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人形

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Part2
247 :本当にあった怖い名無し:2007/08/17(金) 03:19:32 ID:vM+LwB6eO
(ゑ)
夜中、顔にサワサワと顔に何かがあたる感じがして、くすぐったくて目を覚ました
こじ開けるようにして瞼を持ち上げた
目の前、顔のすぐ近くにあの人形の顔があった
頬に人形の髪の毛があたっていた
人形の肩の辺りに小さな指が見える
人形の顔の、そのまた背後に姪の顔が見える
姪が人形を捧げ持ちオレに向けて何かを喋ってた
人形にオレを紹介してるのか?
体が動かなかった
目玉だけが、ただギョロギョロと自由に動かせた
声も出なかった
悲鳴をあげるのは、生涯、後にも先にもこの時だけのために取っておいたのに

266 :本当にあった怖い名無し:2007/08/19(日) 10:23:51 ID:4trCimcHO
改めて(ゐ)
ここで、当時のオレの状況を説明しておく
姉の家に居候していた時、オレは離婚を機にそれまで15年勤めた会社を辞めていた
結婚と同じ様に、離婚もまた体力と精神力を消耗する
しかも結婚は二人の共同作業だが、離婚は独りの戦いになる
疲れていた、心身共に
退職金は丸々元妻に渡したが、失業手当は 三ヶ月は出るのだし
前に来て、この街の風景が気に入っていたから、少し静養するつもりだった、もちろん三ヶ月丸々ここに居座るつもりはなかったが
丁度、旦那が単身赴任、姉夫婦にとっても悪い話ではなかった、いわゆる番犬がわりだ
ことわっておくが、オレは腕に自信はない、非戦闘民族だ
オカルトは好きだが、呪文などしらない
そして疲れてもいた
この状況下でオレに何ができたろう
全てが見間違い、勘違いの世界ではなかったか
今、他人と変わりない日常を送っているオレはそう思う、あれは本当に現実のことだったのか
だからこうして書く、一つひとつ、当時の事を思い出しながら

311 :本当にあった怖い名無し:2007/08/20(月) 19:01:46 ID:EyYAYZ9pO
(お)
話をその晩に戻す
人形はオレの顔の前にあった
オレは金縛りにあったように動けない
今まで、金縛り、って現象に出会った事は何度かあった
だけど、瞼を閉じることも出来ない、そんな金縛りははじめてだった
それに、姪が呟いている、この言葉は何語だ?
もとより西洋圏の言葉でないのはわかる
でも、中国、韓国、そんな言葉でもない
強いて言えばやはり日本語か
も少し、日本語勉強しとくべきだった
ソミンって言葉、皆知ってるか?
当時のオレは全く知らなかった

358 :本当にあった怖い名無し:2007/08/21(火) 13:05:47 ID:lIDi5ZYHO
(く)
結局、そのまま人形とにらめっこをしているわけにもいかず、オレはいつしか寝てしまったようだ
瞼が閉じれた所までは覚えている
朝起きるとオレと姪の布団の間にその人形が置かれてあった
その時、改めてくだらない事に気が付いた、人形って、いつ寝るのだろうか
隣に寝ている姪もまた、目を開けてジッと天井を見ていた、この子は昨夜寝たんだろうか
昨夜の事が、夢か現実なのかよく解らないまま、甥を起こし、三人で階下に降りた
いつものように朝食が出来ていた
姉は首の下、二の腕に以前あの斑紋はあったが、今朝は心なしか気分がいいように見えた
それに姪があの人形を抱いていることにも、何も言わなかった
むしろ、甥の方があの人形を部屋に置いてくるように、しつこく妹に言っていた

