三井×春子
Part1
271 :三井×春子:2010/08/06(金) 04:44:23 ID:HL4phuRw
お兄ちゃんが引退して、代わりに私がマネージャーになって。
忙しい日々が過ぎてゆく。
新しいチームで、前よりもっと強くなるために、よりハードな練習になって。
マネージャーの私は、選手のみんなに比べたら疲れることなんかしてないのに、家に着くとすぐにベッドに倒れ込む。
夢の中でも、出てくるのはいつも流川君や桜木君ばかり…なんだけど。
最近、三井さんが出てくることが多くなった気がする…。
お兄ちゃんが引退して淋しいのか、勉強の邪魔したいのか、休みの日の練習が終わると、三井さんがうちに来るようになったからかな…?
272 :三井×春子:2010/08/06(金) 05:04:33 ID:HL4phuRw
『赤木、漫画の続き借りに来たぞー』
あ、今日もまた三井さんが来た。
お兄ちゃん、木暮さんとまだ図書館だと思うんだけどな…
『三井さん、お疲れ様です…あの、お兄ちゃんまだ帰ってなくて…』
三井さんは頭をがしがし掻きながら、子供みたいに口を尖らせる。
『なんだよあいつ、ガリ勉野郎め』
帰って貰うのも申し訳ないしなぁ…
『もう少ししたら帰って来ると思うから、良かったら上がってください!』
お兄ちゃんの殺風景な部屋に案内すると、三井さんはベッドに寝そべって勝手に漫画を読み始めた。
毎日一緒に練習してるのに、三井さんと喋ったことって、あんまりないなぁ…。
彩子さんと違って、宮城さんや三井さんにはなんとなく声をかけにくい。
もっと色々話したいな…
そんなことを考えながら台所に行って、麦茶を持って部屋に戻ると…三井さんは既に寝息をたてていた。
273 :三井×春子:2010/08/06(金) 05:15:35 ID:HL4phuRw
起こさないように、そっと麦茶を机に置いて、寝顔を覗き込む。
思ったより長い睫が、窓からの光で頬に影を作っている。
華奢ながらにごつごつした大きな手や、バランス良くついた筋肉が、なんだかとても綺麗に見えた。
(私も、三井さんみたいにシュートが打てたら…どんなに気持ちがいいんだろう?)
あどけない寝顔を見つめながら、ベッドの傍に座ると、暖かな秋の日差しが心地良くて、いつしか瞼が落ちていった。
274 :三井×春子:2010/08/06(金) 05:41:13 ID:HL4phuRw
空が青からオレンジ色に変わる頃、俺はぼんやりと目を覚ました。
見慣れない天井を見渡して、寝返りを打つ。
…!?
鼻先を、さらさらとした髪がくすぐった。
シャンプーの優しい香りが広がる。
思わず勢い良く飛び起きると、眠りに落ちる前の記憶が蘇ってきた。
(そうだ、赤木の家に来て、寝ちまったんだ…)
それはそうと、なんでこいつがここで寝てるんだ。
無防備すぎるだろ、いくら兄貴の友達だからって。
(しっかし、いかつい赤木の妹とは今更ながらに信じられねーよな…)
細い肩、白い肌。
小さな唇は、自分のものとは違い、艶々と潤っている。
(キスしたのなんて、どんだけ前だっけな…)
数ヶ月前のバスケ部に戻る前の日々が、随分昔のことのような気がする。
あの頃は、空虚な心を満たす為に、気持ちも無いのに付き合ったりもした。
(馬鹿だったよな…俺)
これからは大事にしたい。
バスケも、自分も、友達も。
いつか好きになる誰かも。
夕日で輝く春子の細い髪を、三井は無意識に、優しく撫でた。
275 :三井×春子:2010/08/06(金) 06:12:04 ID:HL4phuRw
『ん…』
吐息混じりの掠れた声が洩れる。
体育館に響くいつもと同じ高めの声が、甘く、柔らかく、三井の胸を震わせる。
静かな部屋の中で、自分の鼓動が速くなっていくのがはっきりとわかった。
(やべえ)
なんで、今まで何とも思わなかったんだろう。
こんなに可愛いのに。
桜木がこいつのことを好きだからか?
