犬娘「魔王になるっ!」
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176 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 00:26:21.81 ID:if/f0pXAO
…………
そんな風に忙しく過ごしていると、また旅人が訪れた
その旅人を見つけた者たちが慌てて駆け込んできた
狼獣人「大変だっ、黒衣の女が来た!」
術師「!」
メイド剣士「!」
犬娘「!」
勇者「……ここに……、ついに来たか!」
女拳士「よし、行こう!」
犬娘「絶対捕まえる……!」
犬娘たちが小屋から出て行くと、黒衣の女と、その後ろの臓物を縫い合わせたような、ブクブクと膨らんだ真っ黒な泡のような生き物が街を襲っていた
黒衣「……はじめまし……て……」
勇者「何の用だ!」
犬娘「うーっ!」
黒衣「あら……あら……、そんなに緊張……しなくても……いい……わよ……」
黒衣「ただの……、実験」
そう言うと黒衣の女の持つ石から黒い閃光が迸り、犬娘を、メイド剣士を、女拳士を貫いた
犬娘「ぎゃん!」
メイド剣士「きゃあああっ!」
女拳士「ぐはっ!」
勇者はその攻撃を軌道を読んでかわし、黒衣の女に突っ込んだ
しかし、その剣は黒衣に弾かれた
黒衣「……闇の衣……プロトタイ……プ…… でも……あなたでは……、無理……」
そのうち後ろのグロテスクな物体からの攻撃が来る
177 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 00:29:18.37 ID:if/f0pXAO
術師は三人を回復させる
術師「私は防御に専念します 皆さん頼みます!」
黒衣「いっぱい……、……引く」
犬娘「待て!」
勇者「待て、サイセイからさらった子供たちはどこだ!」
黒衣の女は首を傾げた
黒衣「めのまえにいる」
黒衣の女の黒い石から放たれた闇の閃光に犬娘と勇者は足を貫かれる
黒衣の女は宙に浮き、ハマミナトの方へと飛んでいった
その後に残った黒い魔物は、縛りを解かれたように暴れ出す
黒い泡「イタイ……、イタイ……」
黒い泡「クルシイ……、タスケテ……」
黒い泡「ハカイシンニナンテ……、ナリ……タクナイ……」
術師「……!」
術師は背中に戦慄が走るのを感じた
勇者「どういうことだ……」
勇者は先ほどの言葉を、めのまえにいる、と言う何の感情もこもっていない黒衣の言葉を繰り返し再生していた
術師「破壊神再生実験に子供を使った……、子供の苦しみもがく感情を使った……、そう言うことですわ……」
勇者「な……っ!!」
勇者「ゆ、ゆるさ、ん……!」
勇者「許さんぞぉっ!!」
勇者は自身の誇る剣、アダマントの剣に雷撃をまとわせた
勇者「食らえ!」
勇者「雷神剣!!」
178 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 00:31:28.66 ID:if/f0pXAO
黒い泡は、簡単に溶け、貫かれた
術師「焼き払います」
術師は火の槍を数本召還し、何度も旋回させ黒い泡を焼き払った
犬娘と女拳士、メイド剣士は、その流れを呆然と眺めていることしか出来なかった
虎獣人たちが駆けつけた時は、黒い泡も全て燃え尽きた後だった
…………
その場にいた全員に言葉がなかった
とりあえず再開しなくてはならない町の開発にも、一向に気が向かない
勇者「なんてことだ……」
勇者「俺の妹も……、街の子供たちも……」
犬娘「ひどい……ひどいよ……!」
術師「あいつは石を使ってた…… 同じ錬金術師として、絶対に許せないことをやってる……」
女拳士「手も足も出なかったよ……、アタシが……」
虎娘「師匠……」
メイド剣士「うう、う……」
メイド剣士はただ、泣いている
旅人「だらしがないな」
皆「!」
旅人「あいつを倒すのがお前たちの目的だ、それが変わったのか?」
旅人「やるべき事が決まっているなら、突き進め!」
旅人「今日までお前たち全員がそうしてきたハズだ!」
犬娘「そう……、そうだよ……!」
