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真紅「いってらっしゃいジュン」
Part1


1 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:[] 投稿日2008/09/23(火) 20:53:50.32 ID:bQCONE5o0
「ああ、いってきます」
 そう返事をすると、ジュンは玄関の扉を開ける。
 真っ黒な学生服を身にまとい、鞄を背負い、玄関から外へと出て行く。
 それに伴い、バタンという音と共に玄関の扉が閉じた。
「あージュン行っちゃったのー」
 少し遅れて、雛苺と翠星石が玄関に姿を現した。
「残念ね。もうジュンは行ってしまったわ」
「くぅ。あと少し早く起きていれば……」
 翠星石は悔しそうに言う。
 二人ともジュンの見送りをしたかったのだろう。
 最近ではドール達が毎朝ジュンを見送るのが日課になっていた。
 しかし朝は早く、今日のように間に合わない日もたまにあった。
「もう、一週間ぐらいですかねぇ」
 リビングへ戻る途中で翠星石が言う。
「巴も喜んでたのよー」
「彼女もジュンの為にいろいろと頑張ってくれたものね」
 真紅は今まで巴がジュンの為にしてきたことを思い出す。
「そのおかげもあって、やっとジュンは前に進めたのね」
 窓から外の道路を見る。
 塀の向こうで、何人かの学生が学び舎に向かって足を進めている。
 その中にジュンの姿もある。
 長い時間を経て、ジュンは学校に通い始めていた。

6 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:[] 投稿日2008/09/23(火) 20:58:20.86 ID:bQCONE5o0
 教室の扉を開け、中に入る。
 ジュンは早めに来たつもりだったが、既に何人かの生徒が教室の中にいた。
 その中に見知った顔、柏葉巴の姿もある。
「おはよう桜田君」
 巴はジュンに気付くと、挨拶をする。
「おはよう」
 ジュンもそれに返事をした。
 そして自分の席に着き、鞄を机の横にかけた。
「はぁ……」
 小さなため息。
 ――今日もまた、憂鬱な一日が始まる。
 ジュンは机に顔を伏せる。
 寝たふりでホームルームがくるまでの数十分を過ごすのだ。
 ジュンは登校を再開してから一週間ほど経つが、いまだに居場所を見つけることができなかった。
 寝たふりをしていれば、誰とも係わり合いになることはない。
 それが、今のジュンの考え方。
 再登校という大きな一歩を踏み出したものの、そこから先に進めない。
 自ら誰かと接することができなかったのだ。
 こうしてまた、一人ぼっちのまま時間が過ぎていく。

10 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:[] 投稿日2008/09/23(火) 21:03:05.55 ID:bQCONE5o0
「さーくーらーだー」
 それは二時限目終了後の休み時間でのことだった。
 二人のクラスメイトが寝たふりをしているジュンに話しかけていた。
 ジュンはそれに答えず、寝たふりを続ける。
「シカトかー。おいっ」
 ジュンの額にデコピンを食らわせる。
 額の痛みに、ジュンは顔を起こした。
 ――またこいつらか。
 ジュンは嫌々二人のクラスメイトに応じる。
「ああ、おはよう」
 目の前には嫌な笑みを浮かべたクラスメイト。
 かつてドレス作りが趣味なのかとジュンに問いただした二人だ。
「おはよー。桜田。今日も根暗だなぁ」
 ――余計なお世話だ。
 二人はバッグを背負っていた。
「今来たの?」
「あったりめぇだろ。朝早くなんてだるくて行く気しねぇよ。なあ」
「だよなぁ。やってられっかって話だぜ」
 ――クズめ。
「それでよぉ」
 二人の内、髪を逆立てた方がジュンに顔を近づける。
「もってきてくれたろ?」と耳元で囁く。

11 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:[] 投稿日2008/09/23(火) 21:07:16.53 ID:bQCONE5o0
「……ああ」
「さすが桜田。わかってんじゃん」
 ばんばんとジュンの背中を叩く。
「それじゃ、昼休みにいつもの花壇のところな」
 そう言って、二人は自分の席へと向かっていった。
「……くそっ」
 そう小さくつぶやくと、また机に顔を伏せ、寝たふりを始めた。
 昼休み。
 給食を食べ終え、片付けも済ますと、ジュンは席を立った。
 そして校舎裏にある花壇に行くため、教室を出る。
 その足取りは重い。
 ――いきたくない。でも……。
 ジュンは再登校を始めて二日目の事を思い出す。
 あれも、昼休みのことだった。
 ――――――――。
 ――――。
 ――。

