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魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」
Part103


911 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/13(火) 23:17:20.66 ID:quxpU4cP
――開門都市近郊、聖鍵遠征軍本陣内、豪奢な天幕
ザザザアアアーーーー!!
  ゴゥゥン! ゴロゴロゴロゴロ
大主教「落ちたな」
従軍大司祭「は?」
大主教「黒騎士が落ちた。……勇者と呼ばれていた男だ」
従軍大司祭「勇者が!?」
大主教「勇者は光の精霊を裏切ったのだ。その証拠に精霊の
 祈りの力を受けて身動きも叶わなくなり、地に落ちたではないか」
従軍大司祭「そ、そんな」
大主教「騎士団よ」
百合騎士隊員「はっ! 猊下」
ちゅぷ、くちゃぁ。
 ――ころり、ころり。
大主教「勇者は激しい雨と落雷を呼び寄せたが、
 祈りの結界に閉じ込められて戦場に落ちた。
 その能力は、祈りの続く限り、腕の立つ騎士の一人と大差ない。
 聖なる祈願を込めたマスケットと百合騎士隊で
 捉えることが出来るだろう。
 良いか、必ずや捉えろ。
 むしろ、殺してしまえ。
 ただしその首は持ち帰るのだ……」
従軍大司祭「まさか勇者が……」
ザザザアアアーーーー!!
  ゴゥゥン! ゴロゴロゴロゴロ

912 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/13(火) 23:19:13.90 ID:quxpU4cP
大主教「勇者はもはや闇に堕ちたのだ。
 漆黒の鎧をまとい、魔族に味方をし
 精霊の遠征軍に雷の刃を向けたのが、その証し……。
 教会は、精霊の御名により、彼の者に異端の烙印を押す」
従軍大司祭「お、御命をうけたまわりましてございます」
百合騎士隊員「ははぁっ」
 ふわり
大主教「行けっ。すぐさま伝えよ」
 執事「そうはいきません」
  ひゅばっ! キィン!
大主教「行け」
従軍大司祭「はっ、はいっ」
 ダッダッダッ!!
大主教「そなたは……。見覚えがある。聖王国の」
執事「勇者の仲間です」
大主教「背教者め」
執事「その黒い呪力。……魔王になりましたなっ」
 ひゅん! ひゅわんっ! ビキィッ!
執事「その魔力っ。防御力っ。大主教ともあろうものがっ!」
ちゅぷ、くちゃぁ。
 ――ころり、ころり。
大主教 にまぁ
執事「……っ!? それは、刻印王のっ!?」

915 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/13(火) 23:24:06.52 ID:quxpU4cP
大主教「われは人間だ。
 徹頭徹尾、ただの、無力な、か弱い人間だよ。
 はぁっはっはっは」
執事「偽るおつもりかっ! あなたが黒い意志ではないですかっ!?」
ガギンっ! ヒュドンッ! キン、キィン!
大主教「見えない魔弾か。造作もない」
執事「人間に弾けるはずもないっ」
大主教「人間に撃てるものは、みな人間に防げるのだ」
執事「その力は、魔王の力だっ」
キュン、キィン!
大主教「だが我は人間だ。この眼球を我が眼窩に移植をすると?
 それは。くっくっく。
 確かに魔王の資格も得るだろうが、
 それでは“勇者の敵”になってしまう」
執事「……っ!?」
大主教「勇者は強い。魔王が弱いこの時代において、
 その力は、世界でもっとも強大なもの。
 それが赦せぬ。
 この世界は人間のものなのだ! あのような超人の闊歩する
 箱庭ではない、我らが、この世界の王なのだっ!
 くっくっくっく。はぁーっはっはっは!
 何が悪い!? 人間が人間のまま、魔王を! 勇者を!
 あやつら人外どもを越えて何が悪いというのだ!」
執事「だとしたら同じ人間としてあなたを
 生かしておくわけにはいきませんぞっ!」
ギィン!
大主教「“鉄甲祈祷”、“魔盾祈祷”、“光輪祈祷”っ」
執事「……っ! おされるっ!?」
大主教「たかが弓兵ごときが、我にかなうと思っているのか。
 勇者は光の縛鎖にて――“人間の悪意”にて縛った。
 もはや我を越える力を持つ者は、この世界にはいない」
執事「っ!?」
大主教「次は、『聖骸』を。そして世界は真の平和を得るのだ」