361 :本当にあった怖い名無し:2007/08/21(火) 13:59:22 ID:lIDi5ZYHO
(や)
食事の後、甥がやってきてオレの耳元で囁いた
昨日の夜は怖かったでしょ、と
見ていたらしい、昨夜の事を
そこでオレは改めて、あれが夢ではなかったと思うと共に、あの人形がどうして再びこの家に来たのかを思った
あの神社に人形を戻しに行った日から、姪は神社に行く時間など無い
強いて言えば昨日オレが本屋に行ったときか
だが姪も姉も出掛けた様子はなかったが
甥はその時間、学校のプールに行っていて、知らないという
姪が人形を抱いて玄関を出るのが見えた
どこへ行くのかと思えば母屋へ行ったらしい
この家、母屋と反対側に玄関がある
つまり通りに面してそれぞれに玄関があるわけだ
通りに出ても互いに行き来はできるが、普段は庭を突っ切って、互いの茶の間から出入りしている
だから姪がわざわざ通りに出るのを見て、回りくどいことだと思った
その姪が、今度は母屋の茶の間から出てきて、祖父の(彼女から見て)手を引いて庭に降りてくるのが見えた
どうやら蔵に入るらしい
人形の事は一時忘れて、オレは好奇心に駆られた
あの薄茶の土壁の蔵、オレも前々から興味を持っていたが、まだ入った耕とはなかった
オレはさっそく甥を誘って庭に降りた


363 :本当にあった怖い名無し:2007/08/21(火) 14:39:57 ID:lIDi5ZYHO
(ま)
蔵には普段は黒くてゴツい鍵が掛けられているのだが、思った通りその時は外されて扉は開け放たれていた
オレは中にいる老人に軽く会釈をすると、甥とともに中に入った
何を出すのか、とオレは聞いた、手伝いますとも
老人の話では、そんなにたいそうな物ではないらしい
これくらいの、と言って彼は胸の前に手を広げて見せた
小さな木の箱らしい
姪の方を見ながら、どこに仕舞ったか覚えとらんぞ、というような事を言って、またそこいらを探し始めた
甥が妹に、何を探させているのかと聞いた
姪が答える
ソミンショウライフ
ゴズテンノウサイモン
何語だそれ?
ゴズテンノウはわかったが後の言葉は解らなかった
だが姪はかなり明瞭にその言葉を言った
そして甥もまた、ジィチャン、あれ蔵に入れてるのか、バチあたるぞ、そんな意味の事を言った
爺様答えて、古いやつはな。
蔵には他にも鎧甲やら長持ちやら、興味を引きそうな物が色々とあったが
その聞き慣れない言葉に、幾分かの肌寒さとともにオレの耳は釘付けになった

381 :本当にあった怖い名無し:2007/08/22(水) 09:38:00 ID:elI4xrjkO
(け)
蘇民将来符、そういう字を書くそうだ
オレにとっては、その言葉、聞くのも初めてだったし、その実物を見るのも初めてだった
それを納めた箱は幾つもあった
何れも中に納めた将来符は大きさもまちまちだった
ただ形は断面が六角形であり、先が尖って、何かチビた鉛筆のようだった
その鉛筆の腹には絵と文字が書いてある
中には飴色をしたものもあり、その色からして相当古そうな物もある
牛頭天皇祭文、こちらの方は将来符の縁起を記したもの
牛頭天皇、今は素戔嗚尊と同一視される事が多い
蘇民に茅の穂を渡し、我は素戔嗚尊なり、そう言って去っていった風来坊
何れも、信濃、今の長野県の国分寺が有名なので、ググればすぐ見つかるから興味がある方は引いてみるといいだろう
国分寺では、毎年一月の7日と8日にその護符が配布?されるそうだ
効能は災難を取り除く?
但し表面に書かれた言葉によって多少、その意味が違うそうだが

382 :本当にあった怖い名無し:2007/08/22(水) 10:24:15 ID:elI4xrjkO
(ふ)
小難しい話は少し置く
実際、当時、友人(めんどくさいから、以後、メタギアのオタコンにするな、実際よく似てる)
からの情報では、あまりに聞き慣れない漢字が多く、その場ではよく理解できなかった
ただ何故、姪がそんな物を欲しがったのか
それは爺様の次の言葉で合点がいった
母さん早く良くなるといいな、と
なる程、疫病にとらわれていたが、病全般に効くものものだろ、この将来符とやらは
翌日は、病院へ姉の検査の結果を聞きに行く

