2chまとめサイトモバイル
男娼「身請けしてくんない?」 少女「そんなお金ないですね」
Part16


339 :名無しさん@おーぷん :2015/05/30(土)18:41:37 ID:WsG
青年「…ほら、店主がこれ着ろだって」
男娼「ありがと、青年」
青年「おー。…ところでお前、どっから来たの?」
男娼「…西のほう」
青年「も、もうちょい具体的にいえよな…。まあいいけど」
男娼「…」フキフキ
青年「何でここに入ったんだ?あ、言いたくなかったらいいけどよ」
男娼「んー」
男娼「ここ、安全だから」
青年「…は?」
男娼「青年は?」
青年「(…安全、って。変な奴)俺は、稼ぎたいから自分から志願したんだよ」
男娼「そうなんだ」
青年「…」
青年(…なんか、こいつ。目が、変だな。綺麗なのに、…なんか)
男娼「ね、僕これからどうしたらいい?」
青年「あ、おお。とりあえず店主に聞いてみるか」

340 :名無しさん@おーぷん :2015/05/30(土)18:45:13 ID:WsG
青年「…なあ、店主」
店主「んだよ」
青年「あいつさぁ、何か変じゃない?」
店主「あいつってー?」
青年「男娼。…目が据わってるんだけど」
店主「ああ、あいつは…。まあ、慣れるさ。気にすんな」
青年「ふうん」
店主「ま、ここの者の過去なんて詮索するだけ無駄だし、やめとけ」
青年「んー…」
店主「ただ、あいつは良い男娼になるだろうな。稼ぎ頭に」
青年「えっ、まじで」
店主「お前も客取られるような情けないことはすんなよなー」
青年「う、んー…。そだな」
店主「まずはお前は所作の稽古だな。最近は上品な男娼がウケるし」
青年「はいはいはいはい」

341 :名無しさん@おーぷん :2015/05/30(土)18:49:07 ID:WsG
青年「…男娼と私が打ち解けるのに、それほど時間はかからなかったわ」
青年「同期だし、歳もまあ、同じ十代だったし」
少女「…」
青年「本当、今とは比べ物にならないくらい、可愛げあったのよ」
少女「想像できないですね」
青年「そうね…。けど、才能はもとからあったわ」
青年「稽古なんかすぐ終わっちゃうくらい。私も追いつくのに必死だった」
少女「…二人は、そのころは」
青年「見習いね、いわば。座敷にあがるのって、大体一年修行をつんだ17,8の子だもん」
少女「へえ」
青年「…うん。それなのに、あいつはやっぱり異常だったわ」
少女「異常?」
青年「ええ」
……


343 :名無しさん@おーぷん :2015/05/30(土)19:27:41 ID:WsG
…5年前
青年「…え、マジで?」
男娼「うん、…どうしよう」
青年「お前ちょっ、こっち来いっ」グイ
男娼「んー…」
青年「どうしよう、ってあんた。…それ見せて」
男娼「はい」
青年(…間違いない。これ)
男娼「これ、女の人からの…恋文、だよねえ?」
青年(…こいつっ…)
男娼「どうしてかな…」
青年(いつか、こんなことが起こるかもしれないって思ってた…!)
青年(こいつかなり器量がいいし、女客にも人気だったし…!)
男娼「どうしよう、僕」
青年「…この手紙の差出人、これってよ」
男娼「うん。…先輩の固定客だよね」
青年「ああ…」
青年(…まずいことになったな)

344 :名無しさん@おーぷん :2015/05/30(土)19:32:02 ID:WsG
青年「お前も知っての通り、まだ楼に上がってない見習いが女と交わることは許されない」
青年「…俺らが一番稼げるのが、初日。上がりたてなんだから」
男娼「うん」
青年「ってことで、これは忘れろ。面倒なことになる」
男娼「え、どうしてさ」
青年「はあ?聞いてたのかよお前っ。これは…」
男娼「でもこの人、僕のこと好きだって」
青年「…」
男娼「僕、そんなこと言われたの初めてで…なんだか嬉しい」ニコ
青年「お前なぁ…」
先輩「おーいお前ら、そろそろ稽古すっぞー」
青年「!」ビクゥ
男娼「あ、先輩」
青年「けけ稽古!今行きます行きます!」ガバッ
男娼「む、ぐ」
青年「いいかお前っ。これ絶対言うな!俺以外に!」
男娼「どうしてー?」
青年「どうしてもクソもない!分かったな!」
男娼「…青年がそう言うなら、いいけど」