赤木の妹だから?
(いや、違う。俺がバスケしか見えてなかっただけだ)
高鳴る心臓とは裏腹に、三井の頭の中はとても穏やかだった。
ゆっくりとベッドから降り、春子に近付くと、天使のように無垢な唇に、そっと自分のを重ね合わせた。
276 :三井×春子:2010/08/06(金) 06:37:10 ID:HL4phuRw
ふいに石鹸の香りがして、春子は夢の中から戻ってきた。
ぼんやりとした視界の先には、見覚えのある長い睫があった。
(キリンみたい)
幼い頃、兄と2人で行った動物園を思い出した。
……。
………?
…………!?
重なった唇が微かに震え、三井は目を開ける。
そこには、大きくて真っ直ぐな、茶色い瞳があった。
『…起こしちまったか』
低くて落ち着いた声が、部屋に響く。
数時間前と同じように、がしがしと頭を掻く姿を見て、春子は急にせつなくなった。
澄んだ瞳に、涙が滲む。
それは大きな粒となり、白い頬を伝った。
『悪い。寝てる時なんて狡いよな。』
三井の大きな手が、優しく、優しく、春子の頭を撫でる。
その温もりが、一層胸を締め付ける。
(違う…違うの。)
277 :三井×春子:2010/08/06(金) 06:49:54 ID:HL4phuRw
細い指が伸びる小さな手で、自分の目頭をおさえる。
それでも涙は、ぽろぽろとこぼれ落ちていく。
(嫌だった訳じゃないの。)
肩が小さく上下する。
(どうして…)
(どうして謝るの?)
冷たい雫が膝に落ちる。
(初めてのキスが、三井さんとで…嬉しかったのに。)
(どうして謝るの??)
やっと気付いた自分の気持ち。
憧れじゃない、本当の 好き 。
なのに、気付いた瞬間、砕けてしまった。
三井さんには、 好き が無かったんだ。
後から後からこみ上げる、涙とせつなさに、春子は顔を覆う手を離すことができなかった。
278 :三井×春子:2010/08/06(金) 07:08:02 ID:HL4phuRw
固い床に胡座をかいて、三井は泣いている横顔をずっと見つめていた。
(泣かせるつもりじゃなかったんだけどな)
じゃあ、どんなつもりだったのかと聞かれたら、言葉に詰まってしまうのだけれど。
いつも明るく仲間に声をかける姿や、密かにテーピングの巻き方を勉強するひたむきな姿を思い出して、こんな状況の中、三井の心は穏やかだった。
(やっと気付いたんだ)
大事にしたい誰かが、誰なのかを。
目を細めて机を見ると、氷が随分小さくなった麦茶が2つ並んでいた。
もう少しして、泣き止んだら…ちゃんと言おう。
ふられちまうかもしれないけど。
この小さな手で、ひっぱたかれるかもしれないけど。
今度はちゃんと、起きてる時に。
柔らかい唇にキスするんだ。
何度も。
何度も。。
284 :三井×晴子 涙の後に:2010/08/08(日) 04:33:31 ID:QZlUKtHh
窓の外をかける風の音だけが、部屋に響く。
2人の唇が触れ合って、離れてから、、どれ程の時間が流れたのだろう。
声もたてずに静かに震え、頬を濡らす晴子を、三井は黙って見つめていた。
泣かせたのは、他でもない自分なのに、罪悪感も戸惑いもなかった。
芽生えたばかりの、優しい気持ちだけだった。
『ごめんな』
一言だけ、呟いた。
突然で、驚かせただろうから。
独りよがりの想いを押し付けて、嫌な気持ちにさせたかもしれないから。
それでも、迷うことなく真っ直ぐな瞳で、晴子を見つめた。
285 :三井×晴子 涙の後に:2010/08/08(日) 05:07:30 ID:QZlUKtHh
少し斜めに顔を背け、深く深呼吸をした後…晴子は指で涙を拭って三井を見上げた。
『…どうして謝るんですか?』
少し困ったような、でも、柔らかい表情で黙っている三井に、もう一度問いかける。
『謝るのは…気まぐれであんなことしたからですか?』
『気まぐれじゃねーよ』
晴子には、言葉の意味がわからなかった。
『気まぐれなんかじゃねーよ。むさい赤木にわざわざ会いに、しょっちゅう来てたわけじゃない。』
大きな風が、窓の外をざぁっと駆け抜けていった。
『俺、自分でもわかってなかったんだけどさ。』
ゆっくりと晴子の小さな手に、自分の手を重ねる。
2人の体温が、溶けてひとつになる。
『好きだよ』
重ねられた大きな手が、微かに震えている気がした。
288 :三井×晴子 涙の後に:2010/08/09(月) 02:44:53 ID:TlI4kmut
三井が囁いた甘い言葉が、現実と思えなくて。
(まだ夢を見てるのかな…?)