408 :本当にあった怖い名無し:2007/08/22(水) 23:43:58 ID:elI4xrjkO
(こ)
姪はその将来符の内、手のひらに収まる位の、一番小さいものを手に取ると、それを人形の帯に挟み込んだ
人形の不思議さがまた一段増した気がした。
聞いたところでは、本来は将来符というのは、家の中、神棚や鴨居の上に並べ立てて置くものだそうだ
けれどその家では何年か前の、静岡に地震が頻発した際に落ちてきて、太い鉛筆のような尖った先端が爺様の頭を直撃したそうで、以来、箱に収めて蔵に入れたそうである
材質は主に柳だそうだが、他に桐やタラも使うそうだ、何れ大きなやつならば、結構重かろう
蔵を辞すとオレは甥を連れて姉の家に戻った
姪の方は母屋の子供と遊ぶと言い、爺様と母屋に向かった
途中、井戸の横を通り過ぎる、祠にその日は桃が備えられていた、昨日は何だったろうか。
家に戻ると姉が今し方、地震があったと言う、けっこう揺れたと。
確かに蔵というものは堅牢な造りのものだというが、それにしても中には細々としたものがいくらも積まれてあって、それらがカタリともしなかった。
先の夜の事があったから、甥の口は開けたままになった。

409 :本当にあった怖い名無し:2007/08/22(水) 23:47:24 ID:elI4xrjkO
(え)
家鳴り、その殆どは排水溝や、近くを走る高速道路などの振動が、ある特定の場所に伝わるもの、つまり一種の共鳴現象だ。
だが、そうとも言えない、とても共鳴とは言えないほどの揺れを体験した人もいるという、日本にも外国にも。
家鳴りとは違うが、昔、山に行ったとき、麓の河原の側で一泊した
オレ達以外に野営している者は付近にはいなかった
近くに古びた神社があった
閂が差し込んであるだけだったので、面白半分に友人と忍び込んだ
暫くして板壁の左右、後ろを、モノ凄い勢いで叩かれた、地震なのか、獣でも壁に突っ込んだのか、今もって解らない
とにかくオレは部屋に戻ると、机の上に念のために水を入れたコップを置いた
その時に、出来ることがあれば、取り合えずやってみる主義だ
一時間程して姪が戻ってきた
スーパーの袋に、母屋から桃を貰ったと、幾つか入れて帰ってきた、たぶん祠に供えてあったのと同じ桃だろう
何故か姪は、夕食を前にしてそれを剥けとせがんだ
よく冷えた桃だったが、一つだけヌルイのがあった、祠に供えてあったものだろうか。

410 :本当にあった怖い名無し:2007/08/22(水) 23:58:49 ID:elI4xrjkO
(て)
その晩、コップの水に波紋はでなかった
今日もオレの部屋で寝る甥と姪は、始終、興味深げにコップの表面を眺めていた
姪は、今日は人形を持ってこなかった、部屋に置いてきたと言う。
翌日、姉と、姪を連れて病院に向かった
病院という所は意外と病気を貰うところで、姉は姪を連れて行くのは嫌がったが、何故かオレは目を離すのが不安で、強いて連れて行くことにした
甥は母屋に預けた
何となく、誰かをこの家に一人で残しておくのが不安だった
検査の結果を説明された、この時はオレも一緒に病室に入った
姪は待合室に残したが
医者の説明では、確かに肝臓が少し腫れているようだと言う
しかし血液検査では何も見受けられなかったとも
当時のその時点では、肝炎もなく、しかし急激な発症例からすると、肝吸虫症、肝ジストマ症が考えられると言う
胆管に寄生する寄生虫らしい
即、検査入院を勧められたが、事情を話して明日にしてもらった
今となっては、その判断は後悔している。
家に戻り、明日の入院の用意をしている時、姉はいきなり倒れた
オレは救急車を呼び、甥を母屋に走らせた
義兄が到着したのは、その晩も更けようとしている頃だった。

411 :本当にあった怖い名無し:2007/08/23(木) 00:36:22 ID:N0Cvsa28O
(あ)
義兄は既に病院に立ち寄ってきたそうだ
担当医はいなかったが、看護士の話では、便検査が必要との事、便採取は姉が倒れていた間に済ませており、明後日には結果が出るとの事
そして今は命に云々という状態ではなく、比較的落ち着いてるとの事
それを聞いて義兄は取り合えず家に戻ったわけだ
一通り、話が一段落した後、オレはあの神社の事を彼に聞きたくなった
場合が場合だから、オレの思った事をそのまま聞いたならば、こんな時になにをバカな事を、と一喝されるのは分かっていたから、なるべく婉曲に、世間話に織り交ぜて。
それでも不快かとも思ったが、以外にも義兄は話に乗ってきた
以下、義兄の話
あの神社の奥、一般に神の場所とされている所に、井戸があるそうだ
人はその水は飲むことが出来ない、所謂、神の水という事らしい
その井戸の傍で、義兄の同級生、当時、小学五年生くらいだったらしい、が猫を捨てたそうだ
捨てたというよりも、箱に入れて、そこで育てるつもりだったらしい。
その同級生は、仲のよかった義兄に、その事をそっと耳打ちしたらしい
義兄も二、三日の内にはその猫を見に行くつもりだったらしい。

