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魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」
Part108


192 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/10(火) 07:32:24.26 ID:4RteqQsP
女魔法使い「理解しないと負ける」
女騎士「判った」
明星雲雀「判ったのかねぇ。ピィピィ」
女騎士「勇者と魔王は、精霊を目指す決定力。
 であると共に、怪物を戦場から引きはがす、囮」
女魔法使い「……正確には囮じゃない。
 『天塔』が起動する。
 それは、一見、勇者か魔王の死を示す。
 怪物はそれを見逃さない。全てを手に入れるために
 『天塔』へと向かい、結果的にそれは先行する
 女騎士達を追いかけることになる」
女騎士「話は簡単だ。それに望む所でもある。
 護衛だなんて騎士の誉れだ」
女魔法使い「……」
女騎士「ほんとだぞ?」
女魔法使い「足止め、捨て駒。許されない」
女騎士「魔法使いがそれを云うのか」
女魔法使い「わたしは特別。わたしは世界で一番想ってる」
女騎士「わたしだって特別だ。魔王だってな。
 思い上がってちゃだめだ。世界で一番、なんて。
 そんなもの、世界で一番ありふれているんだから」

232 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/12(木) 21:09:16.59 ID:uEzyLrsP
――開門都市、南門周辺、市街戦
獣人軍人「下がれ! 押し寄せてくるぞ!!」
土木師弟「10番から20番まで、扉閉鎖っ! タールを流せ!」
巨人作業員「オオオっ!」
義勇軍弓兵「討て! 討てっ!!」
ひゅんひゅんひゅん!! ひゅんひゅんひゅん!!
人間作業員「土嚢だ。石も持ってきた!」
蒼魔族作業員「そこにおいてくれ。俺たちが積み上げる」
人間作業員「そこは矢が飛んでくるぞっ!」
蒼魔族作業員「だから俺たちがやるんだっ」
東の砦長「おい、おい。落ち着けぇ!
 まだ始まったばっかりだ。それに相手は貴族配下の
 欲の皮の突っ張った騎士どもに腰の引けた従者どもだぞ。
 こんなものはまだまだ手始めだ。気負うな!」
獣人軍人「退却する城壁、防壁、路地を確認っ」
土木師弟「……良く引き寄せてくれ」
巨人作業員「……家を……略奪しながら」
義勇軍弓兵「ふざけるな! 遠征軍どもめっ。
 人間はお前達のような恥知らずばかりじゃないっ」
ゴォォン!!
人間作業員「!! カノーネ!? お構いなしなのかっ」

