3.11の際の武勇伝
『大変だったね』の慰めでは収められないあの日の現実を、報告者は語ってくれました。
Part1
536 :名無しさん@おーぷん :2016/01/24(日)06:48:21 ID:ZlM
流れを切るようで申し訳ない。
初書き込みですがご容赦を。
医者に「出来るだけ他人に話したほうがいい」と言われたのですが、
口に出すと未だに情景がフラッシュバックして震えてしまうので、
文章に起こしてみます。長文、いくつかに分けます。
3.11の際の武勇伝。
当時某食品スーパーに勤めており、当時片思いだった女性も同じ職場に勤めていました。
妙な地響きが聞こえる、と思った瞬間、本震が来ました。
マニュアルには買い物籠をお客様に被らせる、というものがありましたが
真っ先に思いついたのは片思いの彼女の事。
本来なら叩かれる行為なのでしょうが、彼女が担当、その時間いるであろう場所へ
途中転びながらも走って向かいました。
丁度彼女が座り込んでいる天井部分がつり天井となっており
支えているワイヤーもすでに残り1本になっていました。
537 :名無しさん@おーぷん :2016/01/24(日)06:57:59 ID:ZlM
ああ、このままだと潰されるな、と、
妙に冷静にその光景が目に入っていたのを覚えています。
とっさに彼女の手前まで飛び込むように滑っていき(走るより安定したので)
危ない!と叫ぶつもりなのに呂律も回らず「っぶぁ!w」と妙な鳴き声を上げながら
彼女を抱えて陳列棚が並んでいる隙間に転がり込みました。
それから体感1秒ほどでしょうか。案の定天井が落ちてきて、僕の背中に何かが強打しました。
彼女を抱え込むように庇いました。
恐怖のあまり、目を瞑ってはいましたが、腕の中で叫ぶ彼女を
「大丈夫!大丈夫だから!」と慰めにもならない叫び声をかけていました。
そう言いつつも、内心
(ああ、だめかな。でも好きな人抱えて死ぬならいっかなー)
とか
(俺って判るように身分証は服の中にしまっときたいな)
なんてことを無駄に考えていました。
暫くして、背中のしびれも地震も収まってきた頃、瞑っていた両目を開けました。
店内は真っ暗。というか、天井板らしき残骸に埋もれてしまっていて
光が瞬時に目に入ってきませんでした。
腕の中の彼女はブルブルと震え、右手部分の周辺だけスペースを作り
彼女の頭をなでました。
ただ呻いている彼女の身体に怪我がないか確認したかったのですが
生憎ほぼ動けない状態だったので
「怪我は?痛いところはない?」
と声をかけるので精一杯でした。
538 :名無しさん@おーぷん :2016/01/24(日)07:04:55 ID:ZlM
声をかけても反応がないことに恐怖を覚え、無理やりにでも確認しようと
動かせる右手で彼女の身体に触れました。
刺さっているようなものも、折れているようなところもなく、ほっとしたとき
「あの、誰ですか?」
と、彼女が声をかけてきました。
「俺だよ。ごめんね、変に身体触って」
「ううん、大丈夫。ありがとう」
ありがとうも何も、僕は結果的には崩れ落ちた天井の下に一緒に入り込んだだけの形だったのですが、
彼女は繰り返し感謝の言葉をかけてくれました。
お互い大した怪我はないと確認し、その後は救助を待つことにしました。
長文になりすぎるので割愛しますが、そ近くに誰かいたか、なんてことはまったく覚えていませんでしたので
とにかく声を大きく上げる以外ありませんでしたが、
程なくして同僚たちに救助されました。
539 :名無しさん@おーぷん :2016/01/24(日)07:13:11 ID:ZlM
その後、背中は打撲程度で済んでよかった!とパートのおばちゃんに怒られ、
津波警戒のために帰宅禁止令が出され、また買い物客が押し寄せる可能性もあり
店を離れられませんでした。
僕は自宅に両親がいないことはメールで確認できていたので安心していましたが、
彼女は、まだ家の方と連絡が取れていませんでした。
