料理人と薬学士
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95 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/09(日) 00:24:42.80 ID:iF91AmcAO
…………
狩人「……この辺りに仕掛けたんですが……」
南港「お、なんか居るの」
南港が枝を分けると獣道の先で、猪がワイヤー罠に捕まってもがいているのが見えた
料理人「うん、かなりデカいね」
狩人「人を呼んできますね」
南港「一旦帰るなら持って帰るのじゃ」
狩人「え、いえ、あれたぶん百キロ超えてますよ?」
南港「いや、軽いじゃろ」
南港が右手をかざすと、猪は空中でもがきはじめる
南港「な?」
料理人「……」
料理人「なぜ秋風におんぶさせたのか」
南港「ずっとは辛いのじゃ!」
料理人「重力調整魔法の応用?」
南港「うむ、帰還魔法も似ておるの」
料理人「帰還魔法使える?」
南港「うむ」
料理人「じゃあ一旦帰って村長にでも処理を頼もう」
南港「よいぞ」
料理人「私は釣りしてます」
狩人「帰還魔法苦手なんですね……」
南港「儂も他人の帰還魔法に乗ると酔うのじゃ……」
…………
一方、研究室……
薬学士「……うーん」
秋風「つまりこれはだな、精霊化させては駄目だから……」
学者「重さのバランスも使い勝手に影響しまっしゅね」
秋風「うん、そこは……」
96 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/09(日) 00:25:52.96 ID:iF91AmcAO
薬学士「ご飯にしましょう!」
秋風「わっ」
学者「いきなりキレましたーにゃ」
秋風「そっか、もう昼過ぎてたか」
…………
三人は一階に降りると、直ぐにバスケットを開ける
秋風「今日は何かな?」
薬学士「おおお……」
学者「お握り?」
秋風「メモが……」
秋風「『外れ付きです、料理人』だと!?」
学者「……」
薬学士「……」
学者「普通に食べたいですにゃん……」シクシク
秋風「一個づついくぞ……」
秋風は率先してお握りを一つ取り上げ、口に入れる
秋風「……これは、塩漬け魚か、美味い」
薬学士「私も食べます!」
薬学士は秋風に倣いお握りを手に取り、恐る恐る口に運ぶ
薬学士「んー、何か分からないけど美味しい」
学者「おかかでやすね」
秋風「お握りに詳しいのか?」
学者「実家に東果ての料理人さんがいましてねえ」
秋風「金持ちの嬢さんだったか……まあ学者なんてだいたいそうか」
学者「そろそろハズレが出そうでっせ旦那」
学者が続いて一つ取る
学者「うん、タラコですな」
秋風「美味いのか?」
学者「拙者は好きでござる」
秋風「そうか……次は私か」
97 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/09(日) 00:27:43.67 ID:iF91AmcAO
秋風「……うん、何やら漬け物が入ってる」
学者「高菜ですね、当たりでやす」
薬学士「ううっ、もうハズレが出そうな気がする……あ、塩漬け魚だ、美味しい!」
学者「あっしは……梅干し……」
秋風「美味いのか?」
学者「有る意味ハズレです」
秋風「なに? 当たりでも口に合わない可能性も有るんだな……恐ろしい料理だ……」
秋風「……うむ、これも美味いな」
学者「タラコですねぇ」
薬学士「ハズレ来ないでハズレ来ないで……」
薬学士「……」
薬学士「……苦い」
学者「この青臭い臭いは薬草?! ……なんという凶悪なトラップ……」
薬学士「煮詰めているのか苦さと青臭さが数倍に……」ムグムグ
秋風「……それでも完食する根性は認めよう」
学者「ハズレいくつ有るんでやすかね?」
秋風「そろそろ腹が膨れてきたんだが」
学者「いや、完食するまでがロシアンお握りでやす」
秋風「和食なのに何故ロシアンにした……料理人め……」
その後二巡し、全員平等に一回ずつハズレを引いた
秋風「……なにこれ」ジワッ
学者「ワサビですな……量に殺意を感じますぜ、料理人殿……」
