百物語2015
Part16
296 :わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ :2015/08/30(日) 04:42:05.08 ID:AgCPeYID0
【88話】こげ ◆b9EIe80Jrg.5 様
『無題』
私はサバイバルゲームのチームに所属しています。
サバイバルゲーム中、変なモノを見てしまうことが良くあります。
昼間も見ますが…数はやっぱり夜の方が圧倒的です。
管理されていない雑草や樹木が伸び放題の公園で春先に夜戦をやったとき、
元は芝生だったと思われる草むらを挟んで決戦の場となったところを、ふらふらと歩く人影が横切っていきました。
人がいると分かった時点で即座にゲームを中断して、その人影の動向を見守っていたのですが…
背を弓のように反らせてケタケタと笑い始めたんです。
もう、狂ったように大声をあげて…もしかしたら気の毒な人かもしれないと、
チームリーダーが立ち上がって草むらに一歩踏み入れた途端、
その場へ仰向けで倒れこむようにして…
そして、消えてしまいました。
BB弾がヒットして安全地帯で待機している人以外が見守っている中で…
夏の夜に同じ公園でのことです。
ゲームを始めてから30分足らずで雷雨になってしまい、
駐車場前の東屋に避難して雨が止むのを待っていました。
叩きつけてくるような雨に、雷鳴と雷光がひっきりなしで…
そこでメンバーの1人が雨の中、誰かいるぞと、元は芝生だったと思われる草むらを指をさしました。
私には全然、見えません。
誰かが警察や軍の特殊部隊が使っている強力な懐中電灯で草むらを照らしてみましたが見つかりません。
雷が光った時だけ見えると、指をさした人は言いました。
十数秒後、目に焼き付き現象が起こるほどの眩い白光で周囲が塗りつぶされ、
草むらの中ほどで、ネガとポジが反転したような真っ黒い人が立っているのが本当に見えました。
全部で9人いましす。
さっきはもっと遠くにいたと、最初に見た人が雷鳴に声がかき消されない為か、大声で叫びます。
それからまた、辺りが白く染まるほどの雷光…
草むらを四分の三ほど進んだところに黒い9人がいます。
確かに、稲光を放つ度に近づいてきています。
297 :わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ :2015/08/30(日) 04:43:14.64 ID:AgCPeYID0
次でたぶん、私達がいる東屋へかなり近づいてきている筈です。
そして、雷光が周囲を覆い尽くして、草むらの端にずぶ濡れで立つ9人の女性を浮かび上がらせました。
この世のものとは思えない程の酷い表情をしてます。
彼女等が草むらの端まで到達した姿を浮かび上がらせた後、
雷雨はぴたりと止みました。
彼岸を過ぎた秋の夜、河川敷でゲームを行っていたときのことです。
川辺に近い枯れ草の後ろでVSRー10を構えてアンブッシュしている時、
子供のはしゃぎ声を聞いた気がしました。
気のせいだと思うことにして30mmチューブのスコープへ目を戻します。
すると、また声が…1人とかじゃなくて複数で…楽しく遊んでいるような声…確かに聞きました。
私の背後から…
射撃体勢を一時中断して振り返ってみました。
おかしなところは別に…いえ、なんだか後の方の川面が明るくなって…枯れた水草もほんのり明るく…
それを見た途端に悪寒が…ゾクゾクと背筋が…
思わずライフルを抱いて場所移動を行おうとしたところでチームリーダーが突然、現れ…
今夜はこれでゲームは中止だと宣言しました。
あれが出たからだと川面を指さします。
明かりが川を下ってきます。
まるで月が水面に映っているみたいに…
そこでまた、子供達のはしゃく声が聞こえてきました。
今度はかなり大きくはっきりと…
丸い明かりが私とリーダーの目の前を通り過ぎていきます。
黄色く光る輪の中で小さな髑髏が幾つも浮き沈みを繰り返してました。
溺れて助けを求めているみたいに見えます。
はしゃぎ声じゃなくて、悲鳴でした。
遥か昔に川で死んだ子供が子供を呼び…同じように溺死させる…それがまた、子供を呼んで溺死させる…
連綿と続く死の鎖がアレなのだと…
アレを見てもゲームを続けると、お持ち帰りの確率が高くなるんだとか
298 :わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ :2015/08/30(日) 04:44:19.66 ID:AgCPeYID0
廃校となった小学校で凍えるような寒い冬の晩にゲームをしたとき、
何故かゲーム開始早々に激しい射撃音が聞こえてきました。
2チームに分かれて旗の取り合いをする…俗に言うフラッグ戦なので…
私達の方はスタート地点からほとんど動いていないというのに…
相手が何か策を弄しているのかも…でも、自分達がいる場所を教えているようなものだし…
何人かが突出し、釣られてホイホイ寄ってきた私達を待ち伏せする作戦でしょうか?
