百物語2013
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169 :代理投稿 ◆YJf7AjT32aOX :2013/08/24(土) 02:43:44.78 ID:hqzLBEKk0
【第四十九話】たまお様「モンキーダイブ」
(1/2)
僕が小学生のときの話。 近所に坂があった。
坂を10メートルほど上ると橋が架かっていて、橋を渡ると隣町だった。
橋とガードレールの隙間から斜面に降りると、すぐ地上に出ることができた。
逆に斜面から橋の袂へよじ登ることもできた。
その斜面は、 体が小さい子どもならではの近道だったのだ。
ある日、友達とその斜面に行くと、日本猿の死骸が捨ててあった。まるで通せんボをするように仰向けに倒れていた。
まだ夏だったので腐敗が早く、すでに胸からは蛆が涌き肋骨が見えていた。
やがて死骸は完全に白骨となり、3ヵ 月ぐらいで その骨も風化して自然に消えていった。
あの斜面に入ると猿の呪いがかかる。子供たちの間でそんな噂が広がった。
子供たちにとって斜面は、近道から穢れ地になってしまったのだ。
しばらくして、友達の葉山君があの斜面に行こうと僕を誘った。葉山君は活発で気の強い子供だった。
斜面まで来ると、「呪いなんかあるか、見とけよ」葉山君はそう言うと、立ち小便をはじめた。
かつて猿の死骸があった位置から、アンモニア臭のする湯気が立ち昇った。
数日後、葉山君と橋を渡っていた。そう、あの穢れ地の上にある橋をだ。
170 :代理投稿 ◆YJf7AjT32aOX :2013/08/24(土) 02:46:40.09 ID:hqzLBEKk0
(2/2)
「キッキィィ〜〜ッ!」後ろから何か動物の鳴き声のような音がした 。
ビックリして振り返ると、葉山君がドリフターズのいかりや長助の顔まねをしていた。
白目で唇を下に突きだし、歯を剥き出している。
「なんで、いかりや長助の真似なんかしてるの?」
奇妙に思い葉山君に訊ねた。
「キィ━━━━━━━━━━イッ!!!」
野生動物のように鋭く葉山君が鳴いた。
とても人間が出せる声とは思えなかった。
葉山君がいきなり跳ねた。
まるで器械体操の選手のように、鮮やかなバク転をみせた。
葉山君の体は綺麗な弧を描き、ユックリと橋の下へと消えていった。
恐る恐る橋の上から下を見ると、葉山君は仰向けに倒れていた。
少し平べったくなった葉山君の胸からは、肋骨が突き出ていた。
即死だった。
葉山君は事故死ということになった。
葉山君のお葬式で、葉山君のお母さんのすすり泣く声だけが静かに響いていた。
その声が今も耳から離れない。
【完】
【第四十九話】たまお様「モンキーダイブ」
(1/2)
僕が小学生のときの話。 近所に坂があった。
坂を10メートルほど上ると橋が架かっていて、橋を渡ると隣町だった。
橋とガードレールの隙間から斜面に降りると、すぐ地上に出ることができた。
逆に斜面から橋の袂へよじ登ることもできた。
その斜面は、 体が小さい子どもならではの近道だったのだ。
ある日、友達とその斜面に行くと、日本猿の死骸が捨ててあった。まるで通せんボをするように仰向けに倒れていた。
まだ夏だったので腐敗が早く、すでに胸からは蛆が涌き肋骨が見えていた。
やがて死骸は完全に白骨となり、3ヵ 月ぐらいで その骨も風化して自然に消えていった。
あの斜面に入ると猿の呪いがかかる。子供たちの間でそんな噂が広がった。
子供たちにとって斜面は、近道から穢れ地になってしまったのだ。
しばらくして、友達の葉山君があの斜面に行こうと僕を誘った。葉山君は活発で気の強い子供だった。
斜面まで来ると、「呪いなんかあるか、見とけよ」葉山君はそう言うと、立ち小便をはじめた。
かつて猿の死骸があった位置から、アンモニア臭のする湯気が立ち昇った。
数日後、葉山君と橋を渡っていた。そう、あの穢れ地の上にある橋をだ。
170 :代理投稿 ◆YJf7AjT32aOX :2013/08/24(土) 02:46:40.09 ID:hqzLBEKk0
(2/2)
「キッキィィ〜〜ッ!」後ろから何か動物の鳴き声のような音がした 。
ビックリして振り返ると、葉山君がドリフターズのいかりや長助の顔まねをしていた。
白目で唇を下に突きだし、歯を剥き出している。
「なんで、いかりや長助の真似なんかしてるの?」
奇妙に思い葉山君に訊ねた。
「キィ━━━━━━━━━━イッ!!!」
野生動物のように鋭く葉山君が鳴いた。
とても人間が出せる声とは思えなかった。
葉山君がいきなり跳ねた。
まるで器械体操の選手のように、鮮やかなバク転をみせた。
葉山君の体は綺麗な弧を描き、ユックリと橋の下へと消えていった。
恐る恐る橋の上から下を見ると、葉山君は仰向けに倒れていた。
少し平べったくなった葉山君の胸からは、肋骨が突き出ていた。
即死だった。
葉山君は事故死ということになった。
葉山君のお葬式で、葉山君のお母さんのすすり泣く声だけが静かに響いていた。
その声が今も耳から離れない。
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