犬娘「魔王になるっ!」
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187 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 00:51:47.21 ID:if/f0pXAO
メイド剣士「白導師さん久しぶり さよなら」
白導師「ひどい」
犬娘「こわい」
虎娘「誰?」
白導師「可愛いお嬢さん、パンツ見せてください」
犬戦士「減点二」
白導師「お助け」
虎娘「変態だ」
犬娘「近寄っちゃ駄目だよ!」
メイド剣士「隔離施設を作りましょう」
犬戦士「それが一番だろ」
犬戦士「命の木霊持ってるだろ?」
白導師「あんなもん流石の私も使い難いわ」
犬戦士「いいから使っとけ」
術師「命の木霊……聞いたことがあるような」
石使い「……何だったかな?」
犬戦士「気にすんな」
…………
やがて季節は秋に移る
雨期からの復興、大規模な事業の足踏みなど、様々な問題を抱える中、城壁構築を始めることになった
術師「本来なら異例の速さなんですがね」
メイド剣士「基礎が何もない状態からの開発ですからね」
犬娘「いよいよだね」
女拳士「じゃ、悪いけどまた修行してくるわ」
術師「あなたが何か技を身につけようとしているのは分かります」
術師「頑張ってください!」
女拳士「悪いね、本当に」
犬娘「私も強くなってるから、今度は負けないよね!」
女拳士「もちろんだ!」
188 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 00:55:02.35 ID:if/f0pXAO
術師「兎に角開発の方は城壁建設が済まないと他の何もできません」
術師「モグラさんたちの大活躍で十分な上水設備をチュウザン滝の上流から引くことが出来ましたし」
術師「町を広げるのも住民増加に合わせて虎獣人さんがやってくれてます」
メイド剣士「人が増えれば仕事も増え、仕事が増えれば人も増える好循環が生まれてます」
犬娘「好景気!」
術師「まあまだ今は村の規模しか無いんですが」
そこにハマミナトから魔女娘がやってきた
術師「魔女娘さん、来てくれるのを待ってたんです」
魔女娘「悪いね、色々ゴタゴタしてて」
メイド剣士「何かあったんですか?」
旅人「例の事件のせいかね〜」
魔女娘「ん、新顔だね、そうだよ」
術師「いったい何が?」
魔女娘「ハマミナト王暗殺未遂」
メイド剣士「そんな……、あんないい王様なのに」
旅人「古来から、良い人なんてのは金儲けしたい奴には邪魔でしかないからな〜」
術師「だから良い魔王が世界を支配してるんですよね……」
魔女娘「力をひたすら求める魔王が世界を救う……、皮肉な話だよ」
189 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 00:56:38.90 ID:if/f0pXAO
魔女娘「まあ今日は情報交換に来たんだ、てきとーに知ってること教えて」
術師「この町については、ようやく村と名乗れる規模になりました」
魔女娘「そうみたいだね、城建設も始めたみたいじゃないか」
魔女娘「街道の方も半分は完成したし、うちんとこの国との間に両国の砦も作ってる」
術師「本当は城建設にハマミナトの大工さんの力を借りたいんですが」
魔女娘「借りれば良いじゃないか」
術師は魔女娘がこちらの事情を察しているような気がした
術師「もちろんハマミナトを攻めたいとか、ハマミナトの妨害をしたいなんてつもりはありません」
魔女娘「ハマミナトの民がそう思わないのは分かるだろ?」
やはり、分かった上でのことだ
術師「港を作るのはハマミナトのシェアを奪うことに他なりませんからね」
魔女娘「だからって魔王……、コトー王の言い付けや計画に背いたことなんか無いんだよ、うちは」
術師「築城を急ぐのは国の起点を築くため、敵対行為では有りません」
魔女娘「分かってるっつの」
こちらも分かっている
魔女娘「じゃあなんでうちに頼らない」
術師「お話しましょう」
魔女娘「やっとかい」
