Part100
636 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/12(月) 21:19:21.41 ID:fsI5836P
副官「お任せを。このあたりの地理はわたし達が
一番詳しいですし、何より精強な獣牙兵がついています。
斥候や偵察部隊なら、大規模軍と云うこともないでしょう。
また、付近には妖精族の者たちも身を潜めているはずです」
執事「では、わたしは敵の陣中に忍びますか」
女騎士「出来るか?」
執事「誰に仰るっ! この老執事今まで夜這いが発覚したことなど
一度たりとてありませんぞっ。侮辱してはいけませんっ!」
女騎士「……」
副官「……」
執事「あの聖鍵遠征軍の中にどんな娘さんがいるかと思うと
にょっほっほっほ。……む、胸が苦しくてはち切れそうですぞ」
副官「……あの、この方は」
女騎士「何も云わないでくれ」
ドグワァッ!!
執事「なっ! 何をするのですか」
女騎士「妄想は良いからとっとと情報を集めてこい」
執事「恋する信者は執事さんのことを思うと
いけないマスケット兵になっちゃうのかも知れないのですぞ!?」
女騎士「愛剣・惨殺大興奮が
老人の脳の実態調査に乗り出すぞ」 じゃきーん
執事「ふっ。余裕のない人ですね」
女騎士「良いから行ってこい」
執事「余裕のない逼迫した貧しく悲しいサイズですね」
女騎士「良いから行けーっ!!」
副官「なんだかよく判りませんが、色々お疲れ様です」
644 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/12(月) 21:37:22.04 ID:fsI5836P
――魔界のあちこちで
「忽鄰塔?」
「そう! 忽鄰塔!」
「人間族がまたもや開門都市に迫ってきているんだ。
魔王様が立てこもって必死に戦っているんだってさ」
「どこでやるのさ? また平原で?」
「ううん、今度はその開門都市らしいよ」
「もしかして、人間の軍と戦うための忽鄰塔なのかな」
「そうかも知れない」
「忽鄰塔か……。戦は怖いな」
「でも行かなきゃ。魔王様が読んでいる。もしかしたら
魔王様が助けを求めているのかも知れないよ?」
「ともあれ、伝令を伝えよう」
「銀鱗族へも、羽耳族へも」
「忽鄰塔……か」
「人間って、見たことある?」
「いいや、ないよ」
「人間が作った鍋を、こないだ竜族の商人が運んできたよ」
「人間かぁ。どんな奴らなんだろう?」
「こんなところまで攻めてくるんだ、戦争好きなんだろう」
「じゃぁ、獣牙みたいな感じかな?」
「蒼魔みたいな感じじゃないか?」
「そうかもな」
「ともあれ、忽鄰塔だ。長老にも知らせなきゃ!」
「そうだな、これは一大事だぞ!」
657 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/12(月) 22:39:31.17 ID:fsI5836P
――開門都市、防壁の上、補修部隊
ひゅるるる……どぉぉーん!!
ひゅるるる……どぉぉーん!!
獣人軍人「はこべ! 石灰を運んでくれっ」
土木師弟「まずいな」
巨人作業員「いま、もってゆく……」
ひゅるるる……ぉーん!!
義勇軍弓兵「ま、また来たぞあいつらっ!!」
獣人軍人「〜っ!!」
巨人作業員「だ、だめだ。……おれ……こわい」
義勇軍弓兵「無駄だって云うのにっ」
光の狂信兵「精霊は求めたもうっ!」
光の狂信兵「精霊は求めたもうっ!」
光の狂信兵「我らの魂は光の加護があある! 突撃っ!」
人間作業員「くっそう! 気が狂いそうだっ」
蒼魔族作業員「馬鹿な人間どもがっ」
獣人軍人「弓兵! 射撃!!」
義勇軍弓兵「くそったれ!!」
びゅんびゅんびゅん!! びゅんびゅんびゅん!!!
