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覗かれる妻
Part3

「しかし、妻でお役に立つんでしょうか」
「勿論です。ただご主人、
 最初にお断りしておきたいことがあります。
 今回は接待です。
 奥様には多少ご無理を
 お願いしてもらうことになるかもしれません」
「無理、といいますと」
「ま、ホステスの役目をしてもらうわけです。
 部長さんを存分に楽しませるんです。
 女性にしかできないこともありますからな」
山口のその意味深な発言が私は気になった。
妻にいったい何を要求するつもりだろうか。
オフィスでのセクハラまがいの
行為のことが私の頭を素早くよぎる。
しかも泊まりの旅行である。
何か間違いが起こらないとも限らない。
しかし他ならぬ、山口の誘いだ・・・・。
融資の件がある以上、
拒絶することは私にはできない。
不安げな私を感じたのか、
山口は続けて私に話しかける。
「さすがにご心配でしょう。
 そこで是非ご主人も
 一緒に招待したいと思いましてね」
「しかし私はお邪魔では・・・」
「夜の宴席では席を外して
 もらうことになるかもしれません。
 しかしそのほかは奥様とご一緒ですよ。
 ご主人も毎日カフェに顔を出して、
 なかなかお疲れでしょう。
 ここらで一服されてもいいんじゃないでしょうか。
 なあに、費用のほうはこちらの経費で
 全部落としますからご心配なく」
「いや、それではあまりにも・・・」
躊躇する私に、
山口は少し強い調子で私に言った。
「奥様には既に了承は得ています。
 お力になれるなら、っておっしゃってましたよ」
自分の意に私が逆らえないことは、
山口自身がわかっているはずだ。
しかも今回は旅行への招待である。
私はその提案について極力考えすぎないよう、
軽い気持ちで了承することにした。
私たちが向かった温泉宿は、
伊豆の西海岸沿いの山中にある
隠れ家的な場所だった。
ホテルではなく、
広い敷地に茅葺の数寄屋造りの
離れがいくつも建てられた、
風情があり、かなり高級なクラス
と思われる旅館だ。
約15ほど建てられた離れは、
眺望、露天風呂、庭など、
それぞれが異なる強みを持っており、
その一帯は周囲の喧騒から完全に隔離されている。
そこは、虫が奏でる音だけが存在する、
心地よい静寂に包まれていた。
我々は5歳の長男を私の実家に預け、
久々にカフェも休業とし、
この旅行に参加した。
好きなウルトラマンの大怪獣バトルゲーム
のカードアルバムを握り締め、
長男は、我々だけが出かけることに、
全く反対はしなかった。
既に祖父母からは、
新しい怪獣人形を買ってもらう約束を
取り付けている模様だった。現金なやつである。
旅行への参加者は、山口所長、私、妻、
そして接待相手の大手ハウスメーカーの部長、以上4名。
部長の名前は松野といった。
部長との肩書きながら、想像以上に若い。
恐らくまだ40代半ば、
私より少し上くらいではなかろうか。
山口よりは明らかに年下である。
社会に出れば年齢など関係はない。
時には、年下の相手であろうと卑屈になり、
もてなす必要がある。
妻の話によれば、山口の設計事務所は、
松野が勤務するハウスメーカーの
お抱えのような扱いになっているらしかった。
仕事の大半は松野のメーカーから回され、
それにより山口の経営は
成り立っているといってもいいらしい。
普通に考えれば、ハウスメーカーと
設計事務所というのは競合するような気がするのだが、
下請けとしての役目を担う事務所も数多くあるそうだ。
そうした関係であれば、
山口が松野を接待するのも当然といえた。
門をくぐり、フロントがある離れまで、
我々は石畳を踏みながら、
風情のある庭園を歩く。
打ち水がなされ、
見事に配置された木々の若葉の匂いが、
あたりを濃く包み込んでいる。
