Part109
259 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/13(金) 03:44:57.51 ID:rH.ZqWkP
義勇軍弓兵「まずは我らだな」
土木師弟「うん。防壁内側の射手通路に部隊を配置。
引きながら攪乱射撃! 高低差を利用して頭上から射かけるんだ」
義勇軍弓兵「了解っ!」
人間作業員「投石準備できましたっ」
蒼魔族作業員「こちらも完了だぞっ」
キィン! ガキィン!!
土木師弟「いいか、これは甘さでも慈悲でもないっ。
敵の命は残すんだっ!
このような局地戦では、戦闘不能で十分。その方がいい。
敵の方が兵力は大きいっ。重傷を負わせて、敵に後方輸送と
治療を強制させろっ。特に貴族や騎士とかいう人間の
お偉いさんを怪我させれば、おつきの人間や護衛の人間を含めて
五倍の人数が戦場から撤退してくれるっ」
巨人作業員「わがっだ」
義勇軍弓兵「弓兵隊、整列よしっ!!」
人間作業員「投石機、準備よしっ」
蒼魔族作業員「焼けた石も混ぜたぞっ」
土木師弟「狙いは大通りっ。最前列の貴族集団っ!
待てっ。いま、砦将の軍が引き上げる。まだだっ!
まだっ! 俺たちの作った防壁を信頼しろ。
この塔は容易く敵に落ちたりはしないっ。
落ちるかっ。あいつを迎えるまで、俺の作った橋も
俺の作った防壁も、落ちてたまるかっ!
――今だっ! いけぇ!!」
ヒュバッ! ヒュバッ! ヒュバッ! ヒュバッ!
ヒュバッ! ヒュバッ! ヒュバッ! ヒュバッ!
光の銃兵「なっ!? ど、どこから。うわぁ! くるなぁ」
ドキュン、ドギューン!!
光の槍兵「撃つなっ! むやみに撃てば同士討ちになるっ」
光の剣兵「どこだっ。塔!? 防壁の塔だっ!!」
光の突撃兵「魔族めぇ!!」
土木師弟「第二攻撃準備っ! 前線工作班に伝達!
小鳥通り、および砂塵通りをバリケードで封鎖、家を引き倒せ!」
巨人作業員「おおっ!」
265 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/13(金) 04:21:53.62 ID:rH.ZqWkP
――開門都市、近郊、遠征軍本陣から南部連合軍
突き進め! 突き進め!
我ら光の子! 異端を貫く輝く槍!
光の銃兵「精霊は求めたもう! 精霊は求めたもう!」
光の槍兵「うわぁぁぁ!! く、くるなぁ!!」
ドギュゥゥン! ドギュァァーン!
光の銃兵「てっ、敵だ!」
光の槍兵「南部の裏切り者だっ! 突き進めっ!
異端の臆病者なんてマスケットの敵じゃないっ」
光の銃兵「そ、そうだな。大主教が守ってくれるさ。
そうさ、そうじゃないと俺たちはっ。くっ。
なんでこんな異郷の果てで……。う、うわぁぁ!!」
光の槍兵「来るなぁ! 来るんじゃねぇっ!!」
ドォォン! うわあああああ!!
王弟元帥「戯けがっ! なんという混乱だっ!!」
参謀軍師「閣下っ」
王弟元帥「何をしたというのだっ! あの男はっ!?」
参謀軍師「『聖戦』の宣告をっ!
そして本陣に存在する民兵全てを2つに分割し、
それぞれ都市とこちらの前線に全力投入を宣告しましたっ」
聖王国将官「馬鹿なっ」
王弟元帥「〜っ!」
参謀軍師「このままでは、あの軍は暴徒の群と変わりません。
突破力はありますが、その勢いが途切れるところを
狙われれば容易く崩壊してしまうに違いありませんっ」
王弟元帥「その通りだ。南部連合の将は、我らのそのような
失態をけして見過ごさぬであろう。このままではっ」
聖王国将官「至急掌握を! 王弟閣下!」
266 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/13(金) 04:23:20.94 ID:rH.ZqWkP
王弟元帥「無論だっ! 行くぞ。騎馬部隊800近衛として
我に続けっ! 先行する暴徒二万の先端を横合いから浚うっ」
聖王国将官「はっ!!」
王弟元帥「参謀っ! 後衛の取りまとめをっ」
参謀軍師「はっ!」
王弟元帥(っ! 後手に回ったと云うのか。大主教っ。
この罪は高くつくぞ。この異教の果てにてその慢心、
高慢、傲岸不遜っ。中央諸国家のみならず自らの版図、
聖光教会の歴史をも終わらせるおつもりかっ!?
