犬娘「魔王になるっ!」
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216 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/29(金) 20:15:26.76 ID:OKDZjEgAO
メイド剣士の剣速は既に目にも止まらない程の速さだ
メイド剣士が叫び、後ろにいる術師たちに向き直る
術師たちがきょとんとしていると、森が騒ぎ出す
術師「ま、まさか一発目でここまでやるとは……」
メイド剣士が剣を納めると目の前の森はゆっくり崩れていった
勇者「剣の性質の違いも有るだろうが、斬撃に関しては本当にセンスが有るんだな」
メイド剣士「あ、ありがとうございます!」
女拳士「すげーよ……」
犬娘「メイド剣士ちゃんかっこいい!」
術師「まあ勇者さんの斬撃ほど破壊力は有りませんが、斬撃としては理想的なんではないでしょうか」
勇者「確かに、一点に力を集約することにかけては天才的だね、まだ十五だっけ? 嫉妬してしまうくらいだ」
メイド剣士「え、えへへ……」
あまりに一度に誉められたので、メイド剣士は茹で上がったように真っ赤になった
犬娘「可愛い」
術師「可愛いですね」
女拳士「アタシもやってみっか」
女拳士がまだ切り開かれていない森に向かう
術師は嫌な予感がして、止めた
術師「木を砕いたら材木として使えないので、女拳士さんは森の開拓はいいです」
女拳士「え〜……」
217 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/29(金) 20:19:01.61 ID:OKDZjEgAO
勇者「俺もメイドさんに負けてられない、練習したい」
術師「そのための開拓ですわ」
勇者「よし」
勇者「そもそも雷神剣は、魔力を込めれば込めただけ力を発揮する必殺剣だ」
勇者「その原理から仕方が無いが魔力消費が高すぎる」
術師「魔力消費を抑えることは私の研究課題でもあります」
術師「敵を誉めるようで嫌ですが、黒衣の魔女の黒石は魔力消費殆ど無しであれほど凶悪な魔法を放てた」
勇者「アイテムの力を借りるのも有りなのか」
術師「その上で、自身の魔力コントロール力を上げることも必要ですわ」
勇者「分かってる、結局自分次第だよな」
勇者は剣に魔力を込め、撃つ
魔力を込め、撃つ
魔力を込め、撃つ
メイド剣士「すごい魔力ですね……」
術師「伊達に勇者を名乗ってませんね」
あれから強くなった、としても犬娘は、自分と初めて戦った時の勇者に迷いがあったことを理解した
山肌が見えてきた所で術師は勇者を止める
術師「じゃあこのあたりで倒木を皆で片付けましょうか」
勇者「分かった」
女拳士「やっと出番だな」
メイド剣士「私も頑張って運んでみます!」
218 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/29(金) 20:20:48.50 ID:OKDZjEgAO
術師「じゃあ私もやってみようかな?」
メイド剣士「無理でしょ」
女拳士「腰折るぞ」
勇者「そもそもジャンルが違うような」
犬娘「魔法で運ぶ?」
術師「魔王様正解、誰が怪力ゴリラ衆の真似をしますか」
女拳士「ひでえっ」
勇者「怪力ゴリラ……」
メイド剣士「非力で良かった」
犬娘「わたし、いぬむすめ!」
犬娘はなぜか嬉しそうに飛び跳ねた
術師「みんな獣人って意味ではないですよ」
犬娘「違うんだ」
犬娘はなぜか残念そうな顔をした
術師「そもそもこれは先の牧場娘さんが使えると言う魔法回避の技術を真似してみようかと思いまして」
メイド剣士「分かったんですか?」
術師「いえ、全く」
術師「しかし、相手の魔法を曲げてしまえるなら有効な防御手段になり得ますから」
メイド剣士「私にも防御の練習をさせて下さい」
術師「前衛で一番防御力無いですものね……」
術師「白導師さんみたいに殴られてみますか?」
メイド剣士「ええ〜」
白導師「私を呼ぶ声がする」
