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百物語 第一回

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Part4
101 :本当にあった怖い名無し :2006/07/22(土) 23:30:35 ID:FSPnrC160
その日は朝から雪が降っていました。私と弟は外で遊びたくてウズウズしていましたが、風邪をひくと困るから雪がやむまで待ちなさい、という母の言葉に従って、家の中で一日おとなしく遊んでいました。
冬の夕暮れは早いものです。5時といえばもう暗くなってきます。その日、雪がやんだのは5時を過ぎていました。
雪がやんだので、私と弟は外に出たくてたまらなくなりました。
母から、一時間だけ、という了解をもらって私たち兄弟は外に飛び出して行きました。
薄暗くなっても、世界は一面の銀世界。
降り積もった真っ白な雪のおかげで、そんなに暗くは感じません。
当時、私たちが住んでいた家は田舎だったので、家の前には田んぼが広がっていて、車も少なかったせいか道も、田んぼも、何の足跡もなくただ真っ白な雪原でした。
私たちは嬉しくて、誰も足跡をつけていない田んぼを歩きまわりました。
フワフワした雪に、自分たちだけの足跡がどんどんついていきます。家の前の田んぼはすぐに私たち兄弟の足跡でボコボコになりました。でも、もっと足跡をつけたくて、私たちは道向いの田んぼの方まで行きました。
道向いと言っても、わずか2mばかりの狭い道路を挟んでのことですから、家はすぐそこに見えます。
そこもやっぱり真っ白で、何の足跡もついていません。
たった一つの街灯が雪の田んぼを青白く輝かせていました。
道から田んぼを見ながら、私たちは足跡で顔を描く事にしました。
スマイル君のような顔を二人の足跡で描くことにしたのです。
どっちがどの部分を担当するか決めた後、私たちは真っ白な田んぼに入って夢中で足跡をつけました。
頭の中で完成図を想像しながら、足下と自分の通った痕跡だけを確かめながら、夢中で絵を描くのに没頭しました。
絵が完成するのに、15分もかからなかったと思います。それぞれの担当が終わると、私たちは道に戻って出来上がった絵を確かめようとしました。
ところがそこで、私たち兄弟はおかしなものを見てしまったのです。
二人で道に並んで田んぼを見た時、私たちは同時に息を飲みました。
それから二人で顔を見合わせて、もう一度田んぼを見ました。
私たちが足跡で描いた顔の向こうに、着物姿の花嫁さんが立っているのです。
白無垢の花嫁衣装を来て、日本髪に角隠しをつけた花嫁さんが、青白い雪の田んぼに一人で立っているのです。
私たちがここに来た時、もちろん、花嫁さんなんていませんでした。
それに、その花嫁さんの周りには私たち兄弟の小さな足跡がついているだけで、花嫁さん自身が歩いてきた足跡はどこにもありません。
頭や肩には、少し、雪が積もっていて、口紅だけがやけに赤く見えました。
私たちは怖くなって、同時に駆け出しました。家の明かりはすぐそこに見えます。
悲鳴のような声を出して玄関に入ると、母がビックリして出て来ました。
二人で見た出来事を話すと、母は笑って済まし、外を確認もしてくれませんでした。
高校生になった時、弟とあの雪の夜の出来事を話す機会がありました。
あんな所に角隠しの花嫁さんが立ってるなんて驚いたよね、と私が言うと、弟は、いいや、花嫁衣装は着てたけど、首は無かったよ、と答えました。そこで改めて私はゾッとしたのです。
【完】

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