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木暮×彩子

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Part1
294 :木暮×彩子:2010/08/11(水) 22:44:13 ID:gIdQbZkg
初めて告白した時はびっくりしてたなぁ。
真っ赤になってあたふたしたりメガネを直したり。
でも一つ咳をしたら大人びた顔になって…。
“バスケが一番”
本気なのか体よく断られたのかわからないけど、別にどちらでもいい。
諦めなければうまく転がるかもしれないから。
「もうすぐ受験ですね。」
部活の片付けをしながら赤木先輩に言った。
「そうしたら卒業かぁ〜。来年もいい一年が入ってくれれば…。」
「彩子。」
「はい?」
「お前…木暮とはどうなんだ。」
「あ、バレてました?」
こんな話しが苦手なんだと容易に想像が付くほど苦い顔をしている。
「晴子も気付いてるぞ。まぁあれだけ態度で表していれば当たり前のことだがな。」
「晴子ちゃんがどうしたって?」
いつの間にか近くに来ていた木暮先輩に、赤木先輩は珍しく、わ!と言って驚いた。
「な、なんだよ赤木。晴子ちゃんなら流川に付いて帰っちゃったぞ。」
「ま、またかあいつは…!帰ったら一言言ってやらんといかん。」
「まぁまぁ。流川はもてるからなぁ。」
あははと笑う木暮先輩。今日もかっこいいです。
「木暮先輩の方がかっこいいのに不思議ですねー。」
「ははは…は…。」
笑いの止まった先輩の頬が赤くなっていく。ついでに赤木先輩も。
「ゴホンッ!…あー、お疲れ。」
バツが悪そうに赤木先輩が部室へ向かう。
赤面したままじろりと木暮先輩が私を睨んだ。小声なりに声を荒げる。
「彩子!お前はどうしてそーゆーことを言うんだ!恥ずかしいだろ!?」
「だって〜本当のことですよ?ほらほら先輩!着替えなくていいんですか?」
ブツブツと私を振り返りながら部室に行く先輩を見送る。
もうすぐ体育館で先輩を見ることはなくなるんだ。
部活に好きな人がいなくなるのは普通辛いことなんだろう。
私だって辛い。でもそれ以上にバスケのことで頭がいっぱいと言えなくなる先輩にわずかな期待を抱いていた。

295 :木暮×彩子:2010/08/11(水) 22:48:02 ID:gIdQbZkg

「うわぁ。やっぱりみんなすごい食欲ですね。」
ガツガツ口に肉を運ぶ部員を見ながら晴子ちゃんが耳打ちしてきた。
本当すごい食べっぷり。見ているだけでお腹いっぱいになりそうだ。
今日で赤木先輩と木暮先輩は引退する。
送別会にと近くのしゃぶしゃぶ屋を選んだのだけど、これって予算足りるのかしら?
ひとしきり食べると席を自由に移動し、がやがやと入り乱れる状態になる。
なんとなく実感が沸かないまま時間だけが過ぎるが、
時折赤木先輩や木暮先輩の前で泣いている一年生たちを見るとその都度すごく寂しくなった。
「彩子。」
声をかけられて顔を上げると赤木先輩と木暮先輩が立っていた。
「あ、お疲れ様でした!受験、がんばってくださいね!」
「おう。」
そう言うと先輩たちが両隣に座ってきた。大きな2人に囲まれてなんだか照れる。
3人で改めて乾杯をした。
入部当時から、くじけそうになった時や諦めそうになった時、必ず2人は傍にいてくれた。
引っ張ってくれた赤木先輩と支えてくれた木暮先輩が、絶妙なバランスで私をここまで導いてくれたんだ。
色々と思い出していたら何も言葉が出てこなくなった。
他の部員のざわめきがやけに遠く響く。
「彩子。」
「はい。」
赤木先輩の声に…なんか、やばい。泣きそう。
ここで急に赤木先輩が立ち上がって朗々と歌い出したとしても泣けそうだ。
「俺は、常に部員に限界以上を求め日々無理をさせてきた。」
ポツポツよ低く話す赤木先輩の言葉に、動かないままはいと返事をする。
「だがそれは部員に限ったことじゃない。お前にも色々な注文をつけてきたはずだ。」
もう口を塞ぎたい。こんな空気は苦手なのだ。
声を出すと喉に痞えた塊が溢れてきそうで、ただうつむいて手に持ったグラスを見つめる。
「よくついてきてくれたな。この湘北が全国に行けたのも、お前のおかげだと思ってる。」
「彩子。お前の元気にみんなどれだけ助けられたかわからないよ。本当にありがとう。」
赤木先輩に続く木暮先輩の穏やかな声。
耐えられず頭をブンブンと横に振ると今にも出そうな涙を抑えるようにジュースを飲み干す。
「や、やめてくださいよ!泣かせる気ですか!?」
怒ったように言うと先輩2人が笑った。
ホッとした勢いでまた涙が出そうになる。あたふたと近くの飲み物を探すと向かいの三井先輩のグラスが目に入ってきた。
「あっちょっと先輩もらいますねっ。」
「あーっ!お、おいっ…!!」
勢いよく飲み干す様子を驚いたように見る赤木先輩と木暮先輩。
ターンッ!といい音を立ててテーブルにグラスを置くと、三井先輩が「あ…あ〜ぁ。」と情けない声を出していた。

