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男娼「身請けしてくんない?」 少女「そんなお金ないですね」
Part17


356 :名無しさん@おーぷん :2015/05/30(土)20:17:38 ID:WsG
青年「…お前」
男娼「先輩、追い出されて別の楼に流されたんだよね?」
青年「あ、ああ。警察に突き出されないほうが不思議なやりかただったがな」
男娼「…じゃあ、もうあの人とは会わないもの」
青年「お前なぁ…」
青年(…女と密通してたのに追い出されなくて済んだし)
青年(やっぱこいつ、店主の気に入りなんだな…。けど、これは)
男娼「う、痛」ギシ
青年「もう懲りたろ。だから迂闊に男娼が女に手をだすとこうなんだよ」
男娼「懲りる?あはは」
男娼「僕、懲りちゃいないさ。だって何も悲しくないんだもの」
青年「…は?」
男娼「僕、あの人が愛してくれるんならそれでいい。僕のものでいてくれるなら、それでいい」
青年「…」

357 :名無しさん@おーぷん :2015/05/30(土)20:21:01 ID:WsG
青年「…もう、やめておけよ」
男娼「どうして?」
青年「ろくなことが…ねーからだ」
男娼「だから、こんなのどうでもいいんだよ。悲しくも辛くもない」
男娼「…これからだってそうだよ。僕は」
青年「…」
青年(何で、そこまで)
男娼「明日はあの人が来る日でしょう。そしたら僕、自分で先輩がいなくなったこと教えるんだ」
青年「…そうか」
男娼「先輩が殴ったのが体でよかった。痣できた顔で会いたくないもの」
青年「…ああ」
男娼「青年、そろそろ部屋にお戻りよ。誰かに見られたら君も怒られちゃう」
青年「ん…。じゃあ、な」
男娼「うん。おやすみ」
青年「…」

358 :名無しさん@おーぷん :2015/05/30(土)20:24:46 ID:WsG
店主「青年、そろそろ客入れるぞ」
青年「ほーい」
男娼「…」
青年(あんなに着飾っちゃって、まあ)
店主「お客様のおなりだー」
ガララ
男娼「…」キョロキョロ
女性「…あのう」
男娼「…あ」
女性「あの、いつもの男娼をお願いしたいんですけど。…彼、姿が見えないわね」
男娼「…お姉さんっ」タタタ
女性「!…男娼」
男娼「こんばんはっ。…あの人なら、いないよ」
女性「…え」
男娼「他のお店に流されちゃったんだ」ニコ

359 :名無しさん@おーぷん :2015/05/30(土)20:28:42 ID:WsG
女性「…」
男娼「お姉さん、言っていたでしょ」
男娼「あの人はそろそろ飽きてたし、いなくなっても構わないって」
青年「…」
男娼「僕ね、あの人の分まで頑張るよ!だからね、姉さん。これからもごひいきにしてね」
女性「…あの人、」
男娼「姉さん?」
女性「その話、本当なの…?」
店主「ええ。…ちょっと問題を起こしたので」
女性「…」
男娼「お姉さん…」ギュ
女性「…どう、して」
男娼「…お姉さん?」
女性「嫌。…あの人じゃなきゃ、嫌…」
青年「…!」
女性「教えて、どこの店なのっ。彼をどこにやったの!?」
店主「う、えっ!?」
女性「教えてください!お願い!!」

360 :名無しさん@おーぷん :2015/05/30(土)20:33:08 ID:WsG
青年「…」
あっけないものだった
女性「教えて!!!」
簡単なことだ。彼女は界隈でも有名な好色家で
店主「ちょ、ちょっと落ち着いてください」
一目気に入ったらすぐ唾をつける
男娼「…」
女性「彼がいいの!私!」
男娼は何人ともいる手慰みの一人であって
女性「あの人が…いいのぉ…!」
先輩の男娼だけが、本命。
男娼「…」
彼女にとって、男娼は、
女性「うっ…ううっ、うううっ…」
男娼「…」
青年「男、娼…」
男娼「…」
彼の顔を、見ることができなかった

361 :名無しさん@おーぷん :2015/05/30(土)20:37:56 ID:WsG
男娼「…」
しかし彼の顔は容易に想像できた。
青年「…だいじょう、ぶか」
きっと泣いている。あの、大きな目を水で一杯にして。裏切られた悲しさで溢れて。
青年「…おい」
男娼「…」
覗き込んだ彼の顔は。
青年「……」
青年「……っ…!」
彼は、ただ笑っていた。
あの濁った目で、ただ、頬を片方だけ吊り上げて、美しい顔で
青年「男、娼…。お前…」
女性「うう…ああっ…」
男娼「…」
男娼「教えてあげなよ、店主」
店主「…え」
男娼「可哀相じゃないか。お店の場所、教えてあげなよ

362 :名無しさん@おーぷん :2015/05/30(土)20:41:52 ID:WsG
青年「お前、この女は…」
男娼「教えてあげなよ」
店主「…お、お、う…」
女性「本当!?ありがとう、ありがとうっ…!」
男娼「…」
その女は、最愛の男娼の場所を聞き出すとすぐに店を出た。
男娼「…」
一度もこちらを、振り返らなかった。
青年「…なあ、おい」
男娼「…」クル
青年「お、おい」
男娼「…」トントン
青年「何処行くんだよ、男娼っ」
ガチャ
青年「お、おい…」
男娼「…」シュル
青年「…」
男娼「…」キィ

