犬「オリハルコンの牙」
Part2
15 : ◆J9pjHtW.ylNB :2013/12/26(木) 19:06:04.12 ID:zDQpLJAAO
ーー魔王の使いの塔ーー
魔王の使い「くははっ、なかなかやりおるな、勇者を欠いた人の子らよ!」
女剣士「勇者はいないが犬はいるぞ!」
魔王の使い「犬?!」
犬「ワン!」会心の一撃!強火球魔法!
魔王の使い「犬つえええええ!?」
女剣士「オラオラオラ!」ズバッ
僧侶「かいふくするよっ」中回復魔法!
魔法使い「足は強酸で溶かしてみよう……脳みそはホルマリンに漬けよう……肉は犬のエサ。」
犬「クオン?!」(食わないよ?!)
魔王の使い「……くくく、良いことを教えてやろう」(魔法使いこええ……)
女剣士「なに?」
魔法使い「夢のある話だと良いわね」
僧侶「夢あるの?楽しみー!」
魔王の使い「……いや、わりと夢無いよ?」
魔王の使い「勇者の村を襲ったのは、私だ」
女剣士「!!」
魔法使い「夢ないね。」
僧侶「……そんなあ」
犬「ワン!」(てめえが!)
犬「ワンワン!!」(主様を!)
魔王の使い「ふふふ……予め復活の儀式を行っていた我はこのとおりピンピンしてるがな」
16 : ◆J9pjHtW.ylNB :2013/12/26(木) 19:09:30.78 ID:zDQpLJAAO
魔王の使い「最後に弾け飛ぶ勇者の顔……、見物であったぞ」
女剣士「貴様……」ギリッ
犬「ワオーン!」(許さん!)
僧侶「ゆうしゃさまの……かたきっ……」
魔法使い「見たかったな〜それ。」
女剣士「」
犬「」
僧侶「」
魔王の使い「」
魔王の使い「……ぐはあっ!おのれ……」
女剣士「はあっ……はあっ……、とどめ!」会心の一撃!
魔王の使い「ギャアアアアアア!!」
女剣士の渾身の一振りにより、最後の抵抗もさせずに、魔王の使いにとどめを刺した
魔王の使い「見事……人間よ……だかっ……!」
魔王の使いはいまわの際に呪いを放った!
僧侶「きゃっ!?」
剣士「僧侶!くそっ」ズバッ
魔王の使いを倒した!
ーー町、宿屋ーー
魔法使い「これは……解体してみないと分からない。わりとマジで。」
犬「キャウン」(ヤメテ)
女剣士「ヤメテ?……しかしこれほどひどくなるとは……」
魔法使い「毒系統の呪いなのは分かるけど、神官に見せてもこれは初めて見る症状だと言ってた。」
僧侶「ん……うう……。」
黒いシミが、白い僧侶の肌に広がっている
それと共に高熱を発し、どんどん僧侶の体力を奪っていった
17 : ◆J9pjHtW.ylNB :2013/12/26(木) 19:13:38.91 ID:zDQpLJAAO
犬「くうん……」(このままでは……)
犬(僧侶ちゃんは主様の友であった……俺にとっても……)
犬(このまま失うわけにはいかない……)
犬(……そうだ、確か……)
魔法使い『竜の血肉はーー』
犬(……行くか!)ダッ
魔法使い「ん……? 犬は?」
女剣士「え? いない?」
女剣士「いつものように野宿しているのか……?」
犬は走っていた
森を駆け
川を泳ぎ
山を駆けた
犬「うー。」(そういえばどこにいるか知らんかった)
しかし犬は走った
山を下り
川を泳ぎ
森を駆け
そして、洞窟を見つけた
魔法使いは確か、魔王の使いを倒す前に竜を、と言っていた
わりと町の近くに竜の巣が有ったからかも知れない
それに犬の鼻に、生臭い大蛇の臭いがまとわりついてきた
犬(俺の鼻なら迷うことはない)タッタッタッ
(俺の足ならすぐにつく)タッタッタッ
(俺の牙なら倒せるはず)タッタッタッ
タッ(いたか!)