926 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/13(火) 23:41:53.21 ID:quxpU4cP
――地下城塞基底部、地底湖
ブゥウンッ!
メイド長「今の映像は……」
女魔法使い「……遠隔視の術式」
メイド長「あれは、あの男はなんなのですかっ!」
女魔法使い「……」
メイド長「あのような人間など。
 なぜ今まで隠していたんですかっ。女魔法使い様」
 ゆさゆさっ
女魔法使い「汚点」
メイド長「え?」
女魔法使い「……一族の、ミス」
メイド長「とは……?」
女魔法使い「……遙か昔、1400年前に人間世界へと出た図書館族。
 その、子孫。末裔。……それが、あれ」
メイド長「そんな、図書館……わたし達の、一族?」
女魔法使い「……存在の可能性は認識していた。
 幾つかの事象から、その実在が高い確率で想定できた。
 でも、正確に誰がそうなのか判ったのは、今が最初」
メイド長「そんな……」
女魔法使い「あれが、魔王と勇者がやろうとしていることの、
 もう一つの側面。眼をそらしては、いけない」

930 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/10/13(火) 23:47:22.82 ID:quxpU4cP
メイド長「……」
女魔法使い「……人々を善導する意志が、歪み、腐り、淀む。
 善意はやがて支配へとすり替わる。
 全ての革命の行き着く先。その、なれの果て。
 魔王と勇者が産もうとしているのは、あれかもしれない」
メイド長「だからといって、歩みを止めるわけにはいかない。
 それは死です。全てが腐敗するとしても、だからといって
 腐敗するために生きるわけではない」
女魔法使い「……」
メイド長「違いますか?」
女魔法使い「……“仮定された有機交流電燈のひとつの青い照明”」
メイド長「なんですか、それは」
女魔法使い「……明滅している現象だけが、生だと。
 永遠の光も、永遠の闇も。永遠という意味では透過。
 永遠は死。なぜならそこに時間の経過はないのだから。
 明滅だけが永遠ではない。永遠でないと云うことは、
 つまり、明滅の許容」
メイド長「わかりません。そんなことは。
 ――それより、まおー様は!? 勇者様はっ!?」
女魔法使い「魔王は死地に向かっている。勇者は死にかけている」
メイド長「何をしているんですかっ。お助けしなくては」くるっ
女魔法使い「いかせないっ」 がしっ
メイド長「っ!」
女魔法使い「勇者は、全部を掛けると云ったっ。
 何でも払うと云ったんだ。だから、行かせない。
 あなたは回路を調査する。わたしはそれを修理する。
 それが役目。絶対だ。
 ……いいか? 最初から不可能だったんだ。
 可能性はゼロだ。今さら、魔王が死のうが、勇者が死のうが、
 ゼロはゼロ以下にならないっ。
 それでもっ」

934 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/13(火) 23:51:15.48 ID:quxpU4cP
女魔法使い「あの二人は微笑みさえ浮かべて即答した。
 それでも構わないから、賭けると即答した。
 だったら生き延びる。いや、死んでいたって生き返る。
  二人が生きていたってそれだけ駄目なんだ。
 最初から不可能だった。
 この開門都市全てが、生け贄の祭壇。
 勇者か魔王の魔力全てを注ぎ込み、その命を絶つことによって
 起動する、天空への架け橋。『天塔』。
 片方の死を持って残り一人を『終幕』へと導く崩壊装置。
 『ようせいのふえ』にて封印されたと
 古の歌は語る伝説の中の幻の塔だ。
  それでもあの二人は、その『終幕』を拒絶するつもりなんだ」
メイド長「そんなっ」
女魔法使い「最初から奇跡の五つや六つ揃わないと
 駄目な賭けだったんだ。だからわたしはここを動かない。
  いいか? 勇者はわたしに奇跡を望んだ。
 奇跡を、望んだんだ。
 “お前なら出来る”ってなぁ!
 だからメイド長、あなたも逃亡は許さないっ。
  この世界には奇跡が溢れている。
 あの二人がそう言ったのだからわたしは信じる。
 たとえ、それがどのような荒唐無稽な話であっても。
 だからあなたにも信じてもらう。
 わたし達の知らない、どこかの奇跡があの二人を救うことをっ」
メイド長「まおー様が、そんなことを?」
女魔法使い「云ったさ」
メイド長「判りました。――宜しいでしょう」
女魔法使い「……」
メイド長「まおー様が言うのならば、そうなんでしょう。
 奇跡なんて信じないで奇跡みたいな冗談を言う人ですからね。
 冗談は胸だけにして欲しいと云ったら、
 冗談を言ってるつもりはないなんて云うほどの人です」
女魔法使い「……」
メイド長「まおー様を信じましょう。それが必要なのならば。
 わたしはあの人のメイド。主人を助けるための無限の力です」

