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魔女「ハッピーハロウィン・オーバーナイト」
Part4


70 : ◆Jiax/7r6DNu8 :2016/10/27(木) 12:08:15.65 ID:Y/uA/VEio
男「は、はい。どうぞ」
魔女「……ありがとう」チーン
心配した係員さんが持ってきてくれたティッシュを、彼女はほとんど使ってしまった。
男「よほど、その。感動されたんですね」
魔女「うむ。最後のあの場面。あの言葉を口にするとき、彼女にどれだけの想いがあったかを考えたらな」
魔女「私には彼女の気持ちが特別によく分かるのだ……うう」
男「は、はい、どうぞ」
魔女「……あんまり泣き顔は見られたくなかったのだが」チーン
男(出来るだけ違う場所見ておこう)

71 : ◆Jiax/7r6DNu8 :2016/10/27(木) 12:10:27.73 ID:Y/uA/VEio
魔女「すまぬ。ようやく落ち着いたようだ」
魔女「よもやキミにこのような姿を見せることになるとは。考えてもいなかった」
男「そこまで感動したなら、この映画を観て良かったですね」
魔女「ああ。素晴らしいものであった。私も今までいくつかの劇は観てきたが、ここまでのものにはなかなか出会えない」
魔女「城ではそもそもあまり観る機会もなかったがな……」
魔女「そうだ! あの役者に会えないだろうか? この感動を与えてくれたことを感謝したい」
男「……ちょっと難しいですね」

72 : ◆Jiax/7r6DNu8 :2016/10/27(木) 12:12:38.78 ID:Y/uA/VEio
レスありがとうございます。続きは夜です。

73 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/27(木) 12:41:21.08 ID:8o02iR74O


74 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/27(木) 18:18:25.41 ID:x5riY+0sO
あたたかい

75 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/27(木) 19:50:19.08 ID:KtnBclrdo

本当に面白い

76 : ◆Jiax/7r6DNu8 :2016/10/27(木) 23:05:17.06 ID:Y/uA/VEio
魔女「……あの場面は驚いた。本当に手を食べられたのかと思ったぞ」トコトコ
男「あはは。印象的ですよね」
感想を話しながら、映画館を後にしたときだった。
魔女「ふむ。キミはもしかして、ああいったような……む?」
男「?」
魔女「あ!」
男(あれは……)
彼女の視線の先には、彼女と似た格好の魔女と……あれは吸血鬼?
これからどこぞのハロウィンイベントにでも向かうのだろうか、高いクオリティだ。
魔女「何だ、この国にも魔女がいたか」
安心したような、少し残念なような表情を浮かべた。
魔女「そうか、この国はあんな装いをするのだな。私たちの国とは少し違う」
男(確かになかなかセクシーだな、あのお姉さん)
魔女「!? あの隣にいるのは……吸血鬼!? 馬鹿な? もう太陽が昇っているのだぞ!?」
男(えっと)

77 : ◆Jiax/7r6DNu8 :2016/10/27(木) 23:10:35.45 ID:Y/uA/VEio
魔女「太陽の下でも活動できるという超越種か!? 伝説にしか聞いたことがない!」
男(迫真だな)
魔女「もしや、あの子はしもべとされているのか! これはならぬ、助けねば!」シュイン
男「ま、待った待った」ガッ
魔女「なぜだ!? なぜ止める?」
男「他の人を巻き込むのは、ちょっと」
男(あの二人、急いでどこかへ向かっているみたいだし)
魔女「巻き込む!? しかし捨て置けん!」
男「ま、待った。あの、ハロウィンだからって、あまり調子に乗りすぎるのも良くないですって」
魔女「……はろうぃん?」
男「え?」

78 : ◆Jiax/7r6DNu8 :2016/10/27(木) 23:12:55.93 ID:Y/uA/VEio
魔女「はろうぃん……」
男(今日はハロウィン。で、彼女はたまたまこの日に異世界からやってきた魔女、という設定)
男(頭が混乱しかかったが、整理すると単純だな)
男(彼女はこっちの世界のことは何も知らないわけだから、ハロウィンも知らないのが正解か)
魔女「……」
魔女「そうか。はろうぃん。今日はその仮装のお祭りの日だったのか」
男「ええ。いつもと違う格好に変装して楽しむんです。皆がみな仮装するわけではないですが」
魔女「なるほどな。そういう、ことであったか……」
魔女「……」
男「どうかしました?」
魔女「……いや。何」
魔女「あえて違う種族の仮装をすることによって、垣根を越えた集まりができるというわけか。素晴らしい試みだ!」
男(多分違う……)
魔女「……しかし私も、変な日に来てしまったものだな」
ぽつりと呟いた。

