料理人と薬学士
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119 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/09(日) 01:44:20.23 ID:iF91AmcAO
南港「そう言えば国はどうしたんじゃ?」
西浜「……」グスッ
秋風「話したく無いなら構わんぞ、ほら、飯を食え」
料理人「好みとか分かる?」
南港「いかやき?」
料理人「分からないんだな、分かった」
西浜「……」フ
料理人「あ、なんかバカにされた気が」
秋風「今のは肯定の笑いだろ」
料理人「わかんねー!」ガシィ
匙を投げた
料理人「く……」フーフー
薬学士「と、とりあえずこのスープ、塩漬け魚と野菜のスープ美味しいよ?」
西浜「……」コクッ
南港「お、飲んだ」
西浜「……」
何やら目を瞑っている
秋風「おお、ずいぶん気に入ったようだな!」
南港「いかやきを食べた時の顔じゃ!」
イカ焼き推しはもういい
料理人「……気に入ったなら良かった……お代わりあるよ」
西浜「……」スッ
皿を差し出してきた
あれ、なんか可愛いぞ
秋風「素直で気のいい奴なんだよ」
南港「十年に一度くらいしか喋らんがの」
西浜「……」ポッ
料理人「あ、ちょっと顔赤くなったかも」
西浜「……」
料理人「あ、ごめん」
学者「つ、通じてるにゃ……ん?」
薬学士「すごいね、料理人ちゃん」
120 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/09(日) 01:46:45.23 ID:iF91AmcAO
料理人「しかし……」
魔王と言うのはみんな大食なのであろうか
あっと言う間にスープを平らげた後もガーリックライスも魚のソテーも猪肉の煮込みも山菜の炒め物も、出したら出しただけペロリと食べて目を瞑る
しかし、料理人にはコミュニケーションはこれで十分だった
自分の料理を美味しそうに食べてくれる
それだけで家族になってしまう
それが料理人の生来のスキルなのかも知れない
西浜「……」
ゆっくり手を合わせた
南港「満足したようじゃな」
秋風「そうだ、お前彫金得意だったな、後で手伝ってくれ」
西浜「……」フ
秋風「よし」
薬学士「お師匠さま、私は良いんですか?」
秋風「ああ、弟子は遊んでろ」
薬学士は料理人と話した夜のことを思い出していた
あんな事、黙ってやるわけにはいかない
そもそも知識がない
それに、そんな事を悩んでると言うだけでも、もう弟子と呼んでくれなくなるかも知れない……
選ぶことなんてできない……
……でも……
121 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/09(日) 01:49:12.51 ID:iF91AmcAO
そして、何も言えないまま
そして西浜の魔王も何も言わないまま
また一週間が過ぎた
…………
料理人「はい、西浜ちゃん」
西浜「……」ン
一週間付き合って微妙な表情の変化が分かるようになった気がする
今のは、かしこまりました、と言っているようだ
秋風「なんか気合い入ってるな」
なんとなく分かるのが悔しい
最近の料理の内容は少し変わってきたような気がする
山では珍しい海鮮料理も出せるようになった
雑貨店の仕入れの幅が変わっているのだ
戦争は停滞している
北終の魔王は高塔の攻めに苦戦し、迂闊に南下できず、その中で聖都北の国が力を付けて行っている
このまま行けば戦争は終わるかも知れない
しかしそれでは気が済まない魔王もいるかも知れない
料理人は彼女たちを絶対に戦争に行かせたくなかった
何が爆弾
何が破壊神
何が二百年連れ添った仲間の仇
今生きている私たちの絆が一番強いのだ
そう、自惚れていたのかも知れない
魔王にすら勝てないほど弱いのに、何も分かっていなかったのに
西浜と秋風が居なくなったのは、それから間もなくだった
…………
122 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/09(日) 01:52:04.26 ID:iF91AmcAO
薬学士が一番焦っている
前日に秋風と薬学士は同じベッドで寝ていたらしい
それなのに、何も言わずに居なくなった
いや、きっと何かしら会話が有ったはずである
今はそれを聞き出せる雰囲気ではない
そして取り残された南港も呆然となっていた
二人は恐らく反魔王狩りの部隊に合流したのではないか、と推測は立つが、魔王が集まると言うことは即ち、一人の魔王が倒れることで全滅も有り得ると言うことだ
