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料理人と薬学士

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Part11
130 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/09(日) 02:12:33.06 ID:iF91AmcAO
料理人たちが家に着くと、生臭い狩人は家に帰り、生臭い南港は薬学士と風呂に入る
一人になった料理人は黙々と魚を捌いていく
終わったら風呂に入らないと
大体の魚を捌き終わり、次にキノコや木の実、香草の処理にかかった時、来訪者があった
料理人「?」
料理人「誰だろう」
ひょっとしたら二人が帰ってきたのでは
そんな期待を僅かに抱いていなかったとは言えない
料理人「どちらさま?」ガチャ
そこにいたのは、痩身の剣士であった
この剣……たしか……東果ての……刀だ
料理人の師匠、女将は東果ての刀鍛冶の造る包丁に惚れ込んでいた
切れ味では右に出るものがないと言っていた
しかしそれは危険性も兼ね備えていると言える
剣士はゆっくりと口を開いた
剣士「失礼、そなたは魔法剣を所有されているとお見受け致す」
料理人「!」
その次の瞬間、剣士の背後から数人の人影が飛び出した

131 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/09(日) 02:15:14.62 ID:iF91AmcAO
第三章「料理人と魔王」 完
次回ーー
攻め来る魔晶石狩り、閃く謎の剣士の剣
その時、料理人の運命は……
その頃、薬学士らの知らぬ場で高塔の王と魔王達が、北終の魔王狩りと激突する
果たして、魔晶石狩りとは何者なのか
そして、薬学士は大切な家族と再開できるのか……
第四章「料理人と戦争」
魔王たちの戦争が……始まる……

132 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/09(日) 02:18:26.18 ID:iF91AmcAO
ちょっと短いですがここまでです
次は長いので何回か分けることになると思います
日本語がどんどん難しく感じてきます
ちょっとずつペースを取り戻したいと思います
では、また後日
ありがとうございました

133 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/09(日) 04:05:21.89 ID:YLKt5Cup0
乙乙。

135 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/09(日) 17:47:12.00 ID:ejNygTWeO
期待age


136 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/14(金) 09:41:11.72 ID:RymuyGxAO
応援有り難う御座います!
今回五十レス分ギリギリでなんとか第四章を書ききったのですが、すごく長いので修正に手間取っています
今しばらくお待ち下さい

137 :以下、2013年にかわりまして2014年がお送りします :2014/03/14(金) 10:59:11.39 ID:34M+X4mBo


138 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/16(日) 18:42:10.74 ID:Fga/dJyAO
いつもお待たせしてすみません
ゆっくり更新します

139 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/16(日) 18:44:42.48 ID:Fga/dJyAO
第四章「料理人と戦争」
北終の国では敗戦のムードが濃くなっていた
そこに来て高塔の国では更なる侵攻の準備が整えられているとの情報が入る
北終の国は魔王が複数人居た序盤戦には東方面で魔王狩りを進め、大きく領土を広げていたが
勢いに乗り大楠の国を攻めた中盤戦、思わず躓くことになった
北終軍の中心戦力であり強力な防御魔法を誇る、正に『魔王狩り』と呼ばれた魔王と、その遥か背後で指揮を取る北終の魔王を除き、魔王が全滅したのである
これにより北終軍の侵攻は大きく鈍化
高塔軍の反攻を受けては、辛うじて戦線を維持しているのがやっとである
そこに更に大きな問題が発生した
大楠の魔王を慕っていた他の魔王たちに聖都北の国王が召集をかけた、との報が届いたのである
北終の魔王は焦り、いらだち始めていた
作戦は千々に乱れ、時には魔王狩りに命の危機が訪れるような局面さえあった
魔王狩り「ちっ、あの豚もそろそろ狩るべきかもな……」
しかし、北終の魔王を倒すことにはある大きなリスクが存在している
魔王狩りであっても、無事に狩ることは難しいと思われた
一方、聖都北の国では……