メイド剣士「出たーっ!」
犬娘「ゴキブリだー!?」
白導師「こんな美人のゴキブリがいるか!」
術師「自分で美人とか言わないで下さい」
219 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/29(金) 20:25:17.39 ID:OKDZjEgAO
ゴキブリ、いや、白導師は女拳士に向かって言った
女拳士「ん?」
白導師「一発殴ってみてください」
女拳士「おう」
女拳士は躊躇せず殴りつけた
術師「余りに酷いような」
女拳士「いや、殴れって言ったから……」
白導師はむっくり起き上がる
勇者「化け物か……、いや、なんか変だな」
術師「確かに、攻撃力をなんらかの手段で軽減させている……」
白導師「国家機密です」
術師「!」
術師「ありがとうございます、白導師様」
白導師「うむ、幼女のパンツで手を打とう」
メイド剣士「死んで下さい」
メイド剣士は試しに刺してみた
白導師「痛い」
メイド剣士「確かに攻撃は通ってるのにダメージが少ない……」
女拳士「いったいどんな仕組みなんだ?」
勇者「完全にダメージをゼロに出来るわけではないんだな、そこがポイントか」
犬娘「ゾンビ?」
犬娘は白導師を殴った
白導師「ありがとう」
犬娘「変態だーっ!」
白導師は犬娘に抱きついて匂いを嗅いだ
白導師「うーん、お日様の香り」
犬娘は何故か動かない
術師「魔王様って抱っこされるの好きですよね」
メイド剣士「これは私のです!」
メイド剣士は犬娘を奪い取った
220 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/29(金) 20:27:57.43 ID:OKDZjEgAO
メイド剣士は犬娘に抱きつくとしばらく放そうとしなかった
術師「私にももふもふふかふかさせて下さい」
術師は犬娘の後ろから抱きついた
女拳士「じゃあアタシはメイドちゃんで」
女拳士はメイド剣士に後ろから抱きついた
白導師「美女が四人でくんずほぐれつ……、眼福や……」
勇者「俺はじゃあ術師さん抱っこ」
術師「ちょっ、くすぐったいですわ!」
勇者「仲間外れはやだなー」
術師「仕方有りませんわね……」
白導師「男に抱きつかせるとはビッチか」
術師「勇者さんは女性です」
白導師「マジか、確かに白いけど完全に男だと思ってた」
勇者「まあ男に思われた方が野宿で都合良かったもんで」
術師「さて、ふかふか成分が補充できた所で作業再開ですわ」
…………
術師「木を運び出したところで切り株はどうしますか?」
女拳士「やっとアタシの出番だな」
犬娘「私もやるよ!」
女拳士「砕いちゃう?」
術師「一応は資源だから抜けるなら抜きたいですが、大きいのは砕いて下さい」
女拳士「よし、今まで鍛えてきた新魔法を見せる時が来たな」
221 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/29(金) 20:30:29.72 ID:OKDZjEgAO
術師「あれだけ長い期間修行した新魔法」
メイド剣士「すごく楽しみです」
女拳士「じゃあやってみっか」
女拳士は竜人鱗を身に纏った
メイド剣士「これが塩田開発の時に女拳士さんが作り上げた竜人鱗です」
術師「能力強化を三段もかけると効果が薄くなる、それを鎧に変換して効力を上げた……」
メイド剣士「私あれを魔王様にかけてみたいんです」
術師「!」
術師「いいアイデアがありますわ」
術師はメイド剣士になにやら耳打ちした
白導師「これ以上はスパイになるから帰るわ」
術師「あなたも手の内を明かしたじゃ無いですか、構いませんよ」
白導師「いや、あの竜人鱗だけでも十分だ」
白導師「想像してみろ、魔人王竜人鱗モード」
術師「背筋が凍り付きましたわ」
白導師「そういうわけで私も秘密特訓だ」
そう言うと白導師は帰還した
術師「変態に誤魔化されてましたが本当は仕事出来るんですね……」
女拳士「ここから新魔法だ」
女拳士「名前を付けるなら、竜鱗装爆裂乱舞!」