13 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:[] 投稿日2008/09/23(火) 21:11:18.93 ID:bQCONE5o0
 その日の昼休み、ジュンは校舎裏の花壇に呼ばれていた。
 ジュンを呼んだクラスメイトは二人だったが、花壇にはそれ以上の人数の男子がいる。
 他のクラスから連れてきたのだろう。
「おーきたきた」
「ヒッキー君とーじょー」
「久々の学校はどーですかー? ひゃひゃひゃ」
 ――なんなんだこいつら。
 ジュンの心に怒りがこみ上げる。
「なあ、どうしてまた来る気になったんだ?」
「ヒッキー生活ってどうよ?」
 ――うるさい。
「まだ女物の服作ったりしてんの?」
「またクラスの女視姦しにきてんのか?」
 ――うるさいうるさいうるさい!
 どんっ。
「いってぇ」
 男子の一人が、地面に転がる。
 ジュンが突き飛ばしてしまったのだ。
「おい、なめた真似してんなよ桜田」
 男子たちはジュンを取り囲みはじめる。

14 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:[sage] 投稿日2008/09/23(火) 21:13:12.51 ID:HyPKeKzEO
何このトラウマ

15 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:[] 投稿日2008/09/23(火) 21:15:24.17 ID:bQCONE5o0
「おらよ、お返しだっ」
 突き飛ばされた男子が、お返しにジュンを突き飛ばす。
 ジュンは地面に仰向けで転がる。
「どーん!」
また別の男子が、ジュンの腹部を思い切り踏む。
「ぐふぅ」
 あまりの痛みにジュンは腹部を押さえた。
「ガードなんかしてんじゃねーよ」
 しかし、押さえた手の上から、男子たちは容赦なく蹴りを浴びせる。
「ぐっ……うぅ……」
 ジュンは歯を食いしばり、必死に痛みに耐える。
 しかし、限界はあっと言う間に訪れた。
「う……うげぇ……」
 ジュンは立て続けに腹部を蹴られたため、嘔吐してしまった。
「うわっ、きったねぇ」
「また吐きやがったよこいつ」
 嘔吐物が地面に広がるのを見て、男子たちは蹴るのを止める。
「まあこれくらいで勘弁してやんよ」
 そう言うとジュンの頭を足で踏み、嘔吐物に擦りつけた。
「あ、靴よごれちまったなぁ。買ったばっかりなのに」
「弁償させればいいじゃん」
「そうだな。桜田、明日五千円もってこい。持ってこなかったら……わかってるよな?」
 ジュンは涙を流しながら、頷いた。

16 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:[] 投稿日2008/09/23(火) 21:18:12.76 ID:JC2kRL9zO
うわ痛そう…
支援

18 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:[] 投稿日2008/09/23(火) 21:19:42.74 ID:bQCONE5o0
「それじゃあなー」
 男子たちは笑い声を上げながら、校舎の方へと戻っていった。
「くそ……」
 ――なんて惨めなんだろう。
 五時限目を告げるチャイムがなっても、ジュンは校舎に戻らなかった。
 少しして起き上がると、花壇の横にある水道で顔を拭く。
「なんで僕が……」
 その場に座り込むと、顔を伏せる。
「何で僕がこんな目に合わなくちゃならないんだよ!」
 そう叫ぶと、ジュンは再び涙を流す。
 ――もう、やめよう。学校に行くことが、そもそもの間違いだったんだ。
 夕方。
 ジュンは自宅へと帰ってくる。
「おかえりージュン君」
 のりが玄関で出迎える。
 今日は部活がなかったのだろう。
「おかえりですぅジュン」
「おかえりなのー」
「おかえりなさい」
 ドールたちもジュンの帰宅に気付き、声をかける。
「……ああ、ただいま」
 それだけ言って、ジュンは自分の部屋へと向かった。