1時間ほどたち、解散の流れになったのですが、行く先などありません。
とりあえず彼女とニュースを見ていた時、あの、津波の映像が流れました。
「私家に帰る!」
落ち着かせようとしましたが、彼女は先ほどのパニックを引きずっていたようで
あっという間に錯乱してしまいました。
「判った。俺も行くよ」
と、こっちが折れ、彼女の家を目指していたとき、彼女のケータイにメールが届きました。
『家族は無事、二階に逃げている』
彼女は子供みたいに大声で泣いていました。
ただ、僕は家が流されないか、不安は残っていました。
用事が出来たので、続きは少し間を空けて書き込みます。
540 :536 :2016/01/24(日)07:40:28 ID:NPm
ID変わっているかもしれませんが、先ほどの者です。
sageるのを忘れました…
彼女に聞くと、家には祖母と母親の二人だけが残っているらしく、
祖母の足が悪いために残る判断をしたようです。
家に行くために、崩壊したオフロード状の道を進んでいくと、まだ津波は到達していないようでした。
車から転げるように彼女が飛びだし、それに僕が続きました。
ちょっとした庭石があったので、そこに飛び乗り海を見ると、もうすぐそこまで津波は来ていました。
「2階に上がれ!靴忘れんなよ!」
そんな僕を見ていた彼女のお母さんいわく、波に背中を押されているんじゃないかと見えるようだったと聞きました。
本当にギリギリで階段を駆け上がると、後ろからいろいろなものが悲鳴のような轟音を立てました。
車は流されましたが、なんとかまた生き残れました。
2階の部屋に通されると、彼女のお母さんが泣きながら怒っていました。
「あんたたち!なんで大人しく避難所に行かなかったの!」
「だってぇ…」
そこからは暫く親子ならではのやり取りを。でも、微笑ましい再会ではなく、事態はもっと逼迫していました。
「もうこっから動けねぇなぁ…」
ばーちゃんがぼそっと呟き、ベランダのほうをじっと見ていました。
そうだ。様子だけでも見ておかなきゃ。
そう思い、ベランダに出ました。
そこでようやく自分が土足だったことに気づき、平謝りをするとばーちゃんは「だいじょぶだ。ぜーんぶ掃除しちまうから」と、この事態に動じることなく淡々としていました。
下に止めていた愛車は、もうどこにもありませんでした。
車が流されるほどの激流に、この家が堪えられるのか。先刻考えていた不安がまさしくその瞬間、現実味を帯びていました。
541 :536 :2016/01/24(日)07:52:09 ID:NPm
携帯は持っている。情報は入るものの、一番重要な現地の情報が入りませんでした。
津波です。逃げてください!その繰り返しです。
ばーちゃんはカラカラと
「逃げろっておみぇ、出来るもんならさっさとやっとるが」
笑いながらニュースを見ていました。
空が暗くなり、雪がちらついていました。
そんな時間まで、ただずっと部屋で待機していたのですが、ふと外から人の声が聞こえてきました。
ベランダに出てみると、波はおさまり、大海原に家がポツポツと浮かんでいるような、そんな風景が広がっていました。
「おおーい!こっちだー!ここだー!助けてくれー!」
年老いた声が聞こえてきました。はっとして下を見ると、目測20mほど離れた場所にある車の天井部分に、人影が見えました。
「怪我されているんですか!?」
こちらが応えると
「水に濡れてしまった!寒くて一晩持ちそうにない!助けてくれ!」
聞けば、津波に揉まれたものの、たまたま浮かんでいた防砂林の流木にしがみつき、そこに行き着いた、とのことでした。
「ちょっと俺行ってきます。ここに連れて来てもいいですか?」
「波は大丈夫なの?」
「多分。浮いてるものも動いてないし」
服が濡れると後が辛いと思い、彼女の前で気恥ずかしいものの、下着一枚になり助けに向かうことに。
542 :536 :2016/01/24(日)08:03:36 ID:NPm
その男性が待っている場所までは障害物も漂流しておらず、帰りのルートを覚えながら向かいました。