やはり。戦場において2つの頭を持つ竜は生き残ることが出来ぬ。
――斬る。
それ以外、我らが地上に帰り着くすべはないっ)
ドォォン! うわあああああ!!
光の銃兵「撃てっ! 撃てぇ!!」
光の槍兵「逃げるな! 南部軍!! お前達が来たから!
お前達が裏切ったから、俺たちはこんなにも腹を減らしてっ!
お前達が食料を独り占めしたから、
俺たちはこんな故郷を離れた場所でっ!」
ドギュゥゥン! ドギュァァーン!
聖王国将官「射程距離外でマスケットを撃っているようですっ」
ダカダッダカダッダカダッ
王弟元帥「戦場の熱気に耐えられぬ民兵だ。仕方あるまいっ」
聖王国将官「打ち方止めっ! 聞こえんのかっ!
我らは王弟閣下の近衛なるぞっ! 従えっ! 従えっ」
うわぁぁぁあ!! くれ! いや、よこせっ!!
俺のだっ!! 俺のものだぁっ!!
王弟元帥「何が起きているのだっ!?」
267 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/13(金) 04:24:42.79 ID:rH.ZqWkP
よこせ! それは俺のっ!
こっ、こっちの馬車もだっ!
――干しぶどうだ! 干しぶどうが入っているっ。
こっちの馬車には、水とエールもあるぞっ!?
斥候兵「報告しますっ! 敵は撤退開始っ!
速やかに前線を後退させてゆきます、それにっ」
聖王国将官「何が起きているっ! 報告を」
斥候兵「て、敵が残していった数十台以上の馬車にっ
パ、パンや食料がっ!!」
聖王国将官「っ!? 毒か? 食べさせるのを止めさせよっ」
斥候兵「無理ですっ! 民兵の殆どは満足に食事も取れないような
待機状態で長い包囲網を続けていました。
体力も緊張も限界だったんですっ。
前線はパンの奪い合いと、詰め込みあいで完全に膠着っ。
この混乱を収拾するのは不可能ですっ」
聖王国将官「なんていう……」
王弟元帥「……」
聖王国将官「どんな思惑があるというのだっ! 南部連合はっ」
ガサリ
王弟元帥「――」
斥候兵「そ、それがパンと一緒に大量に積まれていた
木版刷りらしきものでして……」
王弟元帥「……三食の保証。そして天然痘の予防。
ここまできて。この魔界までやってきてっ!
――開拓民の募集、だと!? 冬寂王っ!!」
268 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/13(金) 04:26:45.67 ID:rH.ZqWkP
王弟元帥「お前は、この戦場までやってきて
我らと矛を交えるつもりはないとでも云うのかっ!
なぜ自らを否定するっ!
王族に生まれ、民を支配する金の冠をその額に頂いて
統治者として君臨してきた貴様が
なぜ得体の知れぬ学者の娘のようなことを言い出すのだっ。
答えろっ! なぜ自らの未来を塗りつぶすようなことをするっ。
全ての秩序を否定して、無為を行なおうとするっ!
見ろ、この民衆をっ!
パンを与えれば泥の中でむさぼり喰らうっ。
このように自分本位な者たちに何らかの権利や自由を与えて
国が治まるとでも考えているのかっ!!
答えろっ! 冬寂王っ。
貴様はっ!
“貴様ら”はっ!!
この戦場に何を見ているのだっ!!」
聖王国将官「王弟閣下……」
斥候兵「南部連合軍、すくなくとも半里後退しましたっ」
王弟元帥「〜っ!」
聖王国将官「毒が含まれているわけでもなければ、
これは戦術的には無意味な行為です。
たかだか数時間の足止めが為されるだけに過ぎませんっ。
我らは何も失ってはいないっ!
