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百物語2013

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Part42
147 :葛 ◆PJg/T8DlUQ :2013/08/24(土) 02:05:09.80 ID:LMkZGz9sO
【第四十二話】
「約束」1/2
近所に若い夫婦が引っ越してきた
若いながらもしっかりした2人で、5歳になる娘をそれはそれは可愛がっていたが、ある時重い病気にかかった娘が亡くなってしまった
娘は死の間際両親に、「もう一度パパとママの子供になりたい」と告げ、夫婦は涙ながらに「もう一度パパとママの子供に生まれてきてね」と答えたという
夫婦は娘を失ったショックからしばらく放心状態だったが、2年後に娘が生まれ、それから更に5年後には息子も生まれ、どうにか立ち直ったように見えた
…が、それからしばらくして、夫婦の態度がどうも娘に対してよそよそしいようだと噂になった
それどころか、娘に対して怯えているようにさえ見えると
それはきっと、一度娘を亡くした負い目からだろうというのが周囲の見解だった
やがて娘は成長し、大学に合格して家を出て行った
そんなある日、祭りの準備で地域の住民が集まった中に、珍しく酔いつぶれた父親の姿があった
「珍しいですね」
そう水を向けると、べろんべろんに酔っ払った父親は赤い顔でこちらを見た
「…今日は娘が帰ってくるんですよ」
それなら尚更早く帰ってやればいいのに、と言うと父親は泣きそうな顔で首を振った
「……娘が、怖いんです……」
普段ならそんなことを口にしないであろう父親のその言葉に、今まで感じていたことは気のせいではなかったのだと、少しばかり好奇心がわいた
祭り前の喧騒を避けるように小さな声で問う
「一体どうして、そんなことを…?」
しばらく沈黙があってから、父親は重い口を開いてぽつりぽつりと話し始めた

148 :葛 ◆PJg/T8DlUQ :2013/08/24(土) 02:06:43.49 ID:LMkZGz9sO
「約束」2/2
それは、娘が5歳の時だったという。突然娘が母親にこう告げたのだそうだ
「約束通り、もう一度パパとママの子供に生まれてきたよ!」と
それを聞いて感動のあまり泣き崩れる夫婦に、娘は笑顔で続けた
「本当はね!弟が来るハズだったんだけど、代わってもらったの!」
「代わってってお願いしたの?」
そう問う母親に、娘は笑顔のまま、
「ううん!殺したの!」
凍りつく夫婦に、娘は無邪気な笑顔でにっこりと告げる
「だからママ、今度は弟を生んであげてね!」
「…実際妻は、妊娠初期は男児だろうと言われていたのに、誤診だったとかで途中から女児だと言われていたんですよ」
父親は重い息を吐いた
「…その後すぐに妻の妊娠が判明して。それが男の子だったんですよ……」
そして、と父親は続ける
「…生まれてきた息子は、姉である娘に対して異常に怯え、小さい頃なんて娘の姿を見ただけでひきつけを起こすほど泣いていたんです…」
父親は残った振る舞い酒を飲み干し、疲れたように立ち上がった
「私たちは罪深い。私たちが娘にあんなことを約束したばかりに、私たちは二人も子供を殺してしまった…」
「……二人?」
どういう意味か問うと、父親は小さく笑った
「……息子は、双子だった筈なんですよ」


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