でも、射撃音なんですが…あちらの全員で行っているみたいで…
只事じゃないと、それで全員で向かったんです。
一応、警戒はしながら…
相手チームは全員、スタート地点の部屋から一歩も出ずに…
運動場に面した窓に向かって狂ったように射撃してました。
話しかけられる雰囲気じゃありませんでした。
結局、彼等は弾切れになっても引金から指を離さず撃ち続けてて…
私達のチームのリーダーが大きな拍手を打ったんです。
それで、相手チームの人達は我に返り…
窓の外に、鈴なりとなった子供がいて、部屋の中を覗き込んでたそうです。
というか、窓を抜けて中へ侵入しようとしていたみたいだったと…
あるチームのお話なのですが、河川敷で夜戦をしていた時…
最終ゲームを終えたらメンバーの一人がフィールド中央にある木へパラコードを巻き付け…
首を吊って亡くなられていたそうです。
昔からその木でかなりの数の方が自殺されているそうで、首吊りの木と呼ばれているのだとか…
ゲーム中にいつ、その方がいなくなったか覚えている人は誰もいなかったそうです。
私は心霊スポット探検を趣味としていまして、その話を知って見に行ってみたいと言ったら…
その木を見に行く為にはサバイバルゲームフィールドの中にあるのだから、
サバイバルゲームをやらない人間には絶対に見せてやらないという掟があるという、
考えてみればすぐ分かる嘘に引っ掛かってサバイバルゲームを始めました。
(了)
300 :猫虫 ◆5G/PPtnDVU :2015/08/30(日) 04:48:01.58 ID:slHZZ5U50
【鏡の向こう】
これは高校時代に俺が体験した話だ。
俺の通っていた学校には、1階と2階をつなぐ階段の踊り場に巨大な鏡が設置されていた。
端っこに『昭和○○年度卒業生寄贈』みたいな事が書かれている物だ。
中央昇降口の手前なので、その鏡で身づくろいをしてから下校する生徒が多かった。
かく言う俺も日々利用していたのだが、まさかあんな目に遭うとは思ってもみなかった。
その日、俺は文化祭の仕事で遅くなった上、「雨ひどくなりそうだし、後は俺がやっとくから帰っていいよ」なんてかっこつけたもんだから、帰る頃には辺りはもう真っ暗になっていた。
荷物をまとめて階段を下り、いつものように鏡の前で髪を整えていた時の事。
突然、轟音と共に昇降口の方から青白い光が放たれた。
落雷だ、と思った瞬間、頼りなげに踊り場を照らしていた蛍光灯の明かりが消え、辺りは一瞬で暗闇に包まれた。
突然の停電で暗闇に目がついていけず、夜目がきくようになるまでの間、右も左も上も下も分からないような真の『真っ暗』を体験した。
目が見えない時は不安になるもので、とにかく何か固定されたものに触れたくなり、俺は鏡に手をついた。
その瞬間、急にめまいを覚えた。
あ、なんかやばい、と思って咄嗟にしゃがみこんだのだが、まるでそのまま前転するかのようなめまいの感覚に、俺は吐きそうになった。
両手と頭を鏡に押しつけてしばらく吐き気をこらえていると、急にチカチカッと蛍光灯が瞬いて明かりが戻った。
安堵したのと同時にめまいも治まり、吐き気も急激に退いていった。
301 :猫虫 ◆5G/PPtnDVU :2015/08/30(日) 04:48:52.63 ID:rrgQ+nhr0
昇降口を振り返ると、外ではまだ雷が激しく光っており、俺は帰るべきか留まるべきか迷った。
とりあえず親に電話して、あわよくば迎えに来てもらえないかと考え、俺は公衆電話のある職員用の玄関へ向かう事にした。
が、鏡に背を向けて階段を降りようとした瞬間、妙な違和感を覚えた。
(あれ…下りの階段って、こっち側だったっけ…?)
上の階から降りてくる時、自分の感覚としては半時計回りに螺旋を描くように降りてくるはずだった。
だが階段を見ると、下りは時計回りだ。
奇妙な感覚のズレ。
だが目の前の階段が紛れもなく時計回りなのだから、違和感は気のせいなのだろう。
俺は深く考えない事に決め、階段を降りようと手すりに手を伸ばした…のだが。
俺は何故か利き手ではない左手で無意識に手すりを掴んだ。
(え、なんで左手?)