414 :本当にあった怖い名無し:2007/08/23(木) 01:56:08 ID:N0Cvsa28O
(さ)
猫に関連する話
その話、当時の地方新聞にも書かれた事なので、あまり詳しくは書けない
ただ、義兄は、その日もその同級生が猫に餌をやりに、あの神社に行くことは知っていたそうだ
だけどその同級生は、その日、家に戻らなかったそうだ
当然、男子行方不明、学校でも朝礼でその話が出たし、新聞にも載った
両親も、いずれは見つかると思うだろう、ずいぶん長い間、その土地に住んでいたらしいけど、やがて諦めたのか、他の土地に引っ越したらしい
で、猫の事だが、箱に入れられた猫は、首が切断された状態で、箱に納まっていたそうだ
もっとも、猫の件は、新聞ネタなのか、クラスの怪談ネタなのかはっきりしないが
だから、義兄に言わせると、あの場所は人が入ってはいけない場所だそうな
そう言われると、余計に入ってみたくなる、オレの性分

ここで、病院の話に出た肝吸虫症について、雑学程度だがも少し書いておきたい
この寄生虫、まずタニシなどの貝に寄生するそうだ、そしてその貝を食べた鯉やフナなどを加熱せずに食べると、人間を宿主として胆管に留まる
潜伏期間は6〜8週間位だそうで、発症しても初期の頃は自覚症状が無いことが多いそうだ
但し重度になると死亡するケースもある
日本ではあまり例がない病気だが、韓国から中国、マレーシア、カンボジアと、中央、東南アジア圏によく見られるらしい。
8週間前と言えばオレが来る前の事だが
しかし海外に旅行したとは聞かないし
食べ物にしても、姉は元来、生物はあまり口にしない方で、まして川魚の洗いなどは食べないだろう
子供の頃、父方の実家に行くと、よく鯉濃を出してくれた
交通の便が悪い、山の中の事だったから、せめての滋養、ご馳走だったのだろう。
だが姉は、生臭い、泥臭い、と言ってガンとして食べなかった。
義兄がシャワーを浴びるため、話は一時中断した
浴室に向かう前に二階に上がったようだ
書斎に荷物を置きに行ったのと、今日もオレの部屋で寝ている子供達の様子を見に行ったのだろう
その夜、妙な所からあの人形の出所がわかった
あの人形は、おそらくは、棄てたものではないそうである。
あの人形の所有者は、あの神社のはずだ、と。
義兄はシャワーから戻ると、ビールを出して再び話し始めた
今度はオレが尋ねるというより、彼がオレに畳み掛けるといった感じだ
姪の枕元にあった人形を見た義兄は、まず、あの人形はどうしたのかと聞いた
オレが答えるより早く、彼は、あの人形を見たことがあると言った
子供の失踪というのは、身代金の要求とか、表沙汰になるもの以外にも、けっこうあるそうだ、実数はオレは把握できてはないが。
青年の場合ならば家出、駆け落ちがかなりの割合である
だがそれが比較的低年齢、小学生ぐらいの場合には、親、警察等が先ず考えるのは、事故だ。
義兄の同級生が失踪した当時、まず側にあった井戸が調べられた
神主の立ち合いのもとで。
次に拝殿、社の中だ
同時に、その時同級生が社の奥で猫を飼ってる事を知っていたのは、おそらく義兄だけだったのだろうから、当然、彼も重要な参考人として、警察官と共にその場に同行していた。
その時に見たそうだ、社の中を。
中央に銅鏡のようなものが有って、その前に黄色い稲の穂のようなものがあったそうだ
そして、そのさらに奥、左手に一段低い台、というか棚の様ものがあったそうだ
その棚に、20体ばかりの人形が飾ってあったそうである
顔の造りはまちまちで、中には御河童頭の男の子の人形もある
しかし何れも着物を着ていて、今にして思えば、何となくだか、昭和の初期か大正くらいのものではなかったか、そう言っていた
確かにあの人形も、オレの祖母の家あったものと同じ、大正時代か昭和の初期の作、顔は少し扁平だか、何やら気品のある顔立ちだ
作りも今の人形より精巧なような気がする