落ち着いてください、王弟閣下」
王弟元帥「判っている」ぎりっ
聖王国将官「では、この隙に突出したマスケット部隊を
収拾して、戦線を再構築。
少なくなりましたがブラックパウダーを再配――」
斥候兵「あれはっ!?」
王弟元帥「あれは、なんだっ」
269 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/13(金) 04:27:50.57 ID:rH.ZqWkP
――開門都市近郊、混戦状態の南市街廃墟
うわぁぁぁあ!!
ドゴォォン! ドギュゥゥン!! ゴァァン!
キィン! ギキィン!
石が! 燃える石がっ!
進め! 進めぇ! 精霊は求めたもうっ!
精霊は求めたもうっ! 殺せ! 魔族を殺せ!
異端を殺せ! 背教者を殺せ! 殺さなければ、剣を持たない者は
全て異端だ! 魔族と通じた裏切り者だっ!!
光の少年兵「……っく。うっ」
ずるっ……ずるっ……
光の少年兵「いやだ。もういやだ……」
光の少年兵「帰りたい」
光の少年兵「……殺すのはいやだ」
光の少年兵「……殺されるのはもっといやだ」
光の少年兵「痛い、苦しい、飢える、焼ける……」
ずるっ……ずるっ……
光の少年兵「……判らない。判らない」
光の少年兵「ううっ。戦いは、まだ……」
どぉんっ! ドォォーン!
光の少年兵「……」
光の少年兵「ううっ。うぅ」
284 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/13(金) 19:08:20.16 ID:rH.ZqWkP
光の少年兵「行った、かな」
光の少年兵(ここに隠れてれば……)
ガチャン!!
光の少年兵「っ!?」
光の少年兵「……? 荷物が落ちただけか。なんだろう。
魔族の荷物かな。魔族の家だろうし」
光の少年兵(考えてみれば、僕は魔族の姿なんていっかいも
ちゃんと見たこともないのに。なんでこんな世界の果てまで)
光の少年兵「……」
がさっ、がさっ
光の少年兵「服か」
光の少年兵「魔族も、似たようなの着るんだな。
でかいな。これは、商人用なのかな……あ」
ぽろっ
光の少年兵「……これ」
光の少年兵(小さな、手袋。僕よりも半分くらいの。
……子供の。ううん、赤ちゃんの。魔族の、赤ちゃんの)
光の少年兵「……うぅ。なんだよ。何だって云うんだよぅ。
こんなにちっちゃくて。魔族ってなんなんだよっ。
なんでこんな風になっちゃってるんだよぅ。うううっ」
ゴォン! ゴゴゴゴゴ!! ゴゴゴゴゴゴゴゴ!!
光の少年兵「っ!? 今度は何がっ!?」
286 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/13(金) 19:12:59.52 ID:rH.ZqWkP
――開門都市近郊、全ての人々
なっ!? なんだ、あれはっ!?
塔!? なんであんなものが。
判らない、突然。
突然現われたぞ!
光って、白くて、どれほど高いんだ。
まるで糸のように天空に伸びているじゃないか……。
光の塔だ……。
天に続く塔。
光の……精霊の、塔?
精霊の塔だっ!!
あれは、精霊の宝の眠る塔だっ!!
精霊が我らを迎えてくれている吉兆だっ!
いや、戦をいさめる凶兆だっ!
果てが見えない、なんて……。
なんて高い塔なんだ……。
いったい何が起こっていると云うんだっ!?