と、うさぎのように赤い目で、ぼんやりと三井を見つめた。
『…好きだから、キスしたくなった。…嫌だったか?』
晴子は首をふるふると小さく横に振る。
2人の視線が交わった瞬間、重なった手の指先が、どちらからともなく絡まった。
『私も、三井さんが、好きです。だから、嫌じゃないです。』三井が小さく、ほっ と息を吐いた後。
熱い2つの唇が、ひとつになった。
お互いの温もりや感触を心に刻み込むように、長い間、何度もキスをした。
唇が離れる度に、照れくさそうに微笑み合って、また距離がなくなって。
((時間が止まってしまえばいいのに…))
言葉にしなくても、2人は同じことを思っていた。
289 :三井×晴子 涙の後に:2010/08/09(月) 03:16:29 ID:TlI4kmut
オレンジ色の空が、群青色へと変わり始めた時。
晴子の頬に手を添えたまま、三井が急に動きを止めた。
(?)
不思議そうな顔で晴子が首を傾げる。
『こんなとこ赤木に見られたら…ハエタタキされんのかな、俺。』
青くなる三井を見て、思わず笑ってしまう。
けれど、笑い事じゃすまないかもしれない。
ここは、お兄ちゃんの部屋だから。。
『明日、練習終わったらさ。どっか一緒に行こうな。』
明日は日曜日。
三井さん、映画どんなのが好きなんだろ?
新しいバッシュを見に行くのもいいかもしれない。
明日も、明後日も、その次の日も。
この人と手を繋いでキスしたい。
今日は、その始まりの日。
お兄ちゃんが引退して、代わりに私がマネージャーになって。
忙しい日々が過ぎてゆく。
新しいチームで、前よりもっと強くなるために、よりハードな練習になって。
マネージャーの私は、選手のみんなに比べたら疲れることなんかしてないのに、家に着くとすぐにベッドに倒れ込む。
夢の中でも、出てくるのはいつも流川君や桜木君ばかり…なんだけど。
最近、三井さんが出てくることが多くなった気がする…。
お兄ちゃんが引退して淋しいのか、勉強の邪魔したいのか、休みの日の練習が終わると、三井さんがうちに来るようになったからかな…?
272 :三井×春子:2010/08/06(金) 05:04:33 ID:HL4phuRw
『赤木、漫画の続き借りに来たぞー』
あ、今日もまた三井さんが来た。
お兄ちゃん、木暮さんとまだ図書館だと思うんだけどな…
『三井さん、お疲れ様です…あの、お兄ちゃんまだ帰ってなくて…』
三井さんは頭をがしがし掻きながら、子供みたいに口を尖らせる。
『なんだよあいつ、ガリ勉野郎め』
帰って貰うのも申し訳ないしなぁ…
『もう少ししたら帰って来ると思うから、良かったら上がってください!』
お兄ちゃんの殺風景な部屋に案内すると、三井さんはベッドに寝そべって勝手に漫画を読み始めた。
毎日一緒に練習してるのに、三井さんと喋ったことって、あんまりないなぁ…。
彩子さんと違って、宮城さんや三井さんにはなんとなく声をかけにくい。
もっと色々話したいな…
そんなことを考えながら台所に行って、麦茶を持って部屋に戻ると…三井さんは既に寝息をたてていた。
273 :三井×春子:2010/08/06(金) 05:15:35 ID:HL4phuRw
起こさないように、そっと麦茶を机に置いて、寝顔を覗き込む。
思ったより長い睫が、窓からの光で頬に影を作っている。
華奢ながらにごつごつした大きな手や、バランス良くついた筋肉が、なんだかとても綺麗に見えた。
(私も、三井さんみたいにシュートが打てたら…どんなに気持ちがいいんだろう?)