235 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/12(木) 21:12:55.49 ID:uEzyLrsP
東の砦長「よぉく聞け! 衛門の一族よ! 魔族の強者よ!
 南区全域はこれより市街戦の戦場とするっ。
 すでに住民の避難も終わり、魔王の許可も出ている。
 本陣は無名神殿に奥だが、いずれは無明神殿まで譲り渡す。
 いや、無名神殿の方まで貴族軍を招き寄せて捕獲するぞ!
 いいか、街はここで大きな被害を受けるだろう!
 だが、街は街だ。
 人じゃない。
 戦が終われば再建できる。
 眼前の一戦にこそ、家族、同胞、氏族、そして魔界の
 興亡がかかっていると心得よっ!
 憎しみで戦うなっ。恐怖も怒りも視界を濁らせて自分の
 身を危うくするぞ! 無理はするなっ!
 この区域は俺たちが暮らしてきた街だっ。
 一から復興して、一つ一つ煉瓦を積み上げてきた都市だっ。
 この都市は俺たちの味方で、決して裏切ったりはしない。
 欲に駆られたヤツらは略奪や放火をしながら進んでくる。
 少しずつ、ヤツらを小さな部隊にほぐして、取り囲め!
 無理なら殺して問題はないが、もし可能なら生け捕りにしろ。
 戦闘力を奪うには、両手をへし折れば足りるっ。
 我らの街に勇んで入ってきたヤツらは、地上の王族や貴族だ。
 戦後身代金をたんまり払わせてやるぞっ!」
「「「おおっ!」」」
東の砦長「土木師弟さんよぉ、人足を指揮して、
 防壁の指揮を頼む。相手の上に矢を降らせて
 いらいらさせてくれ。ヤツらの経路誘導は全て任せたっ。
 獣人軍人っ。あんたは後詰めだっ。
 だからといって暇じゃないぞ。けが人の手当やさらに
 後ろへと運ぶ準備、それから捕虜の管理、全てやってもらう。
 後退軍の準備も進めてくれっ。
 俺は大通りに出て、ヤツらの主力を一回叩く。
 さっと下がるからな! 街の中央部へは行かせるな!
 あくまで無名神殿方面へと侵攻させ、被害を制御しろっ!」
ゴォォン!
東の砦長「この街は魔王そのものだっ。
 俺たちは魔王に恩義があるっ。
 そしてその魔王を守るために散っていった友との約定もある。
 この地を守ることは、俺たちがこの地の正統な住人だと
 名乗る上で欠くことの出来ぬ条件だ。
 ――故郷だからこそ守る、と人は言う。
 だがしかし、俺は新興の木っ端族長として言わせてもらうぜ。
 “守るために力を尽くしてこそ故郷と呼べるのだ”となっ。
 さぁ、だれ恥じることのない故郷を得るために、
 この都市を本当の意味で我らの故郷とするために
 俺たち力の最善をつくせっ!! 自分自身の未来の為にっ!」

236 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/12(木) 21:14:16.34 ID:uEzyLrsP
――開門都市南側、南部連合軍前線
ズギュゥウウン! ズギュゥゥン!
軍人子弟「600歩後退っ!」
鉄国少尉「600歩後退っ! 急げっ!」
将官「左翼騎馬部隊、準備完了っ」
軍人子弟「接近、騎射終了後即座に反転して離脱っ。
 行くでござるよっ!」
将官「了解っ!」
冬寂王「どうだ」
軍人子弟「小刻みに出入りを繰り返しながら
 敵軍を挑発中でござる。
 最初の斉射の後は、遠征軍の前線の指揮官も
 軍勢の内側に身を隠したようで
 なかなか隙を見せないでござるね」
「おぉぉぉぉ!!」 「光のために!」 「精霊は求めたもう!」
ギィン、キィン!!
鉄国少尉「騎射完了ッ!」
軍人子弟「300歩前進っ! 射撃準備っ」
冬寂王(細かいな。これほど緻密な運用をするのか)
軍人子弟「どうしたでござろう? 冬寂王」
冬寂王「いや、感心していただけさ」
軍人子弟「?」

237 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/12(木) 21:17:07.58 ID:uEzyLrsP
鉄国少尉「確かに驚異的な粘りですね」
冬寂王「む?」
軍人子弟「さすが王弟元帥という話でござる。
 歴史に残る采配でござるよ。
 これだけ指揮系統を炙って、少なからぬ混乱を
 起こしているにもかかわらず、前線が破綻しないでござる。
 それどころか、けが人を抗争して、素早い再構築を繰り返し
 前線密度が低下しないでござるよ。
 こちらの突撃はマスケットで押さえながらも、
 向こうのもくろみも進行させているでござる」
冬寂王「もくろみ、とは?」
軍人子弟「遠征軍は、開門都市南門で戦場を一つ、
 そしてここで我ら南部連合との間に戦場を一つ
 抱えているのでござる。
 二つの戦場の間には貴族や王族、教会の天幕やら
 糧食を集積した大規模な街にも匹敵する陣地を
 築いている……。
 この三つは、互いに距離もあり連携することは困難でござる。
 王弟元帥1人で目が届くのは我らとの前線くらいのもの。
 そしてその前線戦力では我らと互角。
 王弟元帥はこちらの誘いに乗らずに徐々に軍を斜行させ
 本陣、および南門前線方向へと戦場をずらしているでござる。
 おそらく前線と本陣の距離を圧縮して、数的有利を得る
 戦術でござろうね」
鉄国少尉「ま、こちらも織り込み済みですがね」
冬寂王「そうみえるな」
軍人子弟「しかし、それをここまで被害を押さえて
 行なうとは非凡でござる。良くする所ではござらぬ。
 敵でさえなければ教えを請いたいほどでござる」