190 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 00:59:04.89 ID:if/f0pXAO
術師は黒衣の魔女について掻い摘まんで話をした
魔女娘「ふん、腹の中に虫がいるのは分かっていたんだ」
魔女娘「しかしそんなデカい虫がいるのかよ……」
魔女娘が震えている
彼女は気丈な人物だ
しかし本気で怯えているように見える
白導師「可愛い、ペロペロしたい」
魔女娘「おらあ!」
魔女娘はとても強力な火球魔法を放った
白導師「ぐはあっ」
魔女娘「ゴミは隔離されとけ!」
術師「失礼しました」
魔女娘「しかし、チュウザン王があいつを派遣するほどヤバいってことだな……」
メイド剣士「うちへの使者焦げてますがありがとうございます」
術師「魔女娘さんには出来る限りの協力をします だからプロパガンダに惑わされないように国民を誘導してください」
魔女娘「やってるんだけどね……、チッ」
白導師「スルーするな」
魔女娘「なんで平気なんだこいつ」
魔女娘は骨まで焦がす閃光を放った
メイド剣士「毎日のように魔人王様に殴られてるからでしょうね」
白導師「カサカサ」
ゴキブリか
…………
女拳士「じゃあ、魔王様、打ち合いに協力してよ」
犬娘「うん、負けないよ!」
虎娘「どっちも頑張って!」
191 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 01:00:51.16 ID:if/f0pXAO
女拳士は肉体強化を二段階かけると、そこから更に魔力を纏っていく
女拳士「これが以前に完成させた魔法、魔力外骨格、名付けて『竜人鱗』」
犬娘「私も新魔法で行くよ〜!」
犬娘「右手に雷、より強く」
犬娘「左手に光、より速く」
犬娘「我は獣人、雷虎光狼拳!」
犬娘「行くよ!」
女拳士「止める!」
犬娘「うわああああ!!」
女拳士「おおおおお!!」
魔力が嵐のように渦巻く
火山には町中から見えるような竜巻と雷が巻き起こる
規模は既に超級魔法をぶつけ合ったレベルだ
虎娘「こんな力どっから出てるの〜!」
虎娘は必死で岩にしがみついている
全てが晴れた時、二人は全く最初の状態に戻っていた
犬娘「負けた!」
女拳士「まだまだ!」
犬娘「ううう!」
女拳士「おおお!」
そこから二人は数十回打ち合った
殴り、蹴り、膝を入れ、肘を食わせ、頭突きではじき、肩を叩き込んだ
虎娘「人間ってこんなにタフになれるんだ……」
犬娘が投げをうち、女拳士が掴んで押さえつけ、犬娘が噛みつき、女拳士が叩きつける
術師「それまで」
術師「何隠れて楽しいことしてるんですか!」
術師は何やら楽しげに怒った
192 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 01:02:23.43 ID:if/f0pXAO
女拳士「疲れたわ」
犬娘「ご飯、お肉、お魚、海老、烏賊、お野菜」
術師「はいはい」
…………
季節は、やがて冬を迎える
術師「開発は遅々として進まず、ですね」
メイド剣士「城壁作りはなかなか難しいですね、デザイン無視で作ってるんですけど」
術師「まあまだ一年も経ってないんだから急かすのもおかしいんですが」
犬娘「牧草地に小屋が立って牛は少し増えてきたね〜」
虎娘「ミルク飲めるのは良いよね」
女拳士「肉も多少自分のとこで取れるようになってきたよ、鶏肉だけど」
術師「チキンも美味しいですわ」
メイド剣士「お魚も穫れてますし」
女拳士「ハマミナトはどうなってるのさ」
旅人「まあ膠着状態だね〜 魔女娘ちゃんの計らいで旅行者や大工さんも来てくれてるし、不信感も少しは拭われてるみたいだね」
勇者「争いが無くなるなら、良いことだな」
ーーカイオウ国ーー
魚娘「犬娘様たち来ませんねー」
貝殻姫「なんだか忙しいみたいですよ」
そこに人魚が飛び込んできた
人魚メイド「た、大変です!」
貝殻姫「どうしたんです?」
人魚メイド「沖から緑の船が来て……皆が殺されて……、うっうっ……」
193 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 01:04:12.22 ID:if/f0pXAO
貝殻姫「そ、そんな!」