941 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/14(水) 00:05:11.60 ID:NoxjAlgP
――開門都市、戦乱の市街
ヒュルルルル……
 グシャァァッツ!!
勇者「っ!!」
夢魔鶫「主上っ。主上……お気を確かに」
勇者「っぁく。な……んだ、この痛みは」
夢魔鶫「おそらく、体力低下の呪詛かと」
勇者「……っく」
夢魔鶫「動いては駄目です。“小回復術”」
ザァァァーザザザー
勇者「どこだ、ここは……」
夢魔鶫「おそらく開門都市の市街部かと」
勇者「周辺の偵察を」
夢魔鶫「しかし……」
勇者「行け」
夢魔鶫「はっ」
パタパタパタっ
勇者(っく! 雨が……。それでも雨だけは降ったか)
ドォオォォン!! ドォォオン!!
 キィン! ガキィン! おおおお、精霊は求めたもうっ
勇者「近いな……」

943 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/10/14(水) 00:10:50.64 ID:NoxjAlgP
夢魔鶫「主上、どうやら一街区先では、激しい戦闘が」
勇者「マスケットはどうだ?」
夢魔鶫「そろそろ、火薬が湿り、火も消えて使い物には
 ならなくなった模様ですが……」
勇者「?」
夢魔鶫「いかんせん、外の遠征軍の数が多すぎます。
 都市防衛軍は良く防いでいますが、この豪雨では
 マスケットももちろんですが、弓矢も殆ど役には立たず
 援護のない大通りでの白兵戦、しかも乱戦状態となっています」
勇者「行って援護をしてくれ」
夢魔鶫「しかし」
勇者「いいからっ」
夢魔鶫「……御命、承りました」
ぱたぱたぱたっ
勇者「……っ」
勇者(こりゃ、ちっと動けないな……。しばらく休憩しないと)
 キィン! ガキィン! 押せ! 引くな!
  ドゴォン! この都市には一歩たりとも入らせんっ!
勇者(魔王は、無事なんだろうな……)
勇者(再生が始まらない。出血制御も組織封鎖もままならない……、
 なんだこれ、毒……なのか?
 いや、でも解毒酵素も動かないぞ。身体が重い。
 神経の伝達速度が二桁も落ちてる……)
勇者「ってな。これっくれぇ、なんだってんだ」 ズキィッ
ぼたっぼたっ……
勇者「これくらい……血が……」
ぐしゃっ

74 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/14(水) 22:16:20.80 ID:NoxjAlgP
――開門都市近郊、聖鍵遠征軍、中央部
ザアアアアアア!
 ヒュバッ! ギンッ! ガキィン!!
大主教「どうしたのだ。その程度なのか?」
執事「それでも教会の頂点ですか。品のないっ!」
ズドン! シュダン! ヒュダンッ!
大主教「ふっ。殆ど隙が無く、動きも気配もない。
 もちろん視認することは困難、限りなく透明に近い攻撃。
 だが、いますこし突破力が足りないようだな」
執事(……っ! なんですか、あの防御膜は。
 祈祷の防御呪文? 神聖加護ですかっ……)
従軍司祭「だ、大主教さまっ! 今お助けをっ」
光の槍兵「な、何が起きてるんだっ」
ゴオオォォォン!!
従軍司祭「ほ、捕縛呪だっ!」
大主教「要らぬ世話だっ! “光輝奪魂祈祷”っ!!」
従軍司祭「ぐふっ」
光の槍兵「え、あ……あぁっ! なんで、俺たちが……っ」
ひゅるんっ
執事(ここですなっ。はぁぁぁっ!!)
ぎゅばんっ!!
大主教「ぐふぅああ!!」 どばっ! ぼたっ