238 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/12(木) 21:19:29.00 ID:uEzyLrsP
冬寂王「崩すのはやはり難しいか?」
軍人子弟「膠着はするでござるね。
 王弟元帥はこのまま戦場を圧縮し、
 おそらく本陣へも我らの銃声が響くような距離設定に
 することにより危機感を煽り、一気に本陣の予備兵力を掌握。
 その圧力にて、我ら南部連合を殲滅する計画でござろう」
鉄国少尉「……」
「大地のためにっ!」「我ら南部の旗の下にっ!」
ズギュゥウウン! ズギュゥゥン!
冬寂王「そのようだな」
軍人子弟「王弟元帥の器量がどれほどか」
冬寂王「そこは賭けにならざるをえんな」
鉄国少尉「は?」
冬寂王「器量が低ければ、軍の掌握を仕切れぬだろう」
 そして器量が充分に高ければ戦わずとも済む。
 ……高いことを期待したいが」
ゴォォン! ズゴォォン!!
冬寂王「カノーネか」
鉄国少尉「我ら主力軍、防壁まで後1里半に接近っ」
冬寂王「そろそろだな」
軍人子弟「本当に良いのでござるね?」
冬寂王「平和のためだ。惜しくはないさ」
軍人子弟「承ったでござる。輜重部隊、護衛部隊。準備を」
鉄国少尉「了解っ!」

239 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/12(木) 21:20:41.76 ID:uEzyLrsP
冬寂王「前線の構築と傭兵は鉄の国および貴君に一任する。
 我には南部連合のとりまとめとして、別の戦があるのだ。
 出立前から描いていたとおり、やらせてもらおう」
鉄腕王「良かろう。会議でも合意されたことだ」
鉄国少尉「輜重部隊に簡易装甲の準備良しっ。
 火竜大公よりの補給品、全て積み終わりましたっ」
羽妖精侍女「伝ワッテ欲シイデス」
冬寂王「力尽くでも判らせるほか、あるまいよ」
鉄腕王「こっちも準備よしっ!」
軍人子弟「狙撃部隊っ、突出してきた兵の鼻先を叩け。
 なるべく深く突っ込み、荷物を置き去りにするぞ!
 回収させるでござるっ!」
鉄国少尉「一番隊、二番隊、三番隊出発!!
 護衛歩兵部隊、長槍部隊進発っ!
 測距兵、マスケットの間合いを随時警告せよっ!
 距離はない、ゆっくり進んでもかまわん!!
 待避用の塹壕をこえて、慎重に行けっ!!」
冬寂王「では、我も出るか」
軍人子弟「それは――。前線はそれがしたちだけで
 大丈夫でござる。冬寂王が身を危険にさらすことなど」
鉄腕王「はははは。わしもでるぞ。ここは王族の出番だろう」
軍人子弟「っ! では、拙者も出るでござるっ。
 突撃準備っ! 鉄国兵団、構えっ!!」
鉄国少尉「了解っ!」