その船は突如カイオウ国沖に現れた
カイオウ国海上法にことごとく従わず、魚人たちの産卵場所や漁場、住処を荒らし、港に無理矢理に乗り上げた
緑色の鎧を纏った男は、叫ぶ
緑鎧「俺は勇者、裏切りの勇者のせいで勇者にされちまった可哀想な男だ!」
緑鎧「勇者になっちまったからには魔物を倒すのが俺の使命、可哀想だがみんな死んでもらうぜ!」
街は大騒ぎになった
蜂の巣をつついたように、走り回る人々、水の深くに身を潜めようとする人々、城に逃げ込む人々
緑鎧の勇者は手当たり次第に魔法剣を放ち、全てをなぎはらって行く
後からついて来る青い魔女は全てを凍らせていく
水中深くに逃げた魚人たちも氷漬けになり、死んでいく
大虐殺は城の中に及ぼうとしていた
貝殻姫は自分の従者たち二人に転送石を持たせ、チュウザンへと送る
次に貝殻姫は母に石を渡そうとする
人魚女王「私はいらないわ〜 子供たちを逃がしてあげなさい」
貝殻姫「そんな、お母様!」
人魚女王「早く逃げなさい、犬娘ちゃんに助けてもらいなさい」
貝殻姫「いや、お母様となら逃げる!」
人魚女王「死なれたら困るんだけどな〜」
194 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 01:06:22.28 ID:if/f0pXAO
人魚女王「貝殻ちゃん、よく聞きなさい、どうせ旦那も出てこない、私だけ逃げてどうするの?」
人魚女王「私は生き残って若いあなたが死ぬなんて本末転倒じゃないの」
貝殻姫「でも……」
人魚女王「分かった、石はもらうわ」
貝殻姫「お母様!」
人魚女王「ただし、あなたが使わない限り私も使わない、良いわね〜?」
貝殻姫「それで構いません、ではお父様の所に行ってきます!」
人魚女王「……貝殻ちゃん……、どうか無事に犬娘様の所へ行けますように」
…………
引きこもりの王、人魚王の間は、この事態でも硬く閉ざされている
毎日置いている食事が無くなるので生きているはずだが、もはや娘ですら声を覚えていない
こんな引きこもりは死んでも良さそうだが、それでも貝殻姫の父親だ
貝殻姫「お父様、敵が来ました……、お父様!」
貝殻姫「お願いします、扉を開いて出てきて!」
貝殻姫「早く逃げなければお母様が死んでしまう!」
貝殻姫が血が滲むほどドアを叩くと、開かずの扉がゆっくりと、開いた
そしてその奥から、すさまじく太った体、髭だらけの顔、瓶底眼鏡、もはや誰かも分からない魚人が現れた
人魚王「貝殻ちゃん萌え〜」
195 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 01:08:41.63 ID:if/f0pXAO
今時こんな古典的なニートがいるか、と突っ込みたくなるような容姿と言動である
人魚王「ふひっ、貝殻ちゃん早く逃げてーっ」
貝殻姫「お父様、この石をお持ちください!」
人魚王「そんな石無くても僕は無敵です!」
人魚王「君が逃げないと愛しの女王たんも逃げられないでしょーっ!」
人魚王は貝殻姫を押し退けると、もはや陸を歩いているやら水に浸かっているやら分からない体勢で歩いていく
魚のボディは太りすぎて着ぐるみのようですらある
人魚王が何やら唱えると、何故か貝殻姫の持つ石が効力を発揮した
人魚王「僕は魚人の王でありながら技術者の王でもあるなんだよ」
喋り方はおかしいが、確かな力を持っているようだ
緑鎧「おや、王様?」
緑鎧「可哀想だけど死んでくれ」
人魚王「やだ、まだ萌え萌え人魚たんのフィギュアが出来てないもん」
技術者の王では有るのかも知れない
緑鎧「じゃあ刺身となれ、魚の餌になって生きろ」
人魚王「やだもんねーっ!」
人魚王はあたりを全て凍らせる吹雪を吐いた
青魔女「同じ属性ね、戦いづらいわ」
緑鎧「俺に任せとけや おら、極大雷撃剣!」
緑鎧の剣から放たれた雷は、氷面を滑る
196 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 01:11:36.51 ID:if/f0pXAO
ーーチュウザンーー
貝殻姫「なんで、お父様、お母様、なんで来てくれないの!」
魔人王「白、は、いないか……、牧場の」