296 :木暮×彩子:2010/08/11(水) 22:54:39 ID:gIdQbZkg
あれ?これなんか味が変。これって……。
「オイ!?彩子!」
目の前がクラクラして気付いたら赤木先輩に寄りかかっている。
え?今のお酒??なんでお酒が…。
ちょっとした騒動になるかと思ったが周りもざわついているせいでみんな気付いていない。
「!!三井!お前〜!!!」
液体の正体を察した木暮先輩が睨むと、「しーっ!しーっ!」と必死で隠そうと慌ててる三井先輩が目に入る。
「ま、全く!呆れたやつだなお前は!彩子、大丈夫か?」
赤木先輩が支えてくれてなんとか起き上がる。ダメだ。クラクラする。
ここにいたら安西先生に間違いなくばれるだろう。
そしたら冬の選抜どころではなくなってしまうかも…。
「ちょっとヤバイですね…。すみません帰ります私。」
フラフラと立ち上がるとなんとか外に出た。
店から出るときに部員が色々言ってたけどよく思い出せない。
とりあえずここから出来るだけ遠くに離れとこう。
何重にも重なる景色をなんとか見分けて家の方へと歩く。
よろめいた身体をどこからか伸びてきた逞しい腕が支えてくれた。
「平気か?しっかりしろよ、フラフラじゃないか。」
その声にふらりと顔を上げると木暮先輩がいた。
「先輩?一人で帰れるから…。今日で最後なのに戻ってください。」
「心配するな。お前送ったらまた戻るから。」
それはこっちの台詞ですと返したくなるほど心配そうに顔を覗き込まれる。
いやだなぁ酔ったとこなんて見られたくないのに。
先輩が腕をつかんでくれているおかげでなんとか前に進む。
タクシーが通るたびに手を上げてみるものの、止まってくれる様子はない。
少しすると気のせいだと思い込もうとしていたものが存在感をもってきた。
(気持ち悪い)
クラクラする頭は落ち着くどころか激しさを増し、比例するように吐き気がしてくる。
(ウッ…やばい、吐く!!)
…あぁ。
今日は最後だから勇気を出して告白しようとか思ってたのに。
「大丈夫か!?吐きたいのか彩子?水飲むか?」
不安顔して恥ずかしさに追い討ちかけてくる先輩。
「ちょっと休んでもいいですか?」
「え…えぇっ!!??」
?なんだこの反応。

297 :木暮×彩子:2010/08/11(水) 22:57:21 ID:gIdQbZkg
不思議に思い、ぼんやり立つこの場所を見渡してみる。
「ぁっ!」
気付くといつの間にかラブホテル街のど真ん中にいた。
そうだ。ここ通らないと帰れないんだっけ。
気分の悪さとは別の汗が額に浮かぶ。
真っ赤な顔で見ると先輩も同じだった。
私は木暮先輩が好き。木暮先輩もそれを知ってる。
ち、違うんです。いわゆる酔ったふりをして好きな人をラブホに誘うあの有名すぎる手段じゃないんです。
「あ、あのあのそうじゃなくって…。」
少し焦ったせいだろうか。忘れかけていた気持ちの悪さがまた押し寄せてきた。
今度こそダメかも。
周りにコンビニ等はなく、ただホテルが並ぶばかりだ。
酔っていて判断が鈍っていたこともあるが、
正直このまま帰るのは無理なので決心してホテルに入ることにする。
「せ、先輩店に戻っててください!わ、私ちょっと休んで帰りますから!!」
そう言うと口を押さえたままフラフラと近くのホテルに駆け込んだ。
(あーしくみわかんない。どうすんだこれ。)
もはや何を見ても視線が定まらない。ふいに足の力が抜け、ガクリと跪いた。
気付いた女の店員が慌てた様子で近づいてくるのがわかる。
(トイレ貸してくださいって言おう。言わなきゃ…。)
意識が朦朧とする。と、急に視界が高くなった。
「えっ!?」
「平気です、すみません。あとは大丈夫ですから。」
穏やかな声と間近にある木暮先輩の顔にドキリとする。
なんだ?なにごと??
ふわりと浮いている身体はしっかりと先輩に抱きかかえられたままどこかに移動している。
(お、お姫様だっこぉぉ!!!!????)
一瞬で酔いが覚めて吐き気も吹き飛んだ。
私の赤い顔をちらりと見た先輩は、同じく赤い顔で不機嫌に声を出す。
「全く。飲む前に酒だってわかるだろう?」
「す、すみません。」
先輩の怒った顔が照れ隠しのように見えてますます顔が熱くなる。
困った。
こんなことならまだ酔っていたかった。
素面の状態、加えてラブホテルで…先輩とどうしろって言うんだ。