置いていかれたと言うのなら料理人もそうだろう
皆を護るために、せっかく戦うための力を鍛えてきたのに
学者「拙者、伝手を当たってみやす」
料理人「頼むよ」
料理人「薬学士……」
薬学士「……」
薬学士の顔は、依然真っ青だ
昼御飯は魚をムニエルにし、スープ、サラダ、そしてハンバーグを作ってみた
南港「悔しいのじゃ……こんな時でも腹が減るのじゃ……」
料理人は人の体温が無性に恋しくて、彼女を抱きしめた
薬学士の肩も抱きしめ、席に着かせる
学者「美味しいですなあ」
料理人「ありがとう」
薬学士「おかわり」
料理人「はい」
良かった、食べてくれた
料理人(……これからどうするか……)
123 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/09(日) 01:55:02.83 ID:iF91AmcAO
料理人「そう言えば魔晶石はどうしたの?」
薬学士「……分からないけど私に内緒でずっと二人で作業してたよ」
学者「私らが持っていたのは高塔と聖都の商人に加工後捌きました」
南港「奴ら、儂に寄越した分まで持って行きおって……」
料理人「じゃあもう手元には……」
薬学士「後、六個分あるけど……」
料理人「加工できる?」
薬学士「ノウハウは教わってるよ」
料理人「私は包丁があるからいいけど、南港や学者さんや狩人くん、薬学士の武器にして欲しい」
南港「儂はいらないのじゃ」
料理人「しかし」
南港「自分のがあるのじゃ」
南港「儂は本当に大事にされとったんじゃぞ」
料理人「そうか」
南港「……儂は一人で行ったりせんぞ……」
料理人「ああ」
学者「拙者も心当たりがあるのでようござんす」
学者「有効活用しちゃってくださりぃ」
料理人(お腹落ち着いたからかなんかペース戻ってるな)
薬学士「私も武器はあるから魔道具にするね」
薬学士「もう誰も居なくならないでね……」
料理人「あと狩人くんか……巻き込んだら悪いかな?」
薬学士「そんなこと言ったら怒られるよ?」
南港「仲間外れは良くないのう」
124 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/09(日) 02:00:17.21 ID:iF91AmcAO
夜ーー
料理人はなにか時間が無駄に過ぎている気がして、焦れた
少なくとも料理の仕込みはしておかないといけない
今何をしなければいけないか、考えた
百年以上生きている魔王や魔王狩りを上回る考えや力をどうしたら得られるだろう
まず最初に考えた
哲学者の石を手に入れられないだろうか……
しかし薬学士はおろか魔王ですら実在は知っていても作れないのだ
ひょっとしたら魔王狩りの目的もそれなのではないか
哲学者の石は人を神にするごときアイテムだ
容易に人が触れられる物の筈がない
では次に何があるか
もう予定通り、自分も魔王になってしまうか?
いや、そのノウハウを秋風が薬学士に伝えているとも思えない
次に何があるか
そこで思い当たる
魔晶石狩り……
なんとか接触できないだろうか……
時間の猶予は無いかも知れないが、出来ることをやるしかない
125 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/09(日) 02:02:33.05 ID:iF91AmcAO
翌日ーー
学者「面白いアイデアかも分かりませんがなあ」
学者「しかし、危なすぎやす」
学者「ちょいとお待ち下せえ、拙者も色々手を尽くしてやすんで」
料理人「どれくらいかかるだろう」
学者「ひと月はかけないつもりで動きやす」
料理人「お願いします」
学者「ふひゃ?! 畏まられるとくすぐったいですだ!」
学者「我らは家族でやんす、お気になさらず……」
料理人「学者……ありがとう」
学者「それより美味い飯を頼みます」
料理人「分かったよ」
料理人「全力を振るってやる」
南港「楽しみなのじゃ」
料理人「よし、ちょっと買い物行ってくるね」
薬学士「私も行くよ」
料理人「うん、今晩は何にしようか?」
薬学士「う〜ん、シチューがいいかな〜」
料理人「了解」
南港「みんなで買い物行くのじゃ」
料理人「いいよ、行こうか」
学者「拙者も?」
料理人「家族でしょ?」
学者「ふひひ……えひゃっ」
料理人「……その笑い怖いから」
学者「しゅみましぇん……うれしいでやんす」
126 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/09(日) 02:03:55.09 ID:iF91AmcAO
また夜ーー
狩人「こんばんは」
料理人「いらっしゃい」