79 : ◆Jiax/7r6DNu8 :2016/10/27(木) 23:14:49.28 ID:Y/uA/VEio
太陽が高くなってくるにつれ、街中に現れるモンスターも続々増えていった。
近頃はアニメや漫画のキャラクターのコスプレも増えてきたみたいで、僕には良く分からない仮装も多い。
彼女はそれを嬉しそうに見、はしゃぎ、そして声をかけることすらあった。
魔女「ほう……。これはなかなかの出来だな。もしや、吸血鬼の知り合いがいるのではあるまいな?」
魔女「ふふふっ。それがあの南瓜野郎の仮装のつもりなのか。知られたら奴ら怒るぞ? ふふふふふっ」
魔女「む? これは……なんだ、本物の魔女か。仮装かと思った」

80 : ◆Jiax/7r6DNu8 :2016/10/27(木) 23:15:44.59 ID:Y/uA/VEio
逆に彼女に声をかける人も少なくなかった。同じ趣味の方から見ても、彼女の仮装は非常に素晴らしいものらしい。
会話の中でのそのキャラクターにブレはなく、それが一層彼女の評価を上げていた。
魔女「箒か? こいつはな、西の大魔女から直々に教わって作り上げたのだ。凄いだろう? ……まあ、時間はかなりかかったのだが」
魔女「この外套は、私の宝物の一つだ……尊敬している師から頂いたものだ」
魔女「……。あまりそうじろじろ見るな。……キミのことだ!」
男「善処します」

81 : ◆Jiax/7r6DNu8 :2016/10/27(木) 23:24:44.46 ID:Y/uA/VEio
たまに連絡先を聞こうとする輩もいたが、彼女はそれをそのキャラクターで回避し、あるいは助けを求めた目で見られ、僕が割って入ることもあった。
やはり自分の作り上げた魔女を披露するのが嬉しいのだろうか?
彼女は笑顔を絶やさなかった。
魔女「はろうぃんというのは楽しいものだな!」
男(……だけど、どうしてだろう?)
男(少し無理にはしゃいでいるように見える)

82 : ◆Jiax/7r6DNu8 :2016/10/27(木) 23:34:13.13 ID:Y/uA/VEio
男「何か気にかかることでもあります?」
魔女「えっ?」
男「いえ。何となくですけど」
魔女「……そう、見えるのか? いや、気のせいだろう。私は楽しい。とてもな」
男「そうですか、ならいいんです」
男(何言ってるんだ、僕は。会ってまだ時間もたってない。彼女のことなんて何も知らないっていうのに)
男「すいません、変なこと言いましたね」
魔女「いや。ただ、そうだな。少し品がなかったかもしれぬな。はしゃぎすぎたかもしれない」
魔女「でも今日ははろうぃんだろう? お祭りだろう? お祭りは楽しいものだろう?」
魔女「私はこの時間を楽しみたい。欲張りだからな」
魔女「時間は有限だ。楽しまぬと勿体無い。でないと一日などすぐに終わってしまう」
その場でくるりと一回転した。マントがひらひらと舞う。
魔女「キミも、楽しんでくれているといいのだが」
口元は笑っていたが、満面の笑みには見えなかった。

83 : ◆Jiax/7r6DNu8 :2016/10/27(木) 23:36:41.06 ID:Y/uA/VEio
男「僕も? それは、もちろんーー」
「お姉ちゃん、その魔女の格好かっけー」
感嘆の声に振り向くと、小さなお化けがそこにいた。
小学生くらいだろうか。白いシーツに穴を開けただけの、簡単な仮装だった。
魔女「む! そこにいるのは幽霊か!」
「うん。そうだよ。おばけだ。ユーレイだ!」
魔女「おのれ! もしや人に悪さをする気か!」
「へっへっへ。皆にいたずらしてやるー」
魔女「そうはさせんぞ!」