98 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/09(日) 00:29:16.62 ID:iF91AmcAO
学者「おぐっ……」
薬学士「わ、真っ赤!」
秋風「唐辛子が丸ごと入ってるぞこれ」
学者「み……水……」
秋風「いや、ポーションだ衛生兵〜!」
薬学士「ラジャー!」
……こうして料理人のお茶目さを三人で味わい尽くしたのだった……
…………
その頃、料理人達も合流し、お昼の準備をしていた
狩人「今日のお弁当、なんですか?」
料理人「……普通のお握りだよ」
南港「……何故か一瞬寒気がしたのじゃ」
料理人「……たぶん死にはしない」
南港「おい」
斯くして、狩猟グループも同じ試練を味わうことになった
南港「ツーンってくる! 辛いのじゃ〜!」
狩人「み……水……」
料理人「にが……こんなに苦くなってると思わなかった……ぐふっ」
…………
料理人「さあ、自虐タイムも終わったところで釣りを再開だ」
狩人「僕ルアー釣りしてきます」
料理人「分かった」
狩人(湖手前までラン&ガンだな……まだ口が痛い……)
南港「いったい何故あんな殺人ゲームをしたのか分からないのじゃ……お、」
お握りの愚痴を言いながらも、南港がさっそく一匹釣り上げる
料理人「速いな」
99 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/09(日) 00:32:44.73 ID:iF91AmcAO
南港「10センチ……リリースサイズなのじゃ」
料理人「一杯釣って唐揚げも良いんだけど」
南港「儂はもっと大きいの釣れる子なのじゃ」
料理人「そう言えば南港に居たんだから釣りは得意なのか」
南港「五十年ほど前にめちゃくちゃハマったのう、最大では三メートルのマグロを釣ったのじゃ」
料理人「やっぱり魔王なんだな〜、マグロ食べたいな」
南港「儂はイカの寿司が好きじゃ……サビ抜きで!」
料理人「……さっきワサビ引いてたね」
南港「辛かった……辛かったのじゃ……」シクシク
…………
走って、釣れそうなポイントを見つけてはルアーを打ち込む、これがラン&ガン
狩人は川岸を走りながらポイントを探す
小さい金属の丸い板状の物に、小さい針が一つついている擬似餌、所謂スプーンと言うルアーを対岸に向けて投げ込むと、その瞬間に水を割って四十センチ程度の魚が食らいついた
狩人「ヒット!」
糸が細いため時間をかけて魚と格闘する
やがて再び水を割り、魚が大きく飛び上がる
綺麗な魚体だ……
大きくはじける水も美しい
しかしこの魚の行動はエラ洗いと言って、下手に捌くと糸を切られたりルアーを外されたりする
100 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/09(日) 00:33:50.22 ID:iF91AmcAO
そこは熟練の狩人である
柔らかく糸を張り、頭を振る魚に合わせる
更に時間をかけて水際まで魚を近寄らせて網で掬い取る
狩人「よしっ」
狩人「……」
狩人は何故かそのまま魚を川に戻した
狩人「……あんまり美味しくないからな〜ブラックバス……マス系を狙いたいな」
狩人はまた川岸を走り出した
五匹ほど大物のマス類を釣り上げると、狩人は料理人たちの所へと帰った
…………
料理人「……」
南港「……おっ」
南港が一匹釣り上げる
南港「ちっさいのう」ポイッ
料理人「……」
南港「……ん、こいつはデカい!」
南港がまた一匹釣り上げる
南港「25センチ……なんとか食えるかの」
南港の釣り上げた魚が網の中で大量に暴れている
料理人「……釣れない」シクシク
南港「餌がついてないんじゃないかのう?」
料理人が竿を上げるとしっかり餌がついている
南港「き、きっとポイントが悪いんじゃな!」
二人が場所を変える
南港「おっ……すまん、釣れてしもうた」
料理人「……腕かなあ」
南港「そ、そんなはずはない、どんなに下手でも釣れるはず……」
料理人「……」ズーン
南港「……すまん」
103 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/09(日) 01:01:47.03 ID:iF91AmcAO
狩人「大漁ですね〜」
南港「おおすごい、全部40センチは超えとるなあ」