女拳士は位置を瞬間的に変えて、分身していく
222 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/29(金) 20:32:23.78 ID:OKDZjEgAO
女拳士「はああ……」
勇者「あの動きだけでも半端じゃないな」
犬娘「分身の術だ〜」
メイド剣士「速すぎ」
そして女拳士の前の切り株が一つずつ爆発していく
犬娘「魔法拳だ!」
術師「素晴らしい」
しかし、事態はそれで収まらなかった
爆裂の威力がどんどんと高まっていき、やがて中央で激しく、大規模の爆発を起こした
術師「〜!」
メイド剣士「うわわわっ」
犬娘「凄すぎだよ〜!」
勇者「はは、あれだけの破壊力が出せるのか、確かに今度は負けそう」
女拳士は動きを止めると、その場で倒れた
術師「魔力を使いすぎましたね 威力は凄いけど全魔力使うのでは使いづらそうですね」
勇者「しかし面白い発想の魔法だった 今のは自分の消費した魔力を再利用して爆裂の威力を上げていったんだな」
メイド剣士「凄まじい魔力消費は伴うものの効率は高いってことですね」
術師「魔力の相乗か……」
術師はなにやら独り言を言うと犬娘とメイド剣士を見た
術師「やってみますか」
メイド剣士「さっき言ってた魔王様に竜人鱗をかける方法って奴ですか」
術師「山肌もすっかり出てますから、魔王様に山を砕いてもらいましょう」
223 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/29(金) 20:37:56.14 ID:OKDZjEgAO
犬娘「私も新魔法を試すよ!」
メイド剣士「まだあるんですか!?」
術師「戦闘に関しては本当にすごいですわね」
女拳士がやっと起きてきた
女拳士「アタシもこの技をコンパクトにしたり魔力消費抑えたりしないとなあ……」
勇者「俺もなんかやってみようかな」
術師「とりあえず魔王様と私、メイドさんで」
術師「良いですか?」
術師「私が魔力を注ぎますからメイドさんがコントロールしてください」
メイド剣士「分かりました」
しかし、いきなりは成功しなかった
女拳士「アタシもコントロールに加わったら出来るかな?」
勇者「俺も魔力を足そう」
四人がかりで魔法をコントロールすると、どうにか犬娘に二段階は能力強化をかけることができた
術師「今はここまでですわね」
勇者「じゃあ魔王様のお手並み拝見」
女拳士「あの子の成長力が怖いんだけど」
メイド剣士「確かに」
犬娘は右手に雷撃を纏うと、更にそのまま重ねて右手に光を纏った
女拳士「魔王様は合成魔法か!」
犬娘「獣王拳!」
犬娘「ええ〜い!」
凄まじい轟音が響く
能力強化二段階での合成魔法拳は、正に山を砕かんと言う威力を発揮した
224 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/29(金) 20:41:38.58 ID:OKDZjEgAO
山は四分の一ほど砕けた
術師「山を砕いてしまいましたが如何ですか」
メイド剣士「はいはい、私が間違ってました〜」
勇者「五人がかりだけどな」
術師「考えてみれば五人合体魔法とか凄いですよね」
女拳士「でも一人一人の魔力消費は少なくて済む、タイミングが難しそうだけど使えるよ」
術師「じゃあもっと山を削って、街道を作ってしまいましょうか」
勇者「しばらく今の魔法の研究をしながら街道整備しよう」
犬娘「ごはん〜」
鶴の一声ならぬ犬娘の一声でお昼を取ることにした
やがて季節は春、犬娘が旅をはじめた日を過ぎ、ヤマナミでメイド剣士に出会った日を過ぎ、時々暑い日がある季節になった
その頃から北浜に移民が訪れるようになった
術師「ハマミナトから獣人たちが多く訪れていますね」
メイド剣士「どうしましょうか」
術師「信頼の置ける数人の獣人さんに自警団を作ってもらうことにします、それから移民手続きはメイドさんが直接やって下さい」
メイド剣士「分かりました」
虎獣人「自警団か、非常勤で活動できるならやるが」
術師「そうですね、お願いします」