140 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/16(日) 18:46:24.48 ID:Fga/dJyAO
既に三人の魔王が集まっていた聖都北に、更に二人の魔王が加わっていた
秋風「皆、久し振り」
秋風の語りかけに最初に応じたのは大剣を背負う聖都北に元々住み着いていた魔王である
大剣「おう、来たか秋風、それに西浜も」
西浜「……」フフッ
大剣「おおっ? なんだそのハイテンション!」
秋風「最近美味い飯を食ってたから元気なんだ」
秋風「こいつが何も言わないから、ここに来るまで私も招集されていたと分からなかった、すまない」
大剣「使者送ったんだがなあ?」
それに対し答えたのは少年のような容姿の魔王
彼は南港と同じ国の東磯小地区に住む魔王だ
東磯「……南港と秋風、二人の使者は俺が止めた……」
大剣「はあ、マジか」
大剣「お前ほんと女には甘いな」
秋風「西浜は?」
東磯「……西浜は来ないと思っていた……使者が行ったのもうちより前だったし……」
秋風「こいつは国があるし、喋らないくせに黙って出てこられる性格じゃないからな」
大剣「出てこられたのは地元の民が西浜の意を汲んだからか?」
西浜「……」ウ……
東磯「……泣かせた」
大剣「わわっ、悪かったから銛構えるな!」

141 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/16(日) 18:48:08.32 ID:Fga/dJyAO
秋風「民に追い出されたからうちに泣きついてきたのか?」
西浜「……」フルフル
秋風「まさか誘いに来たとか?」
西浜「……」フルフル
大剣「大方、聖都北がどこか分からなかったんじゃねーか?」
西浜「……」ウ……
大剣「すまん泣くな東磯も銛構えるな!」
そこに無骨な雰囲気の魔王が語りかけてきた
聖都北の東の山脈に住み着く鉄斧の魔王である
鉄斧「相変わらず騒がしいのお」
秋風「久し振りだな」
鉄斧「まだ生きてたか婆」
秋風「死ぬか?」ギラッ
鉄斧「すまぬ、すみません」
秋風「昔の戦の時のように私が部隊長として指揮を取るか、大剣がそのまま指揮を取って私が補佐するか、どうする?」
大剣「補佐だな」
秋風「うむ、じゃあ任せよう」
鉄斧「秋風の指示があれば安心だのう」
大剣「どうせ俺はこういうのは苦手だからな」
秋風「ここの統治者は人間だったな……」
大剣「騎士団領と言うべき土地で流石に魔王がトップとか有り得んだろ」
秋風「そうだな」
東磯「……西浜、俺たち訓練しよ?」
西浜「……」ン

142 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/16(日) 18:49:35.60 ID:Fga/dJyAO
秋風「まて東磯」
秋風「良い物をやろう」
秋風はもちろん計画していた
魔王狩りを倒す方策を
そんな折に思いがけず大量の魔晶石を得たのだ
東磯「……魔晶石の銛……しかもこれは哲学者の石のような高純度……」
西浜「……」ン
秋風「それは大袈裟だが、かなり巨大な魔晶石を得た結果これを作れたんだ」
秋風「能力にすれば4〜6倍、しかも多数の結晶を併用するのとは違って一つになってる分出力が出しやすい」
秋風「細かい説明は抜きにするが、くれぐれも広範囲で使うな」
秋風「お前たちが全力でこれを使ったらちょっと国を滅ぼさないとは言い難い威力があるからな」
西浜「……」ム
秋風「ごめんなさい」
東磯「……西浜が怒ったの五十年ぶりくらいに見たかも……俺が南港を危ない釣りに誘った時以来……」
大剣「危ない研究しやがって! ……って所か」
秋風「……研究中も何度も怒られたからな……」
東磯「……こいつは怒鳴ったりしない……秋風……西浜が喋らないことに甘えていたな……?」
秋風「うむ……すまん」