料理人「……」シクシク
南港「あう……」
狩人「?」
狩人「……釣れないんですか……」
料理人「何故だろう」
狩人「うーん、料理人さん魔力強いから変な魔力でも込めてるんじゃ……?」
料理人「う、そうかも……?」
料理人「無心……無心だ……」
その瞬間、ようやく料理人の竿にも当たりがあった
水を割って出てきたのは50センチはある
ナマズだ
料理人「よし、これは食える!」
狩人「大きい! 良かったですね!」
南港(……外道じゃのう……)
狩人(一応食べられるのを狙ってたんで本命ですよ)
料理人「やったあ」ニコニコ
南港(……なんか罪悪感があるのう)
狩人(……一緒に喜びましょう)
料理人「白身魚だからフライがいいかな?」
南港「泥抜きした方が良いかもな」
狩人「その方が美味しいでしょうね」
料理人「水が綺麗だから大丈夫じゃないかな?」
南港「まあお主の腕なら美味く作れるじゃろ」
狩人「楽しみにしてますね!」
その後は三人で同じポイントで釣りを続け、やがて日も傾きはじめた
…………
104 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/09(日) 01:03:27.17 ID:iF91AmcAO
料理人「さて、ニジマスやイワナも少し釣れたし、帰ろうか!」
南港(ちょっとホッとしたわい)
狩人(釣れなかったら晩御飯はお茶目なお握りハズレだけになったかも……)
南港(恐ろしいことを言うでない)ビクビク
料理人「疲れたの?」
南港「そうじゃのう、おんぶ」
料理人「仕方ないな……」
南港(機嫌良いの)
狩人(良かったですね)
料理人「あ、狩人くんこれ持って」ナマズ
狩人「あ、はい」
狩人(三人分の魚……生臭い……)
南港「帰還魔法するか?」
料理人「近いからやめて!」
狩人(生臭い……)
…………
薬学士「できた!」
秋風「なんとか一つだけだがな」
学者「まあ一番欲しがってた奴だし、ようがす」
秋風「うむ……
秋風「さて、今日はもう茶でも飲んでゆっくりしよう」
…………
料理人(ただいま〜)コンコン
秋風「ああ、また南港の奴負ぶってもらったな?」
扉を開くと予想通り
料理人「……ただいま」
秋風「おかえり……生臭い」
料理人「すぐお風呂に入るよ……」
料理人にしがみついて眠る南港の手は鱗まみれだ
秋風「……なんかすまん」
料理人「お風呂頼みます……」シクシク
105 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/09(日) 01:05:48.91 ID:iF91AmcAO
薬学士「お風呂入る〜」
料理人「久しぶりに一緒に入るの?」
薬学士「うん!」
南港「儂も入るのじゃ〜」
料理人「もちろん……ウロコ落とさないと」
狩人「じゃあ僕は帰りますね、あ、これ猪肉です」
料理人「……今晩はうちで食べるでしょ?」
狩人「はい、いただきます!」
学者「拙者も一度帰って風呂につかりますかなあふひひ」
狩人(……まともに喋れない人なんだな……)
…………
料理人「生臭くない?」
薬学士「大丈夫、早くながそ?」
料理人「うん、ほら南港」
南港「うむ、早く流して浸かるのじゃ!」
薬学士「……南港ちゃん明日は一緒に遊ぶ?」
南港「ほんとか?」キラキラ
料理人(小動物ハーレム……いや、何でもない)
料理人「私は野菜とか買ってきてのんびりするかなあ」
南港「今日は薬学士と寝るのじゃ!」
薬学士「いいよ!」
料理人(挟まれたい……いや、何でもない)
南港「明日は料理人でその次は秋風とその次は学者じゃ!」
料理人「子供か! うっかり子供だと思ってたわ!」
南港「性癖はノーマルじゃから心配するでない!」
料理人「生々しいわ!」ピシッ
南港「デコピンは痛いのじゃ〜!」
106 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/09(日) 01:08:08.31 ID:iF91AmcAO
…………
秋風「……」
秋風「この魚どうしよう……」ナマズ
秋風「うん、臭い」
秋風「塩で臭いを抜いておくか、料理人に任せるか……」
秋風「聞くか」