345 :名無しさん@おーぷん :2015/05/30(土)19:36:46 ID:WsG
青年(…あいつ大丈夫なのか…?)
青年(約束はしたし、言わないとは思うけど…)
青年(ああくそ、文も取り上げりゃ良かった!見つかったらこじれるぞ…)
男娼「ね、青年」
青年「ああ?」
男娼「僕、明日少し外出するね」
青年「なんでだよ」
男娼「あの女の人に会いに行くんだ」
青年「お前、アホか?」
男娼「…」キョトン
青年「その足りない頭でよっく考えろよ、会ってどうすんだ?」
男娼「でも、会いたいって」
青年「ー…っ」ガリガリ
青年「てめーはぁ!処女みてえなこと言ってんじゃねえ!その女、ろくでもねえぞ」
男娼「どうしてそんなこと言うのさ」ム
青年「だってよお、固定の男娼がいるのにその弟子に手を出す浮気女だぞ!?」
青年「しかも楼に上がる前のお前に…」
男娼「…」
青年「分かってんのか?ああ?」
男娼「確かめてみたいんだ」
青年「はあ?」
男娼「僕でも、誰かに愛されることができるのか」

346 :名無しさん@おーぷん :2015/05/30(土)19:39:54 ID:WsG
青年「…どういうことだよ」
男娼「僕、愛されてみたい」
青年「何、言って…」
青年(お前…お前は、男娼なんだぞ…?)
男娼「…駄目なのかな」
青年(こんな職業の男が、心から愛されるときなんか)
男娼「僕、この女の人信じたいんだ」
青年「…」
…その目が、あんまりにも純粋で
青年「…男娼」
男娼「お願い、青年。協力して」
私は…
青年「…分かった。でも、一度きりだ」
間違ってしまった

347 :名無しさん@おーぷん :2015/05/30(土)19:42:54 ID:WsG
青年「じゃ、行ってきまーす」
男娼「きまーす」
先輩「おう、頼んでた化粧品もよろしくなー」
青年「ほーい」
男娼「…」
青年「上手くいったな。買出しを口実に出れるなんて」
男娼「やったね。やっぱ青年はすごいや」
青年「へへ。…しかしお前よ、ちゃんと昼過ぎには帰ってくるんだぞ?」
男娼「うん。分かってるよ」
青年「待ち合わせ場所はあの橋だからな。一緒に帰らないと怪しまれるから」
男娼「うん。ありがとう、青年」
青年「おう、しっかりやれ」
男娼「ばいばい」タッ
青年「…」
青年「頑張れよ…」

349 :名無しさん@おーぷん :2015/05/30(土)19:46:25 ID:WsG
青年「…」
青年(お、っそいんだよあのガキャ…)イライラ
「…青年っ」
青年「ん。男娼っ」
男娼「はぁ、はぁ。ごめん、ちょっと遅れちゃった」
青年「馬鹿、しくじったかと思ったじゃんかよ。…で、どうだった」
男娼「優しい女の人だったよ。すっごく」ニコニコ
青年「ふうん…」ポリ
男娼「言われたとおり、お話だけした。一緒に散歩して、お菓子食べた」
青年「おう健全健全」
男娼「あの人も、僕と会ったことは誰にも言わないって」
青年「そうか」
男娼「じゃ、戻ろう?」
青年「ああ」
男娼「あー…楽しかったぁー」ノビ
青年(…あいつがあんなに笑ってるの、初めて見たな)

350 :名無しさん@おーぷん :2015/05/30(土)19:50:32 ID:WsG
…それからというもの
男娼「ふんふーん」
青年「…」
男娼は今まで以上に稽古に身を入れ
青年「…」
今まで以上に美しくなっていった
青年(…あの女客のせい、だろうか)
青年(恋をすると女は綺麗になるっていうが。…あいつもそうか)
男娼「ねえ、青年」
青年「おう」
男娼「青年はそろそろ店に上がってもいい頃だよね」
青年「ああ。早いもんだな」
男娼「僕、…上がりたくないなあ」
青年「は?何で」
男娼「ん。…内緒」
青年「変な奴…」
あの女だ。…頭の中では分かっていた

