メイド「傭兵王女の冒険」
Part1
1 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/12/28(日) 17:09:58.31 ID:MiMjnxNAO
メイド「皆様初めまして」
メイド「私、東の港国第三王女様にお仕えするメイド騎士と申す者です」
メイド「皆様はお気軽にメイドとでもお呼び下さい」
メイド「さてさて、この度皆さんにお聞かせしたいのは、その困ったわんぱくな、だけど可愛い第三王女様のお話なのです」
メイド「実はこの度そのお姫様が、こんな困ったことを言い始めまして…………」
2 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/12/28(日) 17:11:49.96 ID:MiMjnxNAO
……………………
今日から手記でも付けようと思う
何故なら今日は私の記念すべき日だからだ
姫「そう言う訳で今日から傭兵王女として傭兵団を作ろうと思うんじゃ!」
メイド「どういう訳ですか!」
姫「じゃってのう…………第三王女なんぞ領地も資産も受け継げず、どこかの敵国に人質として嫁入りするくらいしかない…………不自由じゃろ?」
メイド「それも立派な御公務です」
嫌じゃ〜!
そう言う訳で私は城中の暇な……もとい有望な者をかき集め、城を出ることにした
一人は王宮の新人料理人
一人は新入の魔導師
一人は若いシスター
そしてメイドに、メイドを慕う女騎士
六人いればちょっとした問題は乗り切れるだろう
数日ほど入念に準備をした後お父様とお母様には内緒で五人を引き連れ城を出た
メイド「こんな事をして国王陛下がどれほどお嘆きになるか……」
しくしくと嘘泣きを始めたが、無視
料理人「私なんか何にも役に立ちませんよ?」
ごつい体の料理人がそんなことを言う
姫「旅先でも美味い物を食いたいのじゃ!」
料理人「はあ……」
メイド「……諦めて下さい」
料理人「強引な姫様だ……」
3 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/12/28(日) 17:13:18.27 ID:MiMjnxNAO
シスター「わ、私も小さな傷を癒すくらいしか……」
魔導師「私も」
姫「しかし旅と言えば僧侶に魔法使いじゃろ?」
大人しいシスターと暗めな魔導師……頼りないが旅をすれば成長するだろう
物語と言えばそういう物だし?
魔導師「いい加減」
うっさい
女騎士「あ、憧れのメイド先輩と旅なんて……」
メイドを除いた四人の中ではマシに戦えそうな女騎士だがどうにも頼りない
私の方が剣の腕は立つし
魔法も使える私にはとても適わない
しかし暇な……有望な騎士が他に居なかった
女ばかりのパーティーに野獣を入れる訳にもいかん
そう言う訳でこの六人
私は自分の宝石箱を持ち出し、旅慣れているらしい料理人と博識な魔導師、メイドを連れて準備を始めた
メイド「まず馬車を用意しましょう」
魔導師「それと、テント、毛布に日用品、樽をいくつか」
料理人「鍋が二個は欲しいかな、あと割れにくい食器とテーブルとか……釣竿も欲しい」
なかなか役に立つ奴らだ
宝石二つ売ってそれらと、食料や調味料、水を買い込む
着替えは城から持ち出した旅装束でいいだろう
私も流石にお姫様な格好のまま旅するほど馬鹿ではない
4 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/12/28(日) 17:14:38.95 ID:MiMjnxNAO
