犬娘「魔王になるっ!」
Part25
311 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/12(金) 22:03:44.68 ID:IpGAEcpAO
最終章「犬娘、魔王になる」
闇の力はあらゆる魔法防御を貫き、命を奪う悪魔の光である
犬娘はそれを受け無惨にも地面に転がった
しかし
犬娘「あいたたたっ!」
白導師の作り上げた光の衣は闇の閃光に打ち勝った
もちろん全てを遮ったわけではないが
犬娘「痛い痛い痛い!」
メイド剣士「大丈夫ですか、魔王様!」
犬娘「痛かったけどなんかちょっと回復した」
メイド剣士「これは……」
メイド剣士「そうか、光の衣はダメージを回復力に転化するアイテムなんだ!」
白導師「あちゃー、バレちゃった」
メイド剣士「あいつは脆い、ごり押しで倒しましょう!」
犬娘「分かった!」
白衣に守られた五人が前線に立つ
勇者「雷神剣、爆!」
勇者の爆発する雷神剣が巨大に固まった闇を打ち砕く
メイド剣士「氷剣斬、乱れ吹雪!」
メイド剣士は氷剣を何十と打ち出す
女拳士「爆裂脚!」
女拳士は強力な爆裂魔法で敵を薙ぎ倒す
犬娘「雷神脚ーっ!」
犬戦士「みんなすげーな、俺も負けてらんねー!」
犬戦士「秘技、雷神の鎚!」
巨大な魔物たちは次々と砕けていく
しかし、更に魔物たちは結合し、巨大に、邪悪になって行く
312 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/12(金) 22:07:34.77 ID:IpGAEcpAO
巨人を見下ろすような魔物たちは、自らの重さで砕けながら、徐々に進化を始めた
脆さが無くなり、ダメージを与え辛くなって行く
メイド剣士は何となく嫌な感覚を感じていた
もしこの魔物が知性を持って進化したら太刀打ち出来ないのではないだろうか?
メイド剣士「氷剣斬!」
攻撃の通じる内に倒す
そのために剣を振るう
勇者「これは……、何かおかしい」
勇者「倒す度に闇の力が集まっていってる……」
確かにここまで進軍してきた間、敵の闇の力は削っているはず
しかし、目の前の闇は明らかにそれを取り込んで膨らんでいる
女拳士「無駄なわけ……、無いよな?」
勇者「減っているはずだ!」
勇者「雷神剣、塊、射!」
勇者は目の前の巨大な闇を数体、一度に破壊する
闇は
やがて一つに固まっていった……
犬娘「は、破壊神?」
確かにそれは、伝承に残る破壊神そのものだった
その魔物が形を成した時、その傍らに黒衣の魔女が姿を現した
黒衣「……実験」
黒衣「第一段階は、成功……」
勇者「貴様!」
犬娘「今度は……」
犬娘「今度は逃がさない!」
313 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/12(金) 22:09:33.62 ID:IpGAEcpAO
黒衣「そだってる」
黒衣「今、倒されては、計画は無に帰す……」
黒衣「こいつと……、遊んで……、満足して……」
黒衣の魔女はそれだけ告げると姿を消した
犬娘「〜〜〜っ!!」
無念である
犬娘は激しく咆哮し、今、初めて、己の力を知った
犬娘「うおおおおおおーーーーっ!」
闇が集い破壊神となるなら
光が集えばなんとなるか
犬娘は今、その身を持ってそれを現した
犬娘「うわあああああああああっ!!」
犬娘は自身が閃光になったように、破壊神を貫き、破砕した
メイド剣士「な、……なに……、あれは……」
勇者「これは……光の力の正体……?!」
女拳士「くっ、これだけのエネルギー、あんな小さな魔王様が持ってるのか!?」
勇者「いや、相当に負担がかかってるはずだ」
勇者「止めなければ、魔王様が死んでしまうかも知れない……!」
メイド剣士「……!」
メイド剣士「いやあ!」
メイド剣士「魔王様ぁーっ!」
犬娘はたった一人で破壊神を砕ききると、そのまま倒れた
そしてもはや目覚めないのではないかと思うほど、深い眠りについた
314 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/12(金) 22:11:28.46 ID:IpGAEcpAO
女神「光の力ってのはやっかいなもんでね」
女神「ん〜、分かってる」
女神「結局それは生物の生存欲求なんだよ」
