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男娼「身請けしてくんない?」 少女「そんなお金ないですね」
Part20


432 :名無しさん@おーぷん :2015/05/31(日)09:03:12 ID:kbY
店主「だだだ男娼っ。お前、寝てたんじゃないのかよ!?」
男娼「いや、お腹空いちゃったし」
男娼「君はいつの間にかいなくなってるしさぁ」
少女「あ、あ…ごめんなさい…」
男娼「で、二人して何の話してたの。随分真剣な顔だったけど」
店主「!」ビクゥ
少女「お、お叱りを受けてました!昨日の失態について!」
男娼「ふうん」
店主「あ、ああああー!でも、大丈夫大丈夫!もう怒ってないから!」
男娼「…何焦ってるのさ」
少女「焦ってないですよ?!何も!」
男娼「…」
店主「う、うんうん!だからお前は部屋に戻れ!」
男娼「そうする。少女、行こ」
少女「あ、え…。は、はい」

433 :名無しさん@おーぷん :2015/05/31(日)09:07:39 ID:kbY
バタン
少女「…」
男娼「顔が白いよ。汗もかいてるみたいだし」
少女「暑い、からですね」
男娼「…」
少女「すみません、ご飯持って来ましょうか」
男娼「いいよ。ここにいて」
少女「は、はい」
男娼「…あのさ」
少女「はい」
男娼「令嬢、怒ってるみたいだった?」
少女「あ、はい…。すごく」
男娼「うー、やっぱりかぁ…。あの娘プライド高いしなあ…」ボフ
少女「すみません…」
男娼「いいんだって別に。けど、俺が治められる程度の怒り方だったらいいんだけれど」
少女「…」
少女「小間使い、やめろって言われました」
男娼「はあ!!?」
少女「お、大きい声出さないでください。熱上がりますよ」
男娼「ど、どういうことさ!何でそんなことしなきゃいけないのっ」

434 :名無しさん@おーぷん :2015/05/31(日)09:12:47 ID:kbY
男娼「君、それ受けたわけじゃないだろうね!」
少女「へ、返事はなにもしてないですけど」
男娼「当たり前だろ!君を手放すかどうかは僕が決めるんだからっ」
少女「…で、でも」
男娼「あー、どうしよう…。令嬢の屋敷に言って丸め込もうかな」
少女「駄目です。まだ熱があります」
男娼「瑣末な問題だよ。早くしないとあの頑固女、本当に君を取り上げかねない」
少女「駄目ですってっ」
男娼「着替え持ってきて。あと履物も準備してくれる?」
少女「嫌です。寝ててくださいっ」
男娼「あのねえ」
男娼「じゃあ何、君はこのままほいほい追い出されていいの?」
少女「…」
男娼「ああそうか。僕から離れるきっかけができて嬉しいんだ」
少女「違う!」
男娼「…」
少女「そんなこと、思いませんよっ」
男娼「…そう。なら、行かせて欲しい」

435 :名無しさん@おーぷん :2015/05/31(日)09:14:53 ID:AwF
いつの間にか少女の心が動いてり

436 :名無しさん@おーぷん :2015/05/31(日)09:17:14 ID:kbY
少女「じゃあ、私が行きますからっ」
男娼「火に油だろ。僕だったらできる」
少女「…男娼さんっ」
男娼「…」フラ
少女「ちょっと!」
男娼「店主ー。ちょっと令嬢ん家行ってくるー」
少女「止めて!店主さんっ!」

少女「何でいないのよぉ!?」
男娼「ご飯でしょ。もう君うるさい。留守番しててよ、いい子だから」
少女「あなた、倒れますよ!お願い、行かないでっ」
男娼「やだ」スタスタ
少女「…っ」
少女「…」ギュ
少女(…私がいると、駄目なのかもしれない)
少女(この人は、際限なく無理をしてしまうんだ。…きっと…)
少女「…」