慌てて手すりから手を離し、自分の左手をまじまじと見つめる。
その時、いつも嵌めているはずの腕時計がない事に気が付いた。
(あっ、やべ!時計なくした!)
思わず右手で左手首を掴んだ、その時。
明らかな異変がそこにあった。
時計が、右手の手首に付いている。
混乱する頭が、さらに混乱を招くものに気付く。
文字盤のデジタル表示が、反対向きの鏡文字になっているではないか!
302 :猫虫 ◆5G/PPtnDVU :2015/08/30(日) 04:49:47.42 ID:rrgQ+nhr0
ありえない、と思いながら鏡を振り返ると、左手首に時計を付けた自分と目が合った。
鏡に駆け寄り、バンッと音を立てて両手を叩きつけると、鏡の向こうの自分も全く同じ動きを返した。
ガラス一枚隔てて、正しいはずの俺の姿と真反対になった俺の姿が向かい合う。
「何だよ、これ…戻れ、戻れ戻れ戻れ戻れ、戻ってくれって!!!」
鏡面に頭をこすりつけるようにしながら、俺は叫んだ。
「んぁー?そこにいんの、Iかぁー?」
突如、能天気な声が背後から掛けられ、俺は慌てて振り返った。
階段の下から、去年担任だった先生が訝しげにこちらを見上げていた。
「お前、何やってんだ?もう校舎閉めるぞー?」
「あああ、先生!あの、俺、その、ちょっともうなんかアレなんスよおぉー!」と、俺は意味不明な事を喚きながら半泣きで先生のもとへと駆け下りた。
「おうおう、どーした、何だ、なんかあったか?フラれたか?」
先生は勢い余ってぶつかってきた俺を受け止めると、幼児にするように背中をぽんぽんと叩いた。
混乱と安堵と訳の分からない苛立ちがごちゃまぜになり、俺はただ号泣するしかなかった。
泣きじゃくる俺を職員室の応接スペースに連れていくと、先生は校舎を閉めるために校内の見回りへと出かけた。
ひっくひっくとしゃくりあげながらも、俺の頭は少しずつ冷静さを取り戻していった。
先生は後で話を聞いてやると言ってくれたが、こんな事を話しても気がふれたとしか思われないだろう。
鏡の世界にいる事など証明のしようもないし、もしかしたら本当に俺の頭がおかしいのかもしれないと自分で思い始めてもいた。
303 :猫虫 ◆5G/PPtnDVU :2015/08/30(日) 04:51:22.53 ID:rrgQ+nhr0
全部気のせいなんじゃないかと辺りを見回すが、壁に貼られたプリントもマグカップの英文も全て違和感だらけの鏡文字。
だが、何故か視線は自然に文頭から文末へと動き、普通に内容は読めた。
その上、ノートとペンを出して試しに自分でも字を書いてみると、利き手ではない左手でスラスラと自然に鏡文字が書けた。
逆に、もともとの正しい文字を書こうとすると、脳内で形や向きをひとつひとつ意識しないと書けず、書き上がった文字を見ると「この字ほんとにこれで合ってるのか?」とゲシュタルト崩壊に近い感覚を覚えた。
左右の手で書き比べたりもしたのだが、今の利き手はどうやら左手のようだった。
見回りから戻ってきた先生はノートにひらがなを必死で並べている俺の姿を憐みの目で見つめると、左ハンドルの日本車で自宅まで送ってくれた。
泣いた理由を車内で尋ねられたが、今は話したくないですと言うと「まぁ若い頃にはいろいろあるもんだしな」と言って話を終わらせてくれた。
それからしばらくの間、俺は左右反対の世界で過ごした。
初めのうちは違和感に苛まれ続けたし、なんとか戻れないかと試行錯誤していたのだが、恐ろしい事にだんだんとこちらの方が正しい世界なんじゃないかと思い始めた。
厳密に言えば、俺がおかしくなっただけで世界は何も変わってはいないんじゃないかという感覚だ。
左右反対に道を辿って学校へ行き、左手を使って鏡文字でノートを取る。
そんな生活に慣れ始めたあたりで、「いやいや、やっぱヤバイだろ」と思い直した。
304 :猫虫 ◆5G/PPtnDVU :2015/08/30(日) 05:01:40.49 ID:slHZZ5U50
再び試行錯誤の日々が始まった。
例の鏡と暗闇で向かい合って何かする、といったオーソドックスな事は初期の頃すでに試していたので、今度は別の方法を考える事にした。
街中で鏡を見かけたら、ひとまず触れてみるのが俺の癖になった。
理由を知らない友達から嘲笑の目を向けられる事も度々だったが、俺は必死だった。
鏡に映る自分を見て「ああ、向こうの俺も戻ろうと必死だな…」とか妙な事を思ったり、「ここにいる俺と鏡に映る俺は今同じ事を考えているのだろうか」などと哲学的な事を考えたりもした。