298 :木暮×彩子:2010/08/11(水) 23:03:51 ID:gIdQbZkg
トイレから出てくると、先輩が水を渡してくれた。
「少しはよくなったか?」
メガネの奥の心配そうな静かな目。
どうしよう…吐いてもないのにめちゃめちゃ気分よくなりました。
「はい。もう平気です。」
「よかった。ちょっと横になってろよ。」
まだ少しはクラクラするものの一人でも帰れる状態なのだが、
なんと伝えればいいかわからずとりあえずベッドに横になった。
静かな部屋にBGMだけが流れている。激しい鼓動は治まりそうもない。
鏡の前の椅子をベッドの脇に運んだ先輩がそれに座る。
優しく笑う先輩を直視出来ない。おかしいな、いつもなら私が攻め側なのに。
「彩子ってしっかりしてるようで抜けてるとこあるよね。」
思い出したように笑う先輩。
「豪快にイッキしてたもんなぁ。ははは見ててびっくりしたよ。」
「だって…お酒入ってるなんて思わないですもん…。」
「あはは。俺も彩子が急にふらつくから驚いた。」
考えたら2人でこんな風にゆっくり話すの初めてかも。そんな機会もなかったし。
いつもみんなに優しい先輩を独り占めしているようですごくうれしくなる。
こんな状況だけど、2人きりだし…告白するには一番いいときなのかもしれない。
決心してちらりと先輩を見ると、笑ってた先輩が視線に気付いてこちらを見る。
「せ…先輩。」
声が掠れる。私の固い表情でなにか悟ったのか先輩も赤くなった。
「あ、あーっと…水、横置いておこうな。」
焦ったように立ち上がろうとする先輩の指先を軽く握る。
先輩がギシッと固まった。
「ダメ。…ここに。」
流れるBGMがどこか遠いところで聞こえる。
もう告白するしかないのに心臓だけがせわしく動いて、何も言葉が浮かばない。
これでフラレるのかもと思ったら声が出てこなかった。
赤い顔をした先輩が一瞬私を見て視線を逸らす。
苦い顔で宙を睨んだ後、考えるように目を閉じた。
やっぱり迷惑なんだろうなぁ。
でも
どう思われても やっぱり好きなんです。
「…こっち見てください。」
消え入りそうになる声を押し出すと触れる指がピクリと震える。
先輩は眉根を寄せて真っ直ぐに私を見つめると、諦めたようにもう一度目を閉じてため息をついた。
「わ、私……ぇっ?」
しゃがみ込む先輩の顔が近づいたと思ったら、私の言葉を遮るようにいきなり温かな唇が重なった。

299 :木暮×彩子:2010/08/11(水) 23:08:29 ID:gIdQbZkg
押しのけようとした両手をつかまれ、ベッドに押し付けたまま先輩が馬乗りになってくる。
何が何だかわからなかった。
力強い腕が、容赦ない舌が、普段の穏やかな先輩とはまるで結びつかない。
呼吸をさせないほどの強引さで押し付けるように唇が重なる。
「…っや、せっ先輩…!!」
唇が離れると熱を持った唇が頬を伝い耳へと移動する。
「あ…先輩っ…い、いゃっ。」
「騒ぐなよ。」
耳の傍で言われた言葉にぎゅっと閉じていた瞼を開いた。
信じられない。この人はあの優しい先輩なのだろうか。
体中がひやりとしたものに包まれていく。
低く低くうめくような冷たい声が頭をぐるぐると回り、言い知れぬ恐怖がまとわりついた。
「…んっ!」
耳に聞こえる水音と共にぬるりとした感触が耳の裏に伝わる。
丁寧にそこを舐め上げると耳朶を含み舌で転がす。
絶えず舌を動かしながら先輩の手が私の身体を撫でるように伝い布団の中に入って来た。
動きが予想できない大きな手に恐怖を感じ、触れる箇所にあわせて体が跳ねる。
「やっぱり…。彩子は敏感だね。」
くすりと笑う声は普段の柔らかな先輩のまま。
無理矢理私を押し倒している男は間違いなく、
ずっと想っていた先輩なのだと再確認させられ絶望的な思いに駆られる。
震える私には気付いているのだろう。が、かまわず先輩は身体を密着させたまま胸を掴んできた。
やわやわと力を込めながらじっと胸を見つめる先輩。
服の上からであるのに、まるで透かして肌が見られているような感覚に陥る。
胸からの刺激と羞恥心が加わり、冷えた身体が少し温かくなるのを感じた。
呼吸が荒くなるのを悟られないよう大きく口を開くが、その方がバレバレなことに気付く余裕はない。
反応を楽しむように先輩の指が胸の頂点に触れた。
「あっ!…はっぁ…!」
頭がパンクしそうなほど状況についていけない。顔に熱が集中する。

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