百物語2010
Part98
323 :御子絵 ◆6scG3/0sFE :2010/08/21(土) 04:15:25 ID:FRvQpvUP0
【第九十八話】
≪母との最後の思い出≫1/6
私は母を数年前に亡くしています。生前母や兄姉家族とも疎遠だったため死に目にも会えず、
最後の別れも出来ませんでした。
その日は元旦で、私は兄姉家族が母を初詣に連れて行った事も知りませんでした。
・・・母は子供達の顔はわかる程度の認知症でした。
その元日の夜、私は久しぶりだし"おめでとうの挨拶くらいはしよう"と夜の8時頃
電話を掛けました。9時には寝る人なのでその時間に電話をしましたが、何度掛け直しても
母は出ませんでした。
お風呂か、今日は早めに寝ちゃったのかな?そう思い、その日はもう電話を掛ける事は
しませんでした。
そして二日後、母がくも膜下出血で亡くなった。と姉から電話が来ました。
!!…私は絶句しました。
324 :御子絵 ◆6scG3/0sFE :2010/08/21(土) 04:16:23 ID:FRvQpvUP0
2/6
後で兄に話を聞くと初詣で帰る時間が遅くなり、8時を過ぎたら母が
「早く帰らなきゃ、早く早く!」と、ものすごく焦っていたそうです。
母は私から電話が来た事を何かで知ったのでしょうか。
亡くなる自分を察知して私と最後のお話がしたかったのでしょうか。
私も、もしあの時話が出来ていたら…。9時過ぎてから電話をしていたら母と話が出来て、
もしかするとまだ生きていたかもしれないと思うと・・・後悔でいっぱいになり、
とても無念でなりませんでした。
私の百物語の最後のお話は、そんな母との初盆までの不思議な出来事です。
少し長いですがこの話をもって大団円とさせて下さい。
325 :御子絵 ◆6scG3/0sFE :2010/08/21(土) 04:17:18 ID:FRvQpvUP0
3/6
葬式後、私と兄は母の家にずっと泊まり、書類等を整理していました。
義姉と娘さんは飼い犬を母の家に預けてホテルに泊まっていました。
義姉が10時頃家に来るとワンちゃんは吠えます。
その日もカラカラ…カラカラと玄関の戸が開いて閉まる音が聞こえました。
私も兄も義姉が来たのだと思いました。
兄は手が離せなかったらしく、私に出るようにいいました。
だけどそう言ってから自分で玄関に行きました。ワンちゃんが吠えました。
兄が部屋に戻って不思議そうに「誰も来てなかったよ?」と首を傾げました。
私はえっ?と思って「でも、玄関開いたよね?」と…。
…だけどその時は義姉が来たらいつも鳴くワンちゃんは吠えなかったし…。
確かその日は初七日で、朝、お線香をあげる時に母に
「今日はお寺さんに行く日ですよ」と言いました。
私は思いました。気が早い母なので「お母さん、もうお寺に行っちゃったの?」と。
初七日が過ぎてからも私はしばらく家に帰りませんでした。
兄にひとつだけお願いされたのは母が飼っていた猫の事でした。
母猫と子猫数匹は姉が捕まえて処分したそうですが、1匹だけどうしても捕まえる事が
出来ずにいて、でもその子猫を捕まえたらお隣さんに連れて行けば獣医さんで飼い主を
探してくれると段取りがついているとの事。
326 :御子絵 ◆6scG3/0sFE :2010/08/21(土) 04:19:18 ID:FRvQpvUP0
4/6
その子猫は母の通夜、お葬式と、家を何度も回って、もう声が枯れるくらいメロメロメロ…
と、自分の母猫と亡くなった母を捜す様に物悲しく鳴いていて、私は勝手にメロンちゃんと
名付けていました。
ある日のゴミ出しのあと、郵便受けも見なきゃ。と玄関に行くとメロンちゃんらしき猫が
門のところにちょこんと座ってメロンメロン鳴いていました。
私はメロンちゃんだ!と思い、餌〜。と取りに行こうとしたら、メロンちゃんの方から私に
擦り寄ってくるではありませんか。