女神「光の力は私達の希望、でも、そりゃ奇麗事なわけないんだわ」
女神「そう思わない?」
魔王「お前は突然百年ぶりに現れて何を言ってるんだ」
女神「分かってるって、悪い、やっぱり女神になる前の性格が抜けてないんだわ」
女神「でも女神って奴は不便なもので、世界全部見てるんだよね」
魔王「俺にしても鬼畜だと思うぞ、それは」
女神「女神なんだからしゃーない。」
魔王「なんとなく、今の喋り方は昔のお前っぽかったな」
魔王「大魔法使いとか笑えると思わね?」
女神「確かに」
女神「私はただの魔法使い……」
女神「でも女神になるなら先代のクソより私の方がよくね?」
魔王「ああ、それは間違いないわ」
魔王「先代女神ってどうなるんだ?」
女神「旅立つだけさ、それだけだよ」
女神「それより、けっこうな面倒事抱えてるじゃないの」
魔王「まあな」
魔王「だが、大丈夫だ」
魔王「あいつ等は、光にも闇にも、負けやしねーよ」
魔王「俺に勝つ気で挑んできた奴なんて、何年ぶりやら」
315 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/12(金) 22:13:03.23 ID:IpGAEcpAO
女神「そりゃ、逸材だね〜」
魔王「おう、任せておける」
魔王「久し振りに見たよ、勇者って奴を」
女神「それは、勇者が必要な危機が迫っているって事だけどね〜」
魔王「ん〜」
魔王「そうだ、俺も体が鈍ってるから、ちょっと俺と打ち合いしてみないか?」
女神「世界を七度滅ぼしそうだから、やめとく」
魔王「だよな〜」
女神「君が封印されたらまた会いに行くよ」
魔王「縁起でもないな!」
…………
破壊神は犬娘一人に打ち倒された
しかし、その代償として、犬娘は目を覚ますことが出来なかった
メイド剣士は犬娘にすがりひたすら涙し
勇者や女拳士も茫然としていた
外では再び雑兵が押し寄せ、犬戦士はそれを打ち倒し
そのまま悪戯に時間が過ぎるのかと思われた
その時、彼女が帰ってきた
術師「……魔王様……」
メイド剣士「術師さん!」
メイド剣士は術師を認めると、すがりついた
メイド剣士「魔王様を、魔王様を助けて!」
術師が予め登録しておいた、命の木霊
それはこの危機を敏感に察知していた
術師は作りたての白衣を纏い、帰ってきた
術師「何をしてますの?」
術師はメイド剣士を離した
316 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/12(金) 22:14:13.67 ID:IpGAEcpAO
術師「あなたが魔王様を守ってくれると思ったから私はキタハマを離れたのに……」
メイド剣士「うう……」
メイド剣士は泣いた
勇者「どうしようも無かった、彼女に罪はない」
女拳士「もしメイドちゃんが罪を犯したなら、アタシも同罪だな」
術師には分かっていた
結局は自分も、無力であり、同罪なのだ
術師「……ごめんなさい、メイドさん」
術師「私らしくもない……」
術師「ごめんなさい、ごめんなさいね」
術師は、メイド剣士を、強く抱きしめた
犬娘は深い眠りに落ちて、目を覚まさない
勇者「記述が残ってる、これは大魔法使い様が落ちた魔法の眠りに似ている」
女拳士「あの、絵本で良くある奴だね」
白導師「騎士様のキスで目を覚ます奴ね、よし、キスしまくってみるか」
メイド剣士「氷剣斬」
白導師「ぐはあっ」
術師「ごめんなさい、メイドさん」
メイド剣士「……いえ」
メイド剣士「私が無力だったのは、その通りだもの……」
317 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/12(金) 22:15:59.73 ID:IpGAEcpAO
メイド剣士「魔王様……」
メイド剣士「いったいどうなってしまったって言うの……」
術師「魔法の眠りには違いないでしょう……、しかし」
術師「私はこの状態を癒す方法を知りません……」
勇者「魔力過多症で障害を残したケースも聞いたことがある……」
勇者「予断は許さないはずだ」
女拳士「だからって、どうするんだよ」
メイド剣士「表で犬戦士さんたちが戦ってくれてる……」
メイド剣士「私も助力してきます」
女拳士「私も行くよ」
術師「必要ありません」
術師「私、怒っています……」
…………
その戦いは記録に残るどんな戦よりも鮮やかであったと記されるべきだろう