見ると、大体70代ほどの人でした。
「迎えに来ました。歩けそうですか?」
「寒くてもう水に入りたくない。おぶってほしい」
大人一人なら、普段なら問題なく背負えるのですが。
足元は腰まで浸かる水。しかも泥も混ざっており覚束ない状態でした。
それでも確かにその男性は全身をガタガタと震えあげており、危険な状態なのは見て取れました。
「分かりました。どうぞ!」
背中で受け止める姿勢を取り、男性を背負いました。が、やはり思った以上にキツイです。
543 :536 :2016/01/24(日)08:18:16 ID:NPm
それでも何とか体制を崩すことなく、玄関先までおぶって行くことができました。
何度か足元を掬われるような泥にぬかるみましたが、そこは好きな女性が見ているということもあり、踏ん張ることができました。
階段の濡れていない段まで、彼女と彼女の母がタオルを持って下りてきてくれていました。
濡れた身体を拭いて、男性にも以前亡くなったじーちゃんの服を着させていました。
階段を上がり、部屋でばーちゃんとその男性が顔見知りだという話から救助までは割愛します。全て書いていたら切りがないので。
その晩は、男性女性に別れて寝たものの、夜中こっそ廊下の窓際で彼女と話をしたりしました。
翌日、彼女たちを連れて移動が出来ないか、と考えていました。
しかし、老人を二人とも自分が担ぐことはできません。
男性は前日に濡らした身体が万全ではありませnでしたし、
何より水の引いていて、尚且つ人が救助に来てくれそうな場所が思い当たりませんでした。
結局、大人しく救助を待つことに。
救助が来るまでの間、少し周辺を確認しましたが、あるのは語彙隊
544 :536 :2016/01/24(日)08:18:16 ID:NPm
それでも何とか体制を崩すことなく、玄関先までおぶって行くことができました。
何度か足元を掬われるような泥にぬかるみましたが、そこは好きな女性が見ているということもあり、踏ん張ることができました。
階段の濡れていない段まで、彼女と彼女の母がタオルを持って下りてきてくれていました。
濡れた身体を拭いて、男性にも以前亡くなったじーちゃんの服を着させていました。
階段を上がり、部屋でばーちゃんとその男性が顔見知りだという話から救助までは割愛します。全て書いていたら切りがないので。
その晩は、男性女性に別れて寝たものの、夜中こっそ廊下の窓際で彼女と話をしたりしました。
翌日、彼女たちを連れて移動が出来ないか、と考えていました。
しかし、老人を二人とも自分が担ぐことはできません。
男性は前日に濡らした身体が万全ではありませnでしたし、
何より水の引いていて、尚且つ人が救助に来てくれそうな場所が思い当たりませんでした。
結局、大人しく救助を待つことに。
救助が来るまでの間、少し周辺を確認しましたが、あるのは語彙隊
545 :536 :2016/01/24(日)08:20:29 ID:NPm
途中送信してしまった…
ご遺体が数人分と、その人数分以上にあった腕の欠片とか。思い出したくないんで。
546 :536 :2016/01/24(日)08:22:33 ID:NPm
離席します。残っていれば夕方あたりにまた戻ってきます。
547 :名無しさん@おーぷん :2016/01/24(日)08:48:37 ID:wIo
夕方待ってるよ
良かったらメモパッドやワードに書き込んで
よく読み直して
それをコピペして貼ると良いよ
誤字脱字も確認できる
548 :名無しさん@おーぷん :2016/01/24(日)13:57:38 ID:SDI
まだ途中なのに涙が止まらなくなるから困るね
549 :名無しさん@おーぷん :2016/01/24(日)14:18:04 ID:qmL
本当に涙が出てくる…
しかし偉いな。大好きな女性に「いいトコ見せたい」だけでは、こんな勇敢な行動は取れないよ。
あの雪の中、下着姿になって見ず知らずのお年寄りまで救出、本当に良くやった!!