225 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/29(金) 20:43:58.13 ID:OKDZjEgAO
メイド剣士「住民登録をして管理しましょうか」
術師「そうですね、開拓してくれた人たちの待遇はやっぱり良くしたいですから」
旅人「そろそろ組織を大掛かりにまとめる必要が出てきたな」
旅人「どうだろう、これを機に建国を宣言してみては」
術師「そうですね、それで貢献してくれた人たちに報奨を払いましょう」
旅人「まあ大きな額を持っても実質使い道がないし、何度かに分けるべきか」
虎獣人「金より肉が良いな」
術師「誰かに行商をしてもらいますわ」
旅人「じゃあ暇な時に僕がやろう」
術師「色々アドバイスが欲しい所ですが……」
旅人「メイドちゃんに色々やってもらえば?」
メイド剣士「一応少しは仕事を教わってますが不安です」
術師「あら、そうでしたの」
犬娘「建国パーティーするなら城壁が出来てからだねー」
術師「チュウザンから来た大工さんとうちの大工さんで全力でやってますが、街の増築も同時進行なのでとても手間がかかります」
メイド剣士「でももう九分までできましたから、築城に全員であたりますか」
226 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/29(金) 20:47:44.74 ID:OKDZjEgAO
…………
その後雨期を前にして、城の内壁が完成し、村人、いや、町民が全員集まった
一段高い所に犬娘が立つ
犬娘「我は犬魔王、今この時を以て、キタハマの国を建国する事を宣言する!」
町民たち「わーっ!!」
メイド剣士「上手に言えた……、良かった」
女拳士「めちゃ緊張してたからな」
魔王「うん、建国おめでとう」
術師「良くいらして下さいました、コトー王様」
魔人王「おめでとう」
勇者「ありがとうございます、魔人王様」
魔人王「お前は?」
勇者「勇者です」
魔人王「お前が……、そうか」
白導師「おめでと〜う」
白導師はどさくさに紛れてメイド剣士に痴漢している
メイド剣士「死ね」
銀鈴「死ねレズ」
牧場娘「死ねロリコン」
術師「ハマミナト王様は?」
魔女娘「すまない、暗殺未遂事件以降体調を完全に崩されてね」
術師「なんとか持ち直していただければ……」
魔女娘「そうだね……」
人魚王「可愛い娘がいっぱい、むふふ!」
貝殻姫「この度はこのような立派な席にお招きいただき、有り難う御座います」
術師「こちらこそ、狭いプールしか用意出来ませんで申し訳ありません」
227 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/29(金) 20:50:25.76 ID:OKDZjEgAO
貝殻姫「いえ、犬娘様の宣言もよく見えましたし、広くて良かったですわ」
人魚女王「人魚が二十人も入るようなプール作るの大変だったよね〜、魚でごめんね」
術師「そのようなことはありませんわ」
…………
魔王「さて、祝いに一つ花火を上げてやろう」
魔王は瞬間的に上空遥高くに飛ぶと、手をかざし、とても巨大な花火を何百発も打った
術師「凄すぎ」
魔人王「あいつは底が見えん 俺の最終奥義を食らって立ち上がってきたからな」
術師「私たちと戦った時は相当手加減されてたんですね」
魔人王「俺か?」
魔人王「まあ一応客だしな」
術師「客を嬉々として殴らないで下さい」
魔人王「すまん」
魔人王は赤くなった
術師「戦闘バカなのは分からなくはないですがね」
術師はにこっと、悪戯な顔で笑った
白導師「あれ、いい雰囲気?」
術師「そんな話ではないです」
斯くして、キタハマ建国式典は盛大に行われた
228 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/29(金) 20:52:10.09 ID:OKDZjEgAO
第三章「犬娘、街を作る」 完
ーー次回