84 : ◆Jiax/7r6DNu8 :2016/10/27(木) 23:40:59.41 ID:Y/uA/VEio
彼女は目配せをすると、僕に箒を預けてきた。
魔女「いたずらの霊とは、なんと恐ろしい! 絶対に防いでやる!!!」
綿布製の可愛い幽霊を追いかけ回す。
「いたずらって楽しいもーん」
魔女「決していたずらなどさせぬ! この世界がいたずらばかりになっては大変だ!」
きゃっきゃっとはしゃぐ魔女とお化け。

85 : ◆Jiax/7r6DNu8 :2016/10/27(木) 23:42:32.95 ID:Y/uA/VEio
「じゃねー。魔女のお姉ちゃん」
一通り動いて満足したのか、お化けは友達の家へ行くと告げて去っていった。
彼女は楽しげに手を振る。
魔女「ふふふ。子供が楽しそうなのはいいことだな」
男「そうですね。こっちも楽しくなる」
男(……僕も子供のころは、あんな感じだったのかなあ)
その頃はハロウィンなんてよく知らなかったが、ごっこ遊びはよくしていた気がする。
空想の世界で遊ぶのが好きだったのだ。

86 : ◆Jiax/7r6DNu8 :2016/10/27(木) 23:44:07.39 ID:Y/uA/VEio
魔女「さて、次はどうする? どこかキミが行きたい場所なんてないだろうか?」
男「え? 僕が行きたい場所ですか? ええっと……」
男「……」
男(僕が行きたい場所……したいこととか……)
男(何かあったかなあ)
良い案が浮かばない。

87 : ◆Jiax/7r6DNu8 :2016/10/27(木) 23:45:06.10 ID:Y/uA/VEio
男(そう言えば最近、あのお化けの子みたいに思い切りはしゃいだことなかったなあ)
男(仕事しかしてないし)
男「……」
男(あれ、前にいつ遊んだか思い出せないぞ)
男(最近って程度じゃなかった。ずっとだった)
男「……」
男(僕は一体何を……)

88 : ◆Jiax/7r6DNu8 :2016/10/27(木) 23:46:16.21 ID:Y/uA/VEio
随分と沈んだ表情になっていたらしい。
魔女「あ……」
魔女「もしかしてキミに無理をさせているのかな。すまない。キミの負担も考えずに」
魔女「私は自分が楽しむことばかりを考えていて……」
あらぬ誤解をさせてしまったようだ。
男「いえ、僕は……」
彼女の姿を見た。
黒い三角帽に黒いマント。
お伽の世界から来た魔女。

89 : ◆Jiax/7r6DNu8 :2016/10/27(木) 23:49:09.47 ID:Y/uA/VEio
子供の頃。
僕はずっと、そういった世界を夢見ていた。
飛空船で空を駆け、騎士となって冒険する。
ドラゴンを撃退し、悪い魔女と対峙する。
囚われの姫を救い出し、僕は城へと向かうのだ。
自分が今もスーツを着ていることに気がついた。
せっかくのハロウィンだというのに。
どうせ乗りかかった船だ。
いっそ飛空船で飛ぶのも楽しいかもしれない。

90 : ◆Jiax/7r6DNu8 :2016/10/27(木) 23:52:15.47 ID:Y/uA/VEio
男「いえ、少し悩んでいただけです。僕が行きたい場所。今思いつきました」
魔女「そうか? ならばそこへ向かおう」
男「そうと決まれば急ぎましょう。時間は待ってくれないですからね」
魔女「……! ああ、そうだな! 急ぐぞ! ……ところで、どこへ行くのだ?」
男「とりあえず、なんですが。装備を揃えたいと思って」
魔女「……装備?」

91 : ◆Jiax/7r6DNu8 :2016/10/28(金) 00:05:59.79 ID:regnWSG0o
貸衣装屋
男「せっかくのハロウィンですからね。僕も仮装しようかなって」
魔女「……」
男「あなたが言っていた通り、僕も楽しみたいと思ったんです、が……」
魔女「……そう、か」
男(なぜか反応が重い)
男「ど、どんなのがいいですかね? 僕だとゾンビとか吸血鬼とか」
魔女「……騎士が良い」
男「え? き、騎士ですか? ハロウィンには少し合わないような気が……」
魔女「騎士が良い」
男「最近の風潮はかなり寛容みたいですけど。僕には少し格好良すぎるような」
魔女「いや、キミに似合おう。私が保証する。騎士にしよう」