"なーんだ、こんなに人懐っこい猫じゃん"私はメロンちゃんを抱きかかえ、しばらく温もりを
楽しんだあとにお隣さんに連れて行きました。
おじさんは「よく捕まえられたねー」と驚いていました。
私は猫ちゃんの方から寄って来てくれたと話すと不思議そうに、でもにこにこしてくれました。
そして、おじさんはすぐに車で獣医さんに連れて行ってくれました。
私は何度もお礼を言って、メロンちゃんが優しい飼い主さんの家へ行くよう祈りました。
私はペット禁止のアパート住まいなので普段猫を飼っていません。
メロンちゃんが擦り寄って来たのは私が座っていた場所が母の場所だったので、
匂いが移ったのかな、と思った事と、亡き母が私がいるうちにメロンちゃんがしあわせに
なれるように願ったのかな、と思いました。
327 :御子絵 ◆6scG3/0sFE :2010/08/21(土) 04:20:25 ID:FRvQpvUP0
5/6
その後の話で、メロンちゃんは獣医さんでも、ものすごく人懐こくて、人気者で、
優しいおばあちゃんとお孫さんのいる家に貰われていったとの事でとても安心しました。
そして、私はしばらくしてから自分の家に帰りましたが、家についたのは夜だったのですが、
たまった洗濯物を片付けようと全自動洗濯機のフタを開けてギョッとしてすぐ閉めました。
…何故なら水が溜まっていたからです。
…全自動洗濯機って水を溜める設定にしないと溜まりませんよね?
洗濯が終わった時点では排水になってるはずです。蛇口から水が出ていたとしても排水で
流れるはずで…でも実際蛇口は閉まっていたし…。
ここで詳しいことを言うのは控えさせてもらいますが、母の死は水も関係していました。
だからなおさら溜まった水に驚いてしまいました。
私はその日は疲れもあって洗濯はせずに寝ました。
そして次の日もう一度確認してもやはり水は溜まっていました。
私は"きっと私の疲れを察して母が溜めてくれたのに違いない"そう思う事にしてその水で
洗濯をしました。
でもその後その洗濯機は全自動ではなく、半自動になってしまったのです。
洗濯が終わるとピピッと鳴って止まる。仕方ないのですすぎのスイッチにする。
…終わるとまた止まる。という具合に。…ものすごく不便になってしまい、どうしようかな、
と思っていたところに、母が使っていた全自動洗濯機を貰える事になり、今でも壊れる事無く
洗濯物をきれいにしてくれています。
328 :御子絵 ◆6scG3/0sFE :2010/08/21(土) 04:21:20 ID:FRvQpvUP0
6/6
最後の話は初盆のお話です。私は姉と一緒にお墓の掃除、お参りをする事にしていました。
私がいつも墓参りをする時は家の花を摘んでいったのですが、夏って花が咲かないんですね。
私は自分の無知に呆れながらも道に咲く花も摘んで、それで我慢してもらおうと思い
お墓に行ったら自分の目を疑うほど驚きました。
何故なら母の墓だけを囲むように紫の花がビッシリ生えていたからです。
姉は「先月来たけどこんなの咲いてなかったよ」と言うし私はどこかから種が飛んで来て
花が咲いたのかな?と思ったけど、でも隣のお墓にも周りを見渡しても紫の花は咲いてないんです。
私はびっくりしながらも微笑ましく思いながら「なんだぁ〜お花ここにあったのかぁ」って。
生前からお茶目な母が私達を驚かせようとイタズラしたのかなって。
"家に花なんて無いんて、ここにあるんて。暑い中、草ぼうぼうの中で花なんか探してないで
早く来れば良かったのにー"…母のにこにこ笑った顔が浮かびました。
だから私は"やられたー"って思いました。
もう、それは本当、墓前に生けられないくらいのたくさんのお花でした。
そしてそんな不思議な花が咲いたのは初盆の時だけだったらしいです。
後で検索してもその時の花はみつかりませんでした。
母は特に紫の花が好きだったわけでもないし、庭にも咲いてなく見たこともないような花でした。
