界、開門都市、下級娼館
勇者「わたくし大変失礼いたしまして
 落ち着いていただけましたでしょうか?」
魔族娘「は、はいぃ……」
勇者「いやほんと。俺のピンチメーターは
 火竜王のときの約30倍を記録した」
魔族娘「ごっ、ごめんなさいっ」
勇者「話進まないからごめんなさいは止めよう」
魔族娘「ご、ごめんなさいっ」
勇者「……」
魔族娘「……はぅ」
勇者「で、まぁ、簡単にまとめると……。
 この都市を仕切っているのは、聖鍵遠征軍、駐留部隊だと。
 やつらは市街地中央の宿舎から、この街すべてを
 管理……というか、まぁ、乱暴狼藉していると」
魔族娘「はい……」
勇者「どのくらいの数なんだ?」
魔族娘「……沢山。……ご、ごめんなさいっ」

137 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします :2009/09/06(日) 17:25:00.34 ID:Lbanm5QNP
勇者「街の外の部隊は?」
魔族娘「……外、ですか?」
勇者「周辺の警戒とか、防備とか」
魔族娘「沢山です。……四つ、軍団があります」
勇者「ふむ」
魔族娘「交代で街に帰ってきます。街に帰ってくると
 暴れて、怖くて……ひどいこと、沢山します」
勇者(ふむ……つまり、街の外部。
 おそらく来る途中に見た四方の砦だな。
 そこに魔族の奪還軍を防ぐ軍勢を駐留させて
 中央のこの開門都市には治安維持軍を置いてるんだな。
 まぁ、当然の配置か。
 この都市だけにそこまでの人数は駐留させられないしな。
 メインの戦力は当然外側か。
 街に残った魔族はほぼ奴隷状態らしいから、
 警察力程度の戦力で足りるんだろうな。
 ――その治安維持軍の軍規は堕落しきってるみたいだけど。
 砦の戦力が一つ当たり2000、
 都市内部の治安維持部隊で1000ってところ。
 そのほかに、交代要員や休暇中の兵士1000が都市内部に
 いるって云う程度かな)