なんだか本当に頭がおかしくなりそうな日々だった。
そんなある日、俺は風呂の中であれこれ考え事をしているうちにうっかり眠ってしまった。
鼻から水を吸い込んで盛大にむせながら目を覚ますと、頭痛と吐き気に襲われた。
長風呂のせいでのぼせてしまったのだ。
とにかく体を冷まそうと冷水のシャワーを浴び始めたのだが、立ちくらみが襲ってきて立っていられなくなった。
倒れる!と思って咄嗟に手をついた先は、運悪く鏡だった。
ビシメキバリッと嫌な音がして、左手の手のひらに激痛が走る。
続いてガチャンパリーンと床でガラスが砕け散る音が続いた。
あ、割っちまった…と焦ったが、今は立ちくらみの方が問題だ。
ずるずる座り込むと壁にもたれてぎゅっと目を瞑り、立ちくらみが治まるのを待った。
305 :猫虫 ◆5G/PPtnDVU :2015/08/30(日) 05:03:09.37 ID:rrgQ+nhr0
そうこうしているうちに浴室のドアが乱暴に開けられ、「あんた何やってんの!今なんか割ったでしょ!」と母親が押し入ってきた。
年頃の息子の風呂場に入ってくんな!と言いたくて、声のする方へ顔を向けた瞬間、あれっと思った。
さっきまで左側にあったドアが、右側になっている。
手を見ると、血まみれになっているのは右手。
「やだ、怪我したの?ちょっとほら、見せて!」と乱暴に俺の手を掴んだ母親が、俺の手のひらに刺さったままのガラス片を、母親の本来の正しい利き手である右手でつまみ取っていく。
それを見た瞬間、俺は「かあちゃーん!」と情けない雄叫びを上げて泣き崩れた。
なんだかよく分からないが、とにかく戻ってこれたのだ。
帰還の代償として、俺は右手を4針と右ヒザを2針縫った上、浴室の鏡の交換費用を小遣いから天引きされる羽目になった。
いろんな意味で痛い代償だったが、違和感のない生活を取り戻せた事は素直に嬉しかった。
結局、体調が悪い状態で鏡に触れたのが良かったのか、はたまた割った事が良かったのか、あるいは何か別の条件が揃っていたのか、戻れた理由は分からない。
向こうに行ってしまった理由もまた然りだ。
以来、俺は鏡には不用意に手をつかないよう気を付けている。
【了】
307 :わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ :2015/08/30(日) 05:05:22.61 ID:AgCPeYID0
『汽笛の音』
これは私が父親から聞いた話です。
父親は幽霊などは信じないオカルト否定派の人間なのですが、昔体験した今でも不思議でならない話がひとつあり、怪談の話などになるとそれをよく話してくれます。
それは大阪に住んでいる父親が子供の頃に、踏み切り待ちをしていた頃の話だったそうです。
カンカンカンと鳴り響いていた遮断機の音が止み、ボォ〜と低くよく響くような音が聞こえたそうです。
不思議に思い周りを見回してみても、そのような音を出すものは見えない。
近くなってくるその音を聞いていた父は、一つだけこの音の正体に思い至ったものがあったそうです。
そう、蒸気機関車が発する汽笛の音にそっくりだったのです。
父親が子供の頃と言えば昭和40年代、その頃に大阪で蒸気機関車が走っていたと言う話は聞きません。
そして、音が近づくにつれて踏み切りの周りでざわざわと人の話し声のようなものが聞こえ始めたようです。
この時点で相当ビビッていたらしいのですが、更に不思議なことが起こったそうです。
父の視界の端に、ごった返す人ごみが見えたと言うのだ。
しかしそちらに視界を向けても、辺りに人の姿は全く見えない。
ざわざわと雑然とした話し声だけは耳に聞こえており、それに追加して何か喧嘩するような怒鳴り声も聞こえてきたそうです。
そうこうしているうちにも汽笛の音はどんどんと近づいてくる。
踏み切りは開いており、線路を渡っていくのには問題がない。
しかし、気味が悪いその状況で踏み切りを渡る気にはならなかったそうです。
急いで音の鳴っている方向から逃げ出し、それ以上のことは何もなかったとのこと。
結局あれは何だったんだろうなぁ、と今でもたまに語ってくれます。
それでもやはり幽霊などは信じていないそうですが……。
了
【88話】こげ ◆b9EIe80Jrg.5 様
『無題』
私はサバイバルゲームのチームに所属しています。
サバイバルゲーム中、変なモノを見てしまうことが良くあります。
昼間も見ますが…数はやっぱり夜の方が圧倒的です。