289 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/13(金) 19:18:03.68 ID:rH.ZqWkP
――光の塔、おそらく下層
コオォォン……
勇者「ここが『天塔』なのか……」
魔王「まぶしくて、真っ白で眼がきついな」
女騎士「魔力感知が追いつかない。全体が高レベルの
魔法具のような……。いや、それ以上の反応だ」
勇者「そのうち馴れるとは思うけど。大理石じゃないな、これは」
魔王「うん、部屋も通路もないようだ。
ただひたすらに、巨大な螺旋階段と巨大な踊り場が
遙か上まで伸びている……」
女騎士「本当に、ただの通路なんだな」
勇者「ま、この状況下だ。かえって有り難いさ」
魔王「そうだな」
女騎士 こくり
……コオォォン
魔王「行こう」
勇者「ああ」
コオォォン……
女騎士「どれほどの高さがあるのかな」
勇者「ちょっと判らないな」
女騎士「魔王も判らない?」
魔王「不明だ。話によれば1500里。途轍もない距離だ」
女騎士「そうか。――その、勇者は」
勇者「?」
290 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/13(金) 19:19:21.44 ID:rH.ZqWkP
女騎士「身体は……。どうなんだ?」
勇者「ああ。なんか、さっぱりだ。
いつもの半分の半分もも力が出やしない。
どうもなんか特殊な呪詛でも喰らったような感じだ。
たいがいの呪いは無効化できるんだけどなぁ」
魔王「そうか」
勇者「それさえなきゃ“飛行呪”で
塔の内側を一気に飛んで登れるたと思うんだけどな」
魔王「それはどうかな」
魔王「さっきから定期的に紋様が刻まれている。
反呪とか引力制御とかだ。この塔の内側で飛行は
出来ないと思う」
女騎士「ふぅん」
勇者「それならハンデ無しだ」
女騎士「ま。荷物持ちはわたしがやる。ちょうど良かった」
勇者「悪いな」
女騎士「なんだ。二人とも、わたしを置いて行く
つもりだったんだな」
魔王「あー」
女騎士「抜け駆けだ」
魔王「今回はそう言う話ではないではないか」
女騎士「置き去りか。……魔王には友情を感じていたのに」
魔王「それはわたしだって人間の親友だとは思っているけれど
今回ばっかりは事情が事情というかだな」
女騎士「二人で内緒で、で、出かけるなんてな」
291 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/13(金) 19:20:50.85 ID:rH.ZqWkP
勇者「……さくさく登ろう。行くよ? 行きますよ?」
魔王「良いではないかっ。結局は同行できたのだし!」
女騎士「ぷになのに」じー
魔王「……むっ」
女騎士「〜♪」
勇者「あー。なんだね。そういえば」
魔王「どうした?」
勇者「さっき、女騎士は随分おとなしくなかったか?
魔法使いのところで、だけどさ」
女騎士「そんなことはない」
魔王「そういえば、魔法使いと何を話してたんだ?」
女騎士「え、いや」
勇者「ん?」
女騎士「新作小説について?」
勇者「そうなのか!?」
魔王「そうかっ。やはりご機嫌殺人事件シリーズは
不朽の名作だなっ。あのカオスな展開と切ない
ラブストーリーがたまらなぁい。
“ガッシ!ボカ!”を遙かに超えた表現だ」
女騎士「……うう。ちょっと後悔してる」
勇者「少しどころじゃない表情だ」
292 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/13(金) 19:22:21.90 ID:rH.ZqWkP
魔王「ふむ」
女騎士「まぁ、わたしがついてきて便利だろう?