20 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:[] 投稿日2008/09/23(火) 21:23:34.65 ID:bQCONE5o0
 夕飯。
 のりやドールたちはしきりに学校のことを聞いてくる。
 その度にジュンは「普通だよ」「まあまあかな」と曖昧な返事でごまかす。
 ――なんで、そんなに嬉しそうなんだよ。
 ジュンが学校に通い始めてから、夕飯が以前より明るくなった。
 のりもドールたちも、ジュンが学校に行っていることが嬉しいのだろう。
 ジュンはそれに気付いていた。
 ――ずるいじゃんか。
 もう学校にいかないと心に決めたジュンだが、皆の様子を見て、気持ちが揺らぐ。
 ――なんでそんなに嬉しそうにするんだよ。裏切れないじゃないか。
 学校には行きたくなかった。
 しかし、ジュンは彼女たちの期待を裏切らないためにも、この苦痛を耐えることを選んだ。
 
 翌日の昼休み。
 ジュンは五千円を素直に渡した。
「わかってんじゃん」
「俺らも言うこと聞いてくれれば痛いことはしないからよ」
 男子達は上機嫌で金を受け取ると、笑いながら校舎へと戻っていく。
「これでいい……。これでいいんだ……」

21 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:[] 投稿日2008/09/23(火) 21:27:47.46 ID:bQCONE5o0
 ――。
 ――――。
 ――――――――。
「おーきたきた」
 いつも通り、五人の男子がジュンを待ち受ける。
「さすが桜田だなぁ」
 下品な笑い声が校舎裏に響き渡る。
「で、例のあれは?」
 茶髪のクラスメイトが手を差し出す。
 ジュンはポケットから一万円札を取り出すと、直接手渡した。
「おー、本当にもってきたんだな。おっかねっもちー」
「親のサイフからパクったりしてんじゃね?」
「桜田も悪だなぁ。もう俺達の仲間じゃん。ひゃひゃ」
 ――お前らと一緒にするな。
「ありがとよー。それじゃあな」
 男子たちはあっという間に校舎へと戻っていく。
 悔しさがないわけではない。
 だが、ジュンはのりやドールたちに心配をかけたくなかった。
 その為にも、ジュンは耐えた。
 暴力に対する恐怖に、そして、のりとドールたちに対する罪悪感に。

22 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:[sage] 投稿日2008/09/23(火) 21:31:07.47 ID:KkGDPpoVO
梅岡は何をしているんだ

23 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:[] 投稿日2008/09/23(火) 21:31:33.85 ID:RJqH0vPZ0
だいじょうぶJUMならできる
木刀を持ってDQNを撲殺するくらいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい

25 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:[] 投稿日2008/09/23(火) 21:32:17.64 ID:bQCONE5o0
 事の一部始終を上空から隠れてみていた者がいた。
「情けない人間ねぇ」
 黒衣のドレスに漆黒の羽。
「あれで真紅のマスターだなんて。真紅も見る目がないわねぇ」
 ローゼンメイデン第1ドール。水銀燈だ。
「ま、見てて面白かったからいいけど」
 ジュンが校舎に戻っていくのを見届けると、水銀燈も学校を離れる。
 彼女がそれを目撃したのはまったくの偶然であった。
 めぐが体調を悪くして寝ているため、暇になった水銀燈は空中を飛び回っていた。
 下品な笑い声が聞こえたので近づいてみたところ、見覚えのある人間がいたのだ。
 それこそが真紅のマスター、桜田ジュンであり、水銀燈の敵ともいっていい存在だった。
 真紅のマスターともなれば、見ていて損はないわね。
 そう考えた水銀燈は、ジュンのいじめの一部始終を覗き見していたのである。
「また、明日も見に来てみようかしら」
 そう呟いて、水銀燈は自分の寝床である旧礼拝堂へと戻っていった。

27 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:[] 投稿日2008/09/23(火) 21:37:21.66 ID:bQCONE5o0
 その日の夜の献立は花丸ハンバーグだった。
 雛苺と翠星石は上機嫌で花丸ハンバーグを食べている。
「やっぱり花丸ハンバーグはおいしいのー!」
「う〜ん、デリシャスですぅ」
 食卓は花丸ハンバーグのおかげでいつもよりにぎやかだった。
 しかし、一人だけ元気がない者がいた。
「ジュン、どうしたの?」
「……ん?」
 ジュンに元気がないことに気付き、真紅は心配をして声をかける。
「元気がないみたいだけれど。学校で嫌なことでもあったの?」
「…………」
 ジュンは答えない。
「ジュン……?」
「久々の学校だからな。疲れてるんだよ」
 ジュンはやっと口を開ける。
「ずっと篭ってたから体力も落ちたみたいでさ。毎日へとへとさ」
 笑みを作って、言う。
「そうなの。この程度で疲れるなんて情けない下僕ね」
「誰が下僕だ誰が」
 ジュンはいつもの調子で話を続ける。
 ――そうだ、これでいい。心配をかけさせては駄目だ。
 作り笑いを維持して、ジュンは晩御飯を乗り切る。