新しい街、新しい技、全てが順調に進んでいるキタハマに、戦争の気配が忍び寄る
激しい嵐に呑まれたキタハマ復興のため走り回る犬娘たちの運命はーー
第四章「犬娘、戦争をする」
争いの火種が、黒い嘘によって燃え上がる……
メイド剣士の剣速は既に目にも止まらない程の速さだ
メイド剣士が叫び、後ろにいる術師たちに向き直る
術師たちがきょとんとしていると、森が騒ぎ出す
術師「ま、まさか一発目でここまでやるとは……」
メイド剣士が剣を納めると目の前の森はゆっくり崩れていった
勇者「剣の性質の違いも有るだろうが、斬撃に関しては本当にセンスが有るんだな」
メイド剣士「あ、ありがとうございます!」
女拳士「すげーよ……」
犬娘「メイド剣士ちゃんかっこいい!」
術師「まあ勇者さんの斬撃ほど破壊力は有りませんが、斬撃としては理想的なんではないでしょうか」
勇者「確かに、一点に力を集約することにかけては天才的だね、まだ十五だっけ? 嫉妬してしまうくらいだ」
メイド剣士「え、えへへ……」
あまりに一度に誉められたので、メイド剣士は茹で上がったように真っ赤になった
犬娘「可愛い」
術師「可愛いですね」
女拳士「アタシもやってみっか」
女拳士がまだ切り開かれていない森に向かう
術師は嫌な予感がして、止めた
術師「木を砕いたら材木として使えないので、女拳士さんは森の開拓はいいです」
女拳士「え〜……」
217 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/29(金) 20:19:01.61 ID:OKDZjEgAO
勇者「俺もメイドさんに負けてられない、練習したい」
術師「そのための開拓ですわ」
勇者「よし」
勇者「そもそも雷神剣は、魔力を込めれば込めただけ力を発揮する必殺剣だ」
勇者「その原理から仕方が無いが魔力消費が高すぎる」
術師「魔力消費を抑えることは私の研究課題でもあります」
術師「敵を誉めるようで嫌ですが、黒衣の魔女の黒石は魔力消費殆ど無しであれほど凶悪な魔法を放てた」
勇者「アイテムの力を借りるのも有りなのか」
術師「その上で、自身の魔力コントロール力を上げることも必要ですわ」
勇者「分かってる、結局自分次第だよな」
勇者は剣に魔力を込め、撃つ
魔力を込め、撃つ
魔力を込め、撃つ
メイド剣士「すごい魔力ですね……」
術師「伊達に勇者を名乗ってませんね」
あれから強くなった、としても犬娘は、自分と初めて戦った時の勇者に迷いがあったことを理解した
山肌が見えてきた所で術師は勇者を止める
術師「じゃあこのあたりで倒木を皆で片付けましょうか」
勇者「分かった」
女拳士「やっと出番だな」
メイド剣士「私も頑張って運んでみます!」
218 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/29(金) 20:20:48.50 ID:OKDZjEgAO
術師「じゃあ私もやってみようかな?」
メイド剣士「無理でしょ」
女拳士「腰折るぞ」
勇者「そもそもジャンルが違うような」
犬娘「魔法で運ぶ?」
術師「魔王様正解、誰が怪力ゴリラ衆の真似をしますか」
女拳士「ひでえっ」
勇者「怪力ゴリラ……」
メイド剣士「非力で良かった」
犬娘「わたし、いぬむすめ!」
犬娘はなぜか嬉しそうに飛び跳ねた
術師「みんな獣人って意味ではないですよ」
犬娘「違うんだ」
犬娘はなぜか残念そうな顔をした
術師「そもそもこれは先の牧場娘さんが使えると言う魔法回避の技術を真似してみようかと思いまして」
メイド剣士「分かったんですか?」
術師「いえ、全く」
術師「しかし、相手の魔法を曲げてしまえるなら有効な防御手段になり得ますから」
メイド剣士「私にも防御の練習をさせて下さい」
術師「前衛で一番防御力無いですものね……」
術師「白導師さんみたいに殴られてみますか?」
メイド剣士「ええ〜」
白導師「私を呼ぶ声がする」
メイド剣士「出たーっ!」
犬娘「ゴキブリだー!?」
白導師「こんな美人のゴキブリがいるか!」
術師「自分で美人とか言わないで下さい」