術師は懐から、銀の石を取り出した
術師「銀弾の雨」
術師は低魔力で数百発の銀の弾丸を生み出した
砦に取り付こうとしていた邪なる物たちは蹴散らされた
しかし、砕いたそれらはいくつかの塊を築いた
術師「追跡火槍!」
術師は赤銅色の石を取り出し、燃え盛る火の槍を十数本生み出した
それらは敵の匂いを追い、固まりだした数百の闇を焼き尽くした
術師「全て、焼き尽くす!」
術師は燃え盛る銀の槍を、数本呼び出した
318 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/12(金) 22:17:59.43 ID:IpGAEcpAO
術師の怒りは、街道であったものを溶岩の沼に変えた……
たった一人で闇を払うと、術師は帰ってきた
女拳士「半端ないね……!」
メイド剣士は犬娘にすがるような体制で眠ったように動かない
術師は、それを遠目にながめた
メイド剣士は悲しかった
ただ彼女を守れなかったことが
術師はただ悔しかった
自分が何も出来ないことが
女拳士も勇者も、ただ自分の無力を感じている
そんな折
白導師「……ショック療法とかどうだろう」
あからさまに怪しい人物が怪しい提案をした
しかし、全員若干正気を失っていたことは否めまい
止めなかった
白導師「はい、犬娘ちゃん、いつまでも寝てたら裸に剥いちゃうよ〜?」
メイド剣士「真空斬」
白導師「ちょっ、治療、治療!」
白導師「体中ペロペロしちゃうよ〜?」
術師「神の杖」
白導師「ちょっ、こんな狭い部屋溶岩地帯にする気か?!」
白導師「魔力を集めて私をぶっ倒さないと、誰も助けてくれないよ〜?」
勇者「そうか、魔王様の意識に任せなければ駄目なんだ」
勇者「過剰な魔力を取り込んだ状態から回復するには、それを自分で制御するしかない」
319 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/12(金) 22:20:24.62 ID:IpGAEcpAO
勇者の考えは当たっていた
白導師「ほうら、早く起きなかったら×××して、○○○して、止めに△△△△!!」
犬娘は、ゆっくり魔力の渦をその身に取り込んだ
犬娘「雷神脚」
白導師「やめて、必殺スキルはやめて」
犬娘は
目を覚ました!
メイド剣士「魔王様っ!」
メイド剣士は一番に犬娘に取り付き、もふもふし倒した
術師「ちょ、ずるいですわ!」
術師も負けずともふもふした
女拳士「アタシもまぜろー!」
女拳士ももふもふした
勇者「俺だけ仲間外れはいやっ」
勇者ももふもふした
五人はお互いに、お互いの温もりを、味わった
…………
犬娘「でも、結局あいつ逃がしちゃったね」
メイド剣士「魔王様が無事だったんだから良かったですよ」
術師「私もそう思いますわ」
術師「でも、力が足りないとしても、今しか黒衣の魔女を倒すチャンスは無い気がします」
勇者「ハマミナトに攻め入るのか」
女拳士「賛成だね」
女拳士「いい加減、終わらせてやろうぜ!」
勇者「奴は正体不明だが」
勇者「きっと勝てるのは、今しかないと言うのは、感じる」
術師「奴の研究が形をなす前に、止める」
320 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/12(金) 22:22:40.37 ID:IpGAEcpAO
犬娘たちはハマミナトに攻め入ることを決めた
まず、ハマミナト側の砦で一晩休憩を取る
術師と白導師は、犬娘の体を綿密に調べた
白導師「私は蘇生系や回復系の知識には一応自信があるんだけど」
白導師「回復魔法無しでこれだけ傷が回復してるのは異常な魔力のせいだとは思う」
術師「魔力過多の状態が変わってないと言うことですわね」
白導師「うん、でもコントロールが少し及んでないだけだから」
術師「とりあえず身体的な問題は無さそうですね」
犬娘「ごめんね……」
犬娘「私、みんなに、迷惑かけてるよね……」
術師は犬娘の頬にキスした
犬娘「はうあ!?」
術師「魔王様……、まだ分かりませんの?」
術師「私達は魔王様のために働いてるんですよ?」
術師「魔王様が生き残るなら、苦労などあるものですか」
白導師「ええのう、レズはええのう」
術師「銀弾、銀弾」
白導師「痛い、痛い」
術師「そんな邪な物じゃありませんからね!」
犬娘「えへへ」