28 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:[] 投稿日2008/09/23(火) 21:42:03.67 ID:bQCONE5o0
 翌朝。
「いってきます」
 ジュンはそそくさと家を出て、学校へと向かっていく。
「あー! いってらっしゃいって言えなかったのー」
「チビ人間ってば行くのが早すぎですぅ。のりですらまだですのに」
 ドールたちは悔しそうに窓から学校に向かうジュンを見ていた。
 その様子をのりは嬉しそうに笑いながら見る。
「あ、今日は部活休みだから帰りに買い物していこうかしら」
 そういってのりは引き出しから生活費の入った封筒を取り出す。
「……あれぇ?」
「どうしたの?」
 真紅が声をかける。
「なんだか生活費が少し減ってる気がして……」
「きっと泥棒ですぅ」
「そうなのー!」
「泥棒だったら少しじゃなくて全部もっていくでしょう」
「そうよねぇ。気のせいかもしれないわね」
 そう言うと、のりはお金をサイフに入れて、玄関に向かう。
「それじゃあ、行ってくるわねぇ」
 のりも学校へと向かっていった。
 雛苺と翠星石が玄関で送っている間、真紅は一人で考え事をしていた。
 お金を盗ったのは、ジュンかもしれないという一つの考え。
「……動機がないわね」
 ジュンは毎月お小遣いをたくさん貰っている。
 お金に困る事はないはずだと真紅は考えた。
「のりの気のせいだといいんだけれど」
 真紅はジュンの学校がある方角を見ながら呟いた。

29 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:[] 投稿日2008/09/23(火) 21:47:06.28 ID:bQCONE5o0
「おはよう」
 ジュンが教室に入ると、巴が挨拶をした。
「ああ、おはよう」
 まだホームルームまで時間はあり、教室に人は少ない。
「ねえ、もう一週間ぐらいたつけど、どう?」
 巴がジュンに話しかける。
「大変だよ。ほんと」
「勉強はついてこれてる?」
「おかげさまでバッチリだよ。特に困ってない」
「そう、よかった」
 巴がそう言うと同時に教室の扉がガラガラと乱暴に開く。
「珍しく真面目にきちゃったよ」
「たまにはこういうのもありだよな」
 入ってきたのはジュンを苛めている二人だった。
 その内の片方、赤みのある短髪の男子は、ジュンの方を見ると、表情を変える。
「おう桜田、おはよう」
「……おはよう」
「今日の昼休み、いつも通りな」
 ジュンの耳元で囁くと、二人は自分の席へ戻っていく。
 それから少しして、担任が教室に入り、ホームルームを始めた。

31 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:[] 投稿日2008/09/23(火) 21:52:08.12 ID:bQCONE5o0
 昼休み。
 いつも通り、ジュンは校舎裏の花壇に向かう。
「おーきたきた」
 待っていたメンバーは五人。これもいつもと変わらない。
 しかし、その中の一人の様子だけがいつもと違った。
 ジュンのクラスメイトである赤みのある短髪の男子だ。
 彼は忌々しげにジュンの方を見ていた。
「おい、桜田」
 短髪の男子はジュンを呼ぶ。
「なんだよ」
「お前、柏葉とはどういう関係だよ」
「……は?」
「だからどういう関係か聞いてんだよ」
 ――ああ、そういうことか。
 ジュンは瞬時に理解する。
 短髪の男子は巴のことが好きなのだろう。
 しかし、今朝ジュンと巴が仲良く話しているのが気になっているのだ。
「別に、付き合ってるとかそういうのじゃないよ」
「本当か?」
「本当だよ」
 ジュンは心底呆れた様子で答える。
 ――お前なんかが柏葉と付き合えるわけないだろう。