竜「グルル…………犬か…………珍しい…………なんの用だ…………」
犬「ワン!」(恨みはないが)
犬「ワン!ワオーン!」(大切な友のため!死んでもらう!)
竜「……小癪な!」
18 : ◆J9pjHtW.ylNB :2013/12/26(木) 19:16:19.12 ID:zDQpLJAAO
竜「犬畜生の分際で竜に適うと思うてか!」
犬「ワン!」犬の攻撃!会心の一撃!
竜にダメージを与えられない!
犬「キャウン!!」
犬(か……硬いな……)
竜の攻撃!痛恨の一撃!
犬(まっ……マズい!)ドグシャ……
犬は倒れた!
犬「グル……」(くそぉ……)
犬はむくりと起き上がり、竜に向き直った!
竜「なかなかの頑強さよ……」
竜「だが」
竜「ここまでだ!」
竜は犬に灼熱の炎を吐きつけた!
完全にかわしたはずの犬の毛がじりじりと焼け焦げる
犬(友のため!友のため!)
犬は激しく駆け回る!
犬(負けるわけにはいかん!)
竜「いい加減でくたばるがよい!」竜の爪!
犬「ギャウッ!」
犬「ワオーン!」犬の閃光魔法!
竜「なにっ……!?」
竜のウロコをえぐり、閃光が迸る!
たかが犬である
如何に強かろうが、竜にかなうはずもない
しかし犬はあきらめない
犬は恐れを知らなかった
食らいつき、叩きつけられ、腹を裂かれた
……しかし、立った!
犬「ウオーン!」犬の強閃光魔法!
竜の指を弾き飛ばし、その顔面を抉った!
しかし
竜「我は竜である!!」
竜の極大火炎撃!
19 : ◆J9pjHtW.ylNB :2013/12/26(木) 19:19:16.27 ID:zDQpLJAAO
犬「キャウウウン!!」
犬は瀕死の重傷を負った!
犬(このままでは…肉を持ち帰るどころか……)
犬(……ん?)
弾かれ立ち上がろうとしたそこには、先ほどの一撃で落とした竜の指があった
犬「ワン!」(とりあえずこれで!)ダッ
竜「逃げるか!犬畜生め!」
竜(……しかしここまで犬に大ダメージを受けるとは……)
(あの犬はなんなのだ……? 人の町まで追っては殺されるかもわからん)
(ここは傷を癒すべきか……)
ーー宿屋ーー
犬「ワンワン!」(帰ったよ、お土産だ!)
剣士「ん? わっ、どうしたんだ犬!」
魔法使い「ありゃ。これは……竜の指?」
剣士「ま……まさか一匹で竜と戦ってたのか?」
魔法使い「すげえ。でも助かった。」
犬「ワン!」(足りる?)
魔法使い「今薬作ったる。実験だー!!」
女剣士「実験!?」
20 : ◆J9pjHtW.ylNB :2013/12/26(木) 19:22:09.44 ID:zDQpLJAAO
数時間後ーー
僧侶「……んっ……苦しいよ……ゆうしゃさま……」
魔法使い「はい、薬できたよ。実験しよ。人体実験しよ。」
女剣士「大丈夫かそれ、本当に」
犬「ワン!」(早く)
僧侶「ん……にがにが……おくすりやあ……」
魔法使い「呪いに効くかは分からんよ?」
女剣士「そうか……いろいろと不安だな」
魔法使い「腕はたしか。安心して。実験マニアだから。」
女剣士(実験の犠牲者が偲ばれますが)
魔法使い「うん。結構大きな肉片だったし、骨や爪もある。半年分は作れる。気長にやろう。」
女剣士「一回で治るわけじゃないのか」
魔法使い「強い薬は毒性も高い。すこしづつ投与しないと。」
女剣士「そうか。ん?どうした犬」
魔法使い「お腹に大きな傷がある。」
女剣士「……な、尋常じゃないぞ!今まで気付かなかったとは……」
魔法使い「治療しないと。神官を呼んできて。」
女剣士「分かった!」ダッ
魔法使い「竜の血には傷をふさぐ効果がある。応急処置。少し作って上げる。」
犬「くぉん……」
魔法使い「大丈夫、僧侶の薬には肉と骨を使う。気にしないで。」
犬「くうん……」
21 : ◆J9pjHtW.ylNB :2013/12/26(木) 19:27:12.31 ID:zDQpLJAAO
魔法使い「次に一人で戦いに行ったら、解剖するから。」
犬「キャウン?!」(ヤメテ?!)