363 :名無しさん@おーぷん :2015/05/30(土)20:46:41 ID:WsG
青年(…風呂場?どうして)
男娼「邪魔」
青年「…」
男娼「…」
浴室に吸い込まれていった彼の白く細い背中を、ただ呆然と見つめた
バタン
青年「なあ、お前…」
激しい水音と、体を強く強くこする音
青年「…」
それだけだった
青年「お前、どうしちゃったんだよ…」
ごしごしごしごしごしごし。何度も何度も、強く擦っていた
青年「…」
嗚咽の音は、聞こえなかった。
青年「何でお前、泣かないんだ…?」
答えは、なかった。
青年「どうしてだよ…なんで…」
今となっては、分かる。
彼が全てを、諦めてしまったからだ。

364 :名無しさん@おーぷん :2015/05/30(土)20:50:00 ID:WsG
男娼「…」
青年「…」
男娼「僕、店に上がるよ」
青年「…は?」
男娼「そのほうがいい気がしてきた」
青年「でも、お前」
男娼「明日にでも頼んでみる」
青年「…本当に、大丈夫か」
男娼「え?」
青年「だって、あんなの…」
男娼「…」
青年「あんな仕打ち…」
男娼「何が?」
青年「…」
男娼「何の仕打ち?…どういうことさ」
青年(…ああ)
彼の中で、何かが終わったんだ。
青年(…俺、なんてことを)
あの時、止めていれば。

365 :名無しさん@おーぷん :2015/05/30(土)20:56:03 ID:WsG
男娼「…どうしたの、青年」
青年「…っ。俺、男娼ぉ…」
男娼「何。泣いているの?どうしたのさ」
青年「俺が、もっと…お前に色々忠告してやればよかったんだ…」
青年「俺が、…馬鹿だったから…。ごめん、ごめんな男娼…」
男娼「…」
青年「…っ、あの時、止めてたら…!」
男娼「…」
頭に、温かい手の感触があった
男娼「君は悪くないさ」
青年「…お前…」
男娼「悪いのは、要領のない僕だ」
青年「…」
男娼「もう、寝な。明日も早いから」
青年「…」
男娼「ばいばい、青年」
バタン
青年「…」
扉の奥から、水音と、皮膚を擦る音が微かに響いていた。

366 :名無しさん@おーぷん :2015/05/30(土)21:02:08 ID:WsG
青年「…あいつは変わったわ」
青年「次の日起きて会ってみると、誰にも目をあわさない、話さない」
青年「…私も、最初から全くの他人だったみたいに扱われた」
少女「…」
青年「あいつはその後すぐに店にあがって男娼になった。…13歳よ」
少女「…」
青年「恐ろしいほどの速さで売れっ子になって…。私が半年後に上がるまで、一番だった」
青年「何故か私が客を取り始めた途端、二位に甘んじはじめたけど」
少女「…」
青年「そういうかんじ」
青年「言葉もないでしょ。…彼を壊したのは、きっと私」
少女「それは、違いますよ」
青年「直接じゃなくても原因を作ったのは私だもの。…あのとき止められなかったから」
少女「…」
青年「今でも後悔してる。けど、もうどうにもならない」

367 :名無しさん@おーぷん :2015/05/30(土)21:08:11 ID:0TW
すごい面白い
完走してね

368 :名無しさん@おーぷん :2015/05/30(土)21:54:10 ID:29O
みてるよ

369 :名無しさん@おーぷん :2015/05/30(土)22:11:32 ID:WsG
少女「…」
青年「ふぅ」
少女「ありがとうございます」
青年「嫌な話だったでしょう」
少女「ごめんなさい。…辛かったですよね」
青年「ううん。私なんて、そんな」
青年「…一番可哀相なのは、あいつだから」
青年「…」
少女「だから、私に忠告してくれたんですね」
青年「まあ、ね。…駄目な未来しか想像できなかったし」
少女「私は…」
少女「…」
青年「どうして良いか分からないなら、あいつから逃げるべきよ。男娼のためにも、あんたのためにも」
青年「それに私、もう彼は駄目だと思ってるの。…戻ってこないと思う」
少女「…」
少女「私は、そうは思いません」
青年「…ふ」
青年「そうね。…あんたは、強いわね」
青年「あんたなら…」
ギシ
少女「!」ビク
青年「あら。…誰かしら」
少女「もう誰も起きてる時間じゃないのに…変ですね」

370 :名無しさん@おーぷん :2015/05/30(土)22:14:33 ID:WsG
少女「…」
青年「…」
少女「…えーと」
青年「建物の軋みね。大丈夫だから、そんな死にそうな顔しないの」
少女「です、よねー」
青年「…ふあ」
青年「ねっむ…、自分語りって疲れるわね」
少女「お疲れ様でした」
青年「まあ、今後の展開はあんた次第よ。少女」
少女「はい」
青年「じゃ。私は寝るわ。彼をよろしく」
バタン
少女「…」
少女「…」ボフ
……


371 :名無しさん@おーぷん :2015/05/30(土)22:19:29 ID:WsG
少女「…え、何で」
店主「昨日結構無理したみたいでさぁ。ちょっとやばいみたい」
少女「…」
少年「令嬢さんとそんなに盛り上がったのね。ふうん」
少女「…!」バッ
少年「って、顔してる」
少女「してないわよ」
少年「ふふ、そうかなー」
少女「馬鹿らしい…。どいてよ」
少年「何処行くのー?」
少女「男娼のところ。私医療かじってるし、診察くらいならする」
少年「いってらっしゃーい」ヒラヒラ
少年「…」
ギィ
少女「…おはようございます」
男娼「…」グタ