143 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/16(日) 18:51:12.23 ID:Fga/dJyAO
西浜「……」ムム
秋風「……悪かったよ……」
秋風には怒りに震える西浜の気持ちが手に取るように分かる
魔王たちは百年を超える時を共に過ごしたのだ
それだけお互いの間に、深い思いが、繋がりがある
秋風はそっと西浜を抱きしめる
西浜「……」ン
東磯「……秋風……変態……」
秋風「誰が変態だ!」
鉄斧「儂も抱きしめたいのう」
大剣「流石に逮捕するわ」
鉄斧「連れないのう……」
秋風「まあ長いことそんなむさ苦しい姿で生きてたら人の体温も恋しいだろうな」
秋風は鉄斧をゆっくりと抱きしめる
辛い人生を送り続ける同士を思いやる暖かなハグだ
東磯「……俺もぎゅってして欲しい」
大剣「この場合エロ爺? エロガキ?」
秋風「まあいいけど、可愛いし」ギュッ
東磯「///」
西浜「……」フッ
大剣「おい、西浜に笑われてるぞ」
鉄斧「西浜が嘲笑うのはワシ初めて見たかものう……」
秋風「変態呼ばわりされた気がする」ピシッ
西浜「……」グスッ
東磯「秋風……いつそんな凶悪な技を覚えた……」
秋風「最近な」
大剣「ただのデコピンだろ」

144 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/16(日) 18:53:16.79 ID:Fga/dJyAO
大剣「しかし、武器が増えるのは有り難いな」
鉄斧「これならば魔王狩りの破壊神でも倒せよう」
秋風「そうか、お前たちならいくらか魔王狩りの情報を得ているか」
秋風「奴が何者なのか知りたい」
鉄斧「うむ」
大剣「簡単に言えば力自慢だな」
大剣「奴が狂いだしたのはある剣を手に入れてからだ」
大剣「魔晶石四連つなぎの剣、通称勇者の剣」
秋風「はは、笑えるな」
鉄斧「全くじゃ、このお前さんがくれた斧を見たら良く分かる」
大剣「高純度魔晶石……これこそ研究成果と呼ぶべき代物だな」
秋風「意外と簡単な製法だったがな」
鉄斧「お前の簡単があてになった試しがないわ」
大剣「全くだな」
鉄斧「ワシらはこれで平和を乱す北終の魔王を倒す」
鉄斧「その時にはこの斧が勇者の斧と呼ばれよう」
秋風「……」
大剣「どうした秋風?」
秋風「……いや」
秋風「……」
秋風「死なないでくれよ……」
鉄斧「!」
大剣「……」
大剣「死にゃしねえよ、大楠の馬鹿野郎と一緒にするな!」
鉄斧「全くだ!」
秋風「……ふふっ」

145 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/16(日) 18:56:34.37 ID:Fga/dJyAO
その後、魔王たちが近況など、たわいもない会話をしている時、バタバタと足音が響いた
兵「報告!」
兵「高塔の魔王様が東の森に侵攻した模様、王が皆さんをお呼びです!」
秋風「!」
大剣「きたか」
鉄斧「我等も準備せねばな、王の所にはお主と秋風で行ってこい!」
大剣「了解、チビと根暗にも伝えといてくれ」
鉄斧「おう!」
…………
暗殺者達は息を潜め、そのタイミングを待っていた
魔晶石を使った武器を持つ存在を見つけたことで、その剣士を倒す必然はより一層増したと言える
問題になるのはタイミングである
相手には既に気取られていると考えねばなるまい
ならば剣士が魔剣を持つものと接触するタイミング
そこが決戦の最善のタイミングと言えよう
剣士がその家の前を訪れる
しかし直ぐには剣士は動かなかった
じっくりと腰を据え、こちらに殺気を飛ばしてくる
何かを待っているのかも知れない
時間が経てば危ないかも知れない
そうしている間に、魚を捌いているのか血生臭い臭いが漂いだした
待ち人が来ないからだろうか、剣士はゆっくり腰を上げると扉を叩いた