メイド「それで姫様、どこに行かれるんですか?」
姫「寒いから南方じゃの」
魔導師「単純」
姫「お前は一々うっさいのじゃ!」
魔導師「傭兵なら、戦争をしてる国に向かうべき」
姫「……そうじゃな〜」
結局私達は南方から更に西、南西草原の国に向かう事にした
メイド(まあそれなら陛下と連絡を取ることは出来ますね)
メイド(実は姫様の計画、全部国王陛下に筒抜けです)
メイド(実は)
メイド(料理人は東方で忍者と言うスパイをしていた者ですし)
メイド(シスターは大神官様の娘さん)
メイド(魔導師は王国一の知恵者の孫であり)
メイド(後輩の騎士ももちろん姫様相手に本気を出したことなど有りません)
メイド(私も魔法剣士だったりします)
メイド(これだけでも国王陛下の超親バカぶり……もとい、姫様に対するお深い愛情が分かると思います)
姫「何をごちゃごちゃ言っとるのじゃ?」
メイド「いえ、六人程度の傭兵団ではどこにも雇われないのではないかと……」
姫「うーむ、しかし今は兵を雇うほど金も無いし……」
メイド「宝石全部売れば一時的に兵団を組めますが」
5 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/12/28(日) 17:16:12.43 ID:MiMjnxNAO
メイド「その兵団を維持するのにお金がかかりますからね」
姫「そうじゃな……」
魔導師「最初は盗賊や魔物を狩ってお金と信用を得るべき」
姫「お、やっぱり賢いのう」
魔導師「姫が馬鹿なだけ」
姫「……こいつ……置いて行こうかの…………」
シスター「と、とにかく今は南の国に向かうのですねっ」
姫「おう」
姫「えい、えい、おーっ!じゃ」
「えい、えい、おー」
姫「覇気が無い……」
……旅立ちじゃ!
料理人「騎士さんと魔導師さん、少し付いてきてくれるかい?」
女騎士「は、はい〜、なんでしょうか?」
魔導師「食料調達?」
料理人「ああ、有るものだけじゃ足りなくなるからな」
早速料理人が夕食の用意を始めた
楽しみだ
買い入れた物がほとんど調味料だったから心配していたが
料理人達はキノコや木の実、山菜や野草、香草、鳩などを取って帰ってきた
料理人「魔導師さんのお陰で狩りも出来るし、助かるな」
魔導師「私も肉を食べたい」
女騎士「肉食系魔導師……」
シスター「良いですね〜お肉っ」
女騎士「なまぐさシスター……」
6 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/12/28(日) 17:17:19.10 ID:MiMjnxNAO
メイド「ではテーブルの準備をしましょう」
メイドはテキパキとテーブルと椅子を用意
樽から水を汲み出してコップと並べる
料理人「今日は鳩のソテーに炒めた木の実とキノコを添えて、あと野草のサラダ」
料理人「パンは買い置きの堅パンだけだけど、この香草のスープをつけて食べれば美味い」
料理人「次の街に着いたら根菜を幾つか買うことにしたいんだが……」
姫「うむ、いいじゃろ」
姫「いただきます!」
「いただきま〜す」
うむ、美味い
鳩肉に木の実炒めが良いハーモニー
それにしてもみんな大食いだ
この先大丈夫だろうか、少し不安になる
初めての夜
思ったよりずっと寒かった
テントに囲炉裏を作り、薪に火をおこしてその脇で寝る
寒い
寝辛い
あったかいベッドで寝たい……
早速ホームシック
……いやいや、まだまだこれからじゃ!