大変だったね…
続編待ちます。
551 :名無しさん@おーぷん :2016/01/24(日)17:11:22 ID:9H1
今のとこまだスレタイまで至ってない
552 :536 :2016/01/24(日)17:21:39 ID:Q3F
戻りました。ID変わりましたが536です。
再会するまえにまずは謝罪を。
こちらは武勇伝板ですが、内容が被災体験記になってきてしまいました。
一応、被災に抗ったスーパーの従業員の武勇伝、ということでご容赦下さい。
また、割愛と先ほど書きましたが、やはり救助の件は書かせて頂きました。
一応注意書きを入れましたが、読む際に少し注意を。まぁ、経験していない他人から
見れば他愛ない体験談かもしれませんが、不快感を抱くこともあるかもしれないので、一応。
それと書き忘れていたので補足を。
彼女の父親は彼女が生まれる直前に交通事故で亡くなっていました。
そこで祖父が住むこの地に引っ越し、3代4人で暮らしていたそうです。
男手がなかったこともあり、片付けにも駆り出されたのは後日談。
そして、誰が話しているか分かりにくく感じたので、
僕:僕
彼女:ちー(ちーちゃんと呼んでいたので)
彼女の母:おば
祖母:ばー
と分けます。
男性は正直、会話らしい会話ができなかったので割愛します。
それでは続けます。
流れを切るようで申し訳ない。
初書き込みですがご容赦を。
医者に「出来るだけ他人に話したほうがいい」と言われたのですが、
口に出すと未だに情景がフラッシュバックして震えてしまうので、
文章に起こしてみます。長文、いくつかに分けます。
3.11の際の武勇伝。
当時某食品スーパーに勤めており、当時片思いだった女性も同じ職場に勤めていました。
妙な地響きが聞こえる、と思った瞬間、本震が来ました。
マニュアルには買い物籠をお客様に被らせる、というものがありましたが
真っ先に思いついたのは片思いの彼女の事。
本来なら叩かれる行為なのでしょうが、彼女が担当、その時間いるであろう場所へ
途中転びながらも走って向かいました。
丁度彼女が座り込んでいる天井部分がつり天井となっており
支えているワイヤーもすでに残り1本になっていました。
537 :名無しさん@おーぷん :2016/01/24(日)06:57:59 ID:ZlM
ああ、このままだと潰されるな、と、
妙に冷静にその光景が目に入っていたのを覚えています。
とっさに彼女の手前まで飛び込むように滑っていき(走るより安定したので)
危ない!と叫ぶつもりなのに呂律も回らず「っぶぁ!w」と妙な鳴き声を上げながら
彼女を抱えて陳列棚が並んでいる隙間に転がり込みました。
それから体感1秒ほどでしょうか。案の定天井が落ちてきて、僕の背中に何かが強打しました。
彼女を抱え込むように庇いました。
恐怖のあまり、目を瞑ってはいましたが、腕の中で叫ぶ彼女を
「大丈夫!大丈夫だから!」と慰めにもならない叫び声をかけていました。
そう言いつつも、内心
(ああ、だめかな。でも好きな人抱えて死ぬならいっかなー)
とか
(俺って判るように身分証は服の中にしまっときたいな)
なんてことを無駄に考えていました。
暫くして、背中のしびれも地震も収まってきた頃、瞑っていた両目を開けました。
店内は真っ暗。というか、天井板らしき残骸に埋もれてしまっていて
光が瞬時に目に入ってきませんでした。
腕の中の彼女はブルブルと震え、右手部分の周辺だけスペースを作り
彼女の頭をなでました。
ただ呻いている彼女の身体に怪我がないか確認したかったのですが
生憎ほぼ動けない状態だったので
「怪我は?痛いところはない?」
と声をかけるので精一杯でした。
538 :名無しさん@おーぷん :2016/01/24(日)07:04:55 ID:ZlM
声をかけても反応がないことに恐怖を覚え、無理やりにでも確認しようと
動かせる右手で彼女の身体に触れました。
刺さっているようなものも、折れているようなところもなく、ほっとしたとき
「あの、誰ですか?」
と、彼女が声をかけてきました。
「俺だよ。ごめんね、変に身体触って」
「ううん、大丈夫。ありがとう」
ありがとうも何も、僕は結果的には崩れ落ちた天井の下に一緒に入り込んだだけの形だったのですが、
彼女は繰り返し感謝の言葉をかけてくれました。
お互い大した怪我はないと確認し、その後は救助を待つことにしました。
長文になりすぎるので割愛しますが、そ近くに誰かいたか、なんてことはまったく覚えていませんでしたので
とにかく声を大きく上げる以外ありませんでしたが、
程なくして同僚たちに救助されました。
539 :名無しさん@おーぷん :2016/01/24(日)07:13:11 ID:ZlM
その後、背中は打撲程度で済んでよかった!とパートのおばちゃんに怒られ、