頬を染めてにっこり笑う犬娘は、実に可愛い
白導師「おお……、生きてて良かった」
術師「えい、えい」
白導師「やめて、銀弾やめて」
最終章「犬娘、魔王になる」
闇の力はあらゆる魔法防御を貫き、命を奪う悪魔の光である
犬娘はそれを受け無惨にも地面に転がった
しかし
犬娘「あいたたたっ!」
白導師の作り上げた光の衣は闇の閃光に打ち勝った
もちろん全てを遮ったわけではないが
犬娘「痛い痛い痛い!」
メイド剣士「大丈夫ですか、魔王様!」
犬娘「痛かったけどなんかちょっと回復した」
メイド剣士「これは……」
メイド剣士「そうか、光の衣はダメージを回復力に転化するアイテムなんだ!」
白導師「あちゃー、バレちゃった」
メイド剣士「あいつは脆い、ごり押しで倒しましょう!」
犬娘「分かった!」
白衣に守られた五人が前線に立つ
勇者「雷神剣、爆!」
勇者の爆発する雷神剣が巨大に固まった闇を打ち砕く
メイド剣士「氷剣斬、乱れ吹雪!」
メイド剣士は氷剣を何十と打ち出す
女拳士「爆裂脚!」
女拳士は強力な爆裂魔法で敵を薙ぎ倒す
犬娘「雷神脚ーっ!」
犬戦士「みんなすげーな、俺も負けてらんねー!」
犬戦士「秘技、雷神の鎚!」
巨大な魔物たちは次々と砕けていく
しかし、更に魔物たちは結合し、巨大に、邪悪になって行く
312 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/12(金) 22:07:34.77 ID:IpGAEcpAO
巨人を見下ろすような魔物たちは、自らの重さで砕けながら、徐々に進化を始めた
脆さが無くなり、ダメージを与え辛くなって行く
メイド剣士は何となく嫌な感覚を感じていた
もしこの魔物が知性を持って進化したら太刀打ち出来ないのではないだろうか?
メイド剣士「氷剣斬!」
攻撃の通じる内に倒す
そのために剣を振るう
勇者「これは……、何かおかしい」
勇者「倒す度に闇の力が集まっていってる……」
確かにここまで進軍してきた間、敵の闇の力は削っているはず
しかし、目の前の闇は明らかにそれを取り込んで膨らんでいる
女拳士「無駄なわけ……、無いよな?」
勇者「減っているはずだ!」
勇者「雷神剣、塊、射!」
勇者は目の前の巨大な闇を数体、一度に破壊する
闇は
やがて一つに固まっていった……
犬娘「は、破壊神?」
確かにそれは、伝承に残る破壊神そのものだった
その魔物が形を成した時、その傍らに黒衣の魔女が姿を現した
黒衣「……実験」
黒衣「第一段階は、成功……」
勇者「貴様!」
犬娘「今度は……」
犬娘「今度は逃がさない!」
313 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/12(金) 22:09:33.62 ID:IpGAEcpAO
黒衣「そだってる」
黒衣「今、倒されては、計画は無に帰す……」
黒衣「こいつと……、遊んで……、満足して……」
黒衣の魔女はそれだけ告げると姿を消した
犬娘「〜〜〜っ!!」
無念である
犬娘は激しく咆哮し、今、初めて、己の力を知った
犬娘「うおおおおおおーーーーっ!」
闇が集い破壊神となるなら
光が集えばなんとなるか
犬娘は今、その身を持ってそれを現した
犬娘「うわあああああああああっ!!」
犬娘は自身が閃光になったように、破壊神を貫き、破砕した
メイド剣士「な、……なに……、あれは……」
勇者「これは……光の力の正体……?!」
女拳士「くっ、これだけのエネルギー、あんな小さな魔王様が持ってるのか!?」
勇者「いや、相当に負担がかかってるはずだ」
勇者「止めなければ、魔王様が死んでしまうかも知れない……!」
メイド剣士「……!」
メイド剣士「いやあ!」
メイド剣士「魔王様ぁーっ!」
犬娘はたった一人で破壊神を砕ききると、そのまま倒れた
そしてもはや目覚めないのではないかと思うほど、深い眠りについた
314 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/12(金) 22:11:28.46 ID:IpGAEcpAO
女神「光の力ってのはやっかいなもんでね」
女神「ん〜、分かってる」
女神「結局それは生物の生存欲求なんだよ」
女神「光の力は私達の希望、でも、そりゃ奇麗事なわけないんだわ」
女神「そう思わない?」