翌朝起きるともう料理人と魔導師が朝食の用意をしていた
…………焼けたベーコンの香りが素晴らしい
王宮にいてもこんな小さな事に感動しなかったのに
ちょっと旅の良さを感じた
他に楽しみがないのだから仕方ないが、太るかも……
7 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/12/28(日) 17:18:25.26 ID:MiMjnxNAO
メイド「思ったのですが、嵐になると困りますね」
料理人「森の中にテントを立ててやり過ごすしかないだろう」
昨晩より寝辛いのは間違いないだろう
早く街に行って拠点を作りたい
ああ、やっぱり旅は大変だ
物語のようにはいかない
料理人「夏場なんか虫も多いし、それは大変だぞ」
姫「う〜ん、帰りたくなってきた」
メイド「是非帰りましょう、今すぐ帰りましょう!」
姫「……最初からそのつもりで脅しとるじゃろ?」
メイド「勘のいい……いや、何でもありません」
姫「聞こえとるわ!」
シスター「私も街育ちなんで辛いです……」
魔導師「私も」
女騎士「私もかな〜」
料理人「じゃあ私も」
姫「お前は旅人じゃろっ!」
姫「お前ら結託して私を帰らせようとしておるようじゃが、無駄じゃぞ!!」
メイド(へそを曲げられました……)
メイド(こうなると姫様は面倒くさいです)
私達はそのまま南下し、なんとかその日の内に南の国に着いた
ふう、宿を手配して路銀を稼ぐために簡単な仕事を探そう
手持ちの宝石は緊急用に取っておき、できる限りは自分達で稼いで行きたい
8 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/12/28(日) 17:19:50.49 ID:MiMjnxNAO
メイド「へえ、それなら手詰まりにならずに済みそうですね」
魔導師「珍しく頭を使った」
姫「うっさいわっ!」
料理人「野菜とかを買い出しに行ってくる」
女騎士「荷物持ちます」
魔導師「薬草を集めてギルドに売ってくる」
シスター「教会に行って情報を集めてきます」
メイド「さて、私も魔導師さんの護衛をしますが、姫様は?」
姫「う〜ん、馬車を宿屋に持って行って管理してもらうかの?」
姫「その後教会に行くのじゃ」
メイド「分かりました、お気をつけて」
シスター「お待ちしております」
私は宿屋に部屋を二つ取り馬車を預け、必要な金額を確認した
野菜の値段は比較的安いと思うし、宿代の半分も見積もっていれば良いか
急いで教会に向かう
シスター「姫様」
姫「おう、なんか聞けたか?」
シスター「幾つか聞けましたが仕事はやはりギルドで頼む必要がありますね」
姫「そうじゃな、次はギルドじゃ」
シスター「重要そうな情報は」
シスター「南西草原は蛮族が幾つか結託した連合軍に西から攻められているようです」
シスター「そんな中南西草原の国王様は病の床にふせられ」
9 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/12/28(日) 17:20:56.64 ID:MiMjnxNAO
シスター「その戦争のため西の港国からの物資搬送が滞り」
シスター「敗残兵や飢えた民が山賊や盗賊になって大陸南の全域で暴れているとか」
シスター「後、それらを邪神教が後押ししているらしい……です」
姫「なんか深刻に荒れとるのう……」
シスター「直接南西草原に行くよりこの近くに拠点を設けて賊を討っていくのが適当かと」
姫「うむ、検討しておこう」
シスターから十分な情報を得たところでギルドへ
ギルドに入ると煙草や酒の、男臭い嫌な臭いが満ち満ちていて……
これからここに通うと思うとゾッとする
カウンターに行き係の女性に確認するもまだ魔導師達は来ていないようだ
とりあえず貼り出されている仕事を見てみるか
シスター「ええっと……」
姫「ふむ、薬草調達とかモンスター討伐もあるのう」
掲示板を見ていた私達に煙草をくわえたむさくるしい男が声をかけてきた
来るな
煙草の男「嬢ちゃん、こっちきてお酌してくれや」
はずむからよぉ、と手で丸を作る
姫「悪いがこいつは聖職者での、そう言う仕事はさせられん」
煙草の男「じゃあ嬢ちゃんがやってくれたらいいだろ……」
10 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/12/28(日) 17:22:01.42 ID:MiMjnxNAO
私の手を掴んできた
思いっきり足を蹴り払うと煙草臭い男は盛大にすっころんだ
ギルド中がドッと沸き上がる