魔法使い「……犬はもう私達の仲間なんだよ……?」
犬「……くぅん」
魔法使い「と、薬作る。」
僧侶「んん……」
魔法使い「この子のことが大事だったんだね。まだ12才?すごい才能ある。」
魔法使い「親はあの戦いで亡くなったんだね……。大切なゆうしゃさまも……。」
犬(この魔女がこれほど喋るのは珍しい……)
魔法使いも、とても仲間思いで、犬の大切な仲間なのだ
魔法使い(犬、このまま眠ると危ないかも)
魔法使い「はい、飲んで。」
犬「きゅうん……」(にがい)
魔法使い(しばらくは話しかけるか)
魔法使い「女剣士と私の故郷も、魔王軍に襲われたの。」
魔法使い「私はその時、家族を失った。優しい父さん。穏やかなお母さん。可愛い妹。」
魔法使い「私は絶望した。自ら火を放ち、死のうと考えた。」
魔法使い「その時、彼女に救われた。彼女も大切な弟を、家族を亡くしたそう。」
魔法使い「笑えることに彼女の言ったことは、私を救おうとするセリフじゃなかった。」
「なんて言ったと思う?」
犬「くーん……」(救うのに救わないセリフ?)
22 : ◆J9pjHtW.ylNB :2013/12/26(木) 19:30:03.23 ID:zDQpLJAAO
魔法使い「『私を……死ぬ前に私を助けてくれ……』だって。」
犬「……」(なるほど……)
魔法使い「人間って不思議。自分を助けようとするより、人を助けようとした方が、力が湧く。」
犬「くうん……」(分かる気がする)
魔法使い「彼女は私の恩人。魔王を倒したいと彼女が言った時、私は断らなかった。」
犬「……くうん」(俺も手伝おう)
魔法使い「あなたは不思議。人の話が分かるよう。解剖していい?」
犬「キャウン?!」(ヤメテ?!)
魔法使い「くすっ。一割くらいは冗談。」
犬「キャウン?!」(たった一割?!)
魔法使い「……薬効いたかな。もう大丈夫かも。じゃあ少しお休み。」
魔法使いはそう言うと、犬に毛布をかけた。
ーーきっと魔王を倒そうーー
ダンダンダンダン
女剣士「はああっ! ぜえっぜえっぜえっ!」
魔法使い「お帰り。そのズタ袋は?」
女剣士「しっ……しんかん……ぜえっぜえっ……神官連れてきた……」
魔法使い「この薬飲んで」(犬用だけど)
女剣士「にがいっ」
神官「……無茶苦茶だよこの人……」
魔法使い「犬の怪我と僧侶の病状を見て。……あなたの解剖からする?」
神官「ヤメテ?!」
24 : ◆J9pjHtW.ylNB :2013/12/26(木) 20:01:10.04 ID:zDQpLJAAO
再開。
神官「僧侶さんの呪い、前に見た時より落ち着いているような。術者は死んでいるので回復傾向になれば問題は無いでしょう」
神官「犬の方は傷は大きいですが内蔵にダメージは無さそうです」
「しかし、なんと戦ったのやら。傷の上から焼かれて出血が止まったのは、この場合は良かったようです」
神官「一応、回復魔法でしっかりふさいでおきました。こちらももう安心でしょう。」
女剣士「助かります。無茶をして申し訳ない」
魔法使い「しばらくはここで療養。」
女剣士「仕方ないな。この町は大きいし、ギルドの仕事をすれば宿代くらいは稼げるだろう」
ーー半年後ーー
僧侶「犬ちゃーん!あははっ」
犬「はっはっはっはっ」
魔法使い「犬うぜえ。」
女剣士「えっ!?……しかし元気になったなあ」