あどけない寝顔を見つめながら、ベッドの傍に座ると、暖かな秋の日差しが心地良くて、いつしか瞼が落ちていった。
274 :三井×春子:2010/08/06(金) 05:41:13 ID:HL4phuRw
空が青からオレンジ色に変わる頃、俺はぼんやりと目を覚ました。
見慣れない天井を見渡して、寝返りを打つ。
…!?
鼻先を、さらさらとした髪がくすぐった。
シャンプーの優しい香りが広がる。
思わず勢い良く飛び起きると、眠りに落ちる前の記憶が蘇ってきた。
(そうだ、赤木の家に来て、寝ちまったんだ…)
それはそうと、なんでこいつがここで寝てるんだ。
無防備すぎるだろ、いくら兄貴の友達だからって。
(しっかし、いかつい赤木の妹とは今更ながらに信じられねーよな…)
細い肩、白い肌。
小さな唇は、自分のものとは違い、艶々と潤っている。
(キスしたのなんて、どんだけ前だっけな…)
数ヶ月前のバスケ部に戻る前の日々が、随分昔のことのような気がする。
あの頃は、空虚な心を満たす為に、気持ちも無いのに付き合ったりもした。
(馬鹿だったよな…俺)
これからは大事にしたい。
バスケも、自分も、友達も。
いつか好きになる誰かも。
夕日で輝く春子の細い髪を、三井は無意識に、優しく撫でた。
275 :三井×春子:2010/08/06(金) 06:12:04 ID:HL4phuRw
『ん…』
吐息混じりの掠れた声が洩れる。
体育館に響くいつもと同じ高めの声が、甘く、柔らかく、三井の胸を震わせる。
静かな部屋の中で、自分の鼓動が速くなっていくのがはっきりとわかった。
(やべえ)
なんで、今まで何とも思わなかったんだろう。
こんなに可愛いのに。
桜木がこいつのことを好きだからか?
赤木の妹だから?
(いや、違う。俺がバスケしか見えてなかっただけだ)
高鳴る心臓とは裏腹に、三井の頭の中はとても穏やかだった。
ゆっくりとベッドから降り、春子に近付くと、天使のように無垢な唇に、そっと自分のを重ね合わせた。
ふいに石鹸の香りがして、春子は夢の中から戻ってきた。
ぼんやりとした視界の先には、見覚えのある長い睫があった。
(キリンみたい)
幼い頃、兄と2人で行った動物園を思い出した。
……。
………?
…………!?
重なった唇が微かに震え、三井は目を開ける。
そこには、大きくて真っ直ぐな、茶色い瞳があった。
『…起こしちまったか』
低くて落ち着いた声が、部屋に響く。
数時間前と同じように、がしがしと頭を掻く姿を見て、春子は急にせつなくなった。
澄んだ瞳に、涙が滲む。
それは大きな粒となり、白い頬を伝った。
『悪い。寝てる時なんて狡いよな。』
三井の大きな手が、優しく、優しく、春子の頭を撫でる。
その温もりが、一層胸を締め付ける。
(違う…違うの。)
277 :三井×春子:2010/08/06(金) 06:49:54 ID:HL4phuRw
細い指が伸びる小さな手で、自分の目頭をおさえる。
それでも涙は、ぽろぽろとこぼれ落ちていく。
(嫌だった訳じゃないの。)
肩が小さく上下する。
(どうして…)
(どうして謝るの?)
冷たい雫が膝に落ちる。
(初めてのキスが、三井さんとで…嬉しかったのに。)
(どうして謝るの??)