梅雨明け間近を思わせる、
厳しい日差しが空から降り注いでいた。
「所長、こんな豪華なところ、
 ほんとにいいんですか」
周囲を見回しながら、
妻が隣を歩く山口に聞く。
「裕子さん、いいんですよ、
 今日は。その代わり、
 松野さんへの接待、頼みますよ」
山口は、後方に少し離れて歩く
松野に視線をやりながら、妻に声をかける。
「ええ、それは勿論、頑張りますわ」
妻と山口のその話しぶりに、
想像以上の2人の親密度を私は感じる。
私は多少の居心地の悪さを感じながら、
2人の後をついていった。
私たち夫婦に一つ、
そして少し距離をおいて山口と松野と、
二つの独立した離れがそれぞれに割り振られた。
私たちの部屋の風呂は、
露天風呂ではないものの、
岩風呂といわれるもので、
天然の岩をくりぬいて作られた、
何とも個性的なものだった。
山口たちの部屋には、
内風呂としての檜風呂、
そして露天風呂が備わっており、
部屋数も8畳間、6畳間の二部屋と、
大人数でも泊まれそうな離れであった。
到着後、まずはそれぞれの離れで
休憩ということになり、
私たちは夕食の時間までは
各部屋で滞在することにになった。
各自の車で来たのだが、
途中の高速が案外と空いていたこともあり、
予定より早めに到着し、まだ午後4時前であった。
妻と一緒に温泉に来るなど、
いったいいつ以来であろうか。
会社に勤務していた頃も年に1回か2回の
家族旅行は近場で適当に済ませていた我が家にとって、
このような豪華な温泉宿は、
全く縁の無いものであった。
「裕子、見なよ、この風呂」
私は部屋に入るなり、早速岩風呂に妻を案内した。
「天然の岩をくりぬいて作ったって書いてあるぞ」
「へえ〜。
 でもよくくりぬいたよね〜、こんな固そうな岩」
能天気な感想を漏らす妻を、
私は背後から突然抱きしめる。
それは、自分でも意外な行動だった。
「ちょっと、あなた・・・・・」
モノトーンのフラワープリントを
あしらったワンピースを着た妻が、
驚いたように体をよじる。
肩から素肌を露出した、
開放的な服装だ。
身長170センチ少々の私と、
妻の背丈はほとんど変わらない。
「いいじゃないか、
 まだ夕食まで時間はあるし・・・・・」
私は背後から手を伸ばし、
胸元からワンピースの中に潜り込ませる。
胸の膨らみのあたりを軽く揉みながら、
うなじに舌を這わせる。
「あんっ……」
強く抵抗もしない妻を確認し、
私はワンピースの後ろファスナーを一気に下ろす。
「あなた、そんなに焦らないで・・・・・」
私はそれには答えることなく、
妻からワンピースを剥ぎ取り、
ランジェリーだけの姿にした。
ブラとパンティー、揃いの薄い紫色で、
全面をストレッチレースで仕上げた贅沢な下着であった。
目を凝らせば、ブラの下には、
桃色に熟れた乳輪、そして乳首が、
刺繍の隙間から確認できるようであった。
「こんな下着、持ってたのか、お前」
その刺激的なランジェリーに
身を包んだ妻を抱きながら、私はそう訊いた。
「だって知らないでしょ、
 あなた、私の下着なんて・・・・」
「そりゃそうだが・・・・」
夜の営みが頻繁でない私たちにとっては、
確かにそれは的を得た指摘だ。
しかし、私はそのような挑発的な
下着をつけた妻を見たことはなかった。
私は妻を自分の方に向け、激しく唇を吸った。
そして自らのシャツ、チノパンを脱ぎ捨てる。
既に硬さを増している私の股間に、妻が気づく。
「どうしたの、あなた・・・・・」
キスを受け入れながら、妻は私にそう訊く。
温泉での接待。山口と親しげに会話をする妻。
接待相手となる松野。
そしてこの刺激的なランジェリー姿の妻。
全てが折り重なって私を襲い、
興奮をもたらしたのだろうか。
しかし、そんなことを妻に吐露できるはずもない。
私は妻の質問には答えず、
背中のブラのホックに手を伸ばし、それを外す。
ブラが床にはらりと落ち、