魔王「お前は突然百年ぶりに現れて何を言ってるんだ」
女神「分かってるって、悪い、やっぱり女神になる前の性格が抜けてないんだわ」
女神「でも女神って奴は不便なもので、世界全部見てるんだよね」
魔王「俺にしても鬼畜だと思うぞ、それは」
女神「女神なんだからしゃーない。」
魔王「なんとなく、今の喋り方は昔のお前っぽかったな」
魔王「大魔法使いとか笑えると思わね?」
女神「確かに」
女神「私はただの魔法使い……」
女神「でも女神になるなら先代のクソより私の方がよくね?」
魔王「ああ、それは間違いないわ」
魔王「先代女神ってどうなるんだ?」
女神「旅立つだけさ、それだけだよ」
女神「それより、けっこうな面倒事抱えてるじゃないの」
魔王「まあな」
魔王「だが、大丈夫だ」
魔王「あいつ等は、光にも闇にも、負けやしねーよ」
魔王「俺に勝つ気で挑んできた奴なんて、何年ぶりやら」
315 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/12(金) 22:13:03.23 ID:IpGAEcpAO
女神「そりゃ、逸材だね〜」
魔王「おう、任せておける」
魔王「久し振りに見たよ、勇者って奴を」
女神「それは、勇者が必要な危機が迫っているって事だけどね〜」
魔王「ん〜」
魔王「そうだ、俺も体が鈍ってるから、ちょっと俺と打ち合いしてみないか?」
女神「世界を七度滅ぼしそうだから、やめとく」
魔王「だよな〜」
女神「君が封印されたらまた会いに行くよ」
魔王「縁起でもないな!」
…………
破壊神は犬娘一人に打ち倒された
しかし、その代償として、犬娘は目を覚ますことが出来なかった
メイド剣士は犬娘にすがりひたすら涙し
勇者や女拳士も茫然としていた
外では再び雑兵が押し寄せ、犬戦士はそれを打ち倒し
そのまま悪戯に時間が過ぎるのかと思われた
その時、彼女が帰ってきた
術師「……魔王様……」
メイド剣士「術師さん!」
メイド剣士は術師を認めると、すがりついた
メイド剣士「魔王様を、魔王様を助けて!」
術師が予め登録しておいた、命の木霊
それはこの危機を敏感に察知していた
術師は作りたての白衣を纏い、帰ってきた
術師「何をしてますの?」
術師はメイド剣士を離した
術師「あなたが魔王様を守ってくれると思ったから私はキタハマを離れたのに……」
メイド剣士「うう……」
メイド剣士は泣いた
勇者「どうしようも無かった、彼女に罪はない」
女拳士「もしメイドちゃんが罪を犯したなら、アタシも同罪だな」
術師には分かっていた
結局は自分も、無力であり、同罪なのだ
術師「……ごめんなさい、メイドさん」
術師「私らしくもない……」
術師「ごめんなさい、ごめんなさいね」
術師は、メイド剣士を、強く抱きしめた
犬娘は深い眠りに落ちて、目を覚まさない
勇者「記述が残ってる、これは大魔法使い様が落ちた魔法の眠りに似ている」
女拳士「あの、絵本で良くある奴だね」
白導師「騎士様のキスで目を覚ます奴ね、よし、キスしまくってみるか」
メイド剣士「氷剣斬」
白導師「ぐはあっ」
術師「ごめんなさい、メイドさん」
メイド剣士「……いえ」
メイド剣士「私が無力だったのは、その通りだもの……」
317 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/12(金) 22:15:59.73 ID:IpGAEcpAO
メイド剣士「魔王様……」
メイド剣士「いったいどうなってしまったって言うの……」
術師「魔法の眠りには違いないでしょう……、しかし」
術師「私はこの状態を癒す方法を知りません……」
勇者「魔力過多症で障害を残したケースも聞いたことがある……」
勇者「予断は許さないはずだ」
女拳士「だからって、どうするんだよ」
メイド剣士「表で犬戦士さんたちが戦ってくれてる……」
メイド剣士「私も助力してきます」
女拳士「私も行くよ」
術師「必要ありません」
術師「私、怒っています……」
…………
その戦いは記録に残るどんな戦よりも鮮やかであったと記されるべきだろう
術師は懐から、銀の石を取り出した
術師「銀弾の雨」
術師は低魔力で数百発の銀の弾丸を生み出した
砦に取り付こうとしていた邪なる物たちは蹴散らされた
しかし、砕いたそれらはいくつかの塊を築いた
術師「追跡火槍!」
術師は赤銅色の石を取り出し、燃え盛る火の槍を十数本生み出した