勿論、オレはその辺りのことは素人なのだか。
後で知った事だが、人形というのは、着物をめくると、腹の部分に、その作者の名前が書いてある事が多いそうな
それを知っていれば、あるいは何かの手掛かりにはなったかも知れない
義兄の話に戻す
あの人形、顔の作りも、着物の柄も、あの時、棚の一番上の、端にあった人形によくにてると。
義兄の年齢から考えると、当時の件は昭和の40年代も半ばの頃だろう
当時の日本の農村には、まだ肥壷なんてものが当然あった
あれ、深さが二メートル近くあって、けっこう深いんだ
大抵は、木の蓋がしてあるのだが、中には蓋もして無く、表面がカパカパに乾いていて、まわりの地面と区別がつかなかったりする
だから、神社からその子の家までの経路、そんな所にも捜査が加えられた
しかし、その子の行方は杳として知れなかった
よく憶えてくれていたと思う、当時の事を
一因として、義兄は、オレと同じメモ魔だったから
一方は、それを武器にして出世したが、また一方は、それがアダとなり、離婚、退職(オレ様)した
話の本筋とは違う、オレの愚痴。
とまれ、話は人形に戻る
その社の人形を見たとき、神主が大雑把に説明してくれたそうだ
その人形の由来を。
神主の話によると、大正の終わり頃、先代の神主の時に、この村でコレラが流行ったそうである
現代の日本では発生も稀だし、症状も軽くに抑えられるが
当時、村、と呼ばれていたこの地域の医療技術や、衛生観念がどの程度のものだったのか。
体力のある壮健な男女は治癒したそうだが、結果的に幼い子供や老人にかなりの死者が出たそうである。
1ヶ月程で流行は下火となったが、その盛りの時に、先代神主が、疫病、災厄除けを、かの神社に祈願したそうである
村中総出のことで、歩ける村人は皆集まったらしい
その時に、既に亡くなってしまった子供らの人形も供養して神社に納める事になったらしい。
つまりその人形達は、その時に亡くなった、全ての子供らの依代みたいなものかも知れなかった
そんな人形を、姪は持ち出してきたのだ。
結局、その時の原因は井戸からと後になってわかったらしい
どこの家でも井戸に蓋がされ使われなくなり、かわりに脇に祠が建てられた
水質検査をして使用できるようになったのは戦後の事らしい。
その夜、姪の枕元にある人形を見ながら、寝床で考えた
でも、何故将来符なんだ
姪なりの供養の仕方なのか。
翌日、昼近くになって、オレ達は車で病院へ向かった
今日は甥と姪も一緒だ
病室に入っていくと、姉は半身を起こして出迎えてくれた、まず子供達が駆け寄っていく
姉は義兄の顔を見ると、少し驚いた顔をしたが嬉しそうだった
久し振りの親子四人の対面
オレは姉に、入院時の足りないものを聞くと、売店に降りて行った
姉に言われたものを買うと、この売店には本屋もある事に気がついた
少し時間を潰そうと思った。
なる程、病院には子供から老人まで、様々の人が入院している
絵本から盆栽の本まで小さいスペースながら、様々なジャンルがあった。
店内を物色している内に、ふと一冊の小誌に目がいった
おそらく自費出版に近いものだろう
装丁もただ厚紙にタイトルの、○○市郷土民族史、と印刷されただけのものだった、著者の欄には○○会とあった
その本を持ってレジに向かった。
病室に戻ると、姉に売店の袋を渡し、いくつかの会話の後、あとは義兄にまかす事にして、オレは病室を出た。
今日はこれから、昨夜聞いた、神社の奥の井戸に行くつもりだった、暗くならない内に。
バス停に向かう道々、オレは姉の事を考えた
今日は比較的、楽そうだったが赤い斑紋は増えている気がした
蜘蛛状血管腫と呼ばれているそれは、別名、メデューサの首とも言われている。
車中では、先程買った本を流し読みする。
やはり、昨日聞いたコレラの記述はなかった
市の中では、小さい町だ、あの地域は。
だが、それよりも目を引く記述があった。
天保年間後期、あの地域を、痘瘡、天然痘が襲ったそうだ