牧場娘「魔人ちゃん、昼寝しようよ、めんどいよ」
魔人王はあたりを凪払う
牧場娘「ふぁ〜あ」
牧場娘は呑気にあくびした
魔人王「お前でなければならん」
牧場娘「自分で転送出来るだろ」
銀鈴「王の言うことを聞かない、悪い子は死ね」
銀鈴が杖を構えると不思議と牧場娘は言うことを聞いた
牧場娘「あんたは苦手なんだよ……、ったく」
貝殻姫は牧場娘にすがろうとするが、するりと手が突き抜けて転ぶ
貝殻姫「お願いします……牧場娘様……」
貝殻姫は地面に額をしたたかにぶつけ、その体勢で泣きながら懇願した
牧場娘「分かった分かった たく、めんどいな」
牧場娘は転送魔法を唱えた
ーーカイオウ国ーー
魔人王たちは直に王城に辿り着いた
中からは激しく轟音が響く
魔人王「行くぞ」
言うより速く魔人王は駆け込む
緑鎧の勇者が正に人魚王にトドメを刺さんとする場面であった
魔人王「何者だ?」
緑鎧「こっちのセリフだっつの」
緑鎧は魔人の隙をついて、真っ二つに叩き斬る
緑鎧「頭がお可哀想なのかあ?」
197 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 01:13:37.59 ID:if/f0pXAO
魔人王の姿は揺れている
先の牧場娘の時と同じだ
牧場娘「牧場に陽炎、牧場娘けんざんー、昼寝すっか?」
魔人王は緑鎧を殴りつける
もちろん疲弊した緑鎧などは魔人王の敵たりえない
緑鎧「な……、なんつー力」
青魔女は氷剣をいくつか作り出し、魔人王たちを凪払う
しかし、魔人王はおろか、銀鈴にも攻撃は当たらない
銀鈴「頭がお可哀想なのはあなたたち、死ぬしかない」
銀鈴はゆっくり、致死の魔法を唱えた
緑鎧はその場で力尽きた
青魔女は一瞬苦しんだが、凌いだようだ
しかし
魔人王「食らえ」
魔人王は王城を埋め尽くすような火の玉を放った
ーーチュウザンーー
貝殻姫「大丈夫でしょうか、皆さん」
執事「それは愚問ですな お城の心配をされた方が」
貝殻姫「えっ」
ーーカイオウ国王城ーー
燃え尽きた青いものが落ちている
魔人王は銀鈴に命じ、緑鎧を蘇生させる
銀鈴「殺す方が得意、蘇生は白の仕事」
魔人王「すまんな、この三人だとお前に負担をかける」
銀鈴「全ては魔人王様の思し召しのままに」
メイド剣士「白導師さん久しぶり さよなら」
白導師「ひどい」
犬娘「こわい」
虎娘「誰?」
白導師「可愛いお嬢さん、パンツ見せてください」
犬戦士「減点二」
白導師「お助け」
虎娘「変態だ」
犬娘「近寄っちゃ駄目だよ!」
メイド剣士「隔離施設を作りましょう」
犬戦士「それが一番だろ」
犬戦士「命の木霊持ってるだろ?」
白導師「あんなもん流石の私も使い難いわ」
犬戦士「いいから使っとけ」
術師「命の木霊……聞いたことがあるような」
石使い「……何だったかな?」
犬戦士「気にすんな」
…………
やがて季節は秋に移る
雨期からの復興、大規模な事業の足踏みなど、様々な問題を抱える中、城壁構築を始めることになった
術師「本来なら異例の速さなんですがね」
メイド剣士「基礎が何もない状態からの開発ですからね」
犬娘「いよいよだね」
女拳士「じゃ、悪いけどまた修行してくるわ」
術師「あなたが何か技を身につけようとしているのは分かります」
術師「頑張ってください!」
女拳士「悪いね、本当に」
犬娘「私も強くなってるから、今度は負けないよね!」
女拳士「もちろんだ!」
188 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 00:55:02.35 ID:if/f0pXAO
術師「兎に角開発の方は城壁建設が済まないと他の何もできません」
術師「モグラさんたちの大活躍で十分な上水設備をチュウザン滝の上流から引くことが出来ましたし」
術師「町を広げるのも住民増加に合わせて虎獣人さんがやってくれてます」
メイド剣士「人が増えれば仕事も増え、仕事が増えれば人も増える好循環が生まれてます」
犬娘「好景気!」
術師「まあまだ今は村の規模しか無いんですが」
そこにハマミナトから魔女娘がやってきた
術師「魔女娘さん、来てくれるのを待ってたんです」