92 : ◆Jiax/7r6DNu8 :2016/10/28(金) 00:07:02.77 ID:regnWSG0o
男(結局押し切られて、騎士になることになったが)
男「……うーむ」
男(騎士の服にも結構種類があるなあ……どれを選ぶか……)
魔女「悩んでいるのだな」
男「こういうの選ぶの苦手なんです。自分に何が似合うかあんまり分からないんですよね」
魔女「ならば私が見立ててやろう。キミに似合うものをな」フム
男「あんまり派手なのはやめて下さいね」
魔女「大丈夫だ! 私に任せておけ!」

93 : ◆Jiax/7r6DNu8 :2016/10/28(金) 00:10:39.75 ID:regnWSG0o
男「……」ガシャンガシャン
魔女「どうだ? なかなか男前だぞ?」
男「いや、フルプレートですけど、これ。前も見にくい」ガシャンガシャン
魔女「そうか……。突然魔物が襲ってきても大丈夫だと考えたのだが……」シュン
男「この国では襲ってこないです」ガシャンガシャン

94 : ◆Jiax/7r6DNu8 :2016/10/28(金) 00:11:05.36 ID:regnWSG0o
男「……」ギシギシ
魔女「これならいいだろう?」
男「痛っ!? 食い込む食い込む! チェ、チェーンメイルが食い込んで痛いです!」ギシギシ
魔女「動きやすさと防御力を兼ね備えた装備なのだが……」シュン
男「防御力は気にしなくていいです……」ギシギシ

95 : ◆Jiax/7r6DNu8 :2016/10/28(金) 00:11:31.83 ID:regnWSG0o
男「……」グラグラ
魔女「やはり急所は重点的に守らなくてはなっ!」
男「て、鉄兜は想像していたより重い……。く、首にダメージがああ」ゴキッ
魔女「頭だけは守れるようにしなければと思ったのだが……」シュン
男「……一旦、襲われることは忘れましょう……」

96 : ◆Jiax/7r6DNu8 :2016/10/28(金) 00:11:59.35 ID:regnWSG0o
魔女「……すまない。正直に言うと、私は騎士のことはあまり知らぬのだ。遠くから見るだけだったからな」
男「いえ。でも、なかなかだと思いますよ。僕が選ぶより良いと思います」
魔女「そうか!? よし。なら、もう一度だけ」

97 : ◆Jiax/7r6DNu8 :2016/10/28(金) 00:17:25.07 ID:regnWSG0o
男「……」ジャン
男(軽装の騎士といった格好だ、腰には剣までついている。鞘から抜けないけど)
魔女「動きやすく、それでいて私の趣味で選んだつもりだ。どうだ?」
男「洒落てるし軽快だ。いいですね、これ」
魔女「それに外套もある……ふふふ」ファサ
男「?」
魔女「分からないか? おそろいだ、おそろい!」クルクル
男「そ、そうですね」

98 : ◆Jiax/7r6DNu8 :2016/10/28(金) 00:18:00.92 ID:regnWSG0o
魔女「もちろん最小限の守りはできるしな。良い選択ができたようだ」
男(やはり守りだけは譲れないのか)
男「ええ。さすがです……ん?」
男(おぉ。キミ、結構値が張るみたいだねえ……)
男「あの……やっぱりこれ……」ボソボソ
魔女「うむ。さすが私の見立てだ。これなら、近衛騎士としても見劣りするまい!」フフン
男「……」
男(とびきりご機嫌であられる)
男「……ええい!」

99 : ◆Jiax/7r6DNu8 :2016/10/28(金) 00:21:20.19 ID:regnWSG0o
初めての仮装は少し緊張したが、街行く人は結局皆彼女を見ていた。
それが格好の奇抜さによるものではなく、彼女の振りまく愛らしさによるものだとようやく気がついた。
彼女は僕の少し先をたたと早歩きしては振りかえり、にこにこと僕が追いつくのを待った。
魔女「遅いぞ! 時間は待ってはくれぬ! それは、どこでも同じだ!」

100 : ◆Jiax/7r6DNu8 :2016/10/28(金) 00:25:16.16 ID:regnWSG0o
今日は以上です。

101 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/28(金) 01:46:58.69 ID:fSURf1OL0


102 :以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします :2016/10/28(金) 09:07:23.29 ID:FNxD5yhA0
えらいかわいい

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