219 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/29(金) 20:25:17.39 ID:OKDZjEgAO
ゴキブリ、いや、白導師は女拳士に向かって言った
女拳士「ん?」
白導師「一発殴ってみてください」
女拳士「おう」
女拳士は躊躇せず殴りつけた
術師「余りに酷いような」
女拳士「いや、殴れって言ったから……」
白導師はむっくり起き上がる
勇者「化け物か……、いや、なんか変だな」
術師「確かに、攻撃力をなんらかの手段で軽減させている……」
白導師「国家機密です」
術師「!」
術師「ありがとうございます、白導師様」
白導師「うむ、幼女のパンツで手を打とう」
メイド剣士「死んで下さい」
メイド剣士は試しに刺してみた
白導師「痛い」
メイド剣士「確かに攻撃は通ってるのにダメージが少ない……」
女拳士「いったいどんな仕組みなんだ?」
勇者「完全にダメージをゼロに出来るわけではないんだな、そこがポイントか」
犬娘「ゾンビ?」
犬娘は白導師を殴った
白導師「ありがとう」
犬娘「変態だーっ!」
白導師は犬娘に抱きついて匂いを嗅いだ
白導師「うーん、お日様の香り」
犬娘は何故か動かない
術師「魔王様って抱っこされるの好きですよね」
メイド剣士「これは私のです!」
メイド剣士は犬娘を奪い取った
220 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/29(金) 20:27:57.43 ID:OKDZjEgAO
メイド剣士は犬娘に抱きつくとしばらく放そうとしなかった
術師「私にももふもふふかふかさせて下さい」
術師は犬娘の後ろから抱きついた
女拳士「じゃあアタシはメイドちゃんで」
女拳士はメイド剣士に後ろから抱きついた
白導師「美女が四人でくんずほぐれつ……、眼福や……」
勇者「俺はじゃあ術師さん抱っこ」
術師「ちょっ、くすぐったいですわ!」
勇者「仲間外れはやだなー」
術師「仕方有りませんわね……」
白導師「男に抱きつかせるとはビッチか」
術師「勇者さんは女性です」
白導師「マジか、確かに白いけど完全に男だと思ってた」
勇者「まあ男に思われた方が野宿で都合良かったもんで」
術師「さて、ふかふか成分が補充できた所で作業再開ですわ」
…………
術師「木を運び出したところで切り株はどうしますか?」
女拳士「やっとアタシの出番だな」
犬娘「私もやるよ!」
女拳士「砕いちゃう?」
術師「一応は資源だから抜けるなら抜きたいですが、大きいのは砕いて下さい」
女拳士「よし、今まで鍛えてきた新魔法を見せる時が来たな」
術師「あれだけ長い期間修行した新魔法」
メイド剣士「すごく楽しみです」
女拳士「じゃあやってみっか」
女拳士は竜人鱗を身に纏った
メイド剣士「これが塩田開発の時に女拳士さんが作り上げた竜人鱗です」
術師「能力強化を三段もかけると効果が薄くなる、それを鎧に変換して効力を上げた……」
メイド剣士「私あれを魔王様にかけてみたいんです」
術師「!」
術師「いいアイデアがありますわ」
術師はメイド剣士になにやら耳打ちした
白導師「これ以上はスパイになるから帰るわ」
術師「あなたも手の内を明かしたじゃ無いですか、構いませんよ」
白導師「いや、あの竜人鱗だけでも十分だ」
白導師「想像してみろ、魔人王竜人鱗モード」
術師「背筋が凍り付きましたわ」
白導師「そういうわけで私も秘密特訓だ」
そう言うと白導師は帰還した
術師「変態に誤魔化されてましたが本当は仕事出来るんですね……」
女拳士「ここから新魔法だ」
女拳士「名前を付けるなら、竜鱗装爆裂乱舞!」
女拳士は位置を瞬間的に変えて、分身していく
222 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/29(金) 20:32:23.78 ID:OKDZjEgAO
女拳士「はああ……」
勇者「あの動きだけでも半端じゃないな」
犬娘「分身の術だ〜」
メイド剣士「速すぎ」