「ぎゃぁぁー!!」 「精霊に光りあれっ〜!」
「精霊万歳!」 大主教猊下、ばんざーいっ!!」
どすっ! どすっ! ばた、ばたっ
659 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/12(月) 22:42:43.62 ID:fsI5836P
義勇軍弓兵「あ、あいつらあんなに……あんなに……はぁ、はぁ」
人間作業員「いくら防壁がそろそろ限界だからって、
その防壁に槍や剣で突っ込んで
どうなるもんでもないじゃないかっ。あいつら、おかしいぞっ!」
蒼魔族作業員「なんの意味があるんだ、こんなのにっ」
獣人軍人「心を揺らすな! 監視と補修作業をするんだ」
義勇軍弓兵「おかしい。あいつらおかしいよ……」
ひゅるるる……どぉぉーん!!
ひゅるるる……どぉぉーん!!
人間作業員「血が……。防壁にも血がべったりだ」
蒼魔族作業員「気にしたらダメだ。よし、こっちは終わった」
獣人軍人「市内へ行って交代班の編制を聞いてきてくれ」
義勇軍弓兵「はい、了解しました……」 ふらふら
土木師弟(限界だ……。防壁の強度もそうだけれど、
精神的な疲労もピークに迫りつつある。
防備軍は混乱しているが、あれは一種の恐怖戦術なのか。
考えたくはないが……。あいつらは命をなんだと思っているんだ)
蒼魔族作業員「監督、石の配置を」
ひゅるるる……
土木師弟「おっ。おう。土嚢と混ぜるように、
壁の欠損箇所を補修していくぞ。おーい! 十人ばかり」
どぉぉーん!! どぉぉーん!!
どぉぉーん!! どぉぉーん!!
巨人作業員「〜っ!」
義勇軍弓兵「近い、下がれ! 待避だぁっ!!」
人間作業員「大将っ!」
土木師弟「なっ。総攻撃っ!? 何を考えてるんだ。
いきなり火力を集中してきたぞっ!?」
666 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/12(月) 23:27:54.01 ID:fsI5836P
――聖鍵遠征軍、中核陣地、だらしない天幕の群
……ォォン!
……ドォォーン!
光の銃兵「はぁ……」
光の槍兵「腹が減ったな」
カノーネ兵「王弟元帥が食料を持ってきて
くれるんじゃなかったのか?」
光の銃兵「持ってきてくれたさ。現に振る舞ってくれた」
光の槍兵「それじゃなんで……」
カノーネ兵「食料は貴族どもがかき集めちまったって話だ」
光の銃兵「灰青王は何をやっているんだ」
光の槍兵「教会に云われて、どうにもならないらしい」
カノーネ兵「また豆のスープか……」
斥候兵「たまには、温かくて白いパンを食いたいな」
光の銃兵「もうずいぶん長い間食ってないような気がする」
光の槍兵「ああ、そうだな……」
カノーネ兵「……」
斥候兵「……」
光の銃兵「……」
……ォォン!
……ドォォーン!
光の槍兵「なあ……」
カノーネ兵「ん?」
光の槍兵「このスープ……」
カノーネ兵「うん」
光の槍兵「これって、悪魔の」
カノーネ兵「しぃっ!」
667 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/12(月) 23:29:35.91 ID:fsI5836P
光の槍兵「えっ? そ、そうなのか?」
カノーネ兵「食っちまえよ」
斥候兵「馬鈴薯さ」
光の銃兵 ご、ごくり
光の槍兵「いいのか? そんな物を食べてっ」
カノーネ兵「黙ってろよ。これは略奪品の中に入ってたんだ」
光の銃兵「い、異端の」
カノーネ兵「いやなら食うなよ。俺が食うから」
光の銃兵「い、いや……」
光の槍兵「これ、美味いんだよ。俺は向こうでも
食っていたことがある」
光の銃兵「そうなのか?」
光の槍兵「ああ」
……ォォン!
……ドォォーン!
カノーネ兵「こんな物でも食べなきゃやっていられないじゃないか」
斥候兵「ああ、そうだ」
カノーネ兵「集会に参加すれば、小麦がもらえるらしいけどな」
光の槍兵「いやだいやだ。俺は一度行ったことがあるけれど、
薄っ気味悪いところだぜ。二度と行きたくはねぇよ」
カノーネ兵「でも、パン……」
斥候兵「ああ」
カノーネ兵「俺は今晩にでも参加してみるよ。
懺悔集会なんだろう?