76 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/14(水) 22:18:33.65 ID:NoxjAlgP
大主教「我が腕をっ。素晴らしい」
執事「どれほどの魔力を持っていたとしても
 実戦経験だけは補いがつきませんよ。
 ましてやこの乱戦と雨の中。
 間合いの読みあいでは相手になりませんっ」 きぃんっ!
大主教「ふっ。まさにな。戦の犬からも学ぶことはあると見える。
 “接続祈祷”、“四肢再生祈願”っ」
びちゃぁ、にぎにぎ
執事「……っ」
ちゅぷ、くちゃぁ。
 ――ころり、ころり。
執事「あなたは何者なのですか」
大主教「ただの人間だ。我は、人間。
 そう……多少知恵のある、動物に過ぎない。
 しかし、これでも聖光教会の頂点、大主教でもある。
 光の呪力において、我にか無いものは大陸にはいない……」
光の槍兵「あ、ああ……。だ、大司教様が」
執事「下がっていなさいっ!」
大主教「それが温い」
ビュゥン! びちゃぁ!! 「ぐぎゃっ!!」
執事「っ!」
大主教「貴様ごとき放って置いても良いが、
 貴重な学習をさせてもらったのだな。
 実戦経験、か。
 貴様からはそれを頂くとしようっ」
きぃん! ドギュン! ギン! ギンッ!!

82 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/14(水) 22:44:31.44 ID:NoxjAlgP
――魔界、聖鍵遠征軍後方戦線、後方戦線
ザアアアアアア!
鉄国少尉「左翼、大盾前進60歩!
 隙間を空けるな、まだマスケットの可能性はあるぞっ!」
ズギュゥゥン!!
軍人子弟「どうでござるか?」
観測兵「視界が悪いですが、命中しています。
 でも、指揮官クラスをどこまで落とせたかは……」
将官「縦線塹壕、四分里完成しましたっ」
  連合軍槍兵「装備を確認しろ、投げ槍の準備だ」
  連合軍工兵「くそぅ、雨で指先が痺れる」
  連合軍歩兵「相手も同じだ。油断するなっ」
冬寂王「この雨で、マスケットの一斉射撃が
 無くなったのは有り難いな」
鉄腕王「こちらの長距離攻撃が、圧力を掛けている。
 一斉射撃が使えないとなりゃぁ
 そろそろ向こうの陣地にも動きが出てくる頃合いだろう」
観測兵「敵陣地、動き蟻。中央部が大きく割れます。
 突撃部隊とおぼしき展開、左翼および右翼には騎馬部隊確認!」
軍人子弟「数は!?」
観測兵「騎馬部隊、左翼右翼、共に約2千っ。
 中央打撃部隊は重装甲歩兵、6千っ!」
鉄国少尉「この程度、ですか……?」
軍人子弟「おそらくマスケット兵は単機能の教練を施した
 農民上がりの即席兵、マスケットによる一斉射撃はこなせても
 それ以外の運用では被害が大きいと判断したのでござろう」
鉄国少尉「ではあの部隊が」

84 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/14(水) 22:49:09.17 ID:NoxjAlgP
軍人子弟「王弟元帥麾下の遊撃戦闘兵力。機動力の大部分」
鉄国少尉「どうしますか?」
軍人子弟「鉄腕王、ご采配を」
鉄腕王「勝敗は兵家の常だと、教えてやれっ」
軍人子弟「了解っ! 左翼および右翼に長槍兵を配置せよっ。
 中央の重装甲歩兵部隊は、こちらの剣兵で迎え撃つ。
 鉄の盾を微速前進っ! 
 ライフル兵は引き続き正面部隊に対して打撃を継続っ!」
鉄国少尉「了解いたしましたっ!」
ライフル兵 がちゃり
連合軍槍兵 かちゃ
軍人子弟「諸君! 連合軍の諸君っ!
 我らが魔界までやってきた目的の都市は眼前にある!
 あの都市は、今や聖鍵遠征軍二十万の包囲下にあるでござる。
 聖鍵遠征軍は武力を持って開門都市の陥落を目指している。
 我ら南部の国々は、長い間魔族との戦争を繰り返してきたっ。
 それは我らが大地を守るための戦いであった。
  今、魔族の大地が、我らと同じく人間の手によって
 奪われようとしている。我らは自らの土地を失う哀しみを
 知るゆえに、この侵略を見捨てるわけには行かないっ!
 相手は魔族、それが敵であったとしてもでござる。
  義によって助けるとは、拙者は云わぬっ。
 この戦は新しい千年の幕開けのため、
 自らが自らで居られる自由な大地を守るための戦いであるっ。
  なぜならば、自由とは、他人のそれを守ることによってのみ
 初めて、自分の権利を主張できるのでござるから。
 我ら南部連合の誇りを掛けて、眼前の軍を討つっ!」
ライフル兵「連合軍、万歳っ!」
連合軍槍兵「大地のために!」
連合軍工兵「我らの明日のためにっ!」