生臭い魚を置いて、生臭い脱衣所を抜け水音がしている風呂場に入る秋風
料理人「動くな」ピシッ
南港「うぐっ、うええ」
秋風「……一瞬幼女虐待かと思った」
南港「老婆虐待じゃ〜!」
料理人「お前のような老婆がいるか!」
南港「若く見えるのかのう?」ポッ
秋風「若いと言うか幼児体型だろ」
南港「きゃーっ! 痴漢なのじゃ〜!」
秋風「そんな趣味はない!」
南港「焦らすプレイじゃな」
秋風「わざと言ってんのか?」ビシッ
南港「」グオオ……
料理人「ところでどうしたの? 一緒に入る?」
秋風「流石に狭いだろ、魚の処理どうする?」
料理人「ああ、流したらすぐに出る」
薬学士「お師匠さま一緒にはいろっ」
南港「セクハラされるのじゃ」
秋風「良いだろう……沈めてやろう……」ゴゴゴ
…………
料理人「さて、さっさと処理しないと……」
料理人「……塩漬けにして薫製にするかな〜?」
料理人「問題はお前だな」ナマズ
107 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/09(日) 01:11:51.76 ID:iF91AmcAO
料理人「とりあえず皮を剥いで切り身にしたけど……」
料理人「一枚ムニエルにして味見してみようかな……」
料理人「……」
フライパンにバターを引き、焦がさないように熱し、小麦粉をまぶした切り身を落とす
料理人「……流石に良い香りする」
料理人「香草……胡椒……臭い消しは十分のはず」
料理人「……ん、肉厚、魚自体は淡白な味」
料理人「思ったより美味い」
料理人「これはフライで、メインは猪のソテーにしよう」
料理人「猪肉は基本、豚肉と同じ……残りはベーコンにでもしようかな……?」
料理人「ウインナーとか喜びそうだなぁ」
料理人「いくらか村長とか狩人くんに分けたけど10キロくらいあるかも……」
料理人「しばらくは楽しめる」
風呂場が少し賑やかだ
どうやら二人、ちびっ子達が風呂から出たらしい
秋風は料理人と入れ替わりで入ったのでもう少し入っているのだろう
薬学士たちがトテトテ歩いてくる音が聞こえる
一人が二階に上がったようだ
南港「美味そうな匂いがするのじゃ、腹減ったのじゃ〜」
南港が抱きついてくる
料理人「はいはい、少し待ってて」
料理人「キノコも使ってしまおう」
料理人「肉に添えるかな」
…………
狩人「……この辺りに仕掛けたんですが……」
南港「お、なんか居るの」
南港が枝を分けると獣道の先で、猪がワイヤー罠に捕まってもがいているのが見えた
料理人「うん、かなりデカいね」
狩人「人を呼んできますね」
南港「一旦帰るなら持って帰るのじゃ」
狩人「え、いえ、あれたぶん百キロ超えてますよ?」
南港「いや、軽いじゃろ」
南港が右手をかざすと、猪は空中でもがきはじめる
南港「な?」
料理人「……」
料理人「なぜ秋風におんぶさせたのか」
南港「ずっとは辛いのじゃ!」
料理人「重力調整魔法の応用?」
南港「うむ、帰還魔法も似ておるの」
料理人「帰還魔法使える?」
南港「うむ」
料理人「じゃあ一旦帰って村長にでも処理を頼もう」
南港「よいぞ」
料理人「私は釣りしてます」
狩人「帰還魔法苦手なんですね……」
南港「儂も他人の帰還魔法に乗ると酔うのじゃ……」
…………
一方、研究室……
薬学士「……うーん」
秋風「つまりこれはだな、精霊化させては駄目だから……」
学者「重さのバランスも使い勝手に影響しまっしゅね」
秋風「うん、そこは……」
96 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/09(日) 00:25:52.96 ID:iF91AmcAO
薬学士「ご飯にしましょう!」
秋風「わっ」
学者「いきなりキレましたーにゃ」
秋風「そっか、もう昼過ぎてたか」
…………
三人は一階に降りると、直ぐにバスケットを開ける
秋風「今日は何かな?」
薬学士「おおお……」
学者「お握り?」
秋風「メモが……」
秋風「『外れ付きです、料理人』だと!?」
学者「……」
薬学士「……」
学者「普通に食べたいですにゃん……」シクシク
秋風「一個づついくぞ……」
秋風は率先してお握りを一つ取り上げ、口に入れる
秋風「……これは、塩漬け魚か、美味い」