魔法使い「実験体ども、いきがいい。」
女剣士「いき!?」
女剣士「まあ無事回復したし、そろそろ行こうか」
魔法使い「……。」
女剣士「ん?」
魔法使い「勇者のいないパーティー……。」
魔法使い「魔王に勝てる可能性は、皆無。」
女剣士「……そうかも知れない」
魔法使い「……」
女剣士「じゃあさ、実験しよう!」
女剣士「ど……どうかな?」
魔法使い「……いいね。……実験は、好き。」
25 : ◆J9pjHtW.ylNB :2013/12/26(木) 20:04:03.24 ID:zDQpLJAAO
やがて、旅立ちの日から季節が一巡りし、春の月になった。
最後の町にたどり着いた一行
僧侶「ついたー!」
女剣士「お疲れ様、僧侶」
魔法使い「ここを抜けたらもう魔王を倒すだけ。心残りがあるなら、今のうち。」
僧侶「ん、えっとね」
女剣士「なんでも言って。僧侶の言うことならなんでも聞いてあげる」
僧侶「もうすぐゆうしゃさまの命日だから、最初の村に帰ってお墓の掃除してあげたいの」
魔法使い「いいよ。帰還魔法。」
女剣士「えっ、ちょっ、まっ、うわっ!」
シュン
ーー勇者の村ーー
女剣士「ちょっと相談してから飛べよ!」
魔法使い「なんでも聞いてあげるって言った。」
女剣士「言ったさ、言ったけども!」
僧侶「あははっ!ありがとうお姉ちゃんたち!」
魔法使い「(もう帰れなくなるかも知れないのよ。私達の都合で。)」
女剣士「(……分かってるよ)」
僧侶「?お姉ちゃん?はやくいこー!」
僧侶「……村、あのころのまま……」
女剣士「……盗人くらいしか来てないんじゃないか?勇者を匿うための村だから仕方ないのかも知れないが……」
僧侶「勇者様のお墓を掃除したら、荷物を整理してきます」
ーー魔王の使いの塔ーー
魔王の使い「くははっ、なかなかやりおるな、勇者を欠いた人の子らよ!」
女剣士「勇者はいないが犬はいるぞ!」
魔王の使い「犬?!」
犬「ワン!」会心の一撃!強火球魔法!
魔王の使い「犬つえええええ!?」
女剣士「オラオラオラ!」ズバッ
僧侶「かいふくするよっ」中回復魔法!
魔法使い「足は強酸で溶かしてみよう……脳みそはホルマリンに漬けよう……肉は犬のエサ。」
犬「クオン?!」(食わないよ?!)
魔王の使い「……くくく、良いことを教えてやろう」(魔法使いこええ……)
女剣士「なに?」
魔法使い「夢のある話だと良いわね」
僧侶「夢あるの?楽しみー!」
魔王の使い「……いや、わりと夢無いよ?」
魔王の使い「勇者の村を襲ったのは、私だ」
女剣士「!!」
魔法使い「夢ないね。」
僧侶「……そんなあ」
犬「ワン!」(てめえが!)
犬「ワンワン!!」(主様を!)
魔王の使い「ふふふ……予め復活の儀式を行っていた我はこのとおりピンピンしてるがな」
16 : ◆J9pjHtW.ylNB :2013/12/26(木) 19:09:30.78 ID:zDQpLJAAO
魔王の使い「最後に弾け飛ぶ勇者の顔……、見物であったぞ」
女剣士「貴様……」ギリッ
犬「ワオーン!」(許さん!)
僧侶「ゆうしゃさまの……かたきっ……」
魔法使い「見たかったな〜それ。」
女剣士「」
犬「」
僧侶「」
魔王の使い「」
魔王の使い「……ぐはあっ!おのれ……」
女剣士「はあっ……はあっ……、とどめ!」会心の一撃!