それらは敵の匂いを追い、固まりだした数百の闇を焼き尽くした
術師「全て、焼き尽くす!」
術師は燃え盛る銀の槍を、数本呼び出した
318 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/12(金) 22:17:59.43 ID:IpGAEcpAO
術師の怒りは、街道であったものを溶岩の沼に変えた……
たった一人で闇を払うと、術師は帰ってきた
女拳士「半端ないね……!」
メイド剣士は犬娘にすがるような体制で眠ったように動かない
術師は、それを遠目にながめた
メイド剣士は悲しかった
ただ彼女を守れなかったことが
術師はただ悔しかった
自分が何も出来ないことが
女拳士も勇者も、ただ自分の無力を感じている
そんな折
白導師「……ショック療法とかどうだろう」
あからさまに怪しい人物が怪しい提案をした
しかし、全員若干正気を失っていたことは否めまい
止めなかった
白導師「はい、犬娘ちゃん、いつまでも寝てたら裸に剥いちゃうよ〜?」
メイド剣士「真空斬」
白導師「ちょっ、治療、治療!」
白導師「体中ペロペロしちゃうよ〜?」
術師「神の杖」
白導師「ちょっ、こんな狭い部屋溶岩地帯にする気か?!」
白導師「魔力を集めて私をぶっ倒さないと、誰も助けてくれないよ〜?」
勇者「そうか、魔王様の意識に任せなければ駄目なんだ」
勇者「過剰な魔力を取り込んだ状態から回復するには、それを自分で制御するしかない」
319 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/12(金) 22:20:24.62 ID:IpGAEcpAO
勇者の考えは当たっていた
白導師「ほうら、早く起きなかったら×××して、○○○して、止めに△△△△!!」
犬娘は、ゆっくり魔力の渦をその身に取り込んだ
犬娘「雷神脚」
白導師「やめて、必殺スキルはやめて」
犬娘は
目を覚ました!
メイド剣士「魔王様っ!」
メイド剣士は一番に犬娘に取り付き、もふもふし倒した
術師「ちょ、ずるいですわ!」
術師も負けずともふもふした
女拳士「アタシもまぜろー!」
女拳士ももふもふした
勇者「俺だけ仲間外れはいやっ」
勇者ももふもふした
五人はお互いに、お互いの温もりを、味わった
…………
犬娘「でも、結局あいつ逃がしちゃったね」
メイド剣士「魔王様が無事だったんだから良かったですよ」
術師「私もそう思いますわ」
術師「でも、力が足りないとしても、今しか黒衣の魔女を倒すチャンスは無い気がします」
勇者「ハマミナトに攻め入るのか」
女拳士「賛成だね」
女拳士「いい加減、終わらせてやろうぜ!」
勇者「奴は正体不明だが」
勇者「きっと勝てるのは、今しかないと言うのは、感じる」
術師「奴の研究が形をなす前に、止める」
320 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/09/12(金) 22:22:40.37 ID:IpGAEcpAO
犬娘たちはハマミナトに攻め入ることを決めた
まず、ハマミナト側の砦で一晩休憩を取る
術師と白導師は、犬娘の体を綿密に調べた
白導師「私は蘇生系や回復系の知識には一応自信があるんだけど」
白導師「回復魔法無しでこれだけ傷が回復してるのは異常な魔力のせいだとは思う」
術師「魔力過多の状態が変わってないと言うことですわね」
白導師「うん、でもコントロールが少し及んでないだけだから」
術師「とりあえず身体的な問題は無さそうですね」
犬娘「ごめんね……」
犬娘「私、みんなに、迷惑かけてるよね……」
術師は犬娘の頬にキスした
犬娘「はうあ!?」
術師「魔王様……、まだ分かりませんの?」
術師「私達は魔王様のために働いてるんですよ?」
術師「魔王様が生き残るなら、苦労などあるものですか」
白導師「ええのう、レズはええのう」
術師「銀弾、銀弾」
白導師「痛い、痛い」
術師「そんな邪な物じゃありませんからね!」
犬娘「えへへ」
頬を染めてにっこり笑う犬娘は、実に可愛い
白導師「おお……、生きてて良かった」
術師「えい、えい」
白導師「やめて、銀弾やめて」
犬娘「魔王になるっ!」
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