管理されていない雑草や樹木が伸び放題の公園で春先に夜戦をやったとき、
元は芝生だったと思われる草むらを挟んで決戦の場となったところを、ふらふらと歩く人影が横切っていきました。
人がいると分かった時点で即座にゲームを中断して、その人影の動向を見守っていたのですが…
背を弓のように反らせてケタケタと笑い始めたんです。
もう、狂ったように大声をあげて…もしかしたら気の毒な人かもしれないと、
チームリーダーが立ち上がって草むらに一歩踏み入れた途端、
その場へ仰向けで倒れこむようにして…
そして、消えてしまいました。
BB弾がヒットして安全地帯で待機している人以外が見守っている中で…
夏の夜に同じ公園でのことです。
ゲームを始めてから30分足らずで雷雨になってしまい、
駐車場前の東屋に避難して雨が止むのを待っていました。
叩きつけてくるような雨に、雷鳴と雷光がひっきりなしで…
そこでメンバーの1人が雨の中、誰かいるぞと、元は芝生だったと思われる草むらを指をさしました。
私には全然、見えません。
誰かが警察や軍の特殊部隊が使っている強力な懐中電灯で草むらを照らしてみましたが見つかりません。
雷が光った時だけ見えると、指をさした人は言いました。
十数秒後、目に焼き付き現象が起こるほどの眩い白光で周囲が塗りつぶされ、
草むらの中ほどで、ネガとポジが反転したような真っ黒い人が立っているのが本当に見えました。
全部で9人いましす。
さっきはもっと遠くにいたと、最初に見た人が雷鳴に声がかき消されない為か、大声で叫びます。
それからまた、辺りが白く染まるほどの雷光…
草むらを四分の三ほど進んだところに黒い9人がいます。
確かに、稲光を放つ度に近づいてきています。
297 :わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ :2015/08/30(日) 04:43:14.64 ID:AgCPeYID0
次でたぶん、私達がいる東屋へかなり近づいてきている筈です。
そして、雷光が周囲を覆い尽くして、草むらの端にずぶ濡れで立つ9人の女性を浮かび上がらせました。
この世のものとは思えない程の酷い表情をしてます。
彼女等が草むらの端まで到達した姿を浮かび上がらせた後、
雷雨はぴたりと止みました。
彼岸を過ぎた秋の夜、河川敷でゲームを行っていたときのことです。
川辺に近い枯れ草の後ろでVSRー10を構えてアンブッシュしている時、
子供のはしゃぎ声を聞いた気がしました。
気のせいだと思うことにして30mmチューブのスコープへ目を戻します。
すると、また声が…1人とかじゃなくて複数で…楽しく遊んでいるような声…確かに聞きました。
私の背後から…
射撃体勢を一時中断して振り返ってみました。
おかしなところは別に…いえ、なんだか後の方の川面が明るくなって…枯れた水草もほんのり明るく…
それを見た途端に悪寒が…ゾクゾクと背筋が…
思わずライフルを抱いて場所移動を行おうとしたところでチームリーダーが突然、現れ…
今夜はこれでゲームは中止だと宣言しました。
あれが出たからだと川面を指さします。
明かりが川を下ってきます。
まるで月が水面に映っているみたいに…
そこでまた、子供達のはしゃく声が聞こえてきました。
今度はかなり大きくはっきりと…
丸い明かりが私とリーダーの目の前を通り過ぎていきます。
黄色く光る輪の中で小さな髑髏が幾つも浮き沈みを繰り返してました。
溺れて助けを求めているみたいに見えます。
はしゃぎ声じゃなくて、悲鳴でした。
遥か昔に川で死んだ子供が子供を呼び…同じように溺死させる…それがまた、子供を呼んで溺死させる…
連綿と続く死の鎖がアレなのだと…
アレを見てもゲームを続けると、お持ち帰りの確率が高くなるんだとか
298 :わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ :2015/08/30(日) 04:44:19.66 ID:AgCPeYID0
廃校となった小学校で凍えるような寒い冬の晩にゲームをしたとき、
何故かゲーム開始早々に激しい射撃音が聞こえてきました。
2チームに分かれて旗の取り合いをする…俗に言うフラッグ戦なので…
私達の方はスタート地点からほとんど動いていないというのに…
相手が何か策を弄しているのかも…でも、自分達がいる場所を教えているようなものだし…
何人かが突出し、釣られてホイホイ寄ってきた私達を待ち伏せする作戦でしょうか?