437 :名無しさん@おーぷん :2015/05/31(日)09:18:25 ID:mhj
少女の心が揺れてる感じがすごい伝わってくる
現代文の教科書で取り上げちゃっても良いんじゃないですかね

438 :名無しさん@おーぷん :2015/05/31(日)09:34:04 ID:kbY
少女「もう、やめてください」
男娼「ん、しつこいよ」
少女「私は…こんなことして欲しくない」
男娼「どういう意味」
少女「自分を、もっと大事にしてほしいんです」
男娼「…」
男娼「君、…僕を大事にしてどうするのさ。何言ってるの」ケラケラ
少女(…そう)
少女(あなたは、ずっとそうなんだね)
少女「私がいると、私のことばっかり考えちゃうんですね」
男娼「そうだね。君、分かってきたじゃない」
少女「自分は、どうでもいいんですね…」
男娼「勿論」
少女「…」
男娼「じゃ、行ってきます」
少女「私、もう嫌」
男娼「…は?」
少女「あんたのお守りなんか、もうやりたくない」
男娼「…」
少女「もう散々よ!嫌だ、帰りたいっ!」
男娼「少、女」

439 :名無しさん@おーぷん :2015/05/31(日)09:41:45 ID:kbY
青年「…お」
少年「なんだろ、この声」
少女「触らないでっ!」
男娼「少女、どうしちゃったの。ねえ」
少女「もう、こんな所いたくないの!お願い、もう帰して!」
青年「少女…?」
男娼「どうして、君。そんな」
少年「…や、やばいかな?」
青年「…少女…」
少女「お金は返します!だから、もう許してください!」
男娼「…」
少女「ごめんなさい、ごめんなさいっ…」
男娼「少女。…」
少女「もう、帰りたいよぉっ…」
男娼「…」
男娼「分かった」
少女「…」

440 :名無しさん@おーぷん :2015/05/31(日)09:45:11 ID:LKk
おいおいおい

441 :名無しさん@おーぷん :2015/05/31(日)09:47:16 ID:Q80
辛い選択やね
こーゆーの好き

442 :名無しさん@おーぷん :2015/05/31(日)09:47:33 ID:kbY
男娼「…ごめん」
少女「うっ…うう…」
男娼「君の気持ち、汲んであげられなかったね」
少女「…」
男娼「…」
男娼「お金は、もういいよ。十分楽しかったし」
少女「でも…」
男娼「いいって言ってるだろ」
少女「…」
男娼「もう、お帰り」
少女「い、いいんですか…?」
男娼「うん。…準備、しておいでよ」
少女「ありがとう、ございます…」
青年「…」
少年「うわ…」
男娼「…」クル
青年「男娼」
男娼「話しかけないで」
青年「…」
男娼「今凄く、…嫌な気分なんだ」
少年「…」
少年「あの人でもあんな顔、するんだね…」
青年「…ええ」

443 :名無しさん@おーぷん :2015/05/31(日)09:51:13 ID:kbY
少女「…」
少女「…準備、ってさ」
少女(…何もないんだけどね。私物なんて)
少女(…服くらいしかないや)
少女「…」
少女(この部屋とも、お別れか)
少女(…もう二度と、この町には来ない)
少女(男娼)
ギイ
少女(ごめんね、さよなら)
バタン
青年「…」
少女「お世話になりました」ペコ
青年「もう少しだったのに」
少女「…」
青年「ありがとう、少女。あなたは十分やってくれた」
少女「私なんて、…そんな」
青年「ハグしてもいい?」
少女「はい」
青年「…っ」ギュウ

444 :名無しさん@おーぷん :2015/05/31(日)09:53:58 ID:kbY
青年「ごめんなさい。あなたが一番、辛いよね…」
少女「何も…」
青年「ありがとう、男娼のこと考えてくれて、ありがとう…」
青年「何も出来なくて、ごめんなさい…」
少女「…」ポンポン
少年「…」
少女「ばいばい、少年」
少年「俺…これで良かったか、分かんないよ…」
少女「…そうだね」
少女「そろそろ行かなきゃ。…二人とも、よくしてくれてありがとう。ばいばい」
青年「…」
少年「…」
少女「…」ペコ
バタン