まあこうなると男も怒り狂って掴みかかってくる訳だが
酔っ払ってるのでもう一回出足払い
ギルドのあちこちからヒューヒューと口笛が飛んできた
顔を売るには十分だろう
むふふ
この辺りでやめておけば良いのに煙草男はまだ突っかかってくる
私は男の顔に火球の魔法を放ち、ヘタった所で首元に細剣を突きつけた
シスター「姫様……お強いのですねっ!」
姫「こいつが酔いすぎなだけじゃ」
ギルドの奥から何人か人が出てきて男はつまみ出された
ギルド長と思しき人物から声がかかる
ギルド長「お嬢さんは東の港国の方ですね?」
一瞬、国に私の顔を手配に回されてる可能性を考えたが、そう言う話では無いようだ
姫「そうじゃ」
ギルド長「東の港国と言えば魔法剣士の国ですからね」
姫「まあのう」
その国でも最も優秀な魔法剣士の一人を連れ回していたりするが
そう言えばメイドは魔導師と一緒に来るのか
ギルド長「ではこちらのギルドで登録を行っていただけませんか?」
11 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/12/28(日) 17:23:12.35 ID:MiMjnxNAO
姫「急じゃのう、まあしばらくはこの国を拠点に仕事をするつもりじゃ」
ギルド長「承っていただき、有り難う御座います」
とりあえず薬草調達と恐竜退治を請け負った
これくらいなら……
やがて魔導師とメイドがやってくる
メイドはチラッとギルド長を見た
メイド(当然国王陛下の手は回っております)
姫「早速仕事を受けたのじゃ!」
魔導師「薬草調達?」
魔導師「馬鹿姫、この白鳩草ってすごくレアな薬草だから」
姫「えっ、手に入らんのか?」
魔導師「ちょっと手間」
姫「しまったのう、お前が来てから受けるんじゃったわ」
メイド「先に恐竜退治に行きますか……報酬はどちらも宝石一つですか」
魔導師「簡単な仕事ではない」
シスター「でも当分暮らせますね」
魔導師「クリア出来れば……ね」
その後買い出しに出た二人とも合流し宿に入る
うーむ、出だしからヘマをしたかのう?
料理人「ふむ、結構遭遇ポイントまで距離があるから馬車もある私ら向きの仕事かもな」
女騎士「恐竜なんて勝てるんでしょうか……?」
姫「宝石一つ売って魔法剣でも買うか?」
女騎士「い、いえ、それはパーティーのお金ですし……」
メイド「皆様初めまして」
メイド「私、東の港国第三王女様にお仕えするメイド騎士と申す者です」
メイド「皆様はお気軽にメイドとでもお呼び下さい」
メイド「さてさて、この度皆さんにお聞かせしたいのは、その困ったわんぱくな、だけど可愛い第三王女様のお話なのです」
メイド「実はこの度そのお姫様が、こんな困ったことを言い始めまして…………」
2 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/12/28(日) 17:11:49.96 ID:MiMjnxNAO
……………………
今日から手記でも付けようと思う
何故なら今日は私の記念すべき日だからだ
姫「そう言う訳で今日から傭兵王女として傭兵団を作ろうと思うんじゃ!」
メイド「どういう訳ですか!」
姫「じゃってのう…………第三王女なんぞ領地も資産も受け継げず、どこかの敵国に人質として嫁入りするくらいしかない…………不自由じゃろ?」
メイド「それも立派な御公務です」
嫌じゃ〜!
そう言う訳で私は城中の暇な……もとい有望な者をかき集め、城を出ることにした
一人は王宮の新人料理人
一人は新入の魔導師
一人は若いシスター
そしてメイドに、メイドを慕う女騎士
六人いればちょっとした問題は乗り切れるだろう
数日ほど入念に準備をした後お父様とお母様には内緒で五人を引き連れ城を出た
メイド「こんな事をして国王陛下がどれほどお嘆きになるか……」
しくしくと嘘泣きを始めたが、無視
料理人「私なんか何にも役に立ちませんよ?」
ごつい体の料理人がそんなことを言う
姫「旅先でも美味い物を食いたいのじゃ!」
料理人「はあ……」
メイド「……諦めて下さい」
料理人「強引な姫様だ……」
3 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/12/28(日) 17:13:18.27 ID:MiMjnxNAO
シスター「わ、私も小さな傷を癒すくらいしか……」
魔導師「私も」
姫「しかし旅と言えば僧侶に魔法使いじゃろ?」
大人しいシスターと暗めな魔導師……頼りないが旅をすれば成長するだろう
物語と言えばそういう物だし?