犬娘「やるしか、無いんだ!」
179 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 00:33:59.76 ID:if/f0pXAO
犬娘「勇者さん」
勇者「ああ」
犬娘「私たちの無念を晴らせるのは、あいつを倒した時だけ!」
勇者「ああ!」
犬娘「あんな奴、次に会ったら一発で踏みにじってやるから!!」
勇者「おおっ!!」
女拳士「ははっ、だよな」
術師「絶対倒します」
メイド剣士「もう、負けません」
虎獣人「よし、肉を食おう」
そう言うと虎獣人はチュウザンから取り寄せたらしい大きな肉の塊を三つテーブルに、ドスン、と置いた
…………
肉が焼ける良い匂いがする
女拳士「久しぶりだあ……」
犬娘「お腹の虫が暴れてるよう」
虎獣人「良い肉の匂いだな」
虎娘「うう、よだれが……」
術師「チュウザンのお肉に、北浜の天日塩をふりかける」
勇者「うわっ、味が想像できてヤバい」
術師「黒胡椒、大蒜」
術師「焼く、以上」
メイド剣士「よだれで溺れそうです」
美味しい香りを嗅いだ時には、もう全員が気力を取り戻していた
虎少年が配膳する
虎少年「お姉ちゃんも手伝ってよ」
虎娘「あたし食べるだけ」
全員が席について犬娘の顔を覗き込む
犬娘「いただきます!」
皆「いただきます!」
全員一斉に肉に食らいつく
180 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 00:35:42.59 ID:if/f0pXAO
メイド剣士「うう、なんで美味しいんだろう」
術師「落ち込んでてもお腹空きますからね」
女拳士「アレを見た後で肉はどうなのか、と思ったけど」
メイド剣士「思い出させないでください」
犬娘「おーいしーいっ!」
虎娘「さいこーっ!」
虎少年「うん、すごく美味しい」
石使い「……美味しい」
勇者「いやあ、たまんない肉だね」
虎獣人「チュウザン王様の厳選だからな」
モグラ親方「それめっちゃ高そうだな!」
モグラ子分「もう一生食えないかも」
旅人(こいつら、強いじゃないか)
小さな村のほぼ全員が一つの小屋で大騒ぎとなった
そして夜になった
術師は犬娘と勇者を連れ、コトーに飛んだ
術師「子供の喧嘩を親に言いつけるみたいな気はしなくも無いですが」
勇者「事態が事態なんだ、仕方無いだろう」
犬娘「女拳士ちゃんとメイド剣士ちゃんは?」
術師「メイド剣士ちゃんは後片付けで、女拳士さんは……」
術師「同じ相手に二度負けたのが許せない、とか言って修行に行ってしまいました」
勇者「彼女はハングリーだな、強いはずだ」
術師「……あなたも強いですわ」
夜の訪問だったが、すぐにコトー王は現れた
181 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 00:37:26.54 ID:if/f0pXAO
魔王「聞いたぞ、闇の衣……、更に破壊神か」
術師「ご助言を頂きたく思い参りました」
魔王「助言なあ……、とりあえず人を送ってもいいが、まずお前等が修行しないとな」
魔王「今日明日でどうこうできる問題でもあるまい」
犬娘「魔王様でも勝てない?」
勇者「……そんな訳ない、ですよね?」
魔王「蠱毒の壺の外で戦ったら大虐殺になっちゃうからなあ……」
術師は黒衣とは別の意味で戦慄した
魔王「まあ、俺って曲がりなりにも王様じゃん?」
係員「勇者殿が勝てないとなると私が出て行っても返り討ちでしょうし」
魔王「と、なると、アイツを出すしか無いよな」
係員「側近様ですね、前の側近様が亡くなってから百余年魔王様に仕えている方です」
術師「頼もしいですわ、お願いします」
魔王「まあ実際戦うのはお前たちになるだろうがな」
犬娘「私も、その方が良いです」
勇者「俺もです」
魔王「まあ今日はもう遅いからな、帰るか泊まっていけ」
術師「帰ります」
魔王「あ、そう?」
魔王はなぜかしょんぼりした
182 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 00:38:50.06 ID:if/f0pXAO