魔女娘「悪いね、色々ゴタゴタしてて」
メイド剣士「何かあったんですか?」
旅人「例の事件のせいかね〜」
魔女娘「ん、新顔だね、そうだよ」
術師「いったい何が?」
魔女娘「ハマミナト王暗殺未遂」
メイド剣士「そんな……、あんないい王様なのに」
旅人「古来から、良い人なんてのは金儲けしたい奴には邪魔でしかないからな〜」
術師「だから良い魔王が世界を支配してるんですよね……」
魔女娘「力をひたすら求める魔王が世界を救う……、皮肉な話だよ」
189 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 00:56:38.90 ID:if/f0pXAO
魔女娘「まあ今日は情報交換に来たんだ、てきとーに知ってること教えて」
術師「この町については、ようやく村と名乗れる規模になりました」
魔女娘「そうみたいだね、城建設も始めたみたいじゃないか」
魔女娘「街道の方も半分は完成したし、うちんとこの国との間に両国の砦も作ってる」
術師「本当は城建設にハマミナトの大工さんの力を借りたいんですが」
魔女娘「借りれば良いじゃないか」
術師は魔女娘がこちらの事情を察しているような気がした
術師「もちろんハマミナトを攻めたいとか、ハマミナトの妨害をしたいなんてつもりはありません」
魔女娘「ハマミナトの民がそう思わないのは分かるだろ?」
やはり、分かった上でのことだ
術師「港を作るのはハマミナトのシェアを奪うことに他なりませんからね」
魔女娘「だからって魔王……、コトー王の言い付けや計画に背いたことなんか無いんだよ、うちは」
術師「築城を急ぐのは国の起点を築くため、敵対行為では有りません」
魔女娘「分かってるっつの」
こちらも分かっている
魔女娘「じゃあなんでうちに頼らない」
術師「お話しましょう」
魔女娘「やっとかい」
190 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 00:59:04.89 ID:if/f0pXAO
術師は黒衣の魔女について掻い摘まんで話をした
魔女娘「ふん、腹の中に虫がいるのは分かっていたんだ」
魔女娘「しかしそんなデカい虫がいるのかよ……」
魔女娘が震えている
彼女は気丈な人物だ
しかし本気で怯えているように見える
白導師「可愛い、ペロペロしたい」
魔女娘「おらあ!」
魔女娘はとても強力な火球魔法を放った
白導師「ぐはあっ」
魔女娘「ゴミは隔離されとけ!」
術師「失礼しました」
魔女娘「しかし、チュウザン王があいつを派遣するほどヤバいってことだな……」
メイド剣士「うちへの使者焦げてますがありがとうございます」
術師「魔女娘さんには出来る限りの協力をします だからプロパガンダに惑わされないように国民を誘導してください」
魔女娘「やってるんだけどね……、チッ」
白導師「スルーするな」
魔女娘「なんで平気なんだこいつ」
魔女娘は骨まで焦がす閃光を放った
メイド剣士「毎日のように魔人王様に殴られてるからでしょうね」
白導師「カサカサ」
ゴキブリか
…………
女拳士「じゃあ、魔王様、打ち合いに協力してよ」
犬娘「うん、負けないよ!」
虎娘「どっちも頑張って!」
191 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 01:00:51.16 ID:if/f0pXAO
女拳士は肉体強化を二段階かけると、そこから更に魔力を纏っていく
女拳士「これが以前に完成させた魔法、魔力外骨格、名付けて『竜人鱗』」
犬娘「私も新魔法で行くよ〜!」
犬娘「右手に雷、より強く」
犬娘「左手に光、より速く」
犬娘「我は獣人、雷虎光狼拳!」
犬娘「行くよ!」
女拳士「止める!」
犬娘「うわああああ!!」
女拳士「おおおおお!!」
魔力が嵐のように渦巻く
火山には町中から見えるような竜巻と雷が巻き起こる
規模は既に超級魔法をぶつけ合ったレベルだ
虎娘「こんな力どっから出てるの〜!」
虎娘は必死で岩にしがみついている
全てが晴れた時、二人は全く最初の状態に戻っていた
犬娘「負けた!」
女拳士「まだまだ!」
犬娘「ううう!」
女拳士「おおお!」