445 :名無しさん@おーぷん :2015/05/31(日)09:57:10 ID:kbY
少女「…」
少女(あ)
ポツ
少女(雨)
少女(…)
振り返って見上げた楼の二階には
少女「…男娼」
高い美しい、彼のいる城には
少女「…」
少女「さよなら」
あの日のように笑顔で手を振る彼の姿はなく
少女「…」
ただ雨粒だけが跳ねているのが見えた

446 :名無しさん@おーぷん :2015/05/31(日)10:00:12 ID:kbY
……

少女「はい、二袋全部飲めたね。偉い偉い」
弟「えへへ」
少女「一週間も放ったらかしにしてごめん。手術も上手くいったみたいで、安心した」
弟「全然痛くなかったよ!体が軽くなったかんじ!」
少女「そっか」
弟「お姉ちゃんがお見舞いに来てくれて嬉しいな」
少女「何言ってんの。退院までもうつきっきりだよ」
弟「…明日だもんねー」
少女「そうね。拍子抜けするくらいだわ」
弟「うん」

447 :名無しさん@おーぷん :2015/05/31(日)10:03:11 ID:kbY
少女「…ふー」
弟「ねえ、姉ちゃん」
少女「なに?」
弟「何かあった?」
少女「…」
弟「何だか、すごく悲しそうな顔してる」
少女「そう、かな」
弟「大事な人がいなくなっちゃったみたいな、顔」
少女「…あはは、何でそんな具体的に」
弟「お母さんとお父さんが死んじゃったときみたいな顔、してるから」
少女「…」
弟「あ、ごめん。…変なこと言って」
少女「ううん」
少女「…もういいのよ。終わったことだし。前を向かなきゃ」
弟「…そう?」
少女「そう。今はあんたが一番大事なの」ギュ
弟「あは、くすぐったい」

448 :名無しさん@おーぷん :2015/05/31(日)10:08:25 ID:kbY
少女(…)
少女「もう、終わったことか」
少女「…ふー」
弟「お姉ちゃん、そうだ」
少女「なに?」
弟「男娼さんは、お見舞いに来てくれないの?」
少女「…うん、お仕事忙しいんだって」
弟「そっか、…暇だったら行ってやるって言ってたんだけど」
少女「え?でも、入院することなんて知らないんじゃ」
弟「んー、でも男娼さん、そろそろ君は入院できるよって言ってた」
少女「…」
弟「僕がね、そんなの姉ちゃんの負担になるって言ったら」
弟「そんなこと言っちゃ駄目だ、自分を大事にしろって怒ってた」
少女「…」
弟「優しい人なんだね、あの人」
少女「馬鹿みたい。…人のことばっかり」
弟「馬鹿?ええ、男娼さんは頭良いよー」
少女「…そうね」

449 :名無しさん@おーぷん :2015/05/31(日)10:12:21 ID:kbY
少女(…)
弟「すぅ、すぅ」
少女(…思えば)
少女(優しかったな)
少女(何かちょっと偽悪みたいな顔して、さらっと親切おしつけるんだもん)
少女「…」
少女(ね、自分のことなんか、考えないくせにね)
弟「…姉ちゃん」
少女「あ、起こしちゃった?」
弟「ううん…」
弟「あのね」
少女「うん」
弟「僕、姉ちゃんがふらふらで働いてる時ね、本当はすっごく怒りたかったんだ」
少女「…」
弟「だから、男娼に自分を大事にしろって言われた時、ああお姉ちゃんにも言ってあげなきゃ、って思った」
少女「…」
弟「姉ちゃんも、自分を大切にしてね。…おやすみ」
少女(…ああ)