薬学士「私も食べます!」
薬学士は秋風に倣いお握りを手に取り、恐る恐る口に運ぶ
薬学士「んー、何か分からないけど美味しい」
学者「おかかでやすね」
秋風「お握りに詳しいのか?」
学者「実家に東果ての料理人さんがいましてねえ」
秋風「金持ちの嬢さんだったか……まあ学者なんてだいたいそうか」
学者「そろそろハズレが出そうでっせ旦那」
学者が続いて一つ取る
学者「うん、タラコですな」
秋風「美味いのか?」
学者「拙者は好きでござる」
秋風「そうか……次は私か」
97 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/09(日) 00:27:43.67 ID:iF91AmcAO
秋風「……うん、何やら漬け物が入ってる」
学者「高菜ですね、当たりでやす」
薬学士「ううっ、もうハズレが出そうな気がする……あ、塩漬け魚だ、美味しい!」
学者「あっしは……梅干し……」
秋風「美味いのか?」
学者「有る意味ハズレです」
秋風「なに? 当たりでも口に合わない可能性も有るんだな……恐ろしい料理だ……」
秋風「……うむ、これも美味いな」
学者「タラコですねぇ」
薬学士「ハズレ来ないでハズレ来ないで……」
薬学士「……」
薬学士「……苦い」
学者「この青臭い臭いは薬草?! ……なんという凶悪なトラップ……」
薬学士「煮詰めているのか苦さと青臭さが数倍に……」ムグムグ
秋風「……それでも完食する根性は認めよう」
学者「ハズレいくつ有るんでやすかね?」
秋風「そろそろ腹が膨れてきたんだが」
学者「いや、完食するまでがロシアンお握りでやす」
秋風「和食なのに何故ロシアンにした……料理人め……」
その後二巡し、全員平等に一回ずつハズレを引いた
秋風「……なにこれ」ジワッ
学者「ワサビですな……量に殺意を感じますぜ、料理人殿……」
98 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/09(日) 00:29:16.62 ID:iF91AmcAO
学者「おぐっ……」
薬学士「わ、真っ赤!」
秋風「唐辛子が丸ごと入ってるぞこれ」
学者「み……水……」
秋風「いや、ポーションだ衛生兵〜!」
薬学士「ラジャー!」
……こうして料理人のお茶目さを三人で味わい尽くしたのだった……
…………
その頃、料理人達も合流し、お昼の準備をしていた
狩人「今日のお弁当、なんですか?」
料理人「……普通のお握りだよ」
南港「……何故か一瞬寒気がしたのじゃ」
料理人「……たぶん死にはしない」
南港「おい」
斯くして、狩猟グループも同じ試練を味わうことになった
南港「ツーンってくる! 辛いのじゃ〜!」
狩人「み……水……」
料理人「にが……こんなに苦くなってると思わなかった……ぐふっ」
…………
料理人「さあ、自虐タイムも終わったところで釣りを再開だ」
狩人「僕ルアー釣りしてきます」
料理人「分かった」
狩人(湖手前までラン&ガンだな……まだ口が痛い……)
南港「いったい何故あんな殺人ゲームをしたのか分からないのじゃ……お、」
お握りの愚痴を言いながらも、南港がさっそく一匹釣り上げる
料理人「速いな」
99 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/09(日) 00:32:44.73 ID:iF91AmcAO
南港「10センチ……リリースサイズなのじゃ」
料理人「一杯釣って唐揚げも良いんだけど」
南港「儂はもっと大きいの釣れる子なのじゃ」
料理人「そう言えば南港に居たんだから釣りは得意なのか」
南港「五十年ほど前にめちゃくちゃハマったのう、最大では三メートルのマグロを釣ったのじゃ」
料理人「やっぱり魔王なんだな〜、マグロ食べたいな」
南港「儂はイカの寿司が好きじゃ……サビ抜きで!」
料理人「……さっきワサビ引いてたね」
南港「辛かった……辛かったのじゃ……」シクシク
…………
走って、釣れそうなポイントを見つけてはルアーを打ち込む、これがラン&ガン
狩人は川岸を走りながらポイントを探す
小さい金属の丸い板状の物に、小さい針が一つついている擬似餌、所謂スプーンと言うルアーを対岸に向けて投げ込むと、その瞬間に水を割って四十センチ程度の魚が食らいついた