146 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/16(日) 18:58:51.29 ID:Fga/dJyAO
…………
料理人は焦っていた
友の顔を期待して開いた扉の前に居たのは、危険な香りの刀を携えた剣士
その剣士が聞いてきたのは魔法剣のこと
魔晶石狩り……!?
その次の瞬間、剣士の後ろから飛び出した数人の影と、剣士が戦闘を開始した
料理人「!?」
暗殺者A「逃げろ女!」
暗殺者B「そやつは魔晶石狩りだ! お前の魔剣を狙ってる!」
剣士「ははっ、そう来たか!」
剣士「こいつらが魔晶石狩りだ!」
一斉に飛びかかってくる4人の前に爆発が上がる
1対4の戦いであるが、剣士は全く怯む様子がない
完全なコンビネーションで攻めてくる暗殺者達のタイミングをずらさせるように、どういったスキルでかは分からないが細かい爆発を放っていく
料理人が思わず見入ってしまう見事な立ち回り
この事態で料理人が思うことは、自分は人間同士の戦いは無理だ、と言うことだった
しかしぼんやりしていると、後ろで騒ぎを聞きつけた二人がバスタオル一つという無防備な姿で出てくる
料理人「逃げろ!」
薬学士「うわわっ」
南港「うぬっ、薬学士、早く上に!」

147 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/16(日) 19:00:37.77 ID:Fga/dJyAO
爆破攻撃をかわして出てくる一人をすかさず斬り伏せる
暗殺者達が多人数で押しているにも関わらず主導権を握っているのは剣士の方である
対人戦闘では素人と思われる三人の娘達は一刻も早く引くべきだが、料理人は後ろの二人を気にして引けない
しかし南港の方は参戦する気があってか引かない
そのために二人が硬直していたのはほんの数瞬である
暗殺者が放ったナイフが、料理人の肩に直撃した
料理人「うわっ」
ナイフを投げた暗殺者を剣士が斬り伏せる
剣士「くそっ!」ズバッ
薬学士「料理人ちゃん!」
南港「うおおおっ!」
料理人が倒れ前方が明らかになる
南港は前方に手をかざす
そこで戦闘は終わった
南港「そのまま塵になりたくなければ武器から手を離せ!」
剣士「うおおっ」
暗殺者B「ぐあああっ」
南港の重力操作により三人は地に縫い付けられる
三人が武器を離すと南港は薬学士に倒れている者の物も含め、武器を回収させる
南港「薬学士、念の為料理人に毒消しを飲ませるのじゃ!」
薬学士「わかった!」
薬学士が二階に上がると南港が術を解く

148 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/16(日) 19:03:23.42 ID:Fga/dJyAO
南港「こう見えても大戦経験者じゃ、儂を舐めるでないぞ?」
南港「動いたら細胞レベルですり潰す」
剣士「ま、まだ魔王が居たのか……」
暗殺者A「魔王がいるなんて聞いてねえ……」
南港「…………さて、それぞれ身の潔白を証明してもらおうかのう」
暗殺者B「俺は雇われただけだ!」
暗殺者A「な、何を言い出す貴様!」
剣士「ここで何か言ってもなんの証拠にもならん、少し待ってもらおう」
南港「ふむ、援軍でも来るのか?」
剣士「……そうだな」
南港「正直じゃのう」
南港「まあ一人二人増えても無駄じゃ」
剣士「くくっ、流石に魔法剣も無しに魔王に挑もうなどと思わん」
南港は剣士の物言いから、なんとなくこちらは安全なのではないかと判断した
魔王がいた、と知っていたことも、倒せない相手なのが分かっていて援軍を待つ、と言うのも何か弁明の手段を持つことを匂わせている
南港「仲間が魔法剣を持ってくるかもわからんのう?」
剣士「ならば俺を人質にすればいい」
南港「お主にその価値があるとは思えんのう」
剣士「そうか、それもそうだな」
剣士「だがそっちの娘を刺したナイフは俺の物じゃないぞ?」