百物語2010
Part80
Part1<<
Part76
Part77
Part78
Part79
Part80
Part81
Part82
Part83
Part84
>>Part100
評価する!(7956)
百物語一覧に戻る
評価する!(7956)
百物語一覧に戻る
273 :柏餅 ◆A6QVLbDKu6 :2010/08/21(土) 03:03:43 ID:1sgwWD2IO
【隣人 1/3】
高校出てすぐ、初めて一人暮らしを始めた頃の話。
俺の住んでたアパートは木造2階建ての小汚いものだった。
部屋数は下が4室、上が3室で、俺の部屋は2階の真ん中の部屋だった。
一応、入居の挨拶に全室回ったんだが、俺の部屋の左隣は表札がなかった。
と言っても、表札を付ける場所が設けられていないので、どの家も適当な場所に貼り付ける感じ。
だから、しばらくたって左隣から物音がする事に気付いた時も、単に表札を出してないだけかと思っていた。
物音に気付いてからすぐに粗品を持って挨拶に行ったのだが、住人は出てこなかった。
チャイムを押しても、チャイムの音も聞こえない。
が、扉の向こうで物音は確かにしていた。
ついでに、ペット禁止にも関わらず、猫の鳴き声も聞こえた。
ノックしてみたりもしたが、猫を残して外出中なのか、とにかく出てきてはくれない様子。
日時を変えてその後も何度か訪ねてみたのだが、いつも返事はなかった。
俺もだんだん面倒になって、そこの住人には挨拶をせずに生活を始めた。
数日たった、やたらと暑い日。
その日は出掛ける用事も気力もなくて、俺は寝転がってTVを見ていた。
冷房がなかったので窓を全開にしていたのだが、そうすると蝉の声がやたらとうるさい。
TVの音が聞き取りにくいので、少しボリュームを上げた…その時。
ダンッ!!と、左隣の壁が向こう側から殴られた。
うるさいという程にはボリュームは上げていなかったのに。
ずいぶん神経質な人なんだな、猫飼ってるの大家にバラすぞ、などと思いながらもボリュームを下げた。
そんな事が、何度かあった。
274 :柏餅 ◆A6QVLbDKu6 :2010/08/21(土) 03:05:01 ID:1sgwWD2IO
【隣人 2/3】
従兄から使わなくなったヘッドホンを貰ってから、俺はもっぱらそれを使ってTVを見るようになった。
隣人は水音や足音などの生活音に対しては文句を言わないようなので、
TVの音量さえ気を付けていれば壁を殴られる事はない。
ただ、逆に気になったのは、隣人の生活音だ。
休みの日に俺が一日中部屋にいても、昼も夜も生活音がしない。
今思えば、玄関のドアの開け閉めの音も聞いた事がないような気がする。
猫のたてる物音や鳴き声だけが聞こえる。
気になって、ヘッドホンを抜いてわざとTVのボリュームを少し上げると、間髪いれずに壁が殴られた。
一応、いるようではある…。
奇妙な隣人に、少しずつ気味の悪さを感じ始めた。
入居から8カ月ほどたって、俺は再び引っ越す事になった。
引っ越しの日に大家が来ていたので、隣の人はどんな人なのか、と聞いてみた。
「君の隣は、空き室だよ。もう1年近く空き室のまんまだな」
うわ〜、と思った。
「まさか、前に住んでた人、亡くなったとかじゃないですよね?」
恐る恐る聞いてみたのだが、意外にもそういう事はなかったようだ。
前の住人は家賃を滞納した上、猫を飼っているのがバレて、大家に追い出されたらしい。
でも、失踪したとかでもなく、普通に猫連れて軽トラで引っ越していったそうだ。
275 :柏餅 ◆A6QVLbDKu6 :2010/08/21(土) 03:06:30 ID:1sgwWD2IO
【隣人 3/3】
やたらと隣人を気にする理由を尋ねられたので、俺はこれまでの事を話した。
もしかしたら、不法侵入して猫と一緒に勝手に住んでいる奴がいるのかも、と思ったからだ。
だが、大家と一緒にその部屋を見に行くと、ごく普通の殺風景な空き室だった。
人はもちろん、猫がいた形跡もない。
よく分からないがアパートの回りも点検してみるという大家に付き合い、俺も狭い路地を回ってみた。
すると…件の部屋の窓の下に、猫らしい古い死骸があった。
もうボロボロで、その住人が飼っていた猫かどうかは大家にも分からなかったが、
どこかに葬ってやろう、と大家はその死骸をビニール袋に入れて持ち帰った。
部屋も後日お祓いすると言っていた。
この発見で猫の存在については何となく説明がついたわけだが、謎は残る。
壁を殴る、あの音だ。
明らかに人が拳で殴りつける音だったので、猫の霊とかって感じではなかった。
色々と想像は出来るが…真相は今も分からないままだ。
《完》
【隣人 1/3】
高校出てすぐ、初めて一人暮らしを始めた頃の話。
俺の住んでたアパートは木造2階建ての小汚いものだった。
部屋数は下が4室、上が3室で、俺の部屋は2階の真ん中の部屋だった。
一応、入居の挨拶に全室回ったんだが、俺の部屋の左隣は表札がなかった。
と言っても、表札を付ける場所が設けられていないので、どの家も適当な場所に貼り付ける感じ。
だから、しばらくたって左隣から物音がする事に気付いた時も、単に表札を出してないだけかと思っていた。
物音に気付いてからすぐに粗品を持って挨拶に行ったのだが、住人は出てこなかった。
チャイムを押しても、チャイムの音も聞こえない。
