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百物語2013

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Part86
278 :代理投稿 ◆YJf7AjT32aOX :2013/08/24(土) 06:07:10.84 ID:hqzLBEKk0
【第八十六話】狗 ◆NikuJ1/fzk様
(1/3)
「よく視えて」しまう男、Oにはヘンな持論があった
「俺は視えているわけでなく、たまにキチガイになっているだけだ」
これを説明するときに、こんなことを言い出した
ある日、スーパーで買い物にいって品物を物色していると
目の前に外人の小さな女の子がこっちを見てニコニコしていたらしい。
へー、なんだろうと見つめ返していたが、不意に少女が大声を出して振り返り去っていった
するとその背中には大きなナイフが刺さっていて、
その走り去る足元に大量の血がこぼれている。
そしてその血がドンドンと自分に近づいてきて、叫びそうになった瞬間に・・・
目の前からすべてが消えていた。
「な、キチガイの妄想だろ?」
『・・・それだけじゃ説明にならないだろ』
「だからさ」
奴の説明はこうだ
・まず日本のスーパーに外人の少女の霊ってのがありえない。
・背中に刺さってるのが外人の癖に普通の出刃包丁だった。
・何か大声を出していたが、英語だったはずなのに聞き取れなかった。
「な?」
『な?っていわれてもさ・・・アレにそういう合理性を求めても』
「それにね、リアルすぎんのよ」
奴曰く、アレは現実に比べてあまりにも存在感がありすぎて、
でも細部に関しては微妙だったり細密だったり。
ようは自分の頭の中で作り上げた幻想がぱっと白昼夢のように出来上がり
それが瞬時に網膜上で合成されている、と考えた方が間尺に合うらしい。

280 :代理投稿 ◆YJf7AjT32aOX :2013/08/24(土) 06:08:35.52 ID:hqzLBEKk0
(2/3)
「大体にしてさ、首が半分ちぎれてこっちを見ている奴が渋谷の交差点の中で歩いていたりさ
 運動会やってる中で生首をサッカーボール代わり蹴ってる奴がさ、例えば霊だとしてもさ
 あんだけの衆目の前にいたとしたら、俺以外にも誰かには絶対見えてる奴が一人はいるはず。
 でも、誰も反応をしていないってことは、やっぱり俺の頭の中の幻想なんだよ。
 大体がそういうものなんだって。」
変なところで頑固な男だった。
でも、「大体が」というだけあって、
やっぱりOがキチガイだ、というだけでは説明できないものもそうだ。
・・・・
Oが部屋で音楽を垂れ流しながらゴロゴロしていると、マンションの外から子供の声が聞こえた。
1階には子供広場があるので、休日だと子供たちの遊ぶ声が良く響いてくるそうだ。
だがその日はちょっと違って、みんなで遊んでいる声ではなく、
多分だが、一人だけでクスクス、ケラケラ笑っている声が聞こえたそうだ。
それも近くに
確かにちょっとおかしい。
部屋にかけた音楽はそれなりに大音量。
でもその子供の声だけはやけにハッキリと耳に届く。
それが段々と、近くによって来るのが分かる。
窓の近くだ
さすがになにか、通常のではない、「何か」の感じが漂うのに気づく。
声は窓の外でクスクス、ケラケラ
小さい声。でも耳にはハッキリと聞こえてくる。

281 :代理投稿 ◆YJf7AjT32aOX :2013/08/24(土) 06:11:19.69 ID:hqzLBEKk0
(3/3)
すると窓に、ペタ、っと何かが張り付く。
「なんだ?」気味が悪いが気にもなる。ゆっくりと近づいて窓を凝視すると
手形
子供の手の形をした手形。それが窓についていた。
次の瞬間、窓に向かって無数の手形がダダダダッと叩きつけられ
部屋中に子供たちの叫ぶような笑い声が響く
そしてその音が一瞬に部屋の外に飛び出し、部屋の外の右手側に消えていった
その光景に声を上げたものの、さすがにそういう事象には慣れている。
直ぐに我にかえって家を飛び出して、声の消えた方を見たがそこには誰もいない。そして姿がないことを確認して、ああ、と思った
「こりゃアレの仕業だよな・・・・」
家を出て通路の右側は行き止まり。
そこに人影がないなら、それは、人の仕業じゃない。
・・・・
「その後窓の外からその手形調べたらさ、泥でつけた手形だったんだよね。だからさ、これに関しては物理的に証拠がある以上、なにかしらの物理現象は起こったわけだから俺の頭がキチガイになったから、だけじゃ説明はつかないんだよね」
『ほらやっぱりあるじゃないか』
「でも可能性としてはさ、手形を付けた後、子供たちが全員通路からダイブして・・・」
『ねーよ』
「・・・まあ万が一、そうやって子供たちが消えたとしてもさ
 もう一つだけは絶対に人間業じゃない証拠があるんだよね」
『なに?』
「一番最初の手形があったんだけどさ、
 それだけは部屋の内側から擦り付けてあったんだよね。
 これだけはどう説明しても・・・・」
そこでふとOが黙り込んだ。
『どうした?』
「もしかして、その瞬間俺の脳がスパークしている間に狡猾な子供が家の施錠を外し部屋の中に乱入。
 放心する俺を尻目に内側から・・・」
 どうしても霊を否定したいようだ。
[了]

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