そして、夜が明けたーー
犬娘「こっちは勇者と魔王がいるんだから、奇襲されなきゃ負けないよね!」
勇者「ああ、もちろん」
術師「防御か回復を鍛えないと……、とにかく魔力を高めないと……」
術師「あれをやってみようかな?」
メイド剣士「あの、女拳士さんが帰ってきません」
術師「うーん、街づくりも止めたくないんですけど」
勇者「だよな、探してくる」
虎娘「あたしも探してくる!」
犬娘「気をつけてね!」
術師「じゃあ今日は街づくりを進めつつ、修行方法を考えましょう」
虎獣人「悪いな、あんたたちだけ戦わせて……」
術師「良いんですよ、好きでやってますから」
とりあえず術師は塩田の様子を見に向かった
犬娘は火山の採掘現場や、森の伐採現場、温泉の街道整備を見て回った
力を貸せる所があれば積極的に貸していった
メイド剣士「女拳士さんのあの新技……、この間は出せなかったけど、あれを使っていたら……」
メイド剣士「あの魔法をもし……、いや、そもそも私には無理だし……」
メイド剣士は悩みながら海から河川沿いを見て回り、増水対策も考えていた
183 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 00:41:21.46 ID:if/f0pXAO
メイド剣士「水を東に流すと塩田が全部ダメに、西に流すと木材加工場や温泉、下水処理施設にダメージがある……、つまり」
メイド剣士「要所に水が流れないように斜めに堤防を何ヶ所かに分けて建てればいいのかな……」
メイド剣士「しかし、お城を作るくらい大変そう」
メイド剣士「すぐには無理かな」
メイド剣士「と、すると、後始末を簡単にする方法を考えた方が良いかな?」
術師「ふむふむ」
メイド剣士「わあっ!」
メイド剣士「急に後ろに立たないで下さい!」
術師「一つ考えてるのが有るんです」
メイド剣士「なんですか?」
術師「いずれ港を作らないと駄目なんですが、それにはかなり東に行った所の山を削って行き」
術師「そこまでの街道も通さなくてはなりません」
術師「しかも塩田をよけて」
メイド剣士「ふむふむ」
術師「つまり橋を作って護岸工事もしてしまおうかと」
メイド剣士「またとんでもない大事業ですね」
術師「まあまずお城建てないと駄目ですよね」
メイド剣士「水害は今は警戒するしか無いですね……」
石使い「石を使ってみよう」
メイド剣士「わあっ!」
184 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 00:43:26.72 ID:if/f0pXAO
術師「石使いちゃん、どの石を使うの?」
石使い「緑、風圧で流れを反らす」
術師「出力不足では」
石使い「嵐の力にカウンターをかけるように改造するの……」
術師「……なるほど」
メイド剣士「できるんですか!」
術師「できません」
メイド剣士「出来ないんですか」
術師「それこそ何年か研究すれば……」
メイド剣士「できるんですね!」
術師「確実ではないので他の解決策も模索するべきですわ」
メイド剣士「確実ではないんですね」
術師「可愛い」
メイド剣士「なんなんですか!」
石使い「わたしのほうが……せんぱい」
メイド剣士「やっぱりそう言う関係なんですね、お下品」
術師「帰りますか」
メイド剣士「構ってくださいよ」
石使い「いけず」
術師「いけずってなんですか」
ーーコトーーー
係員「行っていただけないと困ります」
ヒーラー「監視員だけ送り込んでおけばいいのではないでしょうか」
ヒーラー「ぶっちゃけめんどい」
係員「は?」
ヒーラー「なんでも有りません」
ヒーラー「そもそも彼女達からの報告を聞く限り、封印魔法などが必要な状況です」
185 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 00:46:38.85 ID:if/f0pXAO
ヒーラー「今から研究するとして、一、二年」
係員「緊急性のある話だと思うのですが」
ヒーラー「他に黒衣の魔女の襲撃から逃げる手立ても、そもそも彼女ら自身が対抗する手段もあるはずです」