そこから二人は数十回打ち合った
殴り、蹴り、膝を入れ、肘を食わせ、頭突きではじき、肩を叩き込んだ
虎娘「人間ってこんなにタフになれるんだ……」
犬娘が投げをうち、女拳士が掴んで押さえつけ、犬娘が噛みつき、女拳士が叩きつける
術師「それまで」
術師「何隠れて楽しいことしてるんですか!」
術師は何やら楽しげに怒った
女拳士「疲れたわ」
犬娘「ご飯、お肉、お魚、海老、烏賊、お野菜」
術師「はいはい」
…………
季節は、やがて冬を迎える
術師「開発は遅々として進まず、ですね」
メイド剣士「城壁作りはなかなか難しいですね、デザイン無視で作ってるんですけど」
術師「まあまだ一年も経ってないんだから急かすのもおかしいんですが」
犬娘「牧草地に小屋が立って牛は少し増えてきたね〜」
虎娘「ミルク飲めるのは良いよね」
女拳士「肉も多少自分のとこで取れるようになってきたよ、鶏肉だけど」
術師「チキンも美味しいですわ」
メイド剣士「お魚も穫れてますし」
女拳士「ハマミナトはどうなってるのさ」
旅人「まあ膠着状態だね〜 魔女娘ちゃんの計らいで旅行者や大工さんも来てくれてるし、不信感も少しは拭われてるみたいだね」
勇者「争いが無くなるなら、良いことだな」
ーーカイオウ国ーー
魚娘「犬娘様たち来ませんねー」
貝殻姫「なんだか忙しいみたいですよ」
そこに人魚が飛び込んできた
人魚メイド「た、大変です!」
貝殻姫「どうしたんです?」
人魚メイド「沖から緑の船が来て……皆が殺されて……、うっうっ……」
193 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 01:04:12.22 ID:if/f0pXAO
貝殻姫「そ、そんな!」
その船は突如カイオウ国沖に現れた
カイオウ国海上法にことごとく従わず、魚人たちの産卵場所や漁場、住処を荒らし、港に無理矢理に乗り上げた
緑色の鎧を纏った男は、叫ぶ
緑鎧「俺は勇者、裏切りの勇者のせいで勇者にされちまった可哀想な男だ!」
緑鎧「勇者になっちまったからには魔物を倒すのが俺の使命、可哀想だがみんな死んでもらうぜ!」
街は大騒ぎになった
蜂の巣をつついたように、走り回る人々、水の深くに身を潜めようとする人々、城に逃げ込む人々
緑鎧の勇者は手当たり次第に魔法剣を放ち、全てをなぎはらって行く
後からついて来る青い魔女は全てを凍らせていく
水中深くに逃げた魚人たちも氷漬けになり、死んでいく
大虐殺は城の中に及ぼうとしていた
貝殻姫は自分の従者たち二人に転送石を持たせ、チュウザンへと送る
次に貝殻姫は母に石を渡そうとする
人魚女王「私はいらないわ〜 子供たちを逃がしてあげなさい」
貝殻姫「そんな、お母様!」
人魚女王「早く逃げなさい、犬娘ちゃんに助けてもらいなさい」
貝殻姫「いや、お母様となら逃げる!」
人魚女王「死なれたら困るんだけどな〜」
194 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 01:06:22.28 ID:if/f0pXAO
人魚女王「貝殻ちゃん、よく聞きなさい、どうせ旦那も出てこない、私だけ逃げてどうするの?」
人魚女王「私は生き残って若いあなたが死ぬなんて本末転倒じゃないの」
貝殻姫「でも……」
人魚女王「分かった、石はもらうわ」
貝殻姫「お母様!」
人魚女王「ただし、あなたが使わない限り私も使わない、良いわね〜?」
貝殻姫「それで構いません、ではお父様の所に行ってきます!」
人魚女王「……貝殻ちゃん……、どうか無事に犬娘様の所へ行けますように」
…………
引きこもりの王、人魚王の間は、この事態でも硬く閉ざされている
毎日置いている食事が無くなるので生きているはずだが、もはや娘ですら声を覚えていない
こんな引きこもりは死んでも良さそうだが、それでも貝殻姫の父親だ
貝殻姫「お父様、敵が来ました……、お父様!」
貝殻姫「お願いします、扉を開いて出てきて!」
貝殻姫「早く逃げなければお母様が死んでしまう!」
貝殻姫が血が滲むほどドアを叩くと、開かずの扉がゆっくりと、開いた
そしてその奥から、すさまじく太った体、髭だらけの顔、瓶底眼鏡、もはや誰かも分からない魚人が現れた