が、扉の向こうで物音は確かにしていた。
ついでに、ペット禁止にも関わらず、猫の鳴き声も聞こえた。
ノックしてみたりもしたが、猫を残して外出中なのか、とにかく出てきてはくれない様子。
日時を変えてその後も何度か訪ねてみたのだが、いつも返事はなかった。
俺もだんだん面倒になって、そこの住人には挨拶をせずに生活を始めた。
数日たった、やたらと暑い日。
その日は出掛ける用事も気力もなくて、俺は寝転がってTVを見ていた。
冷房がなかったので窓を全開にしていたのだが、そうすると蝉の声がやたらとうるさい。
TVの音が聞き取りにくいので、少しボリュームを上げた…その時。
ダンッ!!と、左隣の壁が向こう側から殴られた。
うるさいという程にはボリュームは上げていなかったのに。
ずいぶん神経質な人なんだな、猫飼ってるの大家にバラすぞ、などと思いながらもボリュームを下げた。
そんな事が、何度かあった。
274 :柏餅 ◆A6QVLbDKu6 :2010/08/21(土) 03:05:01 ID:1sgwWD2IO
【隣人 2/3】
従兄から使わなくなったヘッドホンを貰ってから、俺はもっぱらそれを使ってTVを見るようになった。
隣人は水音や足音などの生活音に対しては文句を言わないようなので、
TVの音量さえ気を付けていれば壁を殴られる事はない。
ただ、逆に気になったのは、隣人の生活音だ。
休みの日に俺が一日中部屋にいても、昼も夜も生活音がしない。
今思えば、玄関のドアの開け閉めの音も聞いた事がないような気がする。
猫のたてる物音や鳴き声だけが聞こえる。
気になって、ヘッドホンを抜いてわざとTVのボリュームを少し上げると、間髪いれずに壁が殴られた。
一応、いるようではある…。
奇妙な隣人に、少しずつ気味の悪さを感じ始めた。
入居から8カ月ほどたって、俺は再び引っ越す事になった。
引っ越しの日に大家が来ていたので、隣の人はどんな人なのか、と聞いてみた。
「君の隣は、空き室だよ。もう1年近く空き室のまんまだな」
うわ〜、と思った。
「まさか、前に住んでた人、亡くなったとかじゃないですよね?」
恐る恐る聞いてみたのだが、意外にもそういう事はなかったようだ。
前の住人は家賃を滞納した上、猫を飼っているのがバレて、大家に追い出されたらしい。
でも、失踪したとかでもなく、普通に猫連れて軽トラで引っ越していったそうだ。
275 :柏餅 ◆A6QVLbDKu6 :2010/08/21(土) 03:06:30 ID:1sgwWD2IO
【隣人 3/3】
やたらと隣人を気にする理由を尋ねられたので、俺はこれまでの事を話した。
もしかしたら、不法侵入して猫と一緒に勝手に住んでいる奴がいるのかも、と思ったからだ。
だが、大家と一緒にその部屋を見に行くと、ごく普通の殺風景な空き室だった。
人はもちろん、猫がいた形跡もない。
よく分からないがアパートの回りも点検してみるという大家に付き合い、俺も狭い路地を回ってみた。
すると…件の部屋の窓の下に、猫らしい古い死骸があった。
もうボロボロで、その住人が飼っていた猫かどうかは大家にも分からなかったが、
どこかに葬ってやろう、と大家はその死骸をビニール袋に入れて持ち帰った。
部屋も後日お祓いすると言っていた。
この発見で猫の存在については何となく説明がついたわけだが、謎は残る。
壁を殴る、あの音だ。
明らかに人が拳で殴りつける音だったので、猫の霊とかって感じではなかった。
色々と想像は出来るが…真相は今も分からないままだ。
《完》
百物語2010
Part1<< Part76 Part77 Part78 Part79 Part80 Part81 Part82 Part83 Part84 >>Part100
評価する!(7956)
百物語一覧に戻る
怖い系の人気記事
百物語
→記事を読む
本当に危ないところを見つけてしまった
スレタイの場所に行き知人が一人行方不明になってしまったHINA ◆PhwWyNAAxY。VIPPERに助けを求め名乗りでた◆tGLUbl280sだったが得体の知れないモノを見てから行方不明になってしまう。また、同様に名乗りでた区らしき市民 ◆34uqqSkMzsも怪しい集団を目撃する。釣りと真実が交差する物語。果たして物語の結末は・・・?
→記事を読む
短編シリーズ
→記事を読む
毒男の怖い話とか音楽とか雑談とか
音楽をお供に、上質な怪談を味わってみませんか?
→記事を読む
師匠シリーズ
→記事を読む
唯一の友達の性癖が理解できない。
唯一の友達に唾液を求められ、VIPPERに助けを求める>>1。しかし運が悪いことに安価は「今北産業」で、スレの存在を友達に知られてしまう。そして事は予想だにしなかった展開に…!!
→記事を読む
守護霊「ゴルゴマタギ」
かのゴルゴそっくりなマタギの守護霊が憑いている友人を持つ報告者。そしてたびたび危機に巻き込まれるが、そのゴルゴよって救われる友人。愉快な心霊話に終わるかと思いきや、事態は予想外に大きくなっていき、そして…
→記事を読む
屋根裏から変な音する。獣害に詳しいやつ来てくれ
いっそ獣害だった方が救いはあった。
→記事を読む
笑い女
あなたは最近いつ人に笑われましたか?その声は耳に残ってはいませんか?居た。居た。居た。
→記事を読む
【都市伝説】都市伝説を語る会管理人が選ぶ【50選】
→記事を読む