251 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/13(金) 03:31:34.06 ID:rH.ZqWkP
――開門都市南側、遠征軍前線
   ズギュゥウウン! ズギュゥゥン!
王弟元帥「きめの細かい傭兵だな」
参謀軍師「姫将軍とやらでしょうか」
王弟元帥「いいや、この感覚は違うだろう。
 挑んでくるような覇気が感じられる代わりに、
 しぶとく不屈の、折れぬ剣のような気配だ。
 必殺の策を持っているという気迫ではないが
 負けぬ戦いの意志を感じる。南部も、層が厚い」
参謀軍師「マスケットの射程距離外で細かく兵を出入りさせて
 わが軍の指揮系統を消耗させているようです」
王弟元帥「このような戦、歴史にはないものだ。
 射程距離が長く、命中精度の高いマスケットか。
 ――だが、数は少ないようだな」
バサリッ!
聖王国将官「元帥閣下っ! 陣備えを半里ほど後退させました。
 本陣もあと少しで交戦領域です。本陣の予備兵力や
 光の子供達の間では緊張状態が広がっていますっ」
参謀軍師「で、しょうな。彼ら徴発された農奴兵達は
 王弟元帥に従って蒼魔族の領地まで遠征した経験もない。
 魔界についてから大規模な合戦もなく、
 攻城戦はカノーネが担当をしてきたわけでしょうから、
 実戦の経験が足りないのでしょう」

252 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/13(金) 03:32:54.25 ID:rH.ZqWkP
王弟元帥「そのプレッシャーが吉と出るか、凶と出るか。
 しかし、ここまで前線と本陣を近づければ、
 教会も貴族達も本気を出さざるをえなかろうさ。
 伝令を出せ! 教会および本陣司令部に、援軍要請だっ。
 一気に南部連合を打ち破るために兵力集中を命ぜよ!
 これは全軍総司令からの指令だっ!」
参謀軍師「はっ。すでに伝令は用意してあります」
聖王国将官「これで兵力がそろいますね」
王弟元帥「一時しのぎに過ぎんがな。
 開門都市の入り口を固めるだけなら、貴族の私兵で充分だ。
 本陣のマスケット銃兵1万を増援として運用。
 このマスケット兵を右翼から南部連合軍にあてる。
 その混乱に乗じて、我らが鍛えた精鋭マスケット部隊を」
 ぐいっ
王弟元帥「一里ほど前進させるぞ。
 それで南部連合の本陣までたたきつぶす」
伝令兵「王弟閣下! 貴族達が援軍を求めていますっ。
 “開門都市南門付近の戦闘にて、魔族の抵抗激しく
  わが軍は窮地に立たされつつある、援護を乞う”と」
聖王国将官「恥知らずが」
王弟元帥「ふっ。戦局が見えていないのかっ。
 いってやるがいい! “わが軍後方より南部連合が侵攻、
 本陣との距離は一里を切り、全軍による総攻撃の段階にあり。
 後方の指揮を変わっていただけるなら、聖王国中核軍全てを
 もって南門周辺地域の制圧に向かおう”となっ」
参謀軍師「ふふっ」
伝令兵「かっ、かしこまりましたっ!」
だっだっだっ

253 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/13(金) 03:34:13.00 ID:rH.ZqWkP
王弟元帥「参謀っ」
参謀軍師「はっ」
王弟元帥「教会に向けて書状を。口述筆記だ」
参謀軍師「はい」
王弟元帥「“いまや、南部連合軍間近に迫り
 開門都市との位置関係は我らを半包囲する状況に
 なりつつある。しかし一方、遠征軍には未だ豊富な
 兵力があり、反撃は充分以上に可能である。
 我が後陣は敵軍を制御しつつ戦場を設定した。
 これより、全軍総司令として本陣予備兵力の銃兵1万を
 増援として徴用。火力を持って南部連合を撃破する。
 大主教におかれては、我らが聖鍵遠征軍に祝福を”とな」
参謀軍師「釘を刺しますか」
聖王国将官「これならば、大主教も
 頷かねばならないでしょうね。南部連合を利用して
 遠征軍の石を固める、素晴らしい策です」
王弟元帥「……うむ」
参謀軍師「?」
王弟元帥「いや、良い。伝令兵を出せ! 急がせろ」
ゴォオオッン!! ゴォオオン!
聖王国将官「カノーネですな」
王弟元帥「貴族軍が攻め入っているにもかかわらず、
 後方からの射撃か。領主達が功を焦って
 足を引っ張り合っているな……」
参謀軍師「今は一刻も早く南部連合を平らげて、
 反転し指揮権を掌握すべきかと」
聖王国将官「了解っ! 伝令兵準備、前線を再構築しますっ」