やっと気付いた自分の気持ち。
憧れじゃない、本当の 好き 。
なのに、気付いた瞬間、砕けてしまった。
三井さんには、 好き が無かったんだ。
後から後からこみ上げる、涙とせつなさに、春子は顔を覆う手を離すことができなかった。
278 :三井×春子:2010/08/06(金) 07:08:02 ID:HL4phuRw
固い床に胡座をかいて、三井は泣いている横顔をずっと見つめていた。
(泣かせるつもりじゃなかったんだけどな)
じゃあ、どんなつもりだったのかと聞かれたら、言葉に詰まってしまうのだけれど。
いつも明るく仲間に声をかける姿や、密かにテーピングの巻き方を勉強するひたむきな姿を思い出して、こんな状況の中、三井の心は穏やかだった。
(やっと気付いたんだ)
大事にしたい誰かが、誰なのかを。
目を細めて机を見ると、氷が随分小さくなった麦茶が2つ並んでいた。
もう少しして、泣き止んだら…ちゃんと言おう。
ふられちまうかもしれないけど。
この小さな手で、ひっぱたかれるかもしれないけど。
今度はちゃんと、起きてる時に。
柔らかい唇にキスするんだ。
何度も。
何度も。。
284 :三井×晴子 涙の後に:2010/08/08(日) 04:33:31 ID:QZlUKtHh
窓の外をかける風の音だけが、部屋に響く。
2人の唇が触れ合って、離れてから、、どれ程の時間が流れたのだろう。
声もたてずに静かに震え、頬を濡らす晴子を、三井は黙って見つめていた。
泣かせたのは、他でもない自分なのに、罪悪感も戸惑いもなかった。
芽生えたばかりの、優しい気持ちだけだった。
『ごめんな』
一言だけ、呟いた。
突然で、驚かせただろうから。
独りよがりの想いを押し付けて、嫌な気持ちにさせたかもしれないから。
それでも、迷うことなく真っ直ぐな瞳で、晴子を見つめた。
285 :三井×晴子 涙の後に:2010/08/08(日) 05:07:30 ID:QZlUKtHh
少し斜めに顔を背け、深く深呼吸をした後…晴子は指で涙を拭って三井を見上げた。
『…どうして謝るんですか?』
少し困ったような、でも、柔らかい表情で黙っている三井に、もう一度問いかける。
『謝るのは…気まぐれであんなことしたからですか?』
『気まぐれじゃねーよ』
晴子には、言葉の意味がわからなかった。
『気まぐれなんかじゃねーよ。むさい赤木にわざわざ会いに、しょっちゅう来てたわけじゃない。』
大きな風が、窓の外をざぁっと駆け抜けていった。
『俺、自分でもわかってなかったんだけどさ。』
ゆっくりと晴子の小さな手に、自分の手を重ねる。
2人の体温が、溶けてひとつになる。
『好きだよ』
重ねられた大きな手が、微かに震えている気がした。
288 :三井×晴子 涙の後に:2010/08/09(月) 02:44:53 ID:TlI4kmut
三井が囁いた甘い言葉が、現実と思えなくて。
(まだ夢を見てるのかな…?)
と、うさぎのように赤い目で、ぼんやりと三井を見つめた。
『…好きだから、キスしたくなった。…嫌だったか?』
晴子は首をふるふると小さく横に振る。
2人の視線が交わった瞬間、重なった手の指先が、どちらからともなく絡まった。
『私も、三井さんが、好きです。だから、嫌じゃないです。』三井が小さく、ほっ と息を吐いた後。
熱い2つの唇が、ひとつになった。
お互いの温もりや感触を心に刻み込むように、長い間、何度もキスをした。
唇が離れる度に、照れくさそうに微笑み合って、また距離がなくなって。
((時間が止まってしまえばいいのに…))
言葉にしなくても、2人は同じことを思っていた。
289 :三井×晴子 涙の後に:2010/08/09(月) 03:16:29 ID:TlI4kmut
オレンジ色の空が、群青色へと変わり始めた時。
晴子の頬に手を添えたまま、三井が急に動きを止めた。
(?)
不思議そうな顔で晴子が首を傾げる。
『こんなとこ赤木に見られたら…ハエタタキされんのかな、俺。』
青くなる三井を見て、思わず笑ってしまう。
けれど、笑い事じゃすまないかもしれない。
ここは、お兄ちゃんの部屋だから。。
『明日、練習終わったらさ。どっか一緒に行こうな。』
明日は日曜日。
三井さん、映画どんなのが好きなんだろ?
新しいバッシュを見に行くのもいいかもしれない。
明日も、明後日も、その次の日も。
この人と手を繋いでキスしたい。
今日は、その始まりの日。
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