魔王の使い「ギャアアアアアア!!」
女剣士の渾身の一振りにより、最後の抵抗もさせずに、魔王の使いにとどめを刺した
魔王の使い「見事……人間よ……だかっ……!」
魔王の使いはいまわの際に呪いを放った!
僧侶「きゃっ!?」
剣士「僧侶!くそっ」ズバッ
魔王の使いを倒した!
ーー町、宿屋ーー
魔法使い「これは……解体してみないと分からない。わりとマジで。」
犬「キャウン」(ヤメテ)
女剣士「ヤメテ?……しかしこれほどひどくなるとは……」
魔法使い「毒系統の呪いなのは分かるけど、神官に見せてもこれは初めて見る症状だと言ってた。」
僧侶「ん……うう……。」
黒いシミが、白い僧侶の肌に広がっている
それと共に高熱を発し、どんどん僧侶の体力を奪っていった
17 : ◆J9pjHtW.ylNB :2013/12/26(木) 19:13:38.91 ID:zDQpLJAAO
犬「くうん……」(このままでは……)
犬(僧侶ちゃんは主様の友であった……俺にとっても……)
犬(このまま失うわけにはいかない……)
犬(……そうだ、確か……)
魔法使い『竜の血肉はーー』
犬(……行くか!)ダッ
魔法使い「ん……? 犬は?」
女剣士「え? いない?」
女剣士「いつものように野宿しているのか……?」
犬は走っていた
森を駆け
川を泳ぎ
山を駆けた
犬「うー。」(そういえばどこにいるか知らんかった)
しかし犬は走った
山を下り
川を泳ぎ
森を駆け
そして、洞窟を見つけた
魔法使いは確か、魔王の使いを倒す前に竜を、と言っていた
わりと町の近くに竜の巣が有ったからかも知れない
それに犬の鼻に、生臭い大蛇の臭いがまとわりついてきた
犬(俺の鼻なら迷うことはない)タッタッタッ
(俺の足ならすぐにつく)タッタッタッ
(俺の牙なら倒せるはず)タッタッタッ
タッ(いたか!)
竜「グルル…………犬か…………珍しい…………なんの用だ…………」
犬「ワン!」(恨みはないが)
犬「ワン!ワオーン!」(大切な友のため!死んでもらう!)
竜「……小癪な!」
18 : ◆J9pjHtW.ylNB :2013/12/26(木) 19:16:19.12 ID:zDQpLJAAO
竜「犬畜生の分際で竜に適うと思うてか!」
犬「ワン!」犬の攻撃!会心の一撃!
竜にダメージを与えられない!
犬「キャウン!!」
犬(か……硬いな……)
竜の攻撃!痛恨の一撃!
犬(まっ……マズい!)ドグシャ……
犬は倒れた!
犬「グル……」(くそぉ……)
犬はむくりと起き上がり、竜に向き直った!
竜「なかなかの頑強さよ……」
竜「だが」
竜「ここまでだ!」
竜は犬に灼熱の炎を吐きつけた!
完全にかわしたはずの犬の毛がじりじりと焼け焦げる
犬(友のため!友のため!)
犬は激しく駆け回る!
犬(負けるわけにはいかん!)
竜「いい加減でくたばるがよい!」竜の爪!
犬「ギャウッ!」
犬「ワオーン!」犬の閃光魔法!
竜「なにっ……!?」
竜のウロコをえぐり、閃光が迸る!
たかが犬である
如何に強かろうが、竜にかなうはずもない
しかし犬はあきらめない
犬は恐れを知らなかった
食らいつき、叩きつけられ、腹を裂かれた
……しかし、立った!
犬「ウオーン!」犬の強閃光魔法!
竜の指を弾き飛ばし、その顔面を抉った!
しかし
竜「我は竜である!!」
竜の極大火炎撃!
19 : ◆J9pjHtW.ylNB :2013/12/26(木) 19:19:16.27 ID:zDQpLJAAO
犬「キャウウウン!!」
犬は瀕死の重傷を負った!
犬(このままでは…肉を持ち帰るどころか……)
犬(……ん?)