254 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/13(金) 03:35:27.38 ID:rH.ZqWkP
――開門都市、近郊、遠征軍本陣
ゴォオオッン!! ゴォオオン!
光の銃兵「お、音が近づいて来ただな」
光の槍兵「ああ……」
光の護衛兵「とうとう戦になるんだか。俺はまだ訓練でしか
 剣を振ったことがないのに……。ま、魔族か。
 来るのか、あいつらがっ」
    ギィン! キィン! 「……ために!」
光の銃兵「い、いや。そうとは限らないぞ。後方に迫ってる
 南部の裏切りどもの相手をすることになるかも知れねぇ」
光の槍兵「裏切り……かぁ……」
光の護衛兵「裏切り、なのか」
光の銃兵「だってそうだろう?
 あいつらは破門された異端者をかばった、異端の国々だ」
光の槍兵「腹一杯食うのは、異端なのかな……」
 ズギュゥゥン!!
光の護衛兵「っ!」
光の銃兵「今のは、近かったな」
光の槍兵「ああ、近かった」
ダカダッダカダッダカダッ!!
光の中隊長「お前ら、そろっているかっ!」

255 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/13(金) 03:37:52.67 ID:rH.ZqWkP
光の護衛兵「はっ、はい」
光の銃兵「そろってるだよ!」
光の槍兵「そろっております」
光の中隊長「今より進軍を開始する、整列せよっ!」
光の銃兵「どこへっ?」
光の槍兵「……」
光の中隊長「光の子供の軍として、敵に突撃をするのだ」
光の銃兵「な、南部のヤツらですか!」
光の槍兵「南部かっ。くそっ! くそっ!」
光の中隊長「それは我らが考える。早く整列をしろっ!」
光の銃兵「はっ、はいっ!」
光の槍兵「了解しましたっ!」
わぁぁぁああ、わあぁぁぁあ
カノーネ兵「な、なんだ?」
光の護衛兵「あれは」
光の中隊長「――! 大主教さまだっ!」
光の銃兵「大主教さまが壇上に……? ほ、本物だか」
光の槍兵「大主教さま」がばっ
カノーネ兵 がばっ
光の護衛兵 がばっ
  参謀軍師「腰を上げてくれましたか。遅いお出ましですが」

256 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/13(金) 03:40:12.44 ID:rH.ZqWkP
大主教「……汝ら光の子よ、いよいよ決戦なる時は来た」
 うわぁぁあああ! 大主教さま、大主教さまぁ!!!
大主教「我ら精霊の子らが邪教の都の防壁を攻めあぐねて
 長い時がたった。しかし見よ、眼前に扉は砕け落ちた!
 ……これは精霊の怒りの炎、御手に持つ雷霆の恵みである。
 立ち上がれ、精霊の、光の子らよ!
 時は来た! 精霊は求めたまう。
 精霊は自らを求める子らに無限の抱擁と優しさをもち
 喜びの野へと迎え入れるであろう……。
 我らが四方にもはや敵と云えるものはなく」
 参謀軍師(なっ!?)
大主教「精霊の光と慈悲は、あまねく世を照らす。
 見よ、南方に迫るは異端の軍である。
 我ら地上世界への生を許されながら魔族と通じ
 世界に穢れを振りまく者ども。きゃつらは敵ではなく
 もはや刈り取るべき腐った稲穂でしかない。
 光の子らの二万よ、あの軍を滅ぼすが良い」
ざわざわ、ざわざわ……い、いいのか。ほ、滅ぼす?
 参謀軍師「ばかなっ!」
大主教「見よ、北方には開門都市。邪教の都。
 精霊を奉じぬ邪悪の化身、魔族の住まう、腐敗と瘴気の
 源泉がそこにある。精霊の光を遮り、この世界に闇を広げる
 邪悪の根源を絶つべき、光の子らの二万よ、
 あの都を滅ぼすが良い」
ほ、ほろぼす? 全部で突っ込むのか? あの砲撃の中に……
 参謀軍師「それでは全軍ではないかっ! 予備兵力はどうなるっ!?」