93 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/14(水) 23:08:51.03 ID:NoxjAlgP
――開門都市近郊、聖鍵遠征軍、中央部
ザァァァアアア!
  ザァァアアア!!
王弟元帥「何があったのだ。静かにしろっ!」
王弟近衛兵「お前らぁ! 静かにせんかぁっ!」
 じゃきぃっ!
光の銃兵「お、王弟閣下だ!」
光の槍兵「元帥閣下! た、た、助けてくださいっ!」
従軍司祭「だ、大主教様が」
   ゴオオゴオォォォl!  オォオォオム!!
     ルギォォォォルゥゥム! ォォォン!!
王弟元帥「どうなっているのだ……」
光の銃兵「お、俺たちはただ食料が欲しくて……」
光の槍兵「そうです、俺たちはせめて今日の飯をもらおうと」
王弟元帥「よい。この部隊の指揮官は誰だ? 一歩前に出ろ」
カノーネ部隊長「わ、わたしであります」ざっ
王弟元帥「全ての騒ぎを収拾せよ。
 わたしの名をもって争乱者を逮捕するのだっ。
 無事な糧食は全て、後方陣地へとはこべっ!。
 すぐにかかれっ! 我が軍からマスケット兵を差し向ける」
カノーネ部隊長「は、はひぃっ。そっ、それでっ」
王弟元帥「なんだ」
カノーネ部隊長「教会の天幕のあたりで、すごい電光や、
 激しい音が……。見に行った連中も帰らないんです」
王弟元帥「……っ! 早くいわんか、馬鹿者がっ!!」
王弟近衛兵「後方陣地へ急げ。近衛部隊を回させろっ!」

94 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/14(水) 23:10:02.53 ID:NoxjAlgP
――開門都市近郊、聖鍵遠征軍、聖光教会の天幕付近
ザァァァアアア!
光の銃兵「ひぃっ! 血、血がっ」
光の槍兵「こんなに沢山……っ。みっ、みんな死んでるっ」
王弟元帥「……すさまじいな」
王弟軍近衛兵「なにがあったんでしょうね。
 ――そういえば、大主教はっ!?」
王弟元帥(いや、おそらく大主教が目的の凶行か、
 そうでなければ、大主教が命じた凶行なのだ。
 だとすれば、焦ったところで……)
光の銃兵「ど、ど、ど」がくがく
光の槍兵「どうしたら良いんですかっ」
王弟元帥「その辺の天幕を捜索せよ。一人にはなるなよ」
びちゃ、ぐちゃ……
  天幕の影「捜索の必要はない」
王弟元帥「大主教猊下っ」
  天幕の影「賊は全て逃げたわ……。ふっふっふっ」
王弟軍近衛兵「ご無事なのですか? 今お手当をっ」
従軍司祭長「――」ガクガクガク
王弟元帥「……」
ぐちゅり、ぐちゅり
  天幕の影「それにはおよばぬ。衣服が乱れてしまってな、
   今身体を清めるゆえ、入ってきて欲しくはないのだ」

96 :以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/14(水) 23:11:15.97 ID:NoxjAlgP
王弟元帥「賊は何者でしたでしょうか?」
  天幕の影「我の命を狙った不埒な魔族の刺客であった」
光の銃兵 がくがくがくっ
光の槍兵 ぶるぶるぶるっ
王弟元帥「では、当面の間、この寝所の廻りは安全なのですね?」
  天幕の影「そのとおり……。多くの信徒が我をかばってくれた。
   今宵は彼らのために祈りを捧げねば。くふり、くふふ」
王弟軍近衛兵 ちらっ
王弟元帥 こくり
従軍司祭長「――」がくがく
王弟元帥「では、こちらの警備の方へと人を回しましょう。
 また、攻略を目前に本陣ではいくつもの争乱が起きている様子。
 取り締まりは、我がほうで手配をして宜しいか?」
  天幕の影「たのむぞ、王弟元帥……。
   我はそなたを我が腕のように大事に思っているのだ」
王弟元帥「はっ。承りました。もはや日が暮れます。
 細々しい軍議は明朝にして、大主教猊下にゆっくりと
 お休みになられますように」
  天幕の影「明日は素晴らしい日になるだろう。歴史に残る日に。
   開門都市を精霊の恩寵の元、取り戻す日になるのだから」
王弟元帥(取り戻す……)
従軍司祭長「――」ごくり
王弟元帥「では、失礼して指揮に戻らさせて頂きます」
ザァァァアアア!