でも今でもくっきりとその花は私の目に焼きついています。
以上で母にまつわる不思議話は終わりです。
【完】
【第九十八話】
≪母との最後の思い出≫1/6
私は母を数年前に亡くしています。生前母や兄姉家族とも疎遠だったため死に目にも会えず、
最後の別れも出来ませんでした。
その日は元旦で、私は兄姉家族が母を初詣に連れて行った事も知りませんでした。
・・・母は子供達の顔はわかる程度の認知症でした。
その元日の夜、私は久しぶりだし"おめでとうの挨拶くらいはしよう"と夜の8時頃
電話を掛けました。9時には寝る人なのでその時間に電話をしましたが、何度掛け直しても
母は出ませんでした。
お風呂か、今日は早めに寝ちゃったのかな?そう思い、その日はもう電話を掛ける事は
しませんでした。
そして二日後、母がくも膜下出血で亡くなった。と姉から電話が来ました。
!!…私は絶句しました。
324 :御子絵 ◆6scG3/0sFE :2010/08/21(土) 04:16:23 ID:FRvQpvUP0
2/6
後で兄に話を聞くと初詣で帰る時間が遅くなり、8時を過ぎたら母が
「早く帰らなきゃ、早く早く!」と、ものすごく焦っていたそうです。
母は私から電話が来た事を何かで知ったのでしょうか。
亡くなる自分を察知して私と最後のお話がしたかったのでしょうか。
私も、もしあの時話が出来ていたら…。9時過ぎてから電話をしていたら母と話が出来て、
もしかするとまだ生きていたかもしれないと思うと・・・後悔でいっぱいになり、
とても無念でなりませんでした。
私の百物語の最後のお話は、そんな母との初盆までの不思議な出来事です。
少し長いですがこの話をもって大団円とさせて下さい。
325 :御子絵 ◆6scG3/0sFE :2010/08/21(土) 04:17:18 ID:FRvQpvUP0
3/6
葬式後、私と兄は母の家にずっと泊まり、書類等を整理していました。
義姉と娘さんは飼い犬を母の家に預けてホテルに泊まっていました。
義姉が10時頃家に来るとワンちゃんは吠えます。
その日もカラカラ…カラカラと玄関の戸が開いて閉まる音が聞こえました。
私も兄も義姉が来たのだと思いました。
兄は手が離せなかったらしく、私に出るようにいいました。
だけどそう言ってから自分で玄関に行きました。ワンちゃんが吠えました。
兄が部屋に戻って不思議そうに「誰も来てなかったよ?」と首を傾げました。
私はえっ?と思って「でも、玄関開いたよね?」と…。
…だけどその時は義姉が来たらいつも鳴くワンちゃんは吠えなかったし…。
確かその日は初七日で、朝、お線香をあげる時に母に
「今日はお寺さんに行く日ですよ」と言いました。
私は思いました。気が早い母なので「お母さん、もうお寺に行っちゃったの?」と。
初七日が過ぎてからも私はしばらく家に帰りませんでした。
兄にひとつだけお願いされたのは母が飼っていた猫の事でした。
母猫と子猫数匹は姉が捕まえて処分したそうですが、1匹だけどうしても捕まえる事が
出来ずにいて、でもその子猫を捕まえたらお隣さんに連れて行けば獣医さんで飼い主を
探してくれると段取りがついているとの事。
326 :御子絵 ◆6scG3/0sFE :2010/08/21(土) 04:19:18 ID:FRvQpvUP0
4/6
その子猫は母の通夜、お葬式と、家を何度も回って、もう声が枯れるくらいメロメロメロ…
と、自分の母猫と亡くなった母を捜す様に物悲しく鳴いていて、私は勝手にメロンちゃんと
名付けていました。
ある日のゴミ出しのあと、郵便受けも見なきゃ。と玄関に行くとメロンちゃんらしき猫が
門のところにちょこんと座ってメロンメロン鳴いていました。
私はメロンちゃんだ!と思い、餌〜。と取りに行こうとしたら、メロンちゃんの方から私に
擦り寄ってくるではありませんか。
"なーんだ、こんなに人懐っこい猫じゃん"私はメロンちゃんを抱きかかえ、しばらく温もりを