弾かれ立ち上がろうとしたそこには、先ほどの一撃で落とした竜の指があった
犬「ワン!」(とりあえずこれで!)ダッ
竜「逃げるか!犬畜生め!」
竜(……しかしここまで犬に大ダメージを受けるとは……)
(あの犬はなんなのだ……? 人の町まで追っては殺されるかもわからん)
(ここは傷を癒すべきか……)
ーー宿屋ーー
犬「ワンワン!」(帰ったよ、お土産だ!)
剣士「ん? わっ、どうしたんだ犬!」
魔法使い「ありゃ。これは……竜の指?」
剣士「ま……まさか一匹で竜と戦ってたのか?」
魔法使い「すげえ。でも助かった。」
犬「ワン!」(足りる?)
魔法使い「今薬作ったる。実験だー!!」
女剣士「実験!?」
数時間後ーー
僧侶「……んっ……苦しいよ……ゆうしゃさま……」
魔法使い「はい、薬できたよ。実験しよ。人体実験しよ。」
女剣士「大丈夫かそれ、本当に」
犬「ワン!」(早く)
僧侶「ん……にがにが……おくすりやあ……」
魔法使い「呪いに効くかは分からんよ?」
女剣士「そうか……いろいろと不安だな」
魔法使い「腕はたしか。安心して。実験マニアだから。」
女剣士(実験の犠牲者が偲ばれますが)
魔法使い「うん。結構大きな肉片だったし、骨や爪もある。半年分は作れる。気長にやろう。」
女剣士「一回で治るわけじゃないのか」
魔法使い「強い薬は毒性も高い。すこしづつ投与しないと。」
女剣士「そうか。ん?どうした犬」
魔法使い「お腹に大きな傷がある。」
女剣士「……な、尋常じゃないぞ!今まで気付かなかったとは……」
魔法使い「治療しないと。神官を呼んできて。」
女剣士「分かった!」ダッ
魔法使い「竜の血には傷をふさぐ効果がある。応急処置。少し作って上げる。」
犬「くぉん……」
魔法使い「大丈夫、僧侶の薬には肉と骨を使う。気にしないで。」
犬「くうん……」
21 : ◆J9pjHtW.ylNB :2013/12/26(木) 19:27:12.31 ID:zDQpLJAAO
魔法使い「次に一人で戦いに行ったら、解剖するから。」
犬「キャウン?!」(ヤメテ?!)
魔法使い「……犬はもう私達の仲間なんだよ……?」
犬「……くぅん」
魔法使い「と、薬作る。」
僧侶「んん……」
魔法使い「この子のことが大事だったんだね。まだ12才?すごい才能ある。」
魔法使い「親はあの戦いで亡くなったんだね……。大切なゆうしゃさまも……。」
犬(この魔女がこれほど喋るのは珍しい……)
魔法使いも、とても仲間思いで、犬の大切な仲間なのだ
魔法使い(犬、このまま眠ると危ないかも)
魔法使い「はい、飲んで。」
犬「きゅうん……」(にがい)
魔法使い(しばらくは話しかけるか)
魔法使い「女剣士と私の故郷も、魔王軍に襲われたの。」
魔法使い「私はその時、家族を失った。優しい父さん。穏やかなお母さん。可愛い妹。」
魔法使い「私は絶望した。自ら火を放ち、死のうと考えた。」
魔法使い「その時、彼女に救われた。彼女も大切な弟を、家族を亡くしたそう。」
魔法使い「笑えることに彼女の言ったことは、私を救おうとするセリフじゃなかった。」
「なんて言ったと思う?」
犬「くーん……」(救うのに救わないセリフ?)
22 : ◆J9pjHtW.ylNB :2013/12/26(木) 19:30:03.23 ID:zDQpLJAAO
魔法使い「『私を……死ぬ前に私を助けてくれ……』だって。」
犬「……」(なるほど……)
魔法使い「人間って不思議。自分を助けようとするより、人を助けようとした方が、力が湧く。」
犬「くうん……」(分かる気がする)
魔法使い「彼女は私の恩人。魔王を倒したいと彼女が言った時、私は断らなかった。」
犬「……くうん」(俺も手伝おう)
魔法使い「あなたは不思議。人の話が分かるよう。解剖していい?」
犬「キャウン?!」(ヤメテ?!)