でも、射撃音なんですが…あちらの全員で行っているみたいで…
只事じゃないと、それで全員で向かったんです。
一応、警戒はしながら…
相手チームは全員、スタート地点の部屋から一歩も出ずに…
運動場に面した窓に向かって狂ったように射撃してました。
話しかけられる雰囲気じゃありませんでした。
結局、彼等は弾切れになっても引金から指を離さず撃ち続けてて…
私達のチームのリーダーが大きな拍手を打ったんです。
それで、相手チームの人達は我に返り…
窓の外に、鈴なりとなった子供がいて、部屋の中を覗き込んでたそうです。
というか、窓を抜けて中へ侵入しようとしていたみたいだったと…
あるチームのお話なのですが、河川敷で夜戦をしていた時…
最終ゲームを終えたらメンバーの一人がフィールド中央にある木へパラコードを巻き付け…
首を吊って亡くなられていたそうです。
昔からその木でかなりの数の方が自殺されているそうで、首吊りの木と呼ばれているのだとか…
ゲーム中にいつ、その方がいなくなったか覚えている人は誰もいなかったそうです。
私は心霊スポット探検を趣味としていまして、その話を知って見に行ってみたいと言ったら…
その木を見に行く為にはサバイバルゲームフィールドの中にあるのだから、
サバイバルゲームをやらない人間には絶対に見せてやらないという掟があるという、
考えてみればすぐ分かる嘘に引っ掛かってサバイバルゲームを始めました。
(了)
300 :猫虫 ◆5G/PPtnDVU :2015/08/30(日) 04:48:01.58 ID:slHZZ5U50
【鏡の向こう】
これは高校時代に俺が体験した話だ。
俺の通っていた学校には、1階と2階をつなぐ階段の踊り場に巨大な鏡が設置されていた。
端っこに『昭和○○年度卒業生寄贈』みたいな事が書かれている物だ。
中央昇降口の手前なので、その鏡で身づくろいをしてから下校する生徒が多かった。
かく言う俺も日々利用していたのだが、まさかあんな目に遭うとは思ってもみなかった。
その日、俺は文化祭の仕事で遅くなった上、「雨ひどくなりそうだし、後は俺がやっとくから帰っていいよ」なんてかっこつけたもんだから、帰る頃には辺りはもう真っ暗になっていた。
荷物をまとめて階段を下り、いつものように鏡の前で髪を整えていた時の事。
突然、轟音と共に昇降口の方から青白い光が放たれた。
落雷だ、と思った瞬間、頼りなげに踊り場を照らしていた蛍光灯の明かりが消え、辺りは一瞬で暗闇に包まれた。
突然の停電で暗闇に目がついていけず、夜目がきくようになるまでの間、右も左も上も下も分からないような真の『真っ暗』を体験した。
目が見えない時は不安になるもので、とにかく何か固定されたものに触れたくなり、俺は鏡に手をついた。
その瞬間、急にめまいを覚えた。
あ、なんかやばい、と思って咄嗟にしゃがみこんだのだが、まるでそのまま前転するかのようなめまいの感覚に、俺は吐きそうになった。
両手と頭を鏡に押しつけてしばらく吐き気をこらえていると、急にチカチカッと蛍光灯が瞬いて明かりが戻った。
安堵したのと同時にめまいも治まり、吐き気も急激に退いていった。
301 :猫虫 ◆5G/PPtnDVU :2015/08/30(日) 04:48:52.63 ID:rrgQ+nhr0
昇降口を振り返ると、外ではまだ雷が激しく光っており、俺は帰るべきか留まるべきか迷った。
とりあえず親に電話して、あわよくば迎えに来てもらえないかと考え、俺は公衆電話のある職員用の玄関へ向かう事にした。
が、鏡に背を向けて階段を降りようとした瞬間、妙な違和感を覚えた。
(あれ…下りの階段って、こっち側だったっけ…?)
上の階から降りてくる時、自分の感覚としては半時計回りに螺旋を描くように降りてくるはずだった。
だが階段を見ると、下りは時計回りだ。
奇妙な感覚のズレ。
だが目の前の階段が紛れもなく時計回りなのだから、違和感は気のせいなのだろう。
俺は深く考えない事に決め、階段を降りようと手すりに手を伸ばした…のだが。
俺は何故か利き手ではない左手で無意識に手すりを掴んだ。
(え、なんで左手?)