津波警戒のために帰宅禁止令が出され、また買い物客が押し寄せる可能性もあり
店を離れられませんでした。
僕は自宅に両親がいないことはメールで確認できていたので安心していましたが、
彼女は、まだ家の方と連絡が取れていませんでした。
1時間ほどたち、解散の流れになったのですが、行く先などありません。
とりあえず彼女とニュースを見ていた時、あの、津波の映像が流れました。
「私家に帰る!」
落ち着かせようとしましたが、彼女は先ほどのパニックを引きずっていたようで
あっという間に錯乱してしまいました。
「判った。俺も行くよ」
と、こっちが折れ、彼女の家を目指していたとき、彼女のケータイにメールが届きました。
『家族は無事、二階に逃げている』
彼女は子供みたいに大声で泣いていました。
ただ、僕は家が流されないか、不安は残っていました。
用事が出来たので、続きは少し間を空けて書き込みます。
540 :536 :2016/01/24(日)07:40:28 ID:NPm
ID変わっているかもしれませんが、先ほどの者です。
sageるのを忘れました…
彼女に聞くと、家には祖母と母親の二人だけが残っているらしく、
祖母の足が悪いために残る判断をしたようです。
家に行くために、崩壊したオフロード状の道を進んでいくと、まだ津波は到達していないようでした。
車から転げるように彼女が飛びだし、それに僕が続きました。
ちょっとした庭石があったので、そこに飛び乗り海を見ると、もうすぐそこまで津波は来ていました。
「2階に上がれ!靴忘れんなよ!」
そんな僕を見ていた彼女のお母さんいわく、波に背中を押されているんじゃないかと見えるようだったと聞きました。
本当にギリギリで階段を駆け上がると、後ろからいろいろなものが悲鳴のような轟音を立てました。
車は流されましたが、なんとかまた生き残れました。
2階の部屋に通されると、彼女のお母さんが泣きながら怒っていました。
「あんたたち!なんで大人しく避難所に行かなかったの!」
「だってぇ…」
そこからは暫く親子ならではのやり取りを。でも、微笑ましい再会ではなく、事態はもっと逼迫していました。
「もうこっから動けねぇなぁ…」
ばーちゃんがぼそっと呟き、ベランダのほうをじっと見ていました。
そうだ。様子だけでも見ておかなきゃ。
そう思い、ベランダに出ました。
そこでようやく自分が土足だったことに気づき、平謝りをするとばーちゃんは「だいじょぶだ。ぜーんぶ掃除しちまうから」と、この事態に動じることなく淡々としていました。
下に止めていた愛車は、もうどこにもありませんでした。
車が流されるほどの激流に、この家が堪えられるのか。先刻考えていた不安がまさしくその瞬間、現実味を帯びていました。
携帯は持っている。情報は入るものの、一番重要な現地の情報が入りませんでした。
津波です。逃げてください!その繰り返しです。
ばーちゃんはカラカラと
「逃げろっておみぇ、出来るもんならさっさとやっとるが」
笑いながらニュースを見ていました。
空が暗くなり、雪がちらついていました。
そんな時間まで、ただずっと部屋で待機していたのですが、ふと外から人の声が聞こえてきました。
ベランダに出てみると、波はおさまり、大海原に家がポツポツと浮かんでいるような、そんな風景が広がっていました。
「おおーい!こっちだー!ここだー!助けてくれー!」
年老いた声が聞こえてきました。はっとして下を見ると、目測20mほど離れた場所にある車の天井部分に、人影が見えました。
「怪我されているんですか!?」
こちらが応えると
「水に濡れてしまった!寒くて一晩持ちそうにない!助けてくれ!」
聞けば、津波に揉まれたものの、たまたま浮かんでいた防砂林の流木にしがみつき、そこに行き着いた、とのことでした。
「ちょっと俺行ってきます。ここに連れて来てもいいですか?」
「波は大丈夫なの?」
「多分。浮いてるものも動いてないし」
服が濡れると後が辛いと思い、彼女の前で気恥ずかしいものの、下着一枚になり助けに向かうことに。
542 :536 :2016/01/24(日)08:03:36 ID:NPm
その男性が待っている場所までは障害物も漂流しておらず、帰りのルートを覚えながら向かいました。
見ると、大体70代ほどの人でした。
「迎えに来ました。歩けそうですか?」
「寒くてもう水に入りたくない。おぶってほしい」
大人一人なら、普段なら問題なく背負えるのですが。
足元は腰まで浸かる水。しかも泥も混ざっており覚束ない状態でした。
それでも確かにその男性は全身をガタガタと震えあげており、危険な状態なのは見て取れました。
「分かりました。どうぞ!」
背中で受け止める姿勢を取り、男性を背負いました。が、やはり思った以上にキツイです。
543 :536 :2016/01/24(日)08:18:16 ID:NPm