そして女拳士の前の切り株が一つずつ爆発していく
犬娘「魔法拳だ!」
術師「素晴らしい」
しかし、事態はそれで収まらなかった
爆裂の威力がどんどんと高まっていき、やがて中央で激しく、大規模の爆発を起こした
術師「〜!」
メイド剣士「うわわわっ」
犬娘「凄すぎだよ〜!」
勇者「はは、あれだけの破壊力が出せるのか、確かに今度は負けそう」
女拳士は動きを止めると、その場で倒れた
術師「魔力を使いすぎましたね 威力は凄いけど全魔力使うのでは使いづらそうですね」
勇者「しかし面白い発想の魔法だった 今のは自分の消費した魔力を再利用して爆裂の威力を上げていったんだな」
メイド剣士「凄まじい魔力消費は伴うものの効率は高いってことですね」
術師「魔力の相乗か……」
術師はなにやら独り言を言うと犬娘とメイド剣士を見た
術師「やってみますか」
メイド剣士「さっき言ってた魔王様に竜人鱗をかける方法って奴ですか」
術師「山肌もすっかり出てますから、魔王様に山を砕いてもらいましょう」
223 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/29(金) 20:37:56.14 ID:OKDZjEgAO
犬娘「私も新魔法を試すよ!」
メイド剣士「まだあるんですか!?」
術師「戦闘に関しては本当にすごいですわね」
女拳士がやっと起きてきた
女拳士「アタシもこの技をコンパクトにしたり魔力消費抑えたりしないとなあ……」
勇者「俺もなんかやってみようかな」
術師「とりあえず魔王様と私、メイドさんで」
術師「良いですか?」
術師「私が魔力を注ぎますからメイドさんがコントロールしてください」
メイド剣士「分かりました」
しかし、いきなりは成功しなかった
女拳士「アタシもコントロールに加わったら出来るかな?」
勇者「俺も魔力を足そう」
四人がかりで魔法をコントロールすると、どうにか犬娘に二段階は能力強化をかけることができた
術師「今はここまでですわね」
勇者「じゃあ魔王様のお手並み拝見」
女拳士「あの子の成長力が怖いんだけど」
メイド剣士「確かに」
犬娘は右手に雷撃を纏うと、更にそのまま重ねて右手に光を纏った
女拳士「魔王様は合成魔法か!」
犬娘「獣王拳!」
犬娘「ええ〜い!」
凄まじい轟音が響く
能力強化二段階での合成魔法拳は、正に山を砕かんと言う威力を発揮した
224 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/29(金) 20:41:38.58 ID:OKDZjEgAO
山は四分の一ほど砕けた
術師「山を砕いてしまいましたが如何ですか」
メイド剣士「はいはい、私が間違ってました〜」
勇者「五人がかりだけどな」
術師「考えてみれば五人合体魔法とか凄いですよね」
女拳士「でも一人一人の魔力消費は少なくて済む、タイミングが難しそうだけど使えるよ」
術師「じゃあもっと山を削って、街道を作ってしまいましょうか」
勇者「しばらく今の魔法の研究をしながら街道整備しよう」
犬娘「ごはん〜」
鶴の一声ならぬ犬娘の一声でお昼を取ることにした
やがて季節は春、犬娘が旅をはじめた日を過ぎ、ヤマナミでメイド剣士に出会った日を過ぎ、時々暑い日がある季節になった
その頃から北浜に移民が訪れるようになった
術師「ハマミナトから獣人たちが多く訪れていますね」
メイド剣士「どうしましょうか」
術師「信頼の置ける数人の獣人さんに自警団を作ってもらうことにします、それから移民手続きはメイドさんが直接やって下さい」
メイド剣士「分かりました」
虎獣人「自警団か、非常勤で活動できるならやるが」
術師「そうですね、お願いします」
225 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/29(金) 20:43:58.13 ID:OKDZjEgAO
メイド剣士「住民登録をして管理しましょうか」
術師「そうですね、開拓してくれた人たちの待遇はやっぱり良くしたいですから」