いまでは勇者の力も落ちている。
わたしの“瞬動祈祷”なら2人にもかけられるし、
勇者の力を無駄にしないで済む。先行きは長いわけだし」
勇者「それはそうだけど」
女騎士「荷物持ちにも便利だ。わたしは元気だからな」
魔王「……」
女騎士「魔王」
魔王「え? ああ」
女騎士「そう言うことにして置いて」
魔王「うむ」
勇者「……?」
魔王「今は、上に待ち受けているものが先決だ。
急いで登るに越したことはないはずだ」
勇者「上には、精霊がいて、直談判だろう。
そんなに急ぐべきなのか?」
女騎士「急ごう」
魔王「そうだな。地上では戦争が起きているんだ。
私たちがのんびりしているわけにも行かない」
293 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/13(金) 19:23:45.28 ID:rH.ZqWkP
コオォォン……
勇者「……」
魔王「……」
……コオォォン
魔王「これで良かったのかな」
女騎士「?」
勇者「良かったんだろ」
魔王「……」
勇者「正直に言えば、良かったか、悪かったのかは判らない。
けど、判らないって事は、判る」
女騎士「戦場を、離れたこと……?」
魔王「そうだ」
勇者「昔、爺さんが言ってた。
良かったか悪かったか判らないなら、
その二つは判らないという意味では一緒なんだ。
点数がつかないという意味では、まったく一緒。
だから“良かった”事にしておいても、問題なし」
魔王「随分強引な思考方法だな」
女騎士「勇者らしくてほろりと来そうだ」
勇者「それに、メイド姉が言ってたよ」
魔王「メイド姉? そう言えば、さっきも言っていたな。
近くに来て、勇者になる。なっている、と」
――それでも飛び立ってゆく鳥を留めることが出来ないように
わたし達には翼がついている。
本当は誰だって知っているはずなんです。
チャンスがあるのならば、賭けてみたい。
わたしはやはり、そこまでお互いに馬鹿だとは
思いたくないんです。わたし達は自由なのですから。
294 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/13(金) 19:25:59.24 ID:rH.ZqWkP
勇者「ああ」
女騎士「どうやら、わたしの知らないことが
沢山おきているみたいだ」
勇者「それは仕方ないさ。俺だってびっくりしたし……。
女騎士がこっちに来ているのだって知らなかった」
魔王「そうだ。勇者だって何をしてたのやら」
女騎士「ともかく。メイド姉が近くにいて。
えーっと勇者?
それは冗談ではなくて、その、なんなんだ?」
勇者「うん。正直舐めてた。あいつは、すげぇや」
魔王「そうか? うん、そうだろうな。
あの娘は、逸材だ。古典的自由主義をドライブして
人権思想や憲法の規定にまで思想が及んでいるからな」
女騎士「それは……すごいことなのか?」
勇者「憲法ってなんだ? 法律じゃないのか?」
魔王「憲法って言うのは、法律の親玉なんだ。
原型というか、理念と言ってもいい。
いわば“法律を作る時の基本的な考えを示すもの”だ。
もちろん国によって語句は変わるから
これは概念論に過ぎないけれどね」
女騎士「難しいな」
魔王「つまり、この世界、国家や氏族によって方は様々だ。
それはよいとしても、そもそも王や族長が変わった時点で、
いろんな決まり事や方はひっくり返ってしまうだろう?
国の基本的考え方や性格は、その行動を見て判断する
しかないわけだ。
憲法というのは、様々な法律の下になるガイドラインだ。
この法律には次の支配者を決めるものも含まれる。
つまり“その国の基本的な性格”を表現していて
それを見ただけで、その国がどのような考えに
基づいているか判る。それが憲法だ」
295 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/11/13(金) 19:29:23.53 ID:rH.ZqWkP
女騎士「それは、すごいことなのか?」
勇者「うん、すごそうだけど、やっぱりぴんと来ないな」
魔王「王が変わっても、途切れないと言うことだよ。
おそらく冬の国は十年以内に憲法の制定にたどり着くだろうが
もし制定されれば、王が変わろうと冬の国は、百年の間ずっと
農奴を持たない自由と平等の国へなる。なろうとし続ける。
これは、宣誓書であると同時に、計画書なんだ」
女騎士「そう聞くとすごいな」
勇者「王弟にまで啖呵きってたからな」
魔王「ほう!」
女騎士「聖王国の!?」
勇者「ああ。“次はわたしが相手にしてやるから
覚悟して金玉小さくしていやがれ、んだとコラ!?”って」
魔王「いや、それは云わないだろう」
女騎士 こくこく
勇者「それは冗談としてメイド姉は
“わたし達には翼がついている”って云ってたよ。
だから、俺たちが。
閉じ込めてはいけないと思った」
女騎士「……そうか」
魔王「そうだな……」
勇者「俺も魔王も女騎士も、魔法使いや爺さんもさ。
あんまり過保護にしてると、メイド姉みたいな
頑張ってる人をゆがめちゃうんだってさ。女騎士」
女騎士「うん。わたしも、それは魔法使いから聞いた」