ヒーラー「頭堅いな」
係員「は?」
ヒーラー「何でも有りません」
ヒーラー「兎に角、私は二年ほど研究に入りますので、魔王様にもよろしくお願いします」
係員「ですが……」
ヒーラー「しつけぇ」
係員「は?」
ヒーラー「何でも以下略」
係員「投げやりにならないでください」
ーーチュウザンーー
術師「そう言う訳ですから、魔人王様もお気をつけ下さい」
魔人王「うむ、助かる」
魔人王「お前たちの味方で良かった」
術師「ありがとうございます」
魔人王「それでハマミナトには行ったのか?」
術師「……」
魔人王「?」
術師「黒衣はハマミナトに飛びました」
魔人王「……、なるほど」
魔人王「白」
白導師「はいな」
魔人王「彼女らをサポートしろ もし混乱をきたすような行動を取ったら俺の最終奥義を食らわせる」
白導師「私がそんなことするわけないだろ!!」
186 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 00:49:26.18 ID:if/f0pXAO
白導師はあきらかに挙動不審でガタガタ振動している
魔人王「犬、お前も行け」
犬戦士「二人じゃ国の守りがやばくね?」
魔人王「心配するな、奴を呼んでおく」
犬戦士「果樹園のデブか、鉱山のガリか、畑の男か、牧草地の女か、どれよ」
魔人王「牧草地だ」
犬戦士「本気だな……、そんなヤバいのか」
魔人王「念には念を入れると言うことだ」
白導師「あの小娘はないわ ピラニアやマキビシを体内に隠すようなもんだろ」
銀鈴「いまいちよく分からない例え、死ね」
白導師「いや、生きる!」
銀鈴「今回は本気でヤバい……、生きろ」
白導師「デレたーっ! 銀鈴がデレたーっ!」
銀鈴「デレてない、死ね」
白導師「おうよ、玉砕してくるわ!」
銀鈴「砕け散れ」
犬戦士「早く行くぜ」
銀鈴「バカ犬、頑張って死ね」
犬戦士「不吉だっつの!」
術師「行きましょうか」
白導師「あら、まだいたの」
…………
術師「今帰りました」
白導師「パンツは?」
犬戦士「最終奥義」
白導師「皆、お久しぶり」
犬戦士「おせーよ変態、一点マイナスな」
白導師「へるぷ!」
犬戦士「良いことしろよ」
…………
そんな風に忙しく過ごしていると、また旅人が訪れた
その旅人を見つけた者たちが慌てて駆け込んできた
狼獣人「大変だっ、黒衣の女が来た!」
術師「!」
メイド剣士「!」
犬娘「!」
勇者「……ここに……、ついに来たか!」
女拳士「よし、行こう!」
犬娘「絶対捕まえる……!」
犬娘たちが小屋から出て行くと、黒衣の女と、その後ろの臓物を縫い合わせたような、ブクブクと膨らんだ真っ黒な泡のような生き物が街を襲っていた
黒衣「……はじめまし……て……」
勇者「何の用だ!」
犬娘「うーっ!」
黒衣「あら……あら……、そんなに緊張……しなくても……いい……わよ……」
黒衣「ただの……、実験」
そう言うと黒衣の女の持つ石から黒い閃光が迸り、犬娘を、メイド剣士を、女拳士を貫いた
犬娘「ぎゃん!」
メイド剣士「きゃあああっ!」
女拳士「ぐはっ!」
勇者はその攻撃を軌道を読んでかわし、黒衣の女に突っ込んだ
しかし、その剣は黒衣に弾かれた
黒衣「……闇の衣……プロトタイ……プ…… でも……あなたでは……、無理……」
そのうち後ろのグロテスクな物体からの攻撃が来る
177 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 00:29:18.37 ID:if/f0pXAO
術師は三人を回復させる
術師「私は防御に専念します 皆さん頼みます!」
黒衣「いっぱい……、……引く」
犬娘「待て!」
勇者「待て、サイセイからさらった子供たちはどこだ!」
黒衣の女は首を傾げた
黒衣「めのまえにいる」
黒衣の女の黒い石から放たれた闇の閃光に犬娘と勇者は足を貫かれる
黒衣の女は宙に浮き、ハマミナトの方へと飛んでいった
その後に残った黒い魔物は、縛りを解かれたように暴れ出す
黒い泡「イタイ……、イタイ……」
黒い泡「クルシイ……、タスケテ……」