頭を下げていれば、それで小麦がもらえるなんて楽なもんだ。
いいや、どうせ俺はここに来た時から、
食わせてもらうためだったら何でもするつもりでいたんだからな」
676 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/12(月) 23:54:16.64 ID:fsI5836P
――聖鍵遠征軍、中核陣地、百合騎士団の仕官天幕
バサリッ!!
灰青王「百合のっ!」
百合騎士団隊長「あら?」にこり
灰青王「どういう事だ」
百合騎士団隊長「どうとは? 灰青王さま」
灰青王「なにゆえ、あのように無防備で
意味のない突撃をさせるっ!?」
百合騎士団隊長「意味のない?」
灰青王「あの防壁は、マスケットや騎馬突撃で破れる強度ではない。
ましてや、剣や槍でどうしようというのだっ!?
歩兵の集団突撃など愚の骨頂ではないか!」
百合騎士団隊長「いけませんわ。灰青王さま」
するんっ
灰青王「っ!」
百合騎士団隊長「あれらの献身は、精霊様に対する信仰の証し。
それを愚の骨頂であるとか、無駄などと云っては。
それは背教者の言いざまです」
灰青王「信仰など知ったことかっ!」 ダンッ!!
百合騎士団隊長「聖鍵遠征軍は信仰の軍なのです」
灰青王「だとしても、その前線指揮は
現在わたしが預かっているのだっ。
前線に無用の混乱を引き起こし、士気を瓦解させるような
戦術は司令官として見過ごすわけには行かないっ」
百合騎士団隊長「これは大主教猊下直々の御指図なのです」
677 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/12(月) 23:57:37.96 ID:fsI5836P
灰青王「〜っ!」
百合騎士団隊長「そのように驚きになられなくても宜しいでしょう?
猊下は前線で苦しむ兵士の姿を拝見になられ
その苦しみの何分の一かでもその身のお引き受けになろうと
自らの両目をお抉りになったのですよ?」
灰青王 ぞくっ
百合騎士団隊長「ふふふっ。あのような血と脳漿の中で
天に召された兵士達は、必ずや光の精霊の安らかなる胸の中で、
永遠の至福を味わっているはず」
灰青王「そのような戯れ言っ」
百合騎士団隊長「ふふふっ」
ちゅく。
灰青王「っ!?」
百合騎士団隊長「そんな表情をされなくても。
初めてではないくせに。もうお忘れに?」
灰青王「俺は何かをごまかすために、自分の意を通すために
心も寄せてない女を抱いたことは、一度もない。
これまでも、これからもだっ」
百合騎士団隊長「わたしにはあるのです」とろり
灰青王「……っ」
百合騎士団隊長「もはや私たちは、1つの船に乗っているのです。
この聖鍵遠征軍という船に。あの都市を落とせなければ、
あなたもわたしも漆黒の炎で焼かれるさだめ。
ふふふふっ。
あの都市を炎の中に沈め、わたし達の未来を照らす
かがり火にしようではありませんか。
精霊は祝福されているのですから。うふふっ。
くすくすくすくすくすくすっ」
697 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/13(火) 00:18:49.24 ID:quxpU4cP
――魔界、聖鍵遠征軍後方戦線、南部連合軍
女騎士「来てくれたのか!」
軍人子弟「当たり前でござるよ!」
鉄国少尉「お久しぶりですね! 騎士将軍」
女騎士「少尉も立派になられたな」
鉄国少尉「ははははっ。そんな事はないです。まだまだですよ」
軍人子弟「騎士師匠の軍は?」
女騎士「先行偵察で散っている」
軍人子弟「このあたりはどうでござる?」
女騎士「このなだらかなうねりを持った荒野が四方に続いている。
魔界では比較的豊かな土地だが、戦火で荒れ果てているし、
潅漑がされていないからな」
軍人子弟「……見晴らしが良いでござるな」
鉄国少尉「ええ」
女騎士「至近距離での奇襲など成功できる土地じゃないな」
軍人子弟「そうでござるね」
伝令「軍人子弟殿、後方部隊のとりまとめが済んだよし、
伝令であります!」
軍人子弟「よっし、護衛部隊とともに出発!」
鉄国少尉「我らは先行しても平気ですかね?」
女騎士「ああ、この辺に敵の小部隊は出ていない」
軍人子弟「では、王も呼んでくるでござるよ」
698 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/13(火) 00:22:49.99 ID:quxpU4cP
――魔界、聖鍵遠征軍後方戦線、南部連合軍、丘の上
ビョオオオー!