最初、災厄は隣の村から来て、あの村に住み着いた
死者の数限りなく、一日に、棺桶が幾つも寺に運ばれる
仕舞には棺が間に合わず、遺体を剥き出しのまま、河原で焼いたそうである
死臭と線香の臭いが混じり合い犬も居なくなったそうだ
同時に、隣村からは閉め出され、村は完全な孤立状態になった
天然痘の不思議なところは、10人の内、4人は病に罹り命を落とす
4人は罹患はするが何とか命は助かる
そして残る二人は、罹患もしないというところがある
生まれつき抗体を持っているのか
その時の詳しい記録は、あの地域で最も古い寺にあると書いてあった
そこまで読んで、オレは思った
あの神社、もしかしてその時に建てられたものじゃないかと。
バスを降りると、オレは荷物をとりに一度姉の家に戻った
ラジオ付きの非常用懐中電灯、五徳ナイフ、オフロードバイク用の革手袋
そして5mと10mの細引き二本、針金とラジオベンチ、タッパーとマグカップ
それがオレのフィールドワークの基本だ
まだ陽は高い、だか少し早足で神社に向かう
夏休みである筈なのに、この神社には大抵、子供は遊んでない
神社の横を通り、さらにその奥、裏手の森に入っていく。
井戸はその中にひっそりとあった
屋根も、釣瓶も桶もない、正に神だけの井戸と言う感じだった。
井戸そのものは、コンクリでも煉瓦でもない、自然石を組み上げたもの
ある程度の時間は経っているだろう、まわりには苔が生えていた
周りは畳6畳ほど開けていて、地面には丸い石が敷き詰められている。
オレはそっと近付いていき、中を覗いてみる
ほんの4、5メートル先で光は届かない
昼間だというのに、森の中は薄暗い
懐中電灯で中を照らしてみる
ずっと下に、あれは水面か、灯りに照らされ反射している
ここで下から、髪を振り乱した女が壁をよじ登ってきたらオレは泡吹いて気を失うだろう
と、どこかの映画のワンシーンを思い浮かべた
その辺りに落ちている石を拾ってみる、頭上に差し上げ真下に落とす、高さ約2m、下に落ちるまで約20フレーム
その石を今度は井戸の中に落としてみる
一、二、三…と数えて約12、3mか、中に入る気はサラサラ無いが
しかしポチャンと音がした、水はある。
井戸の中を覗いている内に、何だか鼻の奥がツンとなった
いわゆるスポットめぐり、をしている時に、たまに起こるオレの習慣、たぶん感傷だったろう
この神社がオレの想像通り、その時建てられたのなら、何の為にこの井戸が掘られたのか
あの時、無事治癒し、何とか命を拾った者も、結果的には村から追われたそうた゛
わずかばかりの食料を与えられ、山の奥に追われたそうだ、つまりは死ね、ということだ
痘痕がのこり、失明する者もいた、醜い姿になった彼らは、再び村に災厄を呼ぶと言ってね
抗体をもち、再び痘瘡に罹ることはない彼らを。
だが、天然痘は完全に世界から駆逐され、文明と技術の恩恵に溺れているオレ達には、彼らの無知を笑う権利はない
帰る時に改めて気がついた、オレが来た左側とは反対に、左側にも誰かが歩いた跡がある
誰が最近この井戸を覗いたのか

528 :本当にあった怖い名無し:2007/08/27(月) 04:35:41 ID:Ke3p+1fDO
(す)
これは告発ではないよ、全然
その村の歴史
いま、自分達が住んでいる街、100年、わずか百年前はどうだったのか
少し調べてみるといい
無駄なことは全てはぶく
(す)、と、(ん)
およそ200文字、やはり、それで終わらせたい
先を急いでいる人がいるし、オレも少し疲れた
やはりあの時の事、思い起こすのは少しシンドイ
結果的に言うならば
姉は死んだ、そして姪も
はっきり言って、あの家族は崩壊した
残ったのは、甥と彼の弟だけである

※このお話はここから先の書き込みがありませんでした。

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