33 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:[] 投稿日2008/09/23(火) 21:56:04.20 ID:bQCONE5o0
「なんだその目は?」
「え?」
「馬鹿にするような目でみてんじゃねえよっ」
 ジュンの頬に衝撃。
 気が付けば、ジュンは地面に倒れていた。
 顔面を殴られたのだ。 
「俺が柏葉と付き合えないとでも思ってんのか? あ?」
 容赦のない蹴りが、ジュンの腹部を襲う。
「がふっ……」
 ガードが一瞬遅れ、蹴りが直撃した。
「内臓とか破裂すると面倒だから加減しろよー」
 他の男子がニタニタと笑いながら指示する。
「わかってる、よっ!」
 今度は足で、何度もジュンの背中を踏みつける。
「お前なんかに比べりゃぁっ、俺のっ、方がっ、よっぽどっ、可能性っ、あんだよっ」
 何度も、何度も、踏みつける。
 ジュンは歯を食いしばって耐える。
 ――すぐ終わる。すぐ終わる。耐えろ。耐えろ。
 しばらくして、昼休みの終わりを告げる鐘が鳴った。
「今日ので懲りたらあんな生意気なことすんじゃねーぞ」
 短髪の男子はそう言うと、他の男子を連れて校舎へと戻っていった。

34 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:[] 投稿日2008/09/23(火) 21:59:10.90 ID:bQCONE5o0
 五時限目が始まっても、ジュンは校舎裏の花壇に寝転がっていた。
 ――起き上がるのもおっくうだ。
 例えようのない悔しさと、腹部に残る痛みが行動させる気力を起こさせない。
 寝転がったまま、時間は過ぎていく。
 五時限目の終わりを告げる鐘が鳴り、しばらくして六時限目の始まりを告げる鐘が鳴る。
 時間はさらに流れ、とうとう六時限目の終わりを告げる鐘が鳴った。
 生徒達は授業を終え、部活動や帰宅のために校舎からでてくる。
 校舎から文化部の生徒以外の気配がなくなった頃に、ジュンは教室に荷物を取りに行く。
 そしてそのまま、何事もなかったかのような素振りで、帰宅した。
 玄関では、真紅が出迎えてくれた。
「おかえりなさい……ジュン、その顔どうしたの!?」
 真紅はジュンの頬にある痣に気が付く。
「あー帰ってきたのー」
「やーっと帰ってきたですね」
 後から雛苺と翠星石も玄関へと駆けて来た。
 それと同時にジュンの頬の痣に気付く。
「何があったのジュン?」
「……クラスのやつらの喧嘩に巻き込まれてさ。仲裁に入ったらこのざまだよ」
「あら、大事じゃなくてよかったわ」
「それにしても学校って危ないところですねぇ」
「巴が心配になってきたのよ……」
「お前らが想像してるほど危なくはないさ。今日のはたまたまだよ」
 そういってジュンは二階の自室へと上がっていく。
「今日は疲れたからもう寝る。姉ちゃんには夕飯もいらないと伝えてくれ。あと、朝まで起こすなよ」
 そう言って、ジュンは部屋の扉を閉じた。

36 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:[] 投稿日2008/09/23(火) 22:03:21.41 ID:bQCONE5o0
「あらぁ、ジュン君お夕飯いらないのねぇ」
 のりは翠星石と雛苺からジュンの伝言を聞いた。
「今日は部活ないからいつもより力を入れてお料理しようと思ってたけど、残念ねぇ」
「あーんなチビのことは気にせず翠星石たちだけでリッチなディナーを堪能するですぅ」
「ジュンだけ食べれないなんて可哀想なのよ。翠星石はひどいのー」
「なーに言ってやがるですかおばか苺。チビ人間は自分からいらないって言ったんですから!」
 雛苺と翠星石が言い争っていると、インターフォンが鳴る。
 どうやら来客のようだ。
「はぁーい」
 のりは玄関まで駆けていく。
「あらぁ巴ちゃん。いらっしゃい」
「!!!!!」
 来客は巴だった。
「巴ーーーーーーーーーー」
 翠星石との言い争いそっちのけで、雛苺は玄関にいる巴のもとまで駆けていった。
「あはは。こんにちは雛苺」
 飛びついてきた雛苺を、巴は優しく抱きかかえる。
「今日はどうしたの巴ちゃん?」
「ええ、今日は桜……ジュン君のことについてちょっと……」

37 名前:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:[] 投稿日2008/09/23(火) 22:06:03.75 ID:DLpssqw00
この頃からJUMは人を見下してたのかw