慌てて手すりから手を離し、自分の左手をまじまじと見つめる。
その時、いつも嵌めているはずの腕時計がない事に気が付いた。
(あっ、やべ!時計なくした!)
思わず右手で左手首を掴んだ、その時。
明らかな異変がそこにあった。
時計が、右手の手首に付いている。
混乱する頭が、さらに混乱を招くものに気付く。
文字盤のデジタル表示が、反対向きの鏡文字になっているではないか!
ありえない、と思いながら鏡を振り返ると、左手首に時計を付けた自分と目が合った。
鏡に駆け寄り、バンッと音を立てて両手を叩きつけると、鏡の向こうの自分も全く同じ動きを返した。
ガラス一枚隔てて、正しいはずの俺の姿と真反対になった俺の姿が向かい合う。
「何だよ、これ…戻れ、戻れ戻れ戻れ戻れ、戻ってくれって!!!」
鏡面に頭をこすりつけるようにしながら、俺は叫んだ。
「んぁー?そこにいんの、Iかぁー?」
突如、能天気な声が背後から掛けられ、俺は慌てて振り返った。
階段の下から、去年担任だった先生が訝しげにこちらを見上げていた。
「お前、何やってんだ?もう校舎閉めるぞー?」
「あああ、先生!あの、俺、その、ちょっともうなんかアレなんスよおぉー!」と、俺は意味不明な事を喚きながら半泣きで先生のもとへと駆け下りた。
「おうおう、どーした、何だ、なんかあったか?フラれたか?」
先生は勢い余ってぶつかってきた俺を受け止めると、幼児にするように背中をぽんぽんと叩いた。
混乱と安堵と訳の分からない苛立ちがごちゃまぜになり、俺はただ号泣するしかなかった。
泣きじゃくる俺を職員室の応接スペースに連れていくと、先生は校舎を閉めるために校内の見回りへと出かけた。
ひっくひっくとしゃくりあげながらも、俺の頭は少しずつ冷静さを取り戻していった。
先生は後で話を聞いてやると言ってくれたが、こんな事を話しても気がふれたとしか思われないだろう。
鏡の世界にいる事など証明のしようもないし、もしかしたら本当に俺の頭がおかしいのかもしれないと自分で思い始めてもいた。
303 :猫虫 ◆5G/PPtnDVU :2015/08/30(日) 04:51:22.53 ID:rrgQ+nhr0
全部気のせいなんじゃないかと辺りを見回すが、壁に貼られたプリントもマグカップの英文も全て違和感だらけの鏡文字。
だが、何故か視線は自然に文頭から文末へと動き、普通に内容は読めた。
その上、ノートとペンを出して試しに自分でも字を書いてみると、利き手ではない左手でスラスラと自然に鏡文字が書けた。
逆に、もともとの正しい文字を書こうとすると、脳内で形や向きをひとつひとつ意識しないと書けず、書き上がった文字を見ると「この字ほんとにこれで合ってるのか?」とゲシュタルト崩壊に近い感覚を覚えた。
左右の手で書き比べたりもしたのだが、今の利き手はどうやら左手のようだった。
見回りから戻ってきた先生はノートにひらがなを必死で並べている俺の姿を憐みの目で見つめると、左ハンドルの日本車で自宅まで送ってくれた。
泣いた理由を車内で尋ねられたが、今は話したくないですと言うと「まぁ若い頃にはいろいろあるもんだしな」と言って話を終わらせてくれた。
それからしばらくの間、俺は左右反対の世界で過ごした。
初めのうちは違和感に苛まれ続けたし、なんとか戻れないかと試行錯誤していたのだが、恐ろしい事にだんだんとこちらの方が正しい世界なんじゃないかと思い始めた。
厳密に言えば、俺がおかしくなっただけで世界は何も変わってはいないんじゃないかという感覚だ。
左右反対に道を辿って学校へ行き、左手を使って鏡文字でノートを取る。
そんな生活に慣れ始めたあたりで、「いやいや、やっぱヤバイだろ」と思い直した。
304 :猫虫 ◆5G/PPtnDVU :2015/08/30(日) 05:01:40.49 ID:slHZZ5U50
再び試行錯誤の日々が始まった。
例の鏡と暗闇で向かい合って何かする、といったオーソドックスな事は初期の頃すでに試していたので、今度は別の方法を考える事にした。
街中で鏡を見かけたら、ひとまず触れてみるのが俺の癖になった。
理由を知らない友達から嘲笑の目を向けられる事も度々だったが、俺は必死だった。
鏡に映る自分を見て「ああ、向こうの俺も戻ろうと必死だな…」とか妙な事を思ったり、「ここにいる俺と鏡に映る俺は今同じ事を考えているのだろうか」などと哲学的な事を考えたりもした。