黒い泡「ハカイシンニナンテ……、ナリ……タクナイ……」
術師「……!」
術師は背中に戦慄が走るのを感じた
勇者「どういうことだ……」
勇者は先ほどの言葉を、めのまえにいる、と言う何の感情もこもっていない黒衣の言葉を繰り返し再生していた
術師「破壊神再生実験に子供を使った……、子供の苦しみもがく感情を使った……、そう言うことですわ……」
勇者「な……っ!!」
勇者「ゆ、ゆるさ、ん……!」
勇者「許さんぞぉっ!!」
勇者は自身の誇る剣、アダマントの剣に雷撃をまとわせた
勇者「食らえ!」
勇者「雷神剣!!」
178 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 00:31:28.66 ID:if/f0pXAO
黒い泡は、簡単に溶け、貫かれた
術師「焼き払います」
術師は火の槍を数本召還し、何度も旋回させ黒い泡を焼き払った
犬娘と女拳士、メイド剣士は、その流れを呆然と眺めていることしか出来なかった
虎獣人たちが駆けつけた時は、黒い泡も全て燃え尽きた後だった
…………
その場にいた全員に言葉がなかった
とりあえず再開しなくてはならない町の開発にも、一向に気が向かない
勇者「なんてことだ……」
勇者「俺の妹も……、街の子供たちも……」
犬娘「ひどい……ひどいよ……!」
術師「あいつは石を使ってた…… 同じ錬金術師として、絶対に許せないことをやってる……」
女拳士「手も足も出なかったよ……、アタシが……」
虎娘「師匠……」
メイド剣士「うう、う……」
メイド剣士はただ、泣いている
旅人「だらしがないな」
皆「!」
旅人「あいつを倒すのがお前たちの目的だ、それが変わったのか?」
旅人「やるべき事が決まっているなら、突き進め!」
旅人「今日までお前たち全員がそうしてきたハズだ!」
犬娘「そう……、そうだよ……!」
犬娘「やるしか、無いんだ!」
179 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 00:33:59.76 ID:if/f0pXAO
犬娘「勇者さん」
勇者「ああ」
犬娘「私たちの無念を晴らせるのは、あいつを倒した時だけ!」
勇者「ああ!」
犬娘「あんな奴、次に会ったら一発で踏みにじってやるから!!」
勇者「おおっ!!」
女拳士「ははっ、だよな」
術師「絶対倒します」
メイド剣士「もう、負けません」
虎獣人「よし、肉を食おう」
そう言うと虎獣人はチュウザンから取り寄せたらしい大きな肉の塊を三つテーブルに、ドスン、と置いた
…………
肉が焼ける良い匂いがする
女拳士「久しぶりだあ……」
犬娘「お腹の虫が暴れてるよう」
虎獣人「良い肉の匂いだな」
虎娘「うう、よだれが……」
術師「チュウザンのお肉に、北浜の天日塩をふりかける」
勇者「うわっ、味が想像できてヤバい」
術師「黒胡椒、大蒜」
術師「焼く、以上」
メイド剣士「よだれで溺れそうです」
美味しい香りを嗅いだ時には、もう全員が気力を取り戻していた
虎少年が配膳する
虎少年「お姉ちゃんも手伝ってよ」
虎娘「あたし食べるだけ」
全員が席について犬娘の顔を覗き込む
犬娘「いただきます!」
皆「いただきます!」
全員一斉に肉に食らいつく
180 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 00:35:42.59 ID:if/f0pXAO
メイド剣士「うう、なんで美味しいんだろう」
術師「落ち込んでてもお腹空きますからね」
女拳士「アレを見た後で肉はどうなのか、と思ったけど」
メイド剣士「思い出させないでください」
犬娘「おーいしーいっ!」
虎娘「さいこーっ!」
虎少年「うん、すごく美味しい」
石使い「……美味しい」
勇者「いやあ、たまんない肉だね」
虎獣人「チュウザン王様の厳選だからな」
モグラ親方「それめっちゃ高そうだな!」
モグラ子分「もう一生食えないかも」
旅人(こいつら、強いじゃないか)
小さな村のほぼ全員が一つの小屋で大騒ぎとなった
そして夜になった
術師は犬娘と勇者を連れ、コトーに飛んだ