魔導師「いい加減」
うっさい
女騎士「あ、憧れのメイド先輩と旅なんて……」
メイドを除いた四人の中ではマシに戦えそうな女騎士だがどうにも頼りない
私の方が剣の腕は立つし
魔法も使える私にはとても適わない
しかし暇な……有望な騎士が他に居なかった
女ばかりのパーティーに野獣を入れる訳にもいかん
そう言う訳でこの六人
私は自分の宝石箱を持ち出し、旅慣れているらしい料理人と博識な魔導師、メイドを連れて準備を始めた
メイド「まず馬車を用意しましょう」
魔導師「それと、テント、毛布に日用品、樽をいくつか」
料理人「鍋が二個は欲しいかな、あと割れにくい食器とテーブルとか……釣竿も欲しい」
なかなか役に立つ奴らだ
宝石二つ売ってそれらと、食料や調味料、水を買い込む
着替えは城から持ち出した旅装束でいいだろう
私も流石にお姫様な格好のまま旅するほど馬鹿ではない
4 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/12/28(日) 17:14:38.95 ID:MiMjnxNAO
メイド「それで姫様、どこに行かれるんですか?」
姫「寒いから南方じゃの」
魔導師「単純」
姫「お前は一々うっさいのじゃ!」
魔導師「傭兵なら、戦争をしてる国に向かうべき」
姫「……そうじゃな〜」
結局私達は南方から更に西、南西草原の国に向かう事にした
メイド(まあそれなら陛下と連絡を取ることは出来ますね)
メイド(実は姫様の計画、全部国王陛下に筒抜けです)
メイド(実は)
メイド(料理人は東方で忍者と言うスパイをしていた者ですし)
メイド(シスターは大神官様の娘さん)
メイド(魔導師は王国一の知恵者の孫であり)
メイド(後輩の騎士ももちろん姫様相手に本気を出したことなど有りません)
メイド(私も魔法剣士だったりします)
メイド(これだけでも国王陛下の超親バカぶり……もとい、姫様に対するお深い愛情が分かると思います)
姫「何をごちゃごちゃ言っとるのじゃ?」
メイド「いえ、六人程度の傭兵団ではどこにも雇われないのではないかと……」
姫「うーむ、しかし今は兵を雇うほど金も無いし……」
メイド「宝石全部売れば一時的に兵団を組めますが」
5 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/12/28(日) 17:16:12.43 ID:MiMjnxNAO
メイド「その兵団を維持するのにお金がかかりますからね」
姫「そうじゃな……」
魔導師「最初は盗賊や魔物を狩ってお金と信用を得るべき」
姫「お、やっぱり賢いのう」
魔導師「姫が馬鹿なだけ」
姫「……こいつ……置いて行こうかの…………」
シスター「と、とにかく今は南の国に向かうのですねっ」
姫「おう」
姫「えい、えい、おーっ!じゃ」
「えい、えい、おー」
姫「覇気が無い……」
……旅立ちじゃ!