人魚王「貝殻ちゃん萌え〜」
195 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 01:08:41.63 ID:if/f0pXAO
今時こんな古典的なニートがいるか、と突っ込みたくなるような容姿と言動である
人魚王「ふひっ、貝殻ちゃん早く逃げてーっ」
貝殻姫「お父様、この石をお持ちください!」
人魚王「そんな石無くても僕は無敵です!」
人魚王「君が逃げないと愛しの女王たんも逃げられないでしょーっ!」
人魚王は貝殻姫を押し退けると、もはや陸を歩いているやら水に浸かっているやら分からない体勢で歩いていく
魚のボディは太りすぎて着ぐるみのようですらある
人魚王が何やら唱えると、何故か貝殻姫の持つ石が効力を発揮した
人魚王「僕は魚人の王でありながら技術者の王でもあるなんだよ」
喋り方はおかしいが、確かな力を持っているようだ
緑鎧「おや、王様?」
緑鎧「可哀想だけど死んでくれ」
人魚王「やだ、まだ萌え萌え人魚たんのフィギュアが出来てないもん」
技術者の王では有るのかも知れない
緑鎧「じゃあ刺身となれ、魚の餌になって生きろ」
人魚王「やだもんねーっ!」
人魚王はあたりを全て凍らせる吹雪を吐いた
青魔女「同じ属性ね、戦いづらいわ」
緑鎧「俺に任せとけや おら、極大雷撃剣!」
緑鎧の剣から放たれた雷は、氷面を滑る
196 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 01:11:36.51 ID:if/f0pXAO
ーーチュウザンーー
貝殻姫「なんで、お父様、お母様、なんで来てくれないの!」
魔人王「白、は、いないか……、牧場の」
牧場娘「魔人ちゃん、昼寝しようよ、めんどいよ」
魔人王はあたりを凪払う
牧場娘「ふぁ〜あ」
牧場娘は呑気にあくびした
魔人王「お前でなければならん」
牧場娘「自分で転送出来るだろ」
銀鈴「王の言うことを聞かない、悪い子は死ね」
銀鈴が杖を構えると不思議と牧場娘は言うことを聞いた
牧場娘「あんたは苦手なんだよ……、ったく」
貝殻姫は牧場娘にすがろうとするが、するりと手が突き抜けて転ぶ
貝殻姫「お願いします……牧場娘様……」
貝殻姫は地面に額をしたたかにぶつけ、その体勢で泣きながら懇願した
牧場娘「分かった分かった たく、めんどいな」
牧場娘は転送魔法を唱えた
ーーカイオウ国ーー
魔人王たちは直に王城に辿り着いた
中からは激しく轟音が響く
魔人王「行くぞ」
言うより速く魔人王は駆け込む
緑鎧の勇者が正に人魚王にトドメを刺さんとする場面であった
魔人王「何者だ?」
緑鎧「こっちのセリフだっつの」
緑鎧は魔人の隙をついて、真っ二つに叩き斬る
緑鎧「頭がお可哀想なのかあ?」
197 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 01:13:37.59 ID:if/f0pXAO
魔人王の姿は揺れている
先の牧場娘の時と同じだ
牧場娘「牧場に陽炎、牧場娘けんざんー、昼寝すっか?」
魔人王は緑鎧を殴りつける
もちろん疲弊した緑鎧などは魔人王の敵たりえない
緑鎧「な……、なんつー力」
青魔女は氷剣をいくつか作り出し、魔人王たちを凪払う
しかし、魔人王はおろか、銀鈴にも攻撃は当たらない
銀鈴「頭がお可哀想なのはあなたたち、死ぬしかない」
銀鈴はゆっくり、致死の魔法を唱えた
緑鎧はその場で力尽きた
青魔女は一瞬苦しんだが、凌いだようだ
しかし
魔人王「食らえ」
魔人王は王城を埋め尽くすような火の玉を放った
ーーチュウザンーー
貝殻姫「大丈夫でしょうか、皆さん」
執事「それは愚問ですな お城の心配をされた方が」
貝殻姫「えっ」
ーーカイオウ国王城ーー
燃え尽きた青いものが落ちている
魔人王は銀鈴に命じ、緑鎧を蘇生させる
銀鈴「殺す方が得意、蘇生は白の仕事」
魔人王「すまんな、この三人だとお前に負担をかける」
銀鈴「全ては魔人王様の思し召しのままに」
犬娘「魔王になるっ!」
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