術師「子供の喧嘩を親に言いつけるみたいな気はしなくも無いですが」
勇者「事態が事態なんだ、仕方無いだろう」
犬娘「女拳士ちゃんとメイド剣士ちゃんは?」
術師「メイド剣士ちゃんは後片付けで、女拳士さんは……」
術師「同じ相手に二度負けたのが許せない、とか言って修行に行ってしまいました」
勇者「彼女はハングリーだな、強いはずだ」
術師「……あなたも強いですわ」
夜の訪問だったが、すぐにコトー王は現れた
魔王「聞いたぞ、闇の衣……、更に破壊神か」
術師「ご助言を頂きたく思い参りました」
魔王「助言なあ……、とりあえず人を送ってもいいが、まずお前等が修行しないとな」
魔王「今日明日でどうこうできる問題でもあるまい」
犬娘「魔王様でも勝てない?」
勇者「……そんな訳ない、ですよね?」
魔王「蠱毒の壺の外で戦ったら大虐殺になっちゃうからなあ……」
術師は黒衣とは別の意味で戦慄した
魔王「まあ、俺って曲がりなりにも王様じゃん?」
係員「勇者殿が勝てないとなると私が出て行っても返り討ちでしょうし」
魔王「と、なると、アイツを出すしか無いよな」
係員「側近様ですね、前の側近様が亡くなってから百余年魔王様に仕えている方です」
術師「頼もしいですわ、お願いします」
魔王「まあ実際戦うのはお前たちになるだろうがな」
犬娘「私も、その方が良いです」
勇者「俺もです」
魔王「まあ今日はもう遅いからな、帰るか泊まっていけ」
術師「帰ります」
魔王「あ、そう?」
魔王はなぜかしょんぼりした
182 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 00:38:50.06 ID:if/f0pXAO
そして、夜が明けたーー
犬娘「こっちは勇者と魔王がいるんだから、奇襲されなきゃ負けないよね!」
勇者「ああ、もちろん」
術師「防御か回復を鍛えないと……、とにかく魔力を高めないと……」
術師「あれをやってみようかな?」
メイド剣士「あの、女拳士さんが帰ってきません」
術師「うーん、街づくりも止めたくないんですけど」
勇者「だよな、探してくる」
虎娘「あたしも探してくる!」
犬娘「気をつけてね!」
術師「じゃあ今日は街づくりを進めつつ、修行方法を考えましょう」
虎獣人「悪いな、あんたたちだけ戦わせて……」
術師「良いんですよ、好きでやってますから」
とりあえず術師は塩田の様子を見に向かった
犬娘は火山の採掘現場や、森の伐採現場、温泉の街道整備を見て回った
力を貸せる所があれば積極的に貸していった
メイド剣士「女拳士さんのあの新技……、この間は出せなかったけど、あれを使っていたら……」
メイド剣士「あの魔法をもし……、いや、そもそも私には無理だし……」
メイド剣士は悩みながら海から河川沿いを見て回り、増水対策も考えていた
183 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 00:41:21.46 ID:if/f0pXAO
メイド剣士「水を東に流すと塩田が全部ダメに、西に流すと木材加工場や温泉、下水処理施設にダメージがある……、つまり」
メイド剣士「要所に水が流れないように斜めに堤防を何ヶ所かに分けて建てればいいのかな……」
メイド剣士「しかし、お城を作るくらい大変そう」
メイド剣士「すぐには無理かな」
メイド剣士「と、すると、後始末を簡単にする方法を考えた方が良いかな?」
術師「ふむふむ」
メイド剣士「わあっ!」
メイド剣士「急に後ろに立たないで下さい!」
術師「一つ考えてるのが有るんです」
メイド剣士「なんですか?」
術師「いずれ港を作らないと駄目なんですが、それにはかなり東に行った所の山を削って行き」
術師「そこまでの街道も通さなくてはなりません」
術師「しかも塩田をよけて」
メイド剣士「ふむふむ」
術師「つまり橋を作って護岸工事もしてしまおうかと」
メイド剣士「またとんでもない大事業ですね」
術師「まあまずお城建てないと駄目ですよね」
メイド剣士「水害は今は警戒するしか無いですね……」
石使い「石を使ってみよう」