薬学士「狩人くん、武器ならナイフと弓どっちがいい?」
狩人「弓ですね」
薬学士「じゃあ弓作るよ」
狩人「ほんとですか?」
学者「そのかわり戦ってもらいやすよん」
狩人「……」
薬学士「……えと、無理は……」
狩人「違います、嬉しくて……」
狩人「役に立たないけど、頑張ります!」
料理人「馬鹿」
狩人「はうっ!?」
馬鹿と言いつつも、料理人は狩人を抱きしめる
料理人「私は何時だって狩人くんに助けられてるよ」
狩人「……!」
学者「ひゅーひゅー」
料理人「このハグにそう言う要素はない」
狩人「……」シクシク
南港「まずはご飯じゃご飯じゃ〜!」
料理人「了解!」
薬学士「シチュー、シチュー!」
料理人「はいはい」クスッ
…………
薬学士「おかわり!」
南港「おかわりじゃ!」
料理人「……いつにも増して食べてるね……」
学者「当面の目的ができて気合いが入ってきやしたなあ」
学者「まあゆっくりやりやしょう」
料理人「そうだね」
127 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/09(日) 02:06:16.24 ID:iF91AmcAO
翌日ーー
ひょっとしたら初めてかも分からないが、薬学士を連れて採取のために森に入る
薬学士「ちょっとマジックアイテムと弓に使う植物が欲しくて〜」
料理人「私も魚とキノコを穫りたい」
狩人「じゃあ色々まわってみましょうか」
南港「お昼は何かの〜!」
料理人「……おにぎり」
南港「なぜ精神を削ってくるのじゃ……」
…………
意外と薬学士は簡単に目当ての植物を探り当てて行ったので、料理人もその道でキノコや木の実、薬草や香草を採取する
狩人と南港がその間に釣りをすませたので、お昼には大体の作業を終えていた
料理人「さあ、食べよ?」ニコ
南港「殺戮者じゃ……殺戮者の笑顔じゃ……」
薬学士「学者ちゃんも連れてきたら当たる確率下がったのに……」
狩人「しかしお腹空きました……」
なんと、ハーレム状態でも誰にも手をつけられない狩人が最初に手をつけた
狩人「……」ツーン
狩人「辛い……」
南港「なんとツイてない……」
薬学士「ポーションポーション!」
料理人「ワサビだな」
…………
その剣士は村に着くと、すぐに宿を取った
旅慣れたいでたちの男は、一旦ベッドに腰を下ろす
128 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/09(日) 02:08:20.52 ID:iF91AmcAO
剣士「……さて」
剣士「……どこから探すか……」
…………
学者「では、よろしくお願いします」
騎士「承りました」
騎士「しかしお嬢様、身を隠すためとは言えもう少しマシな装いが無いものでしょうか……」
学者「こういうのも結構楽しんでやってるんですよ」
騎士「しかし……仮にも王家の方が……」
学者「ここでの生活は気に入ってます」
学者「口出しは無用でお願いします」
騎士「分かっております……」
学者「それで例の探し人二人なんですが……」
騎士「お嬢様のご推測の通りです」
学者「拙者の推測ではないでごじゃるが」
騎士「は?」
学者「何でもない」
学者「高塔の魔王様はどうされていますか?」
騎士「王にご指導下されております、お陰で北終の魔王も簡単には高塔を攻められない状態です」
学者「聖都北の国との共闘は上手く行ってるのですね?」
騎士「はい、このまま行けば侵略者の軍は壊滅です」
学者「大楠での一戦が大きかったですね……」
騎士「御意」
学者「魔晶石狩りの動向は」
騎士「御身にお気をつけください」
学者「……来ているのですね」
騎士「御意」
…………
129 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/09(日) 02:10:23.79 ID:iF91AmcAO
薬学士「うう……ここでキミが来るの……?」
薬学士が薬草に悶える姿はなんとも奇妙である
南港「……またなのじゃ」
南港はワサビの呪いにかかっている
料理人「のどがっ……」
料理人は火を吹いた
狩人「うん、これは……」
料理人「イナゴです」
狩人「……!?」
南港「精神はすり減るが慣れると楽しいのう」
料理人「……はいどうぞ」
南港「……ワサビ何個作ってきた……?」シクシク
料理人の久々のお茶目をたっぷり味わったところで、帰還することにした
…………
剣士は森から村に入った冒険者たちを認めると、後をつける
恐らくはまだ誰にも狙われていないのだろう
和気藹々と歓談しながら、村で一番大きな屋敷に入っていく
その中の一人が持っていた短刀?