351 :名無しさん@おーぷん :2015/05/30(土)19:53:05 ID:WsG
私は、知っていた。
男娼「…」
ギィ
青年「…」
あいつが夜な夜な抜け出しているのも
男娼「…青年?」
青年「…ぐが…んー…」
男娼「…」ホッ
青年「…」
…誰と会って
男娼「よい、しょ」ボフ
…何をしているのかも
青年「…」
それがどれだけ、大変なことかも

352 :名無しさん@おーぷん :2015/05/30(土)19:58:24 ID:WsG
青年「俺は、やっぱ引退するまでは情婦なんて取らないな」
男娼「えー。どうして」
青年「だってそうじゃないかよ。本当に好きな女なんか、できっこないさ」
青年「できたとしても、傷ついて終わるだけさ」
男娼「…僕は、そう思わないよ」
止めなかったのは
青年「…」
男娼「愛される、って素敵なことだと思う」
あいつの目の輝きが、眩しすぎて
男娼「違う?」
満たされているあいつが、眩しすぎて
青年「…」
だから
青年「…あー」
あの綺麗で濁った目をしていた友人に
青年「お前の、言うとおりだな」
男娼「本当?君が賛同してくれるなんて、珍しいなあ」ケラケラ
…心の底から、幸せになってほしいと思ったから

353 :名無しさん@おーぷん :2015/05/30(土)20:04:22 ID:WsG
それは、突然だった。
「…っ、おい、誰か来てくれ!!」
青年「…!?」
店主「二階だ!どうかしたか!?」
「早く!男娼が、男娼が死んじまう…!」
青年「男娼、っ…!?」ダッ
青年「どうし…」
先輩「…ふーっ、…ふーっ…」
青年「…あ」
男娼「…」
先輩「てめぇ、ふざっけんなよ…」グイ
男娼「…」
先輩「人の女にっ…汚い手ぇ出してるんじゃねえよ!!」
青年「やめっ…」
バキッ
青年「…!!」

354 :名無しさん@おーぷん :2015/05/30(土)20:09:26 ID:WsG
男娼「…」
青年「先輩!やめてください!男娼、血がっ」バッ
先輩「うるせぇ!!」ドガッ
青年「がっ…、…」
男娼「…はぁ、はぁ…」
先輩「あいつは…俺の身請け話まで持ち込んでくれたってのに…」
先輩「お前だ!お前がたぶらかしたんだ!男娼ぉおおおっ!!」
バキッ ドガッ
青年「…やめ、ろ…」
男娼「…ぐっ、…」
店主「おめえら!何やってんだ!!」
青年「て、店主!男娼がっ…!」
店主「…!」
先輩「殺すっ…殺してやるっ…」
店主「やめろ!馬鹿かお前ぇえええっ!!!」
青年「…」
修羅場だった
男娼「…」
男娼は何も言わず、自分より一回りも二回りも大きい男に殴られていた
男娼「…ごほっ…」
その目は、笑ってるように見えた

355 :名無しさん@おーぷん :2015/05/30(土)20:13:30 ID:WsG
青年「…ってえ…」
男娼「ごめん、青年。君まで殴られちゃった」
青年「うっせーな、別にあんなの平気だよ」
男娼「…」
青年「…あの女と、会ってたんだな」
男娼「うん」
青年「何やってんだ、お前は…馬鹿かよ」
男娼「でも青年、知っていたよね」
青年「…」
男娼「知ってて黙ってくれてたもんね。ありがとう」
青年「ありがとう、じゃねーよ。…お陰でお前はボコボコだし、罰受けてるじゃねーか、実際」
男娼「酷いよねえ。柱にくくりつけるなんて」
青年「ほんっと、馬鹿…」
男娼「けど僕、何だかすっとしちゃった」
青年「はあ?」
男娼「だってあの人と先輩、離せたんだもの」