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百物語2010

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Part61
204 :柏餅 ◆A6QVLbDKu6 :2010/08/21(土) 01:20:11 ID:1sgwWD2IO
【カラオケボックスにて 1/3】
先週、ちょうどお盆の時期の話。
実家に帰省していた俺は、地元の旧友二人(A・B)と再会を祝して飲んでいた。
当初は終電で帰る予定だったのだが、盛り上がっているうちに終電を逃してしまった。
仕方ないのでカラオケにでも行って始発を待つか、という事に。
「俺が昔バイトしていたビル、改装されてカラオケ店になったんだ。そこ行こうぜ」
そうAが言ったのだが、正直、俺とBは気が乗らなかった。
というのも、俺とBは多少の霊感持ちで、そのビルに『いる』事を知っていたからだ。
だが零感のAは、俺とBの微妙な反応にも気付かず、さっさと歩きだしてしまった。
件のビルに着くと、確かにすっかり改装されていて、内部に当時の面影はなかった。
まだ新しく、綺麗で明るい雰囲気の店だ。
あの頃のような、淀んだ空気は全く感じなかった。
5階の一室に通され、しばらくは何事もなく交代で歌っていたのだが…。
深夜3時を回った頃、異変が始まった。
入れたはずのない曲が入っている(韓国語の曲だった)、
冷房を切ったのに足元を冷たい風が撫でる、
マイクを指先で叩くようなノイズが何度も入る、などなど。
俺とBは極力気にしないように努めていたのだが、何かいるって事は明白だった。
零感のAも、何かおかしいと気付き始めたようだった。

205 :柏餅 ◆A6QVLbDKu6 :2010/08/21(土) 01:21:57 ID:1sgwWD2IO
【カラオケボックスにて 2/3】
入れたはずのない韓国語の曲がまた流れ出したので、演奏中止のボタンを押した。
もう全員、曲の予約など忘れていたので、画面は映画の予告を映し始めた。
…だが、音がない。
さっきまでノイズ交じりでも動いていたスピーカーが、全くの無音。
次の瞬間、突然テーブルがガタガタと揺れ始めた。
二つ並んで設置されているテーブルの片方だけが、リアルに揺れていた。
Aが灰皿の縁に置いていたタバコの吸いさしが、転がって灰皿内に落ちた。
三人とも無言のまま、なぜかそのテーブルの足元を覗き込んだ。
…子供の手が、テーブルの支柱を掴んで揺さぶっていた。
手首から先しかない手が、床から20センチくらいのところに浮いていた。
うわあああ!と悲鳴を上げたAの口を、隣に座っていたBがふさいだ。
「落ち着け、騒ぐな。とりあえず黙れ、な?」
なだめるようにBがそう言うと、Aは泣きながら無言で2回うなずいた。
腰の抜けたAを抱えるようにしながら、俺たちは手早く荷物をまとめて部屋を出た。
その間もテーブルは揺れていて、スピーカーは無音のまま。

206 :柏餅 ◆A6QVLbDKu6 :2010/08/21(土) 01:23:19 ID:1sgwWD2IO
【カラオケボックスにて 3/3】
すぐにもこのビルから出たかったが、Aがまともに歩ける状態ではなかったので、
俺たちはひとまずトイレに行った。
洗面台に掴まってしゃがみこみながら、Aは震えていた。
「あれ、あれ何?手だった、手だけ…」
そういうものを初めて見たAは、かなりパニクっていた。
俺とBは顔を見合わせて、やっぱりな、という表情。
ちょっと迷ったが、俺はAに正体を教えた。
「あれな、お前がバイトしてた頃からいたんだよ。半袖のTシャツ着た男の子」
当時、俺とBはAのバイト先に遊びに行った時、全身を見ていた。
店の窓辺に一人で座っていたり、店内を走りまわったりしていた。
時には客の足元まで来て、顔を覗き込んだりもしていた。
あれは多分、『見える奴』を探していたんだと思う。
ずっと一人で、寂しかったのかもしれない。
その頃も、場所はちょうど、あのビルの5階だった。
《完》

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