明らかに魔晶石が使われている
剣士「間違いなかろう……」
剣士は彼らの少し後をついて行く
その更に後ろからいくつかの気配がついてくる
剣士「……」
南港「そう言えば国はどうしたんじゃ?」
西浜「……」グスッ
秋風「話したく無いなら構わんぞ、ほら、飯を食え」
料理人「好みとか分かる?」
南港「いかやき?」
料理人「分からないんだな、分かった」
西浜「……」フ
料理人「あ、なんかバカにされた気が」
秋風「今のは肯定の笑いだろ」
料理人「わかんねー!」ガシィ
匙を投げた
料理人「く……」フーフー
薬学士「と、とりあえずこのスープ、塩漬け魚と野菜のスープ美味しいよ?」
西浜「……」コクッ
南港「お、飲んだ」
西浜「……」
何やら目を瞑っている
秋風「おお、ずいぶん気に入ったようだな!」
南港「いかやきを食べた時の顔じゃ!」
イカ焼き推しはもういい
料理人「……気に入ったなら良かった……お代わりあるよ」
西浜「……」スッ
皿を差し出してきた
あれ、なんか可愛いぞ
秋風「素直で気のいい奴なんだよ」
南港「十年に一度くらいしか喋らんがの」
西浜「……」ポッ
料理人「あ、ちょっと顔赤くなったかも」
西浜「……」
料理人「あ、ごめん」
学者「つ、通じてるにゃ……ん?」
薬学士「すごいね、料理人ちゃん」
120 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/09(日) 01:46:45.23 ID:iF91AmcAO
料理人「しかし……」
魔王と言うのはみんな大食なのであろうか
あっと言う間にスープを平らげた後もガーリックライスも魚のソテーも猪肉の煮込みも山菜の炒め物も、出したら出しただけペロリと食べて目を瞑る
しかし、料理人にはコミュニケーションはこれで十分だった
自分の料理を美味しそうに食べてくれる
それだけで家族になってしまう
それが料理人の生来のスキルなのかも知れない
西浜「……」
ゆっくり手を合わせた
南港「満足したようじゃな」
秋風「そうだ、お前彫金得意だったな、後で手伝ってくれ」
西浜「……」フ
秋風「よし」
薬学士「お師匠さま、私は良いんですか?」
秋風「ああ、弟子は遊んでろ」
薬学士は料理人と話した夜のことを思い出していた
あんな事、黙ってやるわけにはいかない
そもそも知識がない
それに、そんな事を悩んでると言うだけでも、もう弟子と呼んでくれなくなるかも知れない……
選ぶことなんてできない……
……でも……
121 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/09(日) 01:49:12.51 ID:iF91AmcAO
そして、何も言えないまま
そして西浜の魔王も何も言わないまま
また一週間が過ぎた
…………
料理人「はい、西浜ちゃん」
西浜「……」ン
一週間付き合って微妙な表情の変化が分かるようになった気がする
今のは、かしこまりました、と言っているようだ
秋風「なんか気合い入ってるな」
なんとなく分かるのが悔しい
最近の料理の内容は少し変わってきたような気がする
山では珍しい海鮮料理も出せるようになった
雑貨店の仕入れの幅が変わっているのだ
戦争は停滞している
北終の魔王は高塔の攻めに苦戦し、迂闊に南下できず、その中で聖都北の国が力を付けて行っている
このまま行けば戦争は終わるかも知れない
しかしそれでは気が済まない魔王もいるかも知れない
料理人は彼女たちを絶対に戦争に行かせたくなかった
何が爆弾
何が破壊神
何が二百年連れ添った仲間の仇
今生きている私たちの絆が一番強いのだ
そう、自惚れていたのかも知れない
魔王にすら勝てないほど弱いのに、何も分かっていなかったのに
西浜と秋風が居なくなったのは、それから間もなくだった
…………
122 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/09(日) 01:52:04.26 ID:iF91AmcAO
薬学士が一番焦っている
前日に秋風と薬学士は同じベッドで寝ていたらしい
それなのに、何も言わずに居なくなった
いや、きっと何かしら会話が有ったはずである
今はそれを聞き出せる雰囲気ではない
そして取り残された南港も呆然となっていた
二人は恐らく反魔王狩りの部隊に合流したのではないか、と推測は立つが、魔王が集まると言うことは即ち、一人の魔王が倒れることで全滅も有り得ると言うことだ
置いていかれたと言うのなら料理人もそうだろう
皆を護るために、せっかく戦うための力を鍛えてきたのに