その下に隠されていた形のいい妻の胸が露になる。
「やだっ・・・・・」
私は乱暴にその胸を揉みながら、
浴室のドアを完全に開けた。
乱暴に妻のパンティーを剥ぎ取り、
我々は全裸で抱き合ったまま岩風呂に入った。
大人2人が入っても、
それは十分なスペースであった。
私は妻を自分の上に、
脚を広げて向かい合わせるように座らせる。
激しく口付けを交わしながら、
私は妻の秘唇を指で刺激する。
湯船の中でも、それはまた、
牝としての湿り気を帯びていることは
容易に確認できた。
「あんっ・・・・・・、
 駄目だってば・・・・・・」
悶える妻の乳首を唇で軽く噛み、
更に刺激を加える。
「どうだ、裕子」
「ああんっ、駄目っ・・・・・・」
艶のある吐息を漏らしながら、
湯煙が充満する室内で、感じやすい妻は、
恥ずかしげに私の股間に手を伸ばす。
私の肉棒は水面下で、
完全に硬く変貌していた。
それをつかみ、妻は催促するように
優しく上下に手を動かす。
「駄目だよ・・・・」
私は、このいつもとは違うシチュエーションに、
いつも以上に我慢ができそうになかった。
妻の太腿を抱えると、
肉棒を妻自身の下に仕向け、
そして妻をその上に沈めた。
「ああんっ!」
浴槽に入ったまま貫かれ、妻が嬌声をあげた。
我慢できないかのように、
妻は自分から激しく腰を前後に揺らし始める。
私は懸命に放出を先延ばししようとするが、
妻のその淫らな姿態に、
それは難しそうなことを悟る。
「あんっ! あんっ! あんっ!」
あごを突き出すように体を反らし、
妻は私の上で踊った。
「裕子っ・・・・」
「ああっ、
 いいっ・・・・・・、
 いいわ・・・・・・」
下半身を振り続ける妻の乳房を、私は揉みしだき、そこに顔をうずめる。
「あんっ・・・・・・、あんっ・・・・」
浴場に、妻の喘ぎ声が妖しく響き渡り、
それが2人の興奮を加速させるようだった。
体をくねらせる妻を上にし、私は限界を感じる。
「裕子、もう出ちゃうよ・・・・・」
「ああんっ・・・・・
 あなた、まだ駄目っ・・・・・」
妻は目を閉じたまま、
私にキスを求め、そう声を漏らす。
「裕子っ・・・・」
「あんっ!・・・・・・駄目っ・・・・」
もはや決断をした私は、
下から腰を突きあげ、
一気にスパートを始めた。
激しく浴槽内が波打ち、湯が外に飛び散る。
「裕子、いいか!」
「いいっ・・・・・いいわっ!・・・・・」
「ああっ、いくぞ!」
「あんっ・・・・・まだっ・・・・」
「ああっ、裕子!」
私はそう叫ぶと、妻の中に、
それを激しく放出した。
妻を取り残したまま、私は、一人、
満ち足りた状態で妻を抱いたまま、湯船に沈んだ。
「あれじゃ、奥さんは満足できないですねえ」
下方で繰り広げられた光景の一部始終を眺め終わり、
松野は山口にそう声をかける。
「いや、そうでしょうなあ・・・」
部下である裕子の裸体に興奮を隠しきれない山口が、
努めて冷静に松野に反応した。
「おや、どうしました、山口さん」
山口の声色から、その隠しきれない興奮が、
松野にも伝わってしまったようだった。
「いや、普段目の前で見ている女性ですからなあ。
 あんな風に乱れる光景を見てしまうと、
 さすがに興奮してしまいますわ」
照れを隠すような表情で
素直に山口はそう白状し、そして話を続けた。
「何となくですが、
 あの奥さんからは
 聞いておったんですよ、私は」
「ほう」
「どうも、夜の営みは
 ほとんどしていない様子でしてね。
 しかも旦那の行為で満足したこともないと。
 いや、仕事の合間に冗談めかして
 何とか聞き出しただけなんですが」
「あれを見れば、それは事実ですね」
「ご主人があれほど早くちゃ、
 奥さんも満足はできないですなあ」
狭い屋根裏のスペースに
腰をかがめるようにしゃがみこみ、
先程から2人は、下の風呂の様子を
一部始終手に取るように観察をしていた。