メイド剣士「わあっ!」
184 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 00:43:26.72 ID:if/f0pXAO
術師「石使いちゃん、どの石を使うの?」
石使い「緑、風圧で流れを反らす」
術師「出力不足では」
石使い「嵐の力にカウンターをかけるように改造するの……」
術師「……なるほど」
メイド剣士「できるんですか!」
術師「できません」
メイド剣士「出来ないんですか」
術師「それこそ何年か研究すれば……」
メイド剣士「できるんですね!」
術師「確実ではないので他の解決策も模索するべきですわ」
メイド剣士「確実ではないんですね」
術師「可愛い」
メイド剣士「なんなんですか!」
石使い「わたしのほうが……せんぱい」
メイド剣士「やっぱりそう言う関係なんですね、お下品」
術師「帰りますか」
メイド剣士「構ってくださいよ」
石使い「いけず」
術師「いけずってなんですか」
ーーコトーーー
係員「行っていただけないと困ります」
ヒーラー「監視員だけ送り込んでおけばいいのではないでしょうか」
ヒーラー「ぶっちゃけめんどい」
係員「は?」
ヒーラー「なんでも有りません」
ヒーラー「そもそも彼女達からの報告を聞く限り、封印魔法などが必要な状況です」
185 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 00:46:38.85 ID:if/f0pXAO
ヒーラー「今から研究するとして、一、二年」
係員「緊急性のある話だと思うのですが」
ヒーラー「他に黒衣の魔女の襲撃から逃げる手立ても、そもそも彼女ら自身が対抗する手段もあるはずです」
ヒーラー「頭堅いな」
係員「は?」
ヒーラー「何でも有りません」
ヒーラー「兎に角、私は二年ほど研究に入りますので、魔王様にもよろしくお願いします」
係員「ですが……」
ヒーラー「しつけぇ」
係員「は?」
ヒーラー「何でも以下略」
係員「投げやりにならないでください」
ーーチュウザンーー
術師「そう言う訳ですから、魔人王様もお気をつけ下さい」
魔人王「うむ、助かる」
魔人王「お前たちの味方で良かった」
術師「ありがとうございます」
魔人王「それでハマミナトには行ったのか?」
術師「……」
魔人王「?」
術師「黒衣はハマミナトに飛びました」
魔人王「……、なるほど」
魔人王「白」
白導師「はいな」
魔人王「彼女らをサポートしろ もし混乱をきたすような行動を取ったら俺の最終奥義を食らわせる」
白導師「私がそんなことするわけないだろ!!」
186 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/08/23(土) 00:49:26.18 ID:if/f0pXAO
白導師はあきらかに挙動不審でガタガタ振動している
魔人王「犬、お前も行け」
犬戦士「二人じゃ国の守りがやばくね?」
魔人王「心配するな、奴を呼んでおく」
犬戦士「果樹園のデブか、鉱山のガリか、畑の男か、牧草地の女か、どれよ」
魔人王「牧草地だ」
犬戦士「本気だな……、そんなヤバいのか」
魔人王「念には念を入れると言うことだ」
白導師「あの小娘はないわ ピラニアやマキビシを体内に隠すようなもんだろ」
銀鈴「いまいちよく分からない例え、死ね」
白導師「いや、生きる!」
銀鈴「今回は本気でヤバい……、生きろ」
白導師「デレたーっ! 銀鈴がデレたーっ!」
銀鈴「デレてない、死ね」
白導師「おうよ、玉砕してくるわ!」
銀鈴「砕け散れ」
犬戦士「早く行くぜ」
銀鈴「バカ犬、頑張って死ね」
犬戦士「不吉だっつの!」
術師「行きましょうか」
白導師「あら、まだいたの」
…………
術師「今帰りました」
白導師「パンツは?」
犬戦士「最終奥義」
白導師「皆、お久しぶり」
犬戦士「おせーよ変態、一点マイナスな」
白導師「へるぷ!」
犬戦士「良いことしろよ」
犬娘「魔王になるっ!」
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