学者「拙者、伝手を当たってみやす」
料理人「頼むよ」
料理人「薬学士……」
薬学士「……」
薬学士の顔は、依然真っ青だ
昼御飯は魚をムニエルにし、スープ、サラダ、そしてハンバーグを作ってみた
南港「悔しいのじゃ……こんな時でも腹が減るのじゃ……」
料理人は人の体温が無性に恋しくて、彼女を抱きしめた
薬学士の肩も抱きしめ、席に着かせる
学者「美味しいですなあ」
料理人「ありがとう」
薬学士「おかわり」
料理人「はい」
良かった、食べてくれた
料理人(……これからどうするか……)
123 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/09(日) 01:55:02.83 ID:iF91AmcAO
料理人「そう言えば魔晶石はどうしたの?」
薬学士「……分からないけど私に内緒でずっと二人で作業してたよ」
学者「私らが持っていたのは高塔と聖都の商人に加工後捌きました」
南港「奴ら、儂に寄越した分まで持って行きおって……」
料理人「じゃあもう手元には……」
薬学士「後、六個分あるけど……」
料理人「加工できる?」
薬学士「ノウハウは教わってるよ」
料理人「私は包丁があるからいいけど、南港や学者さんや狩人くん、薬学士の武器にして欲しい」
南港「儂はいらないのじゃ」
料理人「しかし」
南港「自分のがあるのじゃ」
南港「儂は本当に大事にされとったんじゃぞ」
料理人「そうか」
南港「……儂は一人で行ったりせんぞ……」
料理人「ああ」
学者「拙者も心当たりがあるのでようござんす」
学者「有効活用しちゃってくださりぃ」
料理人(お腹落ち着いたからかなんかペース戻ってるな)
薬学士「私も武器はあるから魔道具にするね」
薬学士「もう誰も居なくならないでね……」
料理人「あと狩人くんか……巻き込んだら悪いかな?」
薬学士「そんなこと言ったら怒られるよ?」
南港「仲間外れは良くないのう」
夜ーー
料理人はなにか時間が無駄に過ぎている気がして、焦れた
少なくとも料理の仕込みはしておかないといけない
今何をしなければいけないか、考えた
百年以上生きている魔王や魔王狩りを上回る考えや力をどうしたら得られるだろう
まず最初に考えた
哲学者の石を手に入れられないだろうか……
しかし薬学士はおろか魔王ですら実在は知っていても作れないのだ
ひょっとしたら魔王狩りの目的もそれなのではないか
哲学者の石は人を神にするごときアイテムだ
容易に人が触れられる物の筈がない
では次に何があるか
もう予定通り、自分も魔王になってしまうか?
いや、そのノウハウを秋風が薬学士に伝えているとも思えない
次に何があるか
そこで思い当たる
魔晶石狩り……
なんとか接触できないだろうか……
時間の猶予は無いかも知れないが、出来ることをやるしかない
125 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/09(日) 02:02:33.05 ID:iF91AmcAO
翌日ーー
学者「面白いアイデアかも分かりませんがなあ」
学者「しかし、危なすぎやす」
学者「ちょいとお待ち下せえ、拙者も色々手を尽くしてやすんで」
料理人「どれくらいかかるだろう」
学者「ひと月はかけないつもりで動きやす」
料理人「お願いします」
学者「ふひゃ?! 畏まられるとくすぐったいですだ!」
学者「我らは家族でやんす、お気になさらず……」
料理人「学者……ありがとう」
学者「それより美味い飯を頼みます」
料理人「分かったよ」
料理人「全力を振るってやる」
南港「楽しみなのじゃ」
料理人「よし、ちょっと買い物行ってくるね」
薬学士「私も行くよ」
料理人「うん、今晩は何にしようか?」
薬学士「う〜ん、シチューがいいかな〜」
料理人「了解」
南港「みんなで買い物行くのじゃ」
料理人「いいよ、行こうか」
学者「拙者も?」
料理人「家族でしょ?」
学者「ふひひ……えひゃっ」
料理人「……その笑い怖いから」
学者「しゅみましぇん……うれしいでやんす」
126 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/09(日) 02:03:55.09 ID:iF91AmcAO
また夜ーー
狩人「こんばんは」
料理人「いらっしゃい」
薬学士「狩人くん、武器ならナイフと弓どっちがいい?」
狩人「弓ですね」
薬学士「じゃあ弓作るよ」
狩人「ほんとですか?」
学者「そのかわり戦ってもらいやすよん」
狩人「……」
薬学士「……えと、無理は……」
狩人「違います、嬉しくて……」