女騎士「あれが、おそらく王弟元帥の引いた防衛線です」
冬寂王「むぅ」
鉄腕王「ふんっ。何とも小憎らしい」
軍人子弟「見事な防御戦でござるね。馬防柵に所々の土嚢、
簡単とは言え、物見櫓。消火用の砂山……」
鉄国少尉「その進撃速度から、電撃作戦を好む好戦的な
司令官だと思っていたのですが、そう言った雰囲気は
感じられませんね」
冬寂王「そこがかえって恐ろしいな」
鉄腕王「あの軍にもマスケットが配備されているのか?」
女騎士「確実に」 こくり
冬寂王「やり合うとなれば、相当の被害は避けられぬな」
鉄腕王「そうなるか」
軍人子弟「今回は先方に主導権を取られているでござる。
我らには戦場決定の自由がない。そして陣地を築くのは
向こうの方が早く、こちらに有利な条件は少ない」
鉄国少尉「……」
女騎士「そして、おそらくあの司令官はこちらを
甘く見ることも油断することもないだろう」
将官「では、こちらの勝機は薄いのですか?」
女騎士「薄いな」
700 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/13(火) 00:25:04.12 ID:quxpU4cP
冬寂王「ふむ……」
鉄腕王「どうするのだ?」
冬寂王「どうする、とは?」
鉄腕王「今回わしをあえて戦闘の全権将軍にしたのは
何か思惑があるのだろう?
責任を逃れるためにそのようなことにするような王でもあるまい」
女騎士「……」
冬寂王「思うところはないではないが、まずは、魔族だ」
鉄国少尉「まずは、とは?」
冬寂王「そもそも今回の戦は、
魔界へと聖鍵遠征軍が攻め入って始めたもの。
攻め入ったのは人間、中央諸国家。
そして攻められたのは魔族の土地だ。
妖精族の領事館を通して支援要請があったとはいえ、
正式な宣戦布告をしたわけでもない。
どちらに味方をするかと問われれば、それは魔族だ。
これは南部連合会議の結果であり、変えることは出来ない。
しかし“どのように”助けるかと問われれば、
それは魔族側からの要求を第一に考えるべきだろう」
軍人子弟「……魔族、でござるか」
女騎士「魔王……」
冬寂王「その魔王だよ。
わたしは魔王がどのような人物なのかそれに興味がある。
これだけの魔界をまとめ上げ、
そしてあの人間界側から戦争を持ち込んだ
第二次までの聖鍵遠征戦争を経験しながらも、
対等な平和条約を結ぼうと努力できるその精神に興味があるのだ」
鉄腕王「では、このまま待つと?」
702 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/13(火) 00:27:14.95 ID:quxpU4cP
冬寂王「そのつもりだ」
軍人子弟「そうなのでござるかっ!? 魔界まで来ながらっ!?」
鉄国少尉「まさかっ!?」
冬寂王「最大限犠牲を少なくなる手法を議会で確約しただろう。
我らは軍装を持ってこの魔界へと入ったが、聖鍵遠征軍ではない。
最初から相手を殲滅する意図を持って行動するのは
我ら南部連合の流儀ではないはずだ。
わたしは魔王の話を聞きたい。
その意志が、もはや聖鍵遠征軍はこの地上に存在すべきではない。
そういうのならば、人間としてその決定には一言言う必要がある。
また、もし聖鍵遠征軍が魔王の声を無視してただいたずらに
領土と血の供物を求めるのであれば、その行いを正す必要もある」
軍人子弟「しかし、そのための実力が我が軍にあるかと申しますれば」
冬寂王「だから、将軍を任せたのさ。将軍をしていては、
綺麗事を吐く時に口が鈍る」
鉄腕王「なっ。冬寂王っ」
軍人子弟「勝つ算段は現場でやれと!?」
冬寂王「どちらにしろ、今は時間が必要だろう?