楽しんだあとにお隣さんに連れて行きました。
おじさんは「よく捕まえられたねー」と驚いていました。
私は猫ちゃんの方から寄って来てくれたと話すと不思議そうに、でもにこにこしてくれました。
そして、おじさんはすぐに車で獣医さんに連れて行ってくれました。
私は何度もお礼を言って、メロンちゃんが優しい飼い主さんの家へ行くよう祈りました。
私はペット禁止のアパート住まいなので普段猫を飼っていません。
メロンちゃんが擦り寄って来たのは私が座っていた場所が母の場所だったので、
匂いが移ったのかな、と思った事と、亡き母が私がいるうちにメロンちゃんがしあわせに
なれるように願ったのかな、と思いました。
327 :御子絵 ◆6scG3/0sFE :2010/08/21(土) 04:20:25 ID:FRvQpvUP0
5/6
その後の話で、メロンちゃんは獣医さんでも、ものすごく人懐こくて、人気者で、
優しいおばあちゃんとお孫さんのいる家に貰われていったとの事でとても安心しました。
そして、私はしばらくしてから自分の家に帰りましたが、家についたのは夜だったのですが、
たまった洗濯物を片付けようと全自動洗濯機のフタを開けてギョッとしてすぐ閉めました。
…何故なら水が溜まっていたからです。
…全自動洗濯機って水を溜める設定にしないと溜まりませんよね?
洗濯が終わった時点では排水になってるはずです。蛇口から水が出ていたとしても排水で
流れるはずで…でも実際蛇口は閉まっていたし…。
ここで詳しいことを言うのは控えさせてもらいますが、母の死は水も関係していました。
だからなおさら溜まった水に驚いてしまいました。
私はその日は疲れもあって洗濯はせずに寝ました。
そして次の日もう一度確認してもやはり水は溜まっていました。
私は"きっと私の疲れを察して母が溜めてくれたのに違いない"そう思う事にしてその水で
洗濯をしました。
でもその後その洗濯機は全自動ではなく、半自動になってしまったのです。
洗濯が終わるとピピッと鳴って止まる。仕方ないのですすぎのスイッチにする。
…終わるとまた止まる。という具合に。…ものすごく不便になってしまい、どうしようかな、
と思っていたところに、母が使っていた全自動洗濯機を貰える事になり、今でも壊れる事無く
洗濯物をきれいにしてくれています。
6/6
最後の話は初盆のお話です。私は姉と一緒にお墓の掃除、お参りをする事にしていました。
私がいつも墓参りをする時は家の花を摘んでいったのですが、夏って花が咲かないんですね。
私は自分の無知に呆れながらも道に咲く花も摘んで、それで我慢してもらおうと思い
お墓に行ったら自分の目を疑うほど驚きました。
何故なら母の墓だけを囲むように紫の花がビッシリ生えていたからです。
姉は「先月来たけどこんなの咲いてなかったよ」と言うし私はどこかから種が飛んで来て
花が咲いたのかな?と思ったけど、でも隣のお墓にも周りを見渡しても紫の花は咲いてないんです。
私はびっくりしながらも微笑ましく思いながら「なんだぁ〜お花ここにあったのかぁ」って。
生前からお茶目な母が私達を驚かせようとイタズラしたのかなって。
"家に花なんて無いんて、ここにあるんて。暑い中、草ぼうぼうの中で花なんか探してないで
早く来れば良かったのにー"…母のにこにこ笑った顔が浮かびました。
だから私は"やられたー"って思いました。
もう、それは本当、墓前に生けられないくらいのたくさんのお花でした。
そしてそんな不思議な花が咲いたのは初盆の時だけだったらしいです。
後で検索してもその時の花はみつかりませんでした。
母は特に紫の花が好きだったわけでもないし、庭にも咲いてなく見たこともないような花でした。
でも今でもくっきりとその花は私の目に焼きついています。
以上で母にまつわる不思議話は終わりです。
【完】
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