狩人「ヒット!」
糸が細いため時間をかけて魚と格闘する
やがて再び水を割り、魚が大きく飛び上がる
綺麗な魚体だ……
大きくはじける水も美しい
しかしこの魚の行動はエラ洗いと言って、下手に捌くと糸を切られたりルアーを外されたりする
そこは熟練の狩人である
柔らかく糸を張り、頭を振る魚に合わせる
更に時間をかけて水際まで魚を近寄らせて網で掬い取る
狩人「よしっ」
狩人「……」
狩人は何故かそのまま魚を川に戻した
狩人「……あんまり美味しくないからな〜ブラックバス……マス系を狙いたいな」
狩人はまた川岸を走り出した
五匹ほど大物のマス類を釣り上げると、狩人は料理人たちの所へと帰った
…………
料理人「……」
南港「……おっ」
南港が一匹釣り上げる
南港「ちっさいのう」ポイッ
料理人「……」
南港「……ん、こいつはデカい!」
南港がまた一匹釣り上げる
南港「25センチ……なんとか食えるかの」
南港の釣り上げた魚が網の中で大量に暴れている
料理人「……釣れない」シクシク
南港「餌がついてないんじゃないかのう?」
料理人が竿を上げるとしっかり餌がついている
南港「き、きっとポイントが悪いんじゃな!」
二人が場所を変える
南港「おっ……すまん、釣れてしもうた」
料理人「……腕かなあ」
南港「そ、そんなはずはない、どんなに下手でも釣れるはず……」
料理人「……」ズーン
南港「……すまん」
103 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/09(日) 01:01:47.03 ID:iF91AmcAO
狩人「大漁ですね〜」
南港「おおすごい、全部40センチは超えとるなあ」
料理人「……」シクシク
南港「あう……」
狩人「?」
狩人「……釣れないんですか……」
料理人「何故だろう」
狩人「うーん、料理人さん魔力強いから変な魔力でも込めてるんじゃ……?」
料理人「う、そうかも……?」
料理人「無心……無心だ……」
その瞬間、ようやく料理人の竿にも当たりがあった
水を割って出てきたのは50センチはある
ナマズだ
料理人「よし、これは食える!」
狩人「大きい! 良かったですね!」
南港(……外道じゃのう……)
狩人(一応食べられるのを狙ってたんで本命ですよ)
料理人「やったあ」ニコニコ
南港(……なんか罪悪感があるのう)
狩人(……一緒に喜びましょう)
料理人「白身魚だからフライがいいかな?」
南港「泥抜きした方が良いかもな」
狩人「その方が美味しいでしょうね」
料理人「水が綺麗だから大丈夫じゃないかな?」
南港「まあお主の腕なら美味く作れるじゃろ」
狩人「楽しみにしてますね!」
その後は三人で同じポイントで釣りを続け、やがて日も傾きはじめた
…………
104 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/09(日) 01:03:27.17 ID:iF91AmcAO
料理人「さて、ニジマスやイワナも少し釣れたし、帰ろうか!」
南港(ちょっとホッとしたわい)
狩人(釣れなかったら晩御飯はお茶目なお握りハズレだけになったかも……)
南港(恐ろしいことを言うでない)ビクビク
料理人「疲れたの?」
南港「そうじゃのう、おんぶ」
料理人「仕方ないな……」
南港(機嫌良いの)
狩人(良かったですね)
料理人「あ、狩人くんこれ持って」ナマズ
狩人「あ、はい」
狩人(三人分の魚……生臭い……)
南港「帰還魔法するか?」
料理人「近いからやめて!」
狩人(生臭い……)
…………
薬学士「できた!」
秋風「なんとか一つだけだがな」
学者「まあ一番欲しがってた奴だし、ようがす」
秋風「うむ……
秋風「さて、今日はもう茶でも飲んでゆっくりしよう」
…………
料理人(ただいま〜)コンコン
秋風「ああ、また南港の奴負ぶってもらったな?」
扉を開くと予想通り
料理人「……ただいま」
秋風「おかえり……生臭い」
料理人「すぐお風呂に入るよ……」
料理人にしがみついて眠る南港の手は鱗まみれだ
秋風「……なんかすまん」
料理人「お風呂頼みます……」シクシク