料理人「騎士さんと魔導師さん、少し付いてきてくれるかい?」
女騎士「は、はい〜、なんでしょうか?」
魔導師「食料調達?」
料理人「ああ、有るものだけじゃ足りなくなるからな」
早速料理人が夕食の用意を始めた
楽しみだ
買い入れた物がほとんど調味料だったから心配していたが
料理人達はキノコや木の実、山菜や野草、香草、鳩などを取って帰ってきた
料理人「魔導師さんのお陰で狩りも出来るし、助かるな」
魔導師「私も肉を食べたい」
女騎士「肉食系魔導師……」
シスター「良いですね〜お肉っ」
女騎士「なまぐさシスター……」
メイド「ではテーブルの準備をしましょう」
メイドはテキパキとテーブルと椅子を用意
樽から水を汲み出してコップと並べる
料理人「今日は鳩のソテーに炒めた木の実とキノコを添えて、あと野草のサラダ」
料理人「パンは買い置きの堅パンだけだけど、この香草のスープをつけて食べれば美味い」
料理人「次の街に着いたら根菜を幾つか買うことにしたいんだが……」
姫「うむ、いいじゃろ」
姫「いただきます!」
「いただきま〜す」
うむ、美味い
鳩肉に木の実炒めが良いハーモニー
それにしてもみんな大食いだ
この先大丈夫だろうか、少し不安になる
初めての夜
思ったよりずっと寒かった
テントに囲炉裏を作り、薪に火をおこしてその脇で寝る
寒い
寝辛い
あったかいベッドで寝たい……
早速ホームシック
……いやいや、まだまだこれからじゃ!
翌朝起きるともう料理人と魔導師が朝食の用意をしていた
…………焼けたベーコンの香りが素晴らしい
王宮にいてもこんな小さな事に感動しなかったのに
ちょっと旅の良さを感じた
他に楽しみがないのだから仕方ないが、太るかも……
7 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/12/28(日) 17:18:25.26 ID:MiMjnxNAO
メイド「思ったのですが、嵐になると困りますね」
料理人「森の中にテントを立ててやり過ごすしかないだろう」
昨晩より寝辛いのは間違いないだろう
早く街に行って拠点を作りたい
ああ、やっぱり旅は大変だ
物語のようにはいかない
料理人「夏場なんか虫も多いし、それは大変だぞ」
姫「う〜ん、帰りたくなってきた」
メイド「是非帰りましょう、今すぐ帰りましょう!」
姫「……最初からそのつもりで脅しとるじゃろ?」
メイド「勘のいい……いや、何でもありません」
姫「聞こえとるわ!」
シスター「私も街育ちなんで辛いです……」
魔導師「私も」
女騎士「私もかな〜」
料理人「じゃあ私も」
姫「お前は旅人じゃろっ!」
姫「お前ら結託して私を帰らせようとしておるようじゃが、無駄じゃぞ!!」
メイド(へそを曲げられました……)
メイド(こうなると姫様は面倒くさいです)
私達はそのまま南下し、なんとかその日の内に南の国に着いた
ふう、宿を手配して路銀を稼ぐために簡単な仕事を探そう
手持ちの宝石は緊急用に取っておき、できる限りは自分達で稼いで行きたい
8 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/12/28(日) 17:19:50.49 ID:MiMjnxNAO
メイド「へえ、それなら手詰まりにならずに済みそうですね」
魔導師「珍しく頭を使った」
姫「うっさいわっ!」
料理人「野菜とかを買い出しに行ってくる」
女騎士「荷物持ちます」
魔導師「薬草を集めてギルドに売ってくる」
シスター「教会に行って情報を集めてきます」
メイド「さて、私も魔導師さんの護衛をしますが、姫様は?」
姫「う〜ん、馬車を宿屋に持って行って管理してもらうかの?」
姫「その後教会に行くのじゃ」
メイド「分かりました、お気をつけて」
シスター「お待ちしております」
私は宿屋に部屋を二つ取り馬車を預け、必要な金額を確認した
野菜の値段は比較的安いと思うし、宿代の半分も見積もっていれば良いか
急いで教会に向かう
シスター「姫様」
姫「おう、なんか聞けたか?」
シスター「幾つか聞けましたが仕事はやはりギルドで頼む必要がありますね」
姫「そうじゃな、次はギルドじゃ」