なんだか本当に頭がおかしくなりそうな日々だった。
そんなある日、俺は風呂の中であれこれ考え事をしているうちにうっかり眠ってしまった。
鼻から水を吸い込んで盛大にむせながら目を覚ますと、頭痛と吐き気に襲われた。
長風呂のせいでのぼせてしまったのだ。
とにかく体を冷まそうと冷水のシャワーを浴び始めたのだが、立ちくらみが襲ってきて立っていられなくなった。
倒れる!と思って咄嗟に手をついた先は、運悪く鏡だった。
ビシメキバリッと嫌な音がして、左手の手のひらに激痛が走る。
続いてガチャンパリーンと床でガラスが砕け散る音が続いた。
あ、割っちまった…と焦ったが、今は立ちくらみの方が問題だ。
ずるずる座り込むと壁にもたれてぎゅっと目を瞑り、立ちくらみが治まるのを待った。
305 :猫虫 ◆5G/PPtnDVU :2015/08/30(日) 05:03:09.37 ID:rrgQ+nhr0
そうこうしているうちに浴室のドアが乱暴に開けられ、「あんた何やってんの!今なんか割ったでしょ!」と母親が押し入ってきた。
年頃の息子の風呂場に入ってくんな!と言いたくて、声のする方へ顔を向けた瞬間、あれっと思った。
さっきまで左側にあったドアが、右側になっている。
手を見ると、血まみれになっているのは右手。
「やだ、怪我したの?ちょっとほら、見せて!」と乱暴に俺の手を掴んだ母親が、俺の手のひらに刺さったままのガラス片を、母親の本来の正しい利き手である右手でつまみ取っていく。
それを見た瞬間、俺は「かあちゃーん!」と情けない雄叫びを上げて泣き崩れた。
なんだかよく分からないが、とにかく戻ってこれたのだ。
帰還の代償として、俺は右手を4針と右ヒザを2針縫った上、浴室の鏡の交換費用を小遣いから天引きされる羽目になった。
いろんな意味で痛い代償だったが、違和感のない生活を取り戻せた事は素直に嬉しかった。
結局、体調が悪い状態で鏡に触れたのが良かったのか、はたまた割った事が良かったのか、あるいは何か別の条件が揃っていたのか、戻れた理由は分からない。
向こうに行ってしまった理由もまた然りだ。
以来、俺は鏡には不用意に手をつかないよう気を付けている。
【了】
307 :わらび餅(代理投稿) ◆jlKPI7rooQ :2015/08/30(日) 05:05:22.61 ID:AgCPeYID0
『汽笛の音』
これは私が父親から聞いた話です。
父親は幽霊などは信じないオカルト否定派の人間なのですが、昔体験した今でも不思議でならない話がひとつあり、怪談の話などになるとそれをよく話してくれます。
それは大阪に住んでいる父親が子供の頃に、踏み切り待ちをしていた頃の話だったそうです。
カンカンカンと鳴り響いていた遮断機の音が止み、ボォ〜と低くよく響くような音が聞こえたそうです。
不思議に思い周りを見回してみても、そのような音を出すものは見えない。
近くなってくるその音を聞いていた父は、一つだけこの音の正体に思い至ったものがあったそうです。
そう、蒸気機関車が発する汽笛の音にそっくりだったのです。
父親が子供の頃と言えば昭和40年代、その頃に大阪で蒸気機関車が走っていたと言う話は聞きません。
そして、音が近づくにつれて踏み切りの周りでざわざわと人の話し声のようなものが聞こえ始めたようです。
この時点で相当ビビッていたらしいのですが、更に不思議なことが起こったそうです。
父の視界の端に、ごった返す人ごみが見えたと言うのだ。
しかしそちらに視界を向けても、辺りに人の姿は全く見えない。
ざわざわと雑然とした話し声だけは耳に聞こえており、それに追加して何か喧嘩するような怒鳴り声も聞こえてきたそうです。
そうこうしているうちにも汽笛の音はどんどんと近づいてくる。
踏み切りは開いており、線路を渡っていくのには問題がない。
しかし、気味が悪いその状況で踏み切りを渡る気にはならなかったそうです。
急いで音の鳴っている方向から逃げ出し、それ以上のことは何もなかったとのこと。
結局あれは何だったんだろうなぁ、と今でもたまに語ってくれます。
それでもやはり幽霊などは信じていないそうですが……。
了
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