105 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/09(日) 01:05:48.91 ID:iF91AmcAO
薬学士「お風呂入る〜」
料理人「久しぶりに一緒に入るの?」
薬学士「うん!」
南港「儂も入るのじゃ〜」
料理人「もちろん……ウロコ落とさないと」
狩人「じゃあ僕は帰りますね、あ、これ猪肉です」
料理人「……今晩はうちで食べるでしょ?」
狩人「はい、いただきます!」
学者「拙者も一度帰って風呂につかりますかなあふひひ」
狩人(……まともに喋れない人なんだな……)
…………
料理人「生臭くない?」
薬学士「大丈夫、早くながそ?」
料理人「うん、ほら南港」
南港「うむ、早く流して浸かるのじゃ!」
薬学士「……南港ちゃん明日は一緒に遊ぶ?」
南港「ほんとか?」キラキラ
料理人(小動物ハーレム……いや、何でもない)
料理人「私は野菜とか買ってきてのんびりするかなあ」
南港「今日は薬学士と寝るのじゃ!」
薬学士「いいよ!」
料理人(挟まれたい……いや、何でもない)
南港「明日は料理人でその次は秋風とその次は学者じゃ!」
料理人「子供か! うっかり子供だと思ってたわ!」
南港「性癖はノーマルじゃから心配するでない!」
料理人「生々しいわ!」ピシッ
南港「デコピンは痛いのじゃ〜!」
106 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/09(日) 01:08:08.31 ID:iF91AmcAO
…………
秋風「……」
秋風「この魚どうしよう……」ナマズ
秋風「うん、臭い」
秋風「塩で臭いを抜いておくか、料理人に任せるか……」
秋風「聞くか」
生臭い魚を置いて、生臭い脱衣所を抜け水音がしている風呂場に入る秋風
料理人「動くな」ピシッ
南港「うぐっ、うええ」
秋風「……一瞬幼女虐待かと思った」
南港「老婆虐待じゃ〜!」
料理人「お前のような老婆がいるか!」
南港「若く見えるのかのう?」ポッ
秋風「若いと言うか幼児体型だろ」
南港「きゃーっ! 痴漢なのじゃ〜!」
秋風「そんな趣味はない!」
南港「焦らすプレイじゃな」
秋風「わざと言ってんのか?」ビシッ
南港「」グオオ……
料理人「ところでどうしたの? 一緒に入る?」
秋風「流石に狭いだろ、魚の処理どうする?」
料理人「ああ、流したらすぐに出る」
薬学士「お師匠さま一緒にはいろっ」
南港「セクハラされるのじゃ」
秋風「良いだろう……沈めてやろう……」ゴゴゴ
…………
料理人「さて、さっさと処理しないと……」
料理人「……塩漬けにして薫製にするかな〜?」
料理人「問題はお前だな」ナマズ
107 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/09(日) 01:11:51.76 ID:iF91AmcAO
料理人「とりあえず皮を剥いで切り身にしたけど……」
料理人「一枚ムニエルにして味見してみようかな……」
料理人「……」
フライパンにバターを引き、焦がさないように熱し、小麦粉をまぶした切り身を落とす
料理人「……流石に良い香りする」
料理人「香草……胡椒……臭い消しは十分のはず」
料理人「……ん、肉厚、魚自体は淡白な味」
料理人「思ったより美味い」
料理人「これはフライで、メインは猪のソテーにしよう」
料理人「猪肉は基本、豚肉と同じ……残りはベーコンにでもしようかな……?」
料理人「ウインナーとか喜びそうだなぁ」
料理人「いくらか村長とか狩人くんに分けたけど10キロくらいあるかも……」
料理人「しばらくは楽しめる」
風呂場が少し賑やかだ
どうやら二人、ちびっ子達が風呂から出たらしい
秋風は料理人と入れ替わりで入ったのでもう少し入っているのだろう
薬学士たちがトテトテ歩いてくる音が聞こえる
一人が二階に上がったようだ
南港「美味そうな匂いがするのじゃ、腹減ったのじゃ〜」
南港が抱きついてくる
料理人「はいはい、少し待ってて」
料理人「キノコも使ってしまおう」
料理人「肉に添えるかな」
料理人と薬学士
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