257 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/13(金) 03:41:27.70 ID:rH.ZqWkP
俺たちはまだ国に帰りたいんだ、異端なんてまっぴら……
だけど、人間を殺すって……戦争なんだ……
どうせ貴族が全てを……俺たちは何処まで行っても……
大主教「我はここに宣言する。これは聖なる戦。
 光の精霊の骸を我らが聖なる光の教えに取り戻す聖戦である。
 ――この戦において勇を示すは
 我ら光の子の最大の義務にして至高の奉仕。
 敵に情けをかけ、あるいは背を向けるは背教であると知れ!
 大主教と精霊の御名においてここに宣言をする。
 四方の異端を排除せよ!
 それが出来ぬものは、ことごとく異端であるっ。
 野に落ち顧みられることのない麦のように
 そのもの、腐れ行く未来を過ごすことになると知れ」
い、異端……魔族を殺さなければ……い、いやだ
腹が減った……だれか少しでもいいから……
異端になったら、俺だけじゃなく、娘や、妻が……
故郷の父も、母も異端に……
 参謀軍師(この流れでは。……あまりにも民衆に圧力を
  かけすぎではありませんか。これでは彼らが暴発してしまう)
大主教「剣を持て! マスケットを掲げよ!
 今日は祝祭の日! 奪え、殺せ、異端の全てを!
 破壊し尽くせ! もはや四方に散るは呪われた獣。
 進み、打ち、殲滅するのだ! 光の子らよ!
 精霊の祝福を! 精霊は求めたもうっ!」
……たもう……精霊は、求めたもう
精霊は求めたもう……精霊は求めたもうっ!!
奪え! 壊せ! 倒せ! 全てを我らが手に!!
……精霊は求めたもうっ!!……精霊は求めたもうっ!!
大主教「進むがよい、子らよ! 喜びの野は目の前であるっ!」

258 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/11/13(金) 03:43:59.95 ID:rH.ZqWkP
――開門都市、南門周辺、市街戦
ゴォォン! ゴォオン!
 ドゥーン! ドゥゥン!!
光の槍兵「精霊は求めたもうっ!!」
光の銃兵「精霊は求めたもう! う、うわぁぁ!
 く、来るなぁ! 魔族は来るなぁ! 撃つぞ!
 撃ち殺してやるぞっ!!」
光の剣兵「行け! 進めぇ!!」
光の突撃兵「突撃だぁ!!」
貴族の私兵「なっ」
貴族騎兵「農奴兵どもか。やっと本軍を突入したとみえる。
 貴様ら、こちらだ、この通りから奥へ」
ドカッ! ズグググ、ダダダダッ
貴族の私兵「!!」
貴族騎兵「話を聞けっ! そちらはヤツらの陣地がっ!
 ええい、勝手に行くなっ!!」
ゴォォン! ゴォオン!
 ドゥーン! ドゥゥン!!
光の銃兵「精霊は求めたもう! 異端には死を……」
光の槍兵「お、俺たちは帰りたいだけなんだっ。
 お前達魔族がいるから帰れないんだよぉっ!」
光の剣兵「食い物を、食い物をよこせっ!!」
光の突撃兵「お前達みたいなのがいるからぁ!!」
……ドゥーン! ドォォーン!
観測兵「接近、マスケットを含む混成部隊1200ほど」
土木師弟「っ! 来始めたな。ここからが本番だ」
巨人作業員「……おお」