狩人「役に立たないけど、頑張ります!」
料理人「馬鹿」
狩人「はうっ!?」
馬鹿と言いつつも、料理人は狩人を抱きしめる
料理人「私は何時だって狩人くんに助けられてるよ」
狩人「……!」
学者「ひゅーひゅー」
料理人「このハグにそう言う要素はない」
狩人「……」シクシク
南港「まずはご飯じゃご飯じゃ〜!」
料理人「了解!」
薬学士「シチュー、シチュー!」
料理人「はいはい」クスッ
…………
薬学士「おかわり!」
南港「おかわりじゃ!」
料理人「……いつにも増して食べてるね……」
学者「当面の目的ができて気合いが入ってきやしたなあ」
学者「まあゆっくりやりやしょう」
料理人「そうだね」
127 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/09(日) 02:06:16.24 ID:iF91AmcAO
翌日ーー
ひょっとしたら初めてかも分からないが、薬学士を連れて採取のために森に入る
薬学士「ちょっとマジックアイテムと弓に使う植物が欲しくて〜」
料理人「私も魚とキノコを穫りたい」
狩人「じゃあ色々まわってみましょうか」
南港「お昼は何かの〜!」
料理人「……おにぎり」
南港「なぜ精神を削ってくるのじゃ……」
…………
意外と薬学士は簡単に目当ての植物を探り当てて行ったので、料理人もその道でキノコや木の実、薬草や香草を採取する
狩人と南港がその間に釣りをすませたので、お昼には大体の作業を終えていた
料理人「さあ、食べよ?」ニコ
南港「殺戮者じゃ……殺戮者の笑顔じゃ……」
薬学士「学者ちゃんも連れてきたら当たる確率下がったのに……」
狩人「しかしお腹空きました……」
なんと、ハーレム状態でも誰にも手をつけられない狩人が最初に手をつけた
狩人「……」ツーン
狩人「辛い……」
南港「なんとツイてない……」
薬学士「ポーションポーション!」
料理人「ワサビだな」
…………
その剣士は村に着くと、すぐに宿を取った
旅慣れたいでたちの男は、一旦ベッドに腰を下ろす
128 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/09(日) 02:08:20.52 ID:iF91AmcAO
剣士「……さて」
剣士「……どこから探すか……」
…………
学者「では、よろしくお願いします」
騎士「承りました」
騎士「しかしお嬢様、身を隠すためとは言えもう少しマシな装いが無いものでしょうか……」
学者「こういうのも結構楽しんでやってるんですよ」
騎士「しかし……仮にも王家の方が……」
学者「ここでの生活は気に入ってます」
学者「口出しは無用でお願いします」
騎士「分かっております……」
学者「それで例の探し人二人なんですが……」
騎士「お嬢様のご推測の通りです」
学者「拙者の推測ではないでごじゃるが」
騎士「は?」
学者「何でもない」
学者「高塔の魔王様はどうされていますか?」
騎士「王にご指導下されております、お陰で北終の魔王も簡単には高塔を攻められない状態です」
学者「聖都北の国との共闘は上手く行ってるのですね?」
騎士「はい、このまま行けば侵略者の軍は壊滅です」
学者「大楠での一戦が大きかったですね……」
騎士「御意」
学者「魔晶石狩りの動向は」
騎士「御身にお気をつけください」
学者「……来ているのですね」
騎士「御意」
…………
129 :いかやき ◆J9pjHtW.ylNB :2014/03/09(日) 02:10:23.79 ID:iF91AmcAO
薬学士「うう……ここでキミが来るの……?」
薬学士が薬草に悶える姿はなんとも奇妙である
南港「……またなのじゃ」
南港はワサビの呪いにかかっている
料理人「のどがっ……」
料理人は火を吹いた
狩人「うん、これは……」
料理人「イナゴです」
狩人「……!?」
南港「精神はすり減るが慣れると楽しいのう」
料理人「……はいどうぞ」
南港「……ワサビ何個作ってきた……?」シクシク
料理人の久々のお茶目をたっぷり味わったところで、帰還することにした
…………
剣士は森から村に入った冒険者たちを認めると、後をつける
恐らくはまだ誰にも狙われていないのだろう
和気藹々と歓談しながら、村で一番大きな屋敷に入っていく
その中の一人が持っていた短刀?
明らかに魔晶石が使われている
剣士「間違いなかろう……」
剣士は彼らの少し後をついて行く
その更に後ろからいくつかの気配がついてくる
剣士「……」
料理人と薬学士
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