旅人「そろそろ組織を大掛かりにまとめる必要が出てきたな」
旅人「どうだろう、これを機に建国を宣言してみては」
術師「そうですね、それで貢献してくれた人たちに報奨を払いましょう」
旅人「まあ大きな額を持っても実質使い道がないし、何度かに分けるべきか」
虎獣人「金より肉が良いな」
術師「誰かに行商をしてもらいますわ」
旅人「じゃあ暇な時に僕がやろう」
術師「色々アドバイスが欲しい所ですが……」
旅人「メイドちゃんに色々やってもらえば?」
メイド剣士「一応少しは仕事を教わってますが不安です」
術師「あら、そうでしたの」
犬娘「建国パーティーするなら城壁が出来てからだねー」
術師「チュウザンから来た大工さんとうちの大工さんで全力でやってますが、街の増築も同時進行なのでとても手間がかかります」
メイド剣士「でももう九分までできましたから、築城に全員であたりますか」
226 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/29(金) 20:47:44.74 ID:OKDZjEgAO
…………
その後雨期を前にして、城の内壁が完成し、村人、いや、町民が全員集まった
一段高い所に犬娘が立つ
犬娘「我は犬魔王、今この時を以て、キタハマの国を建国する事を宣言する!」
町民たち「わーっ!!」
メイド剣士「上手に言えた……、良かった」
女拳士「めちゃ緊張してたからな」
魔王「うん、建国おめでとう」
術師「良くいらして下さいました、コトー王様」
魔人王「おめでとう」
勇者「ありがとうございます、魔人王様」
魔人王「お前は?」
勇者「勇者です」
魔人王「お前が……、そうか」
白導師「おめでと〜う」
白導師はどさくさに紛れてメイド剣士に痴漢している
メイド剣士「死ね」
銀鈴「死ねレズ」
牧場娘「死ねロリコン」
術師「ハマミナト王様は?」
魔女娘「すまない、暗殺未遂事件以降体調を完全に崩されてね」
術師「なんとか持ち直していただければ……」
魔女娘「そうだね……」
人魚王「可愛い娘がいっぱい、むふふ!」
貝殻姫「この度はこのような立派な席にお招きいただき、有り難う御座います」
術師「こちらこそ、狭いプールしか用意出来ませんで申し訳ありません」
227 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/29(金) 20:50:25.76 ID:OKDZjEgAO
貝殻姫「いえ、犬娘様の宣言もよく見えましたし、広くて良かったですわ」
人魚女王「人魚が二十人も入るようなプール作るの大変だったよね〜、魚でごめんね」
術師「そのようなことはありませんわ」
…………
魔王「さて、祝いに一つ花火を上げてやろう」
魔王は瞬間的に上空遥高くに飛ぶと、手をかざし、とても巨大な花火を何百発も打った
術師「凄すぎ」
魔人王「あいつは底が見えん 俺の最終奥義を食らって立ち上がってきたからな」
術師「私たちと戦った時は相当手加減されてたんですね」
魔人王「俺か?」
魔人王「まあ一応客だしな」
術師「客を嬉々として殴らないで下さい」
魔人王「すまん」
魔人王は赤くなった
術師「戦闘バカなのは分からなくはないですがね」
術師はにこっと、悪戯な顔で笑った
白導師「あれ、いい雰囲気?」
術師「そんな話ではないです」
斯くして、キタハマ建国式典は盛大に行われた
228 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/29(金) 20:52:10.09 ID:OKDZjEgAO
第三章「犬娘、街を作る」 完
ーー次回
新しい街、新しい技、全てが順調に進んでいるキタハマに、戦争の気配が忍び寄る
激しい嵐に呑まれたキタハマ復興のため走り回る犬娘たちの運命はーー
第四章「犬娘、戦争をする」
争いの火種が、黒い嘘によって燃え上がる……
犬娘「魔王になるっ!」
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