魔法使い「くすっ。一割くらいは冗談。」
犬「キャウン?!」(たった一割?!)
魔法使い「……薬効いたかな。もう大丈夫かも。じゃあ少しお休み。」
魔法使いはそう言うと、犬に毛布をかけた。
ーーきっと魔王を倒そうーー
ダンダンダンダン
女剣士「はああっ! ぜえっぜえっぜえっ!」
魔法使い「お帰り。そのズタ袋は?」
女剣士「しっ……しんかん……ぜえっぜえっ……神官連れてきた……」
魔法使い「この薬飲んで」(犬用だけど)
女剣士「にがいっ」
神官「……無茶苦茶だよこの人……」
魔法使い「犬の怪我と僧侶の病状を見て。……あなたの解剖からする?」
神官「ヤメテ?!」
24 : ◆J9pjHtW.ylNB :2013/12/26(木) 20:01:10.04 ID:zDQpLJAAO
再開。
神官「僧侶さんの呪い、前に見た時より落ち着いているような。術者は死んでいるので回復傾向になれば問題は無いでしょう」
神官「犬の方は傷は大きいですが内蔵にダメージは無さそうです」
「しかし、なんと戦ったのやら。傷の上から焼かれて出血が止まったのは、この場合は良かったようです」
神官「一応、回復魔法でしっかりふさいでおきました。こちらももう安心でしょう。」
女剣士「助かります。無茶をして申し訳ない」
魔法使い「しばらくはここで療養。」
女剣士「仕方ないな。この町は大きいし、ギルドの仕事をすれば宿代くらいは稼げるだろう」
ーー半年後ーー
僧侶「犬ちゃーん!あははっ」
犬「はっはっはっはっ」
魔法使い「犬うぜえ。」
女剣士「えっ!?……しかし元気になったなあ」
魔法使い「実験体ども、いきがいい。」
女剣士「いき!?」
女剣士「まあ無事回復したし、そろそろ行こうか」
魔法使い「……。」
女剣士「ん?」
魔法使い「勇者のいないパーティー……。」
魔法使い「魔王に勝てる可能性は、皆無。」
女剣士「……そうかも知れない」
魔法使い「……」
女剣士「じゃあさ、実験しよう!」
女剣士「ど……どうかな?」
魔法使い「……いいね。……実験は、好き。」
25 : ◆J9pjHtW.ylNB :2013/12/26(木) 20:04:03.24 ID:zDQpLJAAO
やがて、旅立ちの日から季節が一巡りし、春の月になった。
最後の町にたどり着いた一行
僧侶「ついたー!」
女剣士「お疲れ様、僧侶」
魔法使い「ここを抜けたらもう魔王を倒すだけ。心残りがあるなら、今のうち。」
僧侶「ん、えっとね」
女剣士「なんでも言って。僧侶の言うことならなんでも聞いてあげる」
僧侶「もうすぐゆうしゃさまの命日だから、最初の村に帰ってお墓の掃除してあげたいの」
魔法使い「いいよ。帰還魔法。」
女剣士「えっ、ちょっ、まっ、うわっ!」
シュン
ーー勇者の村ーー
女剣士「ちょっと相談してから飛べよ!」
魔法使い「なんでも聞いてあげるって言った。」
女剣士「言ったさ、言ったけども!」
僧侶「あははっ!ありがとうお姉ちゃんたち!」
魔法使い「(もう帰れなくなるかも知れないのよ。私達の都合で。)」
女剣士「(……分かってるよ)」
僧侶「?お姉ちゃん?はやくいこー!」
僧侶「……村、あのころのまま……」
女剣士「……盗人くらいしか来てないんじゃないか?勇者を匿うための村だから仕方ないのかも知れないが……」
僧侶「勇者様のお墓を掃除したら、荷物を整理してきます」