百物語2013
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256 :50 ◆YJf7AjT32aOX :2013/08/24(土) 05:10:04.06 ID:hqzLBEKk0
峠の主
(1/2)
これは先ほどの天狗に出会った日の、帰りの道中でのこと。
京都から僕の地元へ帰る道は2つある。
1つはひたすら高速を使い帰るルート。
もう1つは、途中まで高速を使い、途中で降りて峠越えをするルート。
この峠は、最近新しくトンネルが出来て行き来がかなり楽になり、
高速料金が安い、渋滞に巻き込まれないなどの理由で峠ルートを利用することの方が多かった。
その日の帰りは、いつもより早く、20時頃に峠を越えるような時間帯に帰ってきた。
峠独特の何か嫌な感じもなく、何より京都観光を満喫した僕たちは意気揚々と帰路を地元に向かい走っていた。
やがて峠に入り、新しいトンネルに突入。道は下りになったが、他には何もなく、前後の車もなく、ただ僕らを乗せた車が走っていく。
何の前触れも無かった。
だから正直、自分の目に映ったものが信じられなかった。
トンネルも終わりにさしかかった頃、前の道を大きな影が横断していったのだ。
この中に夏目友人帳を読んだことがある方は居るだろうか。
その中に、家の中に入り込んでしまった、大きな黒い影のような妖怪が登場する回があるのだが、
まさしくあれそっくりな影だった。
257 :50 ◆YJf7AjT32aOX :2013/08/24(土) 05:10:42.57 ID:hqzLBEKk0
まるで、いつもの日常の様に行われた行為に、そしてあまりの違和感の無さに、
最初はスルーしてしまいそうな勢いだった。
だが違う。何かがおかしい。
そのとたん、運転していた友人(色々見える、41話のA)がブレーキを一気に踏み込んだ。
影が横断したポイントも通り過ぎ、峠も降りきるまで、誰もなにも喋らなかった。
やっと地元の県道に出た所で、僕が一言。
「なぁ、なんか横断したの見た?」
案の定、Aの返事は
「見た。なんか黒い影。だからブレーキ踏んだんじゃない」
だった。
ちなみにもう1人の友人Bは全くそういうものは見えない子で、やはり見えていなかった。
その峠の途中にあるキャンプ場では、ネットで名前を検索すると
地元の僕たちでさえ怖くなるような心霊体験の投稿が残っている。
正直、その黒い影のことを最初は怖いものだと思っていた。
だけど違う。
何も前触れが無かった、の言葉通り、嫌な気配も何も無かったのだ。
あれの正体は未だに謎だけれど、僕とAの間では
『峠に生きるデイタラボッチ的何か』
ということで自分たちを納得させている。
[了]
峠の主
(1/2)
これは先ほどの天狗に出会った日の、帰りの道中でのこと。
京都から僕の地元へ帰る道は2つある。
1つはひたすら高速を使い帰るルート。
もう1つは、途中まで高速を使い、途中で降りて峠越えをするルート。
この峠は、最近新しくトンネルが出来て行き来がかなり楽になり、
高速料金が安い、渋滞に巻き込まれないなどの理由で峠ルートを利用することの方が多かった。
その日の帰りは、いつもより早く、20時頃に峠を越えるような時間帯に帰ってきた。
峠独特の何か嫌な感じもなく、何より京都観光を満喫した僕たちは意気揚々と帰路を地元に向かい走っていた。
やがて峠に入り、新しいトンネルに突入。道は下りになったが、他には何もなく、前後の車もなく、ただ僕らを乗せた車が走っていく。
何の前触れも無かった。
だから正直、自分の目に映ったものが信じられなかった。
トンネルも終わりにさしかかった頃、前の道を大きな影が横断していったのだ。
この中に夏目友人帳を読んだことがある方は居るだろうか。
その中に、家の中に入り込んでしまった、大きな黒い影のような妖怪が登場する回があるのだが、
まさしくあれそっくりな影だった。
257 :50 ◆YJf7AjT32aOX :2013/08/24(土) 05:10:42.57 ID:hqzLBEKk0
まるで、いつもの日常の様に行われた行為に、そしてあまりの違和感の無さに、
最初はスルーしてしまいそうな勢いだった。
だが違う。何かがおかしい。
そのとたん、運転していた友人(色々見える、41話のA)がブレーキを一気に踏み込んだ。
影が横断したポイントも通り過ぎ、峠も降りきるまで、誰もなにも喋らなかった。
やっと地元の県道に出た所で、僕が一言。
「なぁ、なんか横断したの見た?」
案の定、Aの返事は
「見た。なんか黒い影。だからブレーキ踏んだんじゃない」
だった。
ちなみにもう1人の友人Bは全くそういうものは見えない子で、やはり見えていなかった。
その峠の途中にあるキャンプ場では、ネットで名前を検索すると
地元の僕たちでさえ怖くなるような心霊体験の投稿が残っている。
正直、その黒い影のことを最初は怖いものだと思っていた。
だけど違う。
何も前触れが無かった、の言葉通り、嫌な気配も何も無かったのだ。
あれの正体は未だに謎だけれど、僕とAの間では
『峠に生きるデイタラボッチ的何か』
ということで自分たちを納得させている。
[了]
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