それでも何とか体制を崩すことなく、玄関先までおぶって行くことができました。
何度か足元を掬われるような泥にぬかるみましたが、そこは好きな女性が見ているということもあり、踏ん張ることができました。
階段の濡れていない段まで、彼女と彼女の母がタオルを持って下りてきてくれていました。
濡れた身体を拭いて、男性にも以前亡くなったじーちゃんの服を着させていました。
階段を上がり、部屋でばーちゃんとその男性が顔見知りだという話から救助までは割愛します。全て書いていたら切りがないので。
その晩は、男性女性に別れて寝たものの、夜中こっそ廊下の窓際で彼女と話をしたりしました。
翌日、彼女たちを連れて移動が出来ないか、と考えていました。
しかし、老人を二人とも自分が担ぐことはできません。
男性は前日に濡らした身体が万全ではありませnでしたし、
何より水の引いていて、尚且つ人が救助に来てくれそうな場所が思い当たりませんでした。
結局、大人しく救助を待つことに。
救助が来るまでの間、少し周辺を確認しましたが、あるのは語彙隊
544 :536 :2016/01/24(日)08:18:16 ID:NPm
それでも何とか体制を崩すことなく、玄関先までおぶって行くことができました。
何度か足元を掬われるような泥にぬかるみましたが、そこは好きな女性が見ているということもあり、踏ん張ることができました。
階段の濡れていない段まで、彼女と彼女の母がタオルを持って下りてきてくれていました。
濡れた身体を拭いて、男性にも以前亡くなったじーちゃんの服を着させていました。
階段を上がり、部屋でばーちゃんとその男性が顔見知りだという話から救助までは割愛します。全て書いていたら切りがないので。
その晩は、男性女性に別れて寝たものの、夜中こっそ廊下の窓際で彼女と話をしたりしました。
翌日、彼女たちを連れて移動が出来ないか、と考えていました。
しかし、老人を二人とも自分が担ぐことはできません。
男性は前日に濡らした身体が万全ではありませnでしたし、
何より水の引いていて、尚且つ人が救助に来てくれそうな場所が思い当たりませんでした。
結局、大人しく救助を待つことに。
救助が来るまでの間、少し周辺を確認しましたが、あるのは語彙隊
545 :536 :2016/01/24(日)08:20:29 ID:NPm
途中送信してしまった…
ご遺体が数人分と、その人数分以上にあった腕の欠片とか。思い出したくないんで。
546 :536 :2016/01/24(日)08:22:33 ID:NPm
離席します。残っていれば夕方あたりにまた戻ってきます。
547 :名無しさん@おーぷん :2016/01/24(日)08:48:37 ID:wIo
夕方待ってるよ
良かったらメモパッドやワードに書き込んで
よく読み直して
それをコピペして貼ると良いよ
誤字脱字も確認できる
548 :名無しさん@おーぷん :2016/01/24(日)13:57:38 ID:SDI
まだ途中なのに涙が止まらなくなるから困るね
549 :名無しさん@おーぷん :2016/01/24(日)14:18:04 ID:qmL
本当に涙が出てくる…
しかし偉いな。大好きな女性に「いいトコ見せたい」だけでは、こんな勇敢な行動は取れないよ。
あの雪の中、下着姿になって見ず知らずのお年寄りまで救出、本当に良くやった!!
大変だったね…
続編待ちます。
551 :名無しさん@おーぷん :2016/01/24(日)17:11:22 ID:9H1
今のとこまだスレタイまで至ってない
552 :536 :2016/01/24(日)17:21:39 ID:Q3F
戻りました。ID変わりましたが536です。
再会するまえにまずは謝罪を。
こちらは武勇伝板ですが、内容が被災体験記になってきてしまいました。
一応、被災に抗ったスーパーの従業員の武勇伝、ということでご容赦下さい。
また、割愛と先ほど書きましたが、やはり救助の件は書かせて頂きました。
一応注意書きを入れましたが、読む際に少し注意を。まぁ、経験していない他人から
見れば他愛ない体験談かもしれませんが、不快感を抱くこともあるかもしれないので、一応。
それと書き忘れていたので補足を。
彼女の父親は彼女が生まれる直前に交通事故で亡くなっていました。
そこで祖父が住むこの地に引っ越し、3代4人で暮らしていたそうです。
男手がなかったこともあり、片付けにも駆り出されたのは後日談。
そして、誰が話しているか分かりにくく感じたので、
僕:僕
彼女:ちー(ちーちゃんと呼んでいたので)
彼女の母:おば
祖母:ばー
と分けます。
男性は正直、会話らしい会話ができなかったので割愛します。
それでは続けます。
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