それは現場も上も同じ事のようだ。ほら、見てみろ」
鉄腕王「あれは……」
軍人子弟「望遠鏡を貸すでござる」
鉄国少尉「はっ」
軍人子弟「カノーネ、でござるね。
こちらに向けて、あんな風に姿をさらして」
冬寂王「寄らば撃つ。あれは示威だ」
女騎士「どうやら向こうもとりあえずは硬直を望んでいるようだな。
もし早めにけりをつけたいのであれば、あそこに構えたカノーネは
隠しておき、我らの突撃にあわせて不意に発射すべきだった」
冬寂王「魔王殿の意志が判るまでは、戦闘による被害をなるべく
押さえながらこの位置で圧力をかけ続けると云うことになるな」
708 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/13(火) 00:51:44.06 ID:quxpU4cP
――5年前、梢の国、魔物の現れ始めた洞窟
パチパチ、メラメラ。
女騎士「なぁ、勇者」
勇者「なんだ?」
女騎士「勇者ってさ。どんな子供時代だったんだ?」
執事「そうですなぁ。そう言えば、聞いたことはありませんでしたな」
女魔法使い「……すぅ」
勇者「どうって……普通だったと思うぞ」
女騎士「そうなのか?
なんかすごい英才教育を受けたりはしなかったのか?
毎日すごく苦い強壮剤をバケツ一杯飲まされたから強くなったとか」
勇者「どんな虐待家庭だよ」
執事「たしか、聖王国で暮らされていたんですよね?」
勇者「聖王国って云っても、国境の深い森の中に、オンボロ家だよ」
女騎士「ふぅん。森暮らしだったのか?」
勇者「うん。まーね」
執事「剣技や魔法は、どのように身につけたのですか?」
女騎士「興味があるな。勇者の剣は一件めちゃくちゃだが
よく見ると、めちゃくちゃだ。……ちがった。
よくよく見ると、有るか無きかの品というか、
本格的な型があるように見える」
執事「剣はまだしも、魔術はある種の学問ですから、
我流で身につけるわけにも行かないでしょう?」
710 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします [sage]:2009/10/13(火) 00:53:10.33 ID:quxpU4cP
勇者「……んー」
執事「?」
女魔法使い「……すぅ。……すぅ」
パチパチ、メラメラ。
女騎士「どうしたんだ?」
勇者「内緒なのだ。勇者72の秘密の1つだ。ぽんぽこぴー」
執事「そうなのですか」
女騎士「うーん。残念。……勇者は自分のことは話さないからな」
勇者「別に過去が無くたって、戦えるじゃん?
どこで覚えた技だって、役に立てば問題ないってなもんだ」
女騎士「それはそうだけど」
執事「そう言うことにしておきますか」
勇者「ふわぁーぁ。もう、眠いよ。明日もあるし、寝ようぜ。
魔法使いなんてメシ食ったら30秒で寝てるじゃないか」
執事「はははは。彼女は眠るのが趣味ですからね」
女魔法使い「そして、爺さんはおさわりが趣味、と」
執事「それはもう良いではありませんかっ」
勇者「じゃ、俺も寝るよ。あそこの端っこの木陰、もらうな。
んじゃな! 見張りの交代になったら起こして良いからなー」
713 :
以下、VIPにかわりましてパー速民がお送りします :[saga]2009/10/13(火) 00:54:55.77 ID:quxpU4cP
パチパチ、メラメラ。
女騎士「また、失敗してしまったかな」
執事「そんな事はないでしょう」
女騎士「勇者、聞かれたくなかったんじゃないかな。
でも、勇者は時々辛そうで、あんまりにも頑張り屋で。
みていられないんだ……」
執事「そうかも知れませんねぇ」
女騎士「……」
執事「でも、それでも良いのではないでしょうか。
世の中には、本人は尋ねられたくないことでも
尋ねた方が良いこともあると思うのです」
女騎士「どういうこと?」
女魔法使い「……古い」
女騎士「起きてたのか? 魔法使い」
女魔法使い「……古い思い出は、時に取り出して
空気に当てて、埃を払う必要がある。たとえ、痛くても。
自分がどこに立っているか、思い出すために」
女騎士「?」
執事「判らないでも宜しいでしょう。女騎士も、勇者も
それに女魔法使いも、まだとてもお若いのですから」
女魔法使い「……としより」びしっ
執事「にょっほっほっほ。わたしは年寄りなんですけどね〜」