シスター「重要そうな情報は」
シスター「南西草原は蛮族が幾つか結託した連合軍に西から攻められているようです」
シスター「そんな中南西草原の国王様は病の床にふせられ」
9 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/12/28(日) 17:20:56.64 ID:MiMjnxNAO
シスター「その戦争のため西の港国からの物資搬送が滞り」
シスター「敗残兵や飢えた民が山賊や盗賊になって大陸南の全域で暴れているとか」
シスター「後、それらを邪神教が後押ししているらしい……です」
姫「なんか深刻に荒れとるのう……」
シスター「直接南西草原に行くよりこの近くに拠点を設けて賊を討っていくのが適当かと」
姫「うむ、検討しておこう」
シスターから十分な情報を得たところでギルドへ
ギルドに入ると煙草や酒の、男臭い嫌な臭いが満ち満ちていて……
これからここに通うと思うとゾッとする
カウンターに行き係の女性に確認するもまだ魔導師達は来ていないようだ
とりあえず貼り出されている仕事を見てみるか
シスター「ええっと……」
姫「ふむ、薬草調達とかモンスター討伐もあるのう」
掲示板を見ていた私達に煙草をくわえたむさくるしい男が声をかけてきた
来るな
煙草の男「嬢ちゃん、こっちきてお酌してくれや」
はずむからよぉ、と手で丸を作る
姫「悪いがこいつは聖職者での、そう言う仕事はさせられん」
煙草の男「じゃあ嬢ちゃんがやってくれたらいいだろ……」
10 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/12/28(日) 17:22:01.42 ID:MiMjnxNAO
私の手を掴んできた
思いっきり足を蹴り払うと煙草臭い男は盛大にすっころんだ
ギルド中がドッと沸き上がる
まあこうなると男も怒り狂って掴みかかってくる訳だが
酔っ払ってるのでもう一回出足払い
ギルドのあちこちからヒューヒューと口笛が飛んできた
顔を売るには十分だろう
むふふ
この辺りでやめておけば良いのに煙草男はまだ突っかかってくる
私は男の顔に火球の魔法を放ち、ヘタった所で首元に細剣を突きつけた
シスター「姫様……お強いのですねっ!」
姫「こいつが酔いすぎなだけじゃ」
ギルドの奥から何人か人が出てきて男はつまみ出された
ギルド長と思しき人物から声がかかる
ギルド長「お嬢さんは東の港国の方ですね?」
一瞬、国に私の顔を手配に回されてる可能性を考えたが、そう言う話では無いようだ
姫「そうじゃ」
ギルド長「東の港国と言えば魔法剣士の国ですからね」
姫「まあのう」
その国でも最も優秀な魔法剣士の一人を連れ回していたりするが
そう言えばメイドは魔導師と一緒に来るのか
ギルド長「ではこちらのギルドで登録を行っていただけませんか?」
11 : ◆J9pjHtW.ylNB :2014/12/28(日) 17:23:12.35 ID:MiMjnxNAO
姫「急じゃのう、まあしばらくはこの国を拠点に仕事をするつもりじゃ」
ギルド長「承っていただき、有り難う御座います」
とりあえず薬草調達と恐竜退治を請け負った
これくらいなら……
やがて魔導師とメイドがやってくる
メイドはチラッとギルド長を見た
メイド(当然国王陛下の手は回っております)
姫「早速仕事を受けたのじゃ!」
魔導師「薬草調達?」
魔導師「馬鹿姫、この白鳩草ってすごくレアな薬草だから」
姫「えっ、手に入らんのか?」
魔導師「ちょっと手間」
姫「しまったのう、お前が来てから受けるんじゃったわ」
メイド「先に恐竜退治に行きますか……報酬はどちらも宝石一つですか」
魔導師「簡単な仕事ではない」
シスター「でも当分暮らせますね」
魔導師「クリア出来れば……ね」
その後買い出しに出た二人とも合流し宿に入る
うーむ、出だしからヘマをしたかのう?
料理人「ふむ、結構遭遇ポイントまで距離があるから馬車もある私ら向きの仕事かもな」
女騎士「恐竜なんて勝てるんでしょうか……?」
姫「宝石一つ売って魔法剣でも買うか?」